鉄壁の盾こそ最強の矛なり

作者:天木一

 凍えそうな程冷たい滝から水飛沫が散る中、足元に広がる川に素足で入り込み、剣道の道着を着込んだ男が円形の盾を構える。
「おおおおっ!」
 寒さを吹き飛ばすように気合を入れ、男は盾を滝に突っ込ませる。そして上に向けながら滝の下にその身を滑り込ませ、流れ落ちる滝に盾で耐え続ける。
「ぬぅおおおおおぅっ!」
 そして滝から飛び出すと、次は川から上がり木に向かって突進し、盾ごと体当たりするようにぶつかった。衝撃に木が揺れ、続けざまに盾を鈍器のようにぶつけて木を何度も揺らした。
「はぁ、はぁ、す~はぁ~……」
 盾の連打を止め肩で息をした男が深呼吸をして呼吸を整える。
「やはり盾を使いこなすには強靭な肉体が必要だな。どんな衝撃にもびくともしない体が盾の力を引き出す」
 ブォンと盾を振り抜き、重心を持っていかれないように腰を低くして木に叩き込む。
「盾は防具というだけではない、鈍器としての性質も持っている。極めれば攻防一体の武具としてあらゆる得物に打ち勝つことが出来るはずだ」
 枝の先端を刃物に見立て、盾をぶつけてそのままへし折った。その背後に音もなく幻武極が現れる。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
 その言葉が投げかけられると、男は闘争本能を極限まで高められ盾を向けて突っ込んで来る。
「おおおおおぅっ!」
 体重を乗せた盾の突進が顔に叩き込まれ、視界を塞いでいる間に横手に回り込みながら盾を側頭部に打ち込み、続けて腕を折る勢いで盾の縁をぶつける。そして最後に振り上げた盾を脳天に叩き込んだ。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 それだけの打撃を受けても傷一つ無く、幻武極は手にした鍵を男の胸に突き立てた。男は意識を失いそのばに昏倒する。そして代わりに現れたのは同じ顔に真っ黒の道着を着込んだドリームイーターだった。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
 幻武極がそう告げると、男は盾を木に叩き込む。すると盾の表面から棘が飛び出し木を穴だらけにし、さらに勢いが止まらず木をへし折った。
「盾こそ最強なり!」
 男は山の麓にある町に向かって駆け出した。
「盾を使った武術のドリームイーターが生まれるようじゃのう」
 一之瀬・白(八極龍拳・e31651)がドリームイーターの事件がまた起きるとケルベロス達に顔を向ける。
「ドリームイーターの幻武極が出現し、新たな武術の特訓をしている人を襲い自分に欠損している『武術』を奪いモザイクを晴らそうとしているようです」
 説明の続きをセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が始める。
「今回の武術ではモザイクは晴れません、ですが武術家のドリームイーターを生み出し人を襲い始めてしまうようなのです」
 生まれたドリームイーターは奪われた武術の理想像となっている。その戦闘力は人を超えケルベロスの力で持って倒すしかない。
「ドリームイーターは山の麓にある町に向かっています。町へ通じる道で待ち構え、敵を撃破してもらいたいのです」
 今ならば被害が出る前に敵を迎撃する事ができる。
「武術家ドリームイーターは黒い道着を着た20代の男性の姿で、直径30cm程の円形の盾を鈍器のように使って戦います。盾は自在に形を変えるようで、状況に応じた盾となり攻防一体の武器となっているようです」
 盾は小さくも大きくもなり、その時に適したものになって固い守りと強力な攻撃を共存させる。
「現れるのは愛知県にある山道です。敵の通る道は判明しています。すでに避難も始まっているので、周囲の被害を気にする必要もありません」
 到着時には道は警察に通行止めされ一般人が通る事は無い。
「ドリームイーターはその極めた武術を見せたくて仕方ないようです。ですので戦いを挑めば喜んで受け逃げる事もありません。敵の武術を打ち破り町の平和を守ってください」
 よろしくお願いしますとセリカは一礼し、ヘリオンへと向かった。
「盾を武器とする武術とはのう。どのような術理を使うのか、その守りを打ち破ってみせるとするかのう」
 白が盾を使う武芸を思い浮かべながらセリカを追うと、ケルベロス達も新たな武芸との戦いに心躍らせながら動き出した。


