●後腹痛し
「……いかん。年末年始、羽目を外しすぎた……!」
とある民家。腹を空かせた野犬の如く唸る男が一人。
穴が開くほど通帳を睨んでみても桁が増える訳じゃなし。早い話が金欠である。
スキーに温泉、食べ歩きにデートにドライブ。瞼を閉じれば今でも鮮烈に浮かぶ、徹底的に遊び倒した思い出は、売値のつかぬ青春の一ページ。
ではあるが、得難い経験を得るためには結局のところ結構な額のマネ~が必要だったのだ。なんと世知辛い話だろう。
「仕送りを増やしてもらう……のはだめだ。この手は先月も使った。一か八かバイト代前借り……も出来そうにないし、羽振り良く振舞っておいて友人達(あいつら)に頭下げるのもなぁ……」
二十になったばかりで消費者金融に手を出すのもいささか抵抗があった。
今となってはテーブルのど真ん中に鎮座する微妙な出来の土産人形が憎々しい。なんでこんなもの買ったのか。
いずれにせよ、このままでは月末までもやしかパンの耳で凌がなくてはならないだろう。
「あーあ……どっかのお大尽が半年分位の生活費ぽんと渡してくれたりしないかな……しないよな……」
天井を仰ぎ、青年は独り言つ。
本来ならば他愛もなく、そこで終わりの筈だった。
しかし突如、青年の視界に現れた、孔雀のような、天女のような形をした幻が微笑むと――。
「あああ! そっか! 金持ち血祭りにあげて無理矢理金奪っちまえばばいいんだ! これがほんとの落とし命(ダマ)ってなぁ! んん~、控えめに考えてみてもナイスアイディ~ア!」
いつの間にか、青年の姿はビルシャナに変じていた。
●金が敵
年始早々、ビルシャナ菩薩『大願天女』が暗躍を始めたらしい、と黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は語る。
彼女の能力によってビルシャナ化してしまった人間は、個人的な願望を叶えるために理不尽な襲撃事件を起こそうとするので、それを未然に防いでほしい、と。
「今回の事件に介入できるのが『被害者がビルシャナ化した直後』で、そもそも大願天女が『本人の願望を歪めて叶えてようとしている』為、上手い具合に説得が成功すれば青年を助け出すことができるっす。まぁ、どっちみち戦闘は避けられないんすが……」
『金が欲しい』という願望は青年の物に相違ないが、それを叶える手段として『人を殺すのが最良最善だ』と洗脳しているのはグラビティチェインを欲している大願天女の都合に過ぎない。
なので青年が『殺人』という手段に疑問を持つ、あるいは否定するだけの理性を取り戻すことが出来たなら、説得は成功となり、そのための方法は問わない。
多少の金を得るために人を殺すなんてナンセンスだと真っ向から正論をぶつけても良いし、『というか身から出た錆なんだから甘んじて受け入れて次から気を付けろ』と大本の願望ごと叩き潰す説教を展開するのもありだ。
いっそ先んじて願望を充足……彼が満足するだけの金額を渡してしまっても良い。文字通り、現金な話だが。
また、説得が成功を通り越して大成功した場合、結果としてこちら側にかなり有利な状況で戦えるようになる、とダンテは言った。
ただし、どういったスタンスに立って説得するのか、ある程度は揃えた方が良いだろう。
現場となるのは東京都某区閑静な住宅街にある一軒家。
二十の大学生が住むには豪華だが、元々は彼の親戚が買い手も付かずと持て余していた物件で、維持、管理を条件に格安で借りたものらしい。
「人が住まなくなれば、家ってすぐに廃れるもんすからね」
戦場の広さも十分、ビルシャナ化した青年がこちらを振り切って逃走する事もない。
「人の願いに付け込むなんて天女どころかやくざの手口っすねぇ……出来得る限り、救け出してあげてほしいっす」
参加者 | |
---|---|
佐藤・みのり(仕事疲れ・e00471) |
