財力こそチカラ

作者:沙羅衝

「私達は地下でアイドル活動をしておりました。ですが、もう少し活動の幅を広げたく、お願いにあがりました」
「歌は勿論、ダンスも得意です。少しの楽器もできます!」
 ここは都心部のとあるマンションの最上階。近くにオフィスがあるこの地域は、夜となった今でも喧騒が止むことはない。
 必死に自分を売り込もうとしているのは、藤崎・マリと妹のエリ。彼女等は、アイドルの卵である。ある程度のファンは出来たがそれまでだった。それは彼女達自身だけでは、どうしようもない力の壁があると考えたからだった。
 彼女達の目の前には、大きなソファにもたれかかり、グラスに注がれたウィスキーをあおる恰幅の良い男性の姿。
 大手芸能プロダクションの社長である、桜庭・銀二だ。彼はグラスをテーブルに置き、彼女達を一瞥する。
「……有名になりたい、売れたい、という所かな? だが、サンプルを聞かせてもらったが、足りない所がある」
 銀二は値踏みをするような目つきを隠そうともしない。
「それは一体……?」
 マリが尋ねる。自分でも分からない事こそが、次に繋がると考えているからだ。銀二はグラスに液体を継ぎ足しながら、口を開いた。
「脱げ」
 二人は何を言われたのか、よく分からない表情で互いに顔を見合わせる。
「どういう……」
 カンッ!
 銀二は再びグラスを一気にあおり、それをテーブルに勢いよく叩き付け、静かに言う。
「今ここで服を脱げ、と言ったんだ。いいか、世の中売れようと思うなら、力が必要だ。それを見てやる。金を生む為のな。オレは何処の業界とも繋がりがある。オレが投資をする以上、オレに利が無いと意味が無い。分かるな?」
「マリ姉……」
 動揺するエリがマリを見る。
「……それは、出来ません。失礼します!」
 マリはそういうと、玄関に向かってエリと共に歩き出した。
 バタン……。
「ふん……。世の中金だ。オレの金にならんヤツは所詮それまで。財力こそ力なのだからな……」
 二人が出て行った玄関を見ることもせず、銀二はそう呟く。
「財力、良いじゃない」
 その時、一人の女性の声が聞こえてくる。
「誰だ!?」
 いつの間にか、銀二の目の前に緑のカッパーと呼ばれるシャイターンが現れていた。
「でも、その姿ではまだまだね。それっ」
 ぼうっ!
 すると、キラキラと金色に光る炎が、銀二を包む。
「いい事。その鎧は、貴女の財力の象徴。力が大きくなればなるほど、その鎧は光り輝くの。それを使いこなせた時、私が迎えにくるわ。じゃあね……」
 彼女がそう言って消えると、座っていたソファが、彼の身体の重みでつぶれ、引き裂かれた。
「……面白い。手始めに先程の女をオレの力にしてやるか」
 エインヘリアルと化した銀二は、そう言って玄関ではなく、夜景が見える窓から飛び出したのだった。

「有名なシャイターン達が動いているんは知ってるかな?」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が、ケルベロス達に話しかけていた。彼女が言うシャイターンとは、『炎彩使い』と呼ばれるシャイターンのことだった。
「彼女達はな、死者の泉の力で、その炎で燃やし尽くした男性を、その場でエインヘリアルにする事ができるみたいやねん。この力で生まれるエインヘリアルは、まだグラビティ・チェインが枯渇している状態みたいやねんけど、人間を殺して奪おうとしとる。急いで現場に行ってこのエインヘリアルを撃破して欲しい」
 頷くケルベロス達に、絹は頷き返す。
「今回エインヘリアルになってしもたんは、大手芸能プロダクションの社長さんである、桜庭・銀二さん。彼については色々と悪い噂もあるけど、敏腕であることは確かでな、えらい荒稼ぎしとったみたいや。その彼がマンションの最上階から地上に飛び降りてくる。その後、どうやらこの時に面接をしてた二人の女の子、藤崎・マリちゃんとエリちゃんが襲われる。今から急行すれば、彼女達の命を救えるから、頑張ってな」
 絹がそう言うと、一人のケルベロスが敵の特徴を尋ねた。
「現れるエインヘリアルは、彼一人になるわ。シャイターンもどっか消えてしもてるから、これ以上被害が出る前に叩く。これが仕事になるな。金ぴかの鎧を装着してるからすぐに分かるやろ。武器はバトルオーラやけど、特にその鎧を砕く事が必要な作戦になるやろ。情報によると、これだけは相当硬いみたいやしな」
 絹がそういうと、気合の声を上げるケルベロス達。
「あと、残念やけどエインヘリアルになってしもた桜庭さんは、もうどうしようもあらへん。このマリちゃんとエリちゃんは救える命や。彼女達は地下アイドルをやっているわけやけど、前向きなええ子達や。頼んだで!」