参加者
一条・雄太(一条ノックダウン・e02180)
ウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756)
山蘭・辛夷(ネイキッドアームズ・e23513)
クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)
黒岩・白(すーぱーぽりす・e28474)
一之瀬・白(八極龍拳・e31651)
神苑・紫姫(断章取義の吸血鬼伝説・e36718)

■リプレイ

●山道
 山へと続く道で町を背にしながらケルベロス達が待ち構える。
「防御は最大の攻撃かぁ。わからんでもないけど、俺はその逆のほうが好みだぜ」
 こっちの方が好みだと一条・雄太(一条ノックダウン・e02180)はオープンフィンガーグローブを嵌めた拳を掌にぶつけて打ち鳴らす。
「偵察をお願いするっスよ!」
 黒岩・白(すーぱーぽりす・e28474)がツバメの精霊・ルミナとシロフクロウの精霊・カムイを空に飛ばす。
「こんな寒い中、外で修行するなんて大変だね」
 白い息を吐いたウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756)は寒そうにマフラーを口元まで上げる。
「お師匠はディフェンダーをお願いね」
 クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)が声を掛けると、オルトロスのお師匠が任せてと尻尾を振った。
「守りは任せるぞ。相手も守りが得意だそうだ、ならばこちらは搦手でゆこうか」
 レッドレーク・レッドレッド(赤熊手・e04650)はお師匠の頭を撫でてやる。
「鉄壁の盾だって一枚岩じゃあない、どこかに絶対隙間があるものさ。特に多機能な物ほど弱点は多いものだ」
 そして一点でも突破口があれば破れるものだと、山蘭・辛夷(ネイキッドアームズ・e23513)はキセルを銜え煙を立ち昇らせた。
「今回は多くの友との共闘。心強いな」
 一之瀬・白(八極龍拳・e31651)が親しき友を見渡し、自然と緩みそうになる表情を引き締める。
「見えましたのっ」
 目を細めた神苑・紫姫(断章取義の吸血鬼伝説・e36718)が道の先に現れた道着姿の男を確認する。手に円形の盾を持ったドリームイーターの戦士が駆けて来る。