芥川・辰乃(終われない物語・e00816) |
メルカダンテ・ステンテレッロ(茨の王・e02283) |
茶斑・三毛乃(化猫任侠・e04258) |
霧島・絶奈(暗き獣・e04612) |
フィオ・エリアルド(ランビットガール・e21930) |
シララ・クリーブ(クリーニングクリーニング・e38987) |
神冥・飛燕(ウェアライダーのガジェッティア・e45124) |
●ただより高い物は
「おおっとそこの美人さん方! グヘヘェ! こんにちは! 俺今からとか金持ちぶっ殺しに行くんだけど、それが終わったらお茶でもどう? なんっつって! 冗談冗談! 俺彼女いるし!」
鳥人間と化した青年が玄関から飛び出して二秒でこんな様子だったので、佐藤・みのり(仕事疲れ・e00471)は取り敢えず青年を家の中へ押し込むことにした。
「まぁまぁ、先ずは落ち着いて。急いては事を仕損じると言いますし、ご近所さんの目もありますし。少しだけ私たちとお話ししましょう。クールダウンです」
みのりが青年を如何にか宥めすかしてリビングへと誘導しているその間、シララ・クリーブ(クリーニングクリーニング・e38987)は家の中を見回す。
掃除好きのシララから見てもよく整理されており、それ故あちらこちらに置かれている種々の土産物に目が行く。どうやら青年は旅行が趣味であるらしい。
「いやぁ、良い青春送ってますね。年末年始は楽しかったですか? 頑張ってバイトして稼いだお金も使ってますもんね。きっと楽しかった事でしょう」
「そりゃもう楽しかったさ! あ! 何だったら写真見る?」
みのりの言葉に気をよくした青年はスマートフォンを取り出す。が。
「あれ? 指紋認証出来ない。パス何だっけ」
小首を傾げる青年に、暫くしたら直るよ。とシララは答えた。
だからそれ迄ボクらの相手をしておくれと。
「お兄さんは沢山のおカネを生活に使うのもあると思うけど、やっぱり遊ぶのにも使いたいよね? もし人を殺しておカネを取った場合、またおカネ無くなったら同じことするのかな?」
「そりゃそうだろう。だってそうするのが一番いい方法だもの」
シララの問いに、青年は淀みなく返す。
だがこれは、青年の願望を利用した大願天女の欲望だ。真意ではない。
「無いならば有るところから持って来ればいいと。単純に考えればその通りでしょう。ですが、この世界はそう単純には出来ていません」
芥川・辰乃(終われない物語・e00816)はいよいよ事の核心に切り込む。
●後悔先に立たず
「むぅ。縁も縁も無い癖に、随分なお節介じゃないか」
青年は嘴を尖らせ、辰乃を口撃する。
「お節介で結構です。一人の未来に関わることなら、お節介にもなりましょう」
人命を救うためならと、勇気を出して。
すぐ傍にはボクスドラゴン・棗がいてくれる。辰乃は彼の心に届くように、一つ一つ言葉を繋げていく。
「貴方が奪おうとしているものは、その人の人生そのものです。一度奪ったが最後、今度は自らが奪われることに怖れ、疑心に陥り、安らかな時間はもう二度と、貴方を流れることはないでしょう。貴方は、自らの時をその手で止めようとしている」
「ははは! 何を。俺はちょっとお金が欲しいだけで、そんな大それた話じゃない……し?」
他者に指摘された初めてわかる物もある。辰乃のお節介は、青年の歪んだ認識を揺さぶったのだ。
「しつこい油汚れみたいに、怖い過去はついてまわるんだよ? 皆それを見てうわってなるのも油汚れと一緒! 汚れないように予防が大事なのも一緒なんだ!」
揺さぶられた認識に大きな穴を穿つように、シララは続ける。
「普通にアルバイトや節約すると、稼ぐのに時間かかるけど誰にも怖がられないよ! 一回でも人を殺しちゃったら、強盗殺人しましたーって過去がついちゃうね! おカネを手に入れたとしても、遊びに行ってもどこでもその過去はついてまわるよ! みんなに怖がられて、一緒に遊ぶ人もいなくなっちゃうよ!」