参加者
ヒナタ・イクスェス(世界一シリアスが似合わない漢・e08816)
暮葉・守人(墓守の銀妖犬・e12145)
神居・雪(はぐれ狼・e22011)
如月・環(プライドバウト・e29408)
浜本・英世(ドクター風・e34862)
御苑・由比(キャスパリーグ・e42479)
ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)

■リプレイ

●二人の少女と1体のエインヘリアル
「桜庭……さん!?」
「うそ!?」
 マリとエリは帰宅するはずが、いきなり目の前に現れた巨大な人影に、腰を抜かし動けなくなっていた。
「ククク……。良い考えがあってな。お前たちが、オレの力になれる方法だ……」
 銀二はそう言って、二人にゆっくりと近づいていく。そして、右の拳が光を放っていく。
「やめて! エリ……下がって」
「マリ姉」
 マリがエリを遮るように、銀二と対峙するが、膝の震えは止まらない。
「死ね」
 銀二はこれから自らに起こる力の増幅を想像したのか、口角をあげて拳を握り締めた。
『馬鹿の寝言は聞き飽きた…』
 ドドドド……。
 そこへ、魔法弾が打ち込まれていく。ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)である。銀二はそのグラビティを背中から受け、構えた。
「ち……誰だ?」
「くぁ、そこな姉妹の見事な心意気! こ~れは将来大成しそうなにおいのオチね~」
 赤いペンぐるみに身を包んだヒナタ・イクスェス(世界一シリアスが似合わない漢・e08816)が嗤いを表情に浮かべ、簒奪者の鎌を構える。同時にテレビウムの『ぽんこつ一号』が後方に下がる。それを確認したヒナタが銀二に突進する。
「ファ~~~。悪趣味なオチね~~!」
 ヒナタは目の前の黄金の鎧をみて、また嗤い、すれ違い様に肘からドリルを打ち込む。
 がぎぎぎぎぎい!!
 その鎧にドリルの先端が刻まれ、火花を散らす。
「邪魔を、するな!」
 銀二はその攻撃を受けつつ、拳をヒナタに打ち付ける。
 ゴス!
 鈍い音を上げながら吹き飛ばされるヒナタ。そしてマリとエリを視界に捕らえる。
「やらせねぇよ!! 即席エインヘリアルに後れを取るかよ!!」
「見た目も中身も、品のねぇやろうだな!」
 立て続けに暮葉・守人(墓守の銀妖犬・e12145)とライドキャリバーの『イペタム』に搭乗した神居・雪(はぐれ狼・e22011)が飛び込んでいく。守人はキープアウトテープを現場近くに貼った後、急ぎ駆けつけたのだ。
 守人の近接戦闘に特化した無骨なガンブレード『Belzebuth』から鋭い突きが放たれ、イペタムの激しいスピンと同時に飛び上がる雪。そのまま美しい虹を描きながら、急降下蹴りを放つ。
「……コイツら!」
 銀二はその攻撃を受け流し、明らかな苛立ちの表情を浮かべた。すると、彼の光る鎧にウイルスカプセルが投げつけられ、カプセルが炸裂する。
 ドウッ!
 鈍い音を上げ、煙のようにウィルスが銀二の身体を覆う。
「ベルローズさん、お願いします。
 そのウィルスを放った浜本・英世(ドクター風・e34862)がベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)に向く。
「分かりました。では……」
 ウィズローブに身を纏ったベルローズが英世に頷き、体中から殺気を放っていく。その結果、少しこの場所に集まりかけていた一般人が離れていく所が確認できた。
「金ピカたぁ趣味が悪いな! その眩さの一欠けらでも性格に光があれば少しはマシなんだろうけど、な!」
 如月・環(プライドバウト・e29408)がウイングキャットの『シハン』と共に最前線に駆けつけ、これ以上先に進ませないと陣取る。
「俺らも煌いていくぜ、ファイヤーッ!」
 環は爆破スイッチを押し、背後に爆発を起こす。
「ええと……ち、力尽くとかよくないとぉ~~……ひぅっ!?」
 御苑・由比(キャスパリーグ・e42479)が銀二に向かい精一杯の声を出す。だが、ギロリと睨まれ、黙ってしまう。
(「エインヘリアルにされちゃったのは、少しかわいそうですけど……。でも、こうなったら仕方ありませんから……こ、ここで倒してとめないとっ」)
 由比はそう思い、何とか心を強く持つ。ヒールドローンを展開しながらマリとエリにの傍に腰を下ろす。彼女達は事の展開についていけていないようだったが、彼女の懸命な言葉が伝わったのだろう。頷き、立ち上がった。
「さあ、お二人ともっ。お、お分かりかと思いますがケルベロス、です! ここは、わたし達に任せてっ!」