●盾の戦士
「正面切って来るのですから、正面切って受けて立たない理由もないでしょう。なにより退いては私、吸血鬼シキの名折れ。いざ、正々堂々と勝負、ですの」
 近づく前に紫姫が鳥型のスライムを放ち敵の肩を爪で削った。ビハインドのステラも何本ものナイフを飛ばし足に突き立てた。その言葉とは裏腹な戦法に皆の視線が向けられる。
「……え? 正々堂々にしては距離が遠い? 当たり前じゃないですかそういう戦法なんですから」
 しれっとした顔で言い切った。
「立ちはだかる者は、この最強の盾で突破する!」
 盾を構えた戦士が突進してくる。
「だったら盾ごとぶっ飛ばす!!」
 正面から雄太は全力で拳を盾に叩き込むと、硬い感触と反動が拳に伝わり血が滲む。
「っ痛ぇ……! さすが伊達に盾使いってわけじゃないな」
 雄太は飛び退いて盾による反撃を避け、骨に異常がないか確認しながら傷の無い盾を見た。
「まずはフォロー役の強化をしておくね」
 魔法で木の葉を生み出したクローネは、レッドレークと辛夷を順番に纏わせて周囲に溶け込むような保護色へと変える。
「バックアップは私達に任せて、皆は戦いに集中するといいさ」
 辛夷は紙兵を仲間の周りに撒き散らし、敵の動きを妨害するように展開させた。
「百火、皆の手助けを!」
 一之瀬が指示を出すと、ビハインドの一之瀬・百火は両腕に纏った鎖を無数に伸ばし敵の四肢を拘束する。そこへ霊魂を集めた一之瀬は巨大な戦斧として手刀に纏わせ振り下ろす。刃は広がった盾で受け止められるが魂魄が浸透して手に痺れを残す。
「盾を武器にしてしまうとは考えたな! アグレッシブに守りそして攻めて行くスタイル、俺様は嫌いではないぞ」
 レッドレークは赤蔦の攻性植物を茂らせ実を生らせる。それは光を放って仲間達を包みその身を進化させた。
「きっとそれも極めれば、一つの立派な武芸になるのだろう。貴様を世に放つワケにはいかないが、その技存分に我々に見せてみるが良いぞ!」
「ならば見せてやる、最強の盾術というものを!」
 尊大に言い放つレッドレークに、戦士が突っ込んで来ると、お師匠は銜えた剣を盾とぶつけ合って牽制する。
「悪いけれど、ここは通行止め。そして――懺悔の時間だ」
 ウェインは全身のリミッターを解除し銀色の粒子を纏い高速で接近する。青白い十字架が敵に幾つも浮かび上がり、加速して矢のように飛び、ほぼ同時に全ての十字架を的に全方向から飛び蹴りを放ち、怒涛の連続攻撃が敵を撥ね飛ばした。
「盾とは、仲間や力無きものを守るためのもの。自分の身を守り、攻めるために使うだけならそれは盾とは言えない」
 正面に立った黒岩は敵と視線を合わせる。
「さぁ、本物の『盾』見せてやるっスよ!」
 そしてコインを弾くと空中で象の頭部を模した大型の盾となり、キャッチして敵に向けて構えた。
「本物だと? 笑わせるな!」
 戦士の盾に棘が生まれ、叩きつけて盾と盾がぶつかり合い、黒岩の体が撥ね飛ばされる。
「硬いならぶっ壊れるまで攻撃すればいいだけだ」
 雄太はグラビティの力を込めて敵の盾を見る。すると爆発が起こり敵の仰け反らせた。
「隙を見せたな! いくら盾を持っていようと、全ての攻撃は防げまい!」
 レッドレークはドス赤い無骨な農業用レーキを振り抜き、敵の腹に突き刺して傷口を凍りつかせた。
「矛盾をここで証明しよう」
 オーラを纏っだウェインは、音を置き去りにするような速度で拳を放ち、防ごうとする盾より速く胸を打ち抜いた。
「攻撃は最大の防御、なんて言葉を聞いた事はあるけど。防御を最大の攻撃にする、と言う発想は斬新で面白いと思うよ」
 跳躍したクローネは足に星型のオーラを纏わせて盾を蹴りつけ、キラキラと飛び散る星の輝きが盾の表面を削った。
「……でも。彼が日々努力して磨き続けてきた武術を、自分のモザイクを晴らす為だけに奪うドリームイーターのやり方は気に入らない。その武術はきちんと、あるべき人の所へ返さないとね」
「この武は俺のものだ!」
 反動で距離を取って着地したクローネに敵は棘盾を前に突進してくる。
「どれだけ鉄壁だろうと、盾が一つしかないのならやりようはあるものさ」
 纏うメタルから辛夷はオウガ粒子を放出し、仲間達の傷を癒し超感覚を目覚めさせる。
「盾である僕の相手を先にしてもらうっスよ!」
 黒岩は盾に飛び蹴りを浴びせて着地して盾を向け、視界の外からオルトロスのマーブルが銜えた剣で足首を切りつけ駆け抜けた。
「盾は自身のみならず、後ろの仲間達を守る為に構えるべきもの。己が身しか守れぬ貴様に、その技は勿体無い……!」
 一之瀬は小太刀を抜き打ち盾に斬りつける。
「そんな程度の生温い盾……余達が両断し、微塵に破壊してくれよう! その技、早々に元の主に還すが良いのじゃ!」
 そして剣を押し斬り盾の傷をつけた。
「鉄壁とはこういう事だ!」
 盾が身を隠す程のタワー型となり傷が癒える。
「外側ばかり硬くとも……伝達するこの技には関係無い!」
 地が震えるほど強く踏み込んだ一之瀬は拳を盾にぶつける。すると勁が腕から伝わり敵を吹き飛ばして尻餅をつかせた。
「私と我が眷族の変幻自在の刃、その御自慢の盾だけで凌ぎきれるかしら?」
 ステラがナイフで気を引いている間に、紫姫は霞の中から取り出した糸で敵を絡めると、凍りつかせて動きを鈍らせてゆく。
 懲りずに雄太はもう一度盾の上から拳を打ち込む。拳は盾に止められたが、降魔の力が盾越しに生命力を吸い上げた。
「こいつは盾じゃ防げないだろ?」
 ニヤリと笑い雄太は盾を押して敵を後退させた。
「春の訪れを告げる、豊穣の風。穏やかで優しい西風の王よ。我等に、花と虹の祝福を授けたまえ」
 クローネの背後から春の暖かいそよ風が吹き抜け、仲間達を花の香りが包み眠れる力を呼び覚ます。
「防げるものなら、防いでみるが良いぞ!」
 地面に手をつけたレッドレークは、静かに這わせていた植物の蔓を無数の針の如く変化させ、敵の足を貫き毒を注入して神経を麻痺させる。
「これが本物の盾っス! しっかり堪能するっスよ!」
 黒岩が象盾を向けると象の鼻が敵に巻き付き、拘束したところへ牙で胴を貫いた。
「こんな盾があったとは!」
 戦士は盾の棘を伸ばして黒岩の脚に突き刺す。横から紫姫が右手でスライムを槍に変えて突き入れるが、敵の盾に受け流される。
「そう易々と行かないのは承知の上ですわ」
 槍を手放しながら屈んだステラは左手に持った剣のようなペーパーナイフで脚を斬りつけた。
「そこに在る限り終わりは存在する。この世界に破れない『障害』は、ない」
 ウェインは真っ直ぐに盾の上から拳を放つ。その一撃が盾に弾かれるとすぐに横に体を入れ回し蹴りを放って後頭部を刈るように蹴る。だが敵も盾を脚に当てて棘を刺した。
「確実にダメージは蓄積しているねぇ、この調子で続ければやがて音を上げるよ」
 辛夷はオウガ粒子の放出を続け、仲間達の感覚を高める事で攻撃能力を高めていく。
「己が身を守るだけの盾に、何が守れるというのか!」
 一之瀬は肩からぶつかるように盾に衝突し、地を蹴る力と体重を合わせ敵の体を吹き飛ばした。