赤い汚れ。黒い汚れ。そんな穢れを好き好んで被らせる道理はない。
「そうそう。人を殺すなんてダメだよ。バレたら貴方の名前は日本中に広がっちゃうし、やっぱりきっとどう考えても友達や彼女とかも離れちゃうよ。お金があっても一緒に遊ぶ仲間が居ないとつまらないよ」
そんな事になる位なら最初の予定通りこれに頼った方が良いと思うよ、と、神冥・飛燕(ウェアライダーのガジェッティア・e45124)は相棒のシャーマンズゴーストが携えているものを指差す。
そこにあったのは一袋のもやしだ。とても安い。量もある。
「そうだなぁ、一人より皆で騒ぐの好きだしなぁ」
「ちなみに、目撃者を殺すとか、そーいうのもダメだからね! 既にわたし達に目撃されてるし、そんなバレバレなきみが、こっそり出来るわけないもの」
「そうさなぁ、俺人を殺した経験とかないし……」
青年は根から善良だった。
「人を殺めた末路を知りたいのなら、最寄りの交番にでも足を運んで御覧なさい。今でもこそこそと逃げ回ってる罪人たちの首がずらりと並んでおりやすぜ」
茶斑・三毛乃(化猫任侠・e04258)が語るのは、かくも眩き人の道。
「生きる糧に金が入り用である。その金欲しさに外道へ手を染める。しかしそんなことをした日にゃァ真っ当に表も歩けまい、仲間とつるむことも出来るまい」
寡黙、理性的な彼女の精神性を示すかのように、三毛乃の右目に燈る炎は刃傷の真中で静かに燃える。
「お前さん、手段と目的とが見事に入れ替わっちまっちゃァおりやせんか?」
捻るでもなく、奇を衒うでもなく滔々と。
人を殺すという手段のために願望と言う名の目的を選ばない。
どうやら大願天女の仕掛けはそういうものであるらしい。
「住む所を良いように計らってくれてもいる親類縁者も居るんでございやしょう。犯罪沙汰に及んだ日にゃァそうしたお優しい身内が泣きやすぜ」
青年は唸ったまま頭を抱えた。
「仮に、富める者から略奪を企て、殺し尽くしたら如何しますか? 今度は貧しき者から奪うのでしょうね」
柔らかな笑みを顔に貼り付けた霧島・絶奈(暗き獣・e04612)は、慇懃無礼とも呼べる丁寧さで鋭く青年を詰問する。
「金持ち云々は言い訳で本当は自分が富を得たいだけ。それの何処に『正義』があるのか、答えられるならば是非聞きたい所です」
青年は答えに窮する。
多少なら行動を正当化する方便を捻出出来るだろう。
だがそれは、正義と称するには程遠い陳腐な言い訳に過ぎない。
「それよりも先にすべきは収支管理でしょう。お金が有難いからこそ、経験もまた価値が出るのですよ」
「その通り!」
人一倍熱がこもった調子で声を上げたのはのはフィオ・エリアルド(ランビットガール・e21930)。
お金が無いと嘆く彼を見ると、どうも親近感が湧くというか逆に駄々こねるなと叱りつけたくなるというか微妙に他人事と言い切れない感があるというか。
兎も角。まずはこほんと咳払い。
「遊びに金使うなとは言う気はないです。付き合いだってあるし、勉強や仕事ばっかりじゃ窮屈で疲れます。遊べる時には遊んでリフレッシュする、大事だと思います」
「うーむ。今日日の女性は確りしてるなぁ」
青年がだらしないだけである。
「仕事や勉強、頑張ったからご褒美に遊ぶ。リフレッシュしたからまた頑張れる。こういうことだと思うんだ。何が言いたいかって、邪道な方法で集めたお金で遊んでも楽しいわけがないってことです! しっかり管理して節度を持ってしっかり遊ぶ、これが一番!」
「結局、真っ当こそがベストであると!?」
逸脱して、逆走して、ようやく元のスタートラインに戻って来た感がある。
「ええ、人が動くと書いて働くと申しますし、どうか働いてください。今日は社会復帰のお手伝いに参りました」