●思想
「都心部の真ん中か、スピード勝負だな……」
 守人が、チェーンソー剣の激しいモーター音を、銀二にぶつける。
 ガギギギ!!!!
 それを銀二は受け止め、そして振り払う。
「あの二人、ちゃんと逃げ切れただろうな……」
 雪はマリとエリが駆けて行った先を確認し、狼の拳を獣化させ、殴りかかった。
 ケルベロス達は攻撃を繰り返して、銀二に迫っていっていた。だが、大きなダメージは与える事ができないでいた。銀二の鎧はケルベロス達の攻撃を弾き、そして彼が力を籠める度にその輝きを取り戻していったのだ。
「しっかし社長さん。女の子を喰いモンにするたあ、ずいぶんと趣味が悪いんだな。ハッキリ言って、意地汚いってもんだ。自分さえ良ければ良いのかい?」
 環が状況を見ながら問いかける。
「お、お金で云う事聞かなかったからぁ……って、そ、そういうのはよくない……です……っ!」
 由比も反論を唱え、応戦する。そして、更にヒールドローンを展開していった。
「はっ……何かと思えば。そういえば、お前たちはケルベロスだったか。お前たちからすれば、権力は簡単に手に入るだろうに……。
 いやあ、オレから言わせて貰えば、ゴクロウサンとしか言い様がないな……。力のある者が、わざわざ無い者に命をかける。全く、人が良い……くっくっく」
 銀二はそう言って嗤う。完全な嘲笑だ。
「聞き捨て、ならんな。俺は様々な人の生きる形を見てきた。お前も『自分の幸福の為に他人の不幸を願う』人間だったのか?」
 ピクリと反応するヴォルフ。その瞳に殺気が宿っていく。
「勘違いするなよ。オレは幸福だとか不幸だとかなどは、全く興味がない。どうなろうが勝手にすれば良い。ただ……だ。自分の力が社会にとっての何になるのかは、考えたほうが、良い方向に進むということだ。さっきの二人は、今のままでは、金に結びつかないと判断したのだ。
 力、イコール金だ。金を生み出す為の能力、お前たちの様な力を持つことが出来なかった人間、それを持たない者にとってこの社会は生き難い。そうは思わんかね。
 その力の無い者に、金を生むという力を与えるのがオレの仕事なんだ。生きる力を持たない者に金という力を与える。何が悪い? オレはそれが出来る。それが、オレの力だ! いいか、財力こそ力なのだ!」
 銀二はそう言って、ヴォルフを殴りつける。
 ドグッ!
 鈍い音を立て、環がそれを受ける。そこに再び英世がウィルスを投射する。
「まあ、生前の行いの良し悪しは置いておこう。人の罪を裁く権利もつもりも、私にはない。だが、もう人で無くなってしまったのなら、遠慮なく裁かせて頂くよ」
 再び英世がウィルスを投射する。
「エインヘリアルに選定された方も被害者とは思いましたが、所詮は相応の下衆だったと。
 まあ、その方が思いっきりやれるので……こちらはやりやすいですけど」
 ベルローズがネクロオーブで水晶の炎を作り出す。
 ボウッ!
 その炎が、鎧をまた傷つける。そしてヒナタが嗤いを返すように言葉を投げつけた。
「正にザ・成金。も~まんま過ぎて笑えるのオチよ♪ それに、あの姉妹はきっと大成する。それも見抜けないようじゃ、社長サンもまだまだのオチね~」