今度は脱線せぬようにと、辰乃は彼の背を正しい方向に押した。
「おまえは、金が欲しいそうですが、いざひとを殺めてごらんなさい、いくら手に入るでしょうか? ひとが持ち歩く額なんて大したことはない、金持ちならば尚の事」
それでもまごつく彼目掛け、短期的に見ても大した益は望めまいとメルカダンテ・ステンテレッロ(茨の王・e02283)は強く断じた。
「だったらカードを……」
「ほう。その見目で?」
「見目? 何を仰るお嬢さん。これでも身だしなみには気を……」
メルカダンテはリビングの端にあった土産物の手鏡を青年へ向ける。そこに映っていたのは、一羽のビルシャナ。鳥人間。
「その見目で金を得て何が出来るというのでしょう? おまえの好きだったものはなにひとつ楽しめないでしょうね。ひとを殺めた瞬間に、おまえはおまえの得た全てを失うのだ」
事ここに至って青年はようやく自身の変質に気付く。
そう。『なにひとつ楽しめない』。手羽の如き腕では人を殺せても指紋認証は開けない。
「金自体に価値はない。便利なモノではありますが。さあ、おまえにとっての金とはなんですか?」
「……キミが今からやろうとしていることの重大さを、もう一度ちゃんと考えてみてください。多分もう二度と同じ気持ちで青春なんて送れませんよ」
……今ならまだ間に合いますよ、とみのりは青年に決断を促す。
言葉を尽くす時間は終わった。後は彼次第だ。
「俺は……俺は……!」
不意に……青年の体は光に包まれる。
●悪銭身に付かず
「金は欲しいけど人を殺すなんてやっぱり嫌だぁ! そんな事する位ならもやしとパンの耳で我慢する!」
……端から見る限り、発光する体と青年の意思とがせめぎ合っているように見える。
だとしても、人の精神とデウスエクスの力、残念ながら最終的に勝るのは後者だろう。
そう予測した絶奈は仲間に最大限の警戒を促し、自身の眼前に魔法陣を多重展開する。
ばちん、と、雷にも似たような音を立て、青年の体を覆っていた光が爆ぜた。
そこより現れたビルシャナ目に生気はなく、どうやら、体だけが勝手に動いているらしい。
「……今此処に顕れ出でよ、生命の根源にして我が原点の至宝。かつて何処かの世界で在り得た可能性。『銀の雨の物語』が紡ぐ生命賛歌の力よ」
狂笑。青年を救けたいと願うのも本心だが、こちらもまた彼女の本質。絶奈は、『生命の根源』を思わせる巨大な『槍』の一部を召喚し、即座に攻勢へ転じた。
『槍』の一撃とテレビウムの凶器攻撃を受けたビルシャナは、まるでオートマチックに絶奈へ金色のオーラを撃ちだすが、その進路を三毛乃が割って遮り受け止める。
「荒事での解決が望みとあらば、受けて立って見せやしょう。さあさ、我慢比べといきますか」
盾となった三毛乃は呻き声一つ漏らさず、涼しい顔で右手の縛霊手から大量の紙兵を前衛に散布した。
「お金が欲しい……そのぐらいの願い、学生なら誰でも経験すると思うのですが、そこに付け入って洗脳ですか……結構怖いビルシャナですね」
吹雪く紙兵をかき分けて、みのりが一閃、雷槍を見舞う。
槍より伝わる感触は酷く『脆い』。すでに消耗しているかのような……。
青年が限界まで抗っていたからかもしれない。
「ビルシャナって色んな欲望に取り付くんだよね。ビルシャナ同士で取り付きあってれば平和なのになー」
厄介ごとなら他所でやってほしいが、彼らとしてもそうはいくまい。
故に。
「よーし!世のため人のため、今日もバリバリいっくよー!」
飛燕が掛け声とともにパチンと指を鳴らせば、突如としてビルシャナは火に塗れ、続くシャーマンズゴーストは炎ごとビルシャナの霊魂を切り裂いた。
「まったく。油汚れよりよほど頑固そうだ。これはちょっとばかり手間かな。さあバケットくん、一緒に頑張ろうか!」