 ケルベロス達は、徐々にその金の鎧の防御力を削いで行った。流石にその防御の力は強く、彼の言う力という物を感じた。しかし、ケルベロス達の攻撃、特に英世の放ったウィルスの力が、その輝きを封じ込めていったのだ。
 少し人数が多かった為に由比のヒールドローンの展開は遅れたが、ケルベロス達は怯む事無く時間をかけた。
 そして、銀二の攻撃の力である、その金の鎧の輝きは、徐々に弱くなっていったのだった。

●自分達の力、そして
「さて、自慢の鎧もボロボロだ。外してしまってはどうかね?」
 英世がそう言って、メスなどの医療用刃物を周囲に召喚しながら言う。
「……何故そこまで、財力も無くただ弱いものを護る? タダの変態か?」
 銀二はその自分の状況を把握しつつも、その考えを曲げるつもりは無いようだ。
「さあ? 他皆の事は知らないが、私はそれなりに目的はあるつもりだよ」
 英世の手が宙を操作し、刃物を動かす。
『とりあえず開いてみようか――元に戻せはしないけれどね』
 ガガガガガ!!
 その刃物が銀二の鎧の継ぎ目に突き刺さっていく。
「え、援護しましゅ……っ」
「あ、噛んだのオチ?」
「……し、しますぅっ!」
 由比にこっそり突っ込むヒナタが『嗤い』では無く、『笑い』を投げかける。言い直した由比がフェアリーブーツから星型のオーラを蹴り込む。すると、英世の刃物が突き刺さった隙間から、漏れ出るように漆黒の腕が這い出てきた。
「あらあら、あなたが食い物にした娘が混じってるかもしれませんよ」
 ベルローズが呟く。それは、惨劇の記憶。
『怨嗟に縛られし嘆きの御霊達よ。ここに集いて、我が敵を貪るがいい!』』
 ベルローズが呼び出した腕から、娘達の金切り声が聞こえ、銀二の行動を阻害していく。
「もうテメェを守ってくれるものはねぇぜ。それとも、財力ってやつで守ってみるか?」
 イペタムが炎を纏って突撃すると、雪が神威弓『クー』からエネルギーの矢を鋭く放つ。
「その悪趣味な鎧を剥ぎ取ってやるよ!!」
 守人が神速の突きで銀二の鎧に刃を差し込み、そこで鋸を回転させる。
 バチバチバチッ!
 激しく火花を散らし、その鎧が吹き飛んでいく。
「ちょっと度が過ぎたな。色々と噂は聞いてきたけど、アナタはもう人ですらない。因果応報かもしれないな。それに、不幸な人を減らすのが俺の望みさ。そりゃ全部は無理だろうけどさ。それが、俺の力。大切な人たちを守れる力、それがあればいい」
「……理解、できんな」
 守人の言葉にそう返す銀二。
「良いよ。理解してもらいたいとも思ってないから」
 守人はそう言って、その刃を振るう。
『我一陣の風となる!!貫き穿ち切り払う暴風の斬撃!!』
 音速の斬撃が銀二を切り裂いていく。
「何度でも、言ってやる。財力こそが力、その事実に嘘はない」
 銀二はよろよろと立ち上がり、そして拳を目の前の環に叩き付ける。
 ガツッ!!
 しかし、その拳は易々と環の拳に止められる。ケルベロス達の傷が浅いのは、環とシハンが身を挺して仲間を護っていたからだ。
「自分の力は、誰かの為に使う。そう、決めたんっすよ。それに、シハンも感じてるみたいだぜ。胸糞ワリーってなああ!!」
 環はそう叫ぶと、シハンの尻尾にキャットリングを高速回転させる。
『カードオープンッ、俺が選ぶは炎の符ッ!命の炎よ、冷たき傷を溶かし癒せッ!』
 環の取り出したシャーマンズカードが烈火の炎を具現化し、シハンの傷を包み込む。そしてシハンがそのリングを飛ばし、銀二の両腕を一気に切りつけた。
「興味も尽きてきた。……終わりか」
 ヴォルフが大型の惨殺ナイフ『Lament』を振るう。その名称の意味『嘆き』が、何の意図も無く銀二を切り刻んだ。
「金……それが、力に、違いは、ない」
 うわごとを発する銀二。
「いや~笑った笑った。んじゃコレは……心ばかりのおひねりのオチ」
 ヒナタは超巨大なステキ兵装を左腕に装填していく。
『ヒナタさんの左腕に不明なユニットが接続されました』
 何処からとも無く、説明のナレーションが響き渡る。
「さ~有り難く、受け取って頂戴のオチね!」
 さらに強力なジェネレーターを追加するヒナタ。そして、先端から青白い火炎が噴出する。
『ファ~~総員退避~~~』
 赤いペンギンの着ぐるみを着たケルベロスは、そのまま炎をためらうこと無く銀二に突き刺した。
 銀二はその炎を胸に受け、炎に包まれる。それが、彼の最期となったのだった。

「有難う御座いました!」
「このご恩は一生忘れません!」
 ケルベロス達が気になっていたのだろうか、戦闘が終了すると、すぐに姉妹が現れていた。
「芸能界って、難しい世界……なのですね」
 由比はベルローズと共に壊れた箇所の修復を行った後、呟いた。
「芸能界とは恐ろしい所と聞いている。そこで上を目指すお嬢さん方も、荒稼ぎした桜庭氏も大したものだと思うが、志や魂と言った物は、失わずにいて貰いたいね。
 綺麗事では済まないのだろうけれど」
 英世は頷きながら、彼女達を見た。姉妹は雪に話しかけられていた。
「まだ、アイドルとして活動、するのか? 人生色々あるし、生き方だってそれだけじゃない……」
 雪の言葉に、顔を見合わせるマリとエリ。しかし、二人は首を横に振る。
「お気遣い有難う御座います。しかし、こんな世の中なのです。私達は皆さんを少しでも勇気付けたい。それが夢、なんです」
 マリの言葉は、はっきりとした意思であり、ケルベロス達はそれ以上アイドルを諦めるという言葉をかけることは出来なかった。
「そうか。じゃ、応援するっきゃ無いッス! ああ、でもどうやって……」
「少しでも手伝える事があるなら手伝うけど、正直どうすれば良いか……」
 環も守人もそう言って、頭をひねる。だが、そう簡単そうでもなかった。
「実は、俺の勤め先でイベントコンパニオンを募集しているんだが、もしよければ……」
「本当ですか!」
「是非!」
 ヴォルフがそう切り出すと、彼女達は即座にそう答えた。
「じゃあ、これを渡して置きます。いつでも連絡してくれて良いから」
 ヴォルフは二人にケルベロスカードを差し出した。すると、彼女達は嬉しそうに手を叩いて喜んだ。
「今度ライブする時は、教えてのオチね~。ワタシの見込みでは、キミ達は売れる、間違いないのオチよ♪」
 ヒナタの言葉は、彼女達にとって次に繋がる為の言葉となった。

 ヒナタはそう言ったが、姉妹のこれからは誰にも分からない。
 しかしそれは、ケルベロス達の明日も同じ。
 だが、それでも彼女達の信念は決して折れることは無いのだろう。
 ケルベロス達は、冬の夜空を見ながら、そう思ったのだった。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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