シララのボクスドラゴン・バケットくんは元気よくバケツから飛び出すと、シララが生み出したマジックミサイルの射出に合わせてブレスを噴き、主従の攻撃は重なり合って敵へ降り注ぐ。
「既に問答無用と言うのなら切り伏せます。えぇ切り伏せますとも」
矢の雨の終わり、鍛えなおした日本刀を握りしめ、フィオは神速の勢いで突きを放つ。
「貴方を救いたいと思うのは傲慢なのでしょう。ですが、未来を作ることこそ私達ケルベロスの責務……!」
そのためならば少しばかりの傲慢を、齧ってみるのも悪くない。
辰乃は刺突で怯んだ鳥の足を流星の如き蹴撃で縫い止めて、棗がその隙に三毛乃を癒す。
「無辜の民を唆し、駄目と分かれば意思まで奪う……!」
青年に一つ灸を据えるつもりでいたが、大願天女のやり方に、そんな気持ちも消え失せた。
メルカダンテが最も忌み嫌うものを眼前で見せつけられてはそうもなろう。
だから、彼女の御業が孕むは業火の色。
顕現した熾炎は即座にビルシャナを焼き捨てた。
●金言
容易い。青年から意識を奪ったあの光は、よほど強引な手段だったと見える。
青年の願いは霧散した。後に残るのは天女の『目標』のみ。
ならば、自分も彼の救出とデウスエクス討伐を『目標』として尽力しようと誓い、絶奈は前列の疲労を薬液の雨で取り除く。
「おいで、雷獣。今日の遊び相手は、あの人ですよ」
みのりが召喚した寂しがり屋の雷獣は雨を浴びて嬉しそうに跳ね回ると、気持ち周囲に雷を飛ばさないよう配慮して、それでも勢いよくビルシャナにぶつかる。
意思無き鳥はよろめきながら金槌を振り上げるが、
「猫の目にゃァ止まって見えやすぜ」
三毛乃の銃技がそれを許さない。左に握るリボルバーが火を噴いた刹那、腕を射抜き槌が舞い、弾け飛んだ槌が地に転がるよりも僅か早く、飛燕は鋼拳を鳩尾に叩きこむ。
「あわあわで綺麗になーれっ!」
シララが不思議なスプレーボトルから特製のバブルを敵の足元に吹き付け動きを封じると、即座辰乃はナイフを疾らせ、ビルシャナの全身を凍気で埋め尽くす。
「無理はせず、辰乃」
続けてメルカダンテが日本刀・威光を振るい生まれた凍結弾が絶対零度を齎して、
「フィオ、踊って見せてください」
全てをフィオに繋げた。
そして首狩り兎は血煙で紅い霧夜を作り上げ、跳ねる。
即ち、終局の跳躍。
「……とゆーかですよ! 私だってスノボーにだって行きたいしソシャゲの課金もしたいしバイクだって新車に買い替えたいのに我慢してるんですよー!!」
根が真面目ゆえの、魂の咆哮だった。
青年はケルベロス達に弱々しく謝意を述べると、仰向けに倒れ込んだ。
体に大事は無いが、丸一日はこの調子だろう。
やっぱり真っ当が一番か、と小さく呟く。
「ええ。前を向いて歩けば、誰かは必ず見ていてくださいますから」
辰乃がそう微笑むと、青年は幽かに頷いた。
「得がたい経験と金銭を欲するならば、私の旅団で雑用でもしませんか?」
絶奈が青年を勧誘する。複雑な応答が出来る様子ではなかったので、連絡先をメモに残しておくことにした。
「いっぱいバイトして、いっぱい使えばいいんだよ! でも、浪費癖は治したほうがもっといいかもね! お金が欲しいなら働けー!」
飛燕は屈託のない笑顔でそう助言した。
「わたしも一杯遊んで、思い出たくさん作りたいなー。その時はシャーマンズゴーストくんも一緒だよ!」
ふと、ケルベロス達は彼の集めた土産物に目を落とす。
思い出に少々幻想が混じってしまったのは、ご愛嬌。
作者:長谷部兼光 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年1月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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