●無敵の盾
「盾こそ最強なり! それを証明する為にもここで負けられぬ!」
 力強く戦士は立ち上がり盾を分厚く硬くして構える。
「おい」
 声を掛けながら雄太は敵の眼前で爆発を起こして視界を塞ぐ。
「盾で視界を塞いでしまうのが欠点だ!!」
 その間に背後に回って右手を掴み、勢いよく振り向かせると、迎えるように飛び膝蹴りを顔面に叩き込んだ。
「私にとって、その盾を穿つよりは、その躰を直接穿つ方が容易い」
 紫姫は左手で紐を操り盾に巻き付け引っ張る。
「だって私は吸血鬼。巧みに躰を穿ち、鮮血を散らし喰らうのが我が生業、ですから」
 そして右手のペーパーナイフで敵の腕を斬りつけた。続けてレッドレークが殴ろうとするが、カウンターで盾が顔に叩きつけられる。
「その程度、俺様には盾などなくとも強靭な身体があるからな!」
 踏み留まったレッドレークは、お返しに拳で敵の顔をぶち抜いた。
「大丈夫だよ、どんな怪我もすぐに治すから」
 クローネは寒さを和らげる優しいそよ風で仲間達を癒し集中力を高めていく。
「人の努力は、その人の物。横から掠め取って――っていうのはあまり好きじゃない」
 地を蹴り加速したウェインは跳躍して更に速度を上げた。
「返してもらうよ。その夢を」
 放つ飛び蹴りを敵は盾で受け止めるが、分身したかのようにウェインは四方から飛び蹴りを浴びせて滅多打ちにした。だが敵は腰を据えてじっと耐え攻撃が止んだ瞬間反撃に移る。
「そうはさせないっス!」
 黒岩が飛び蹴りを叩き込んで盾に当て攻撃を防いだ。マーブルは背後から炎を放ち、百火は緑の鎖を操り敵を縛る。
「これでも……食らえ!!」
 高く跳躍した一之瀬は盾を飛び越え、頭上から足の爪を伸ばして蹴りを放ち敵の頭部を切り裂いた。
「鉄壁の盾を穿つ最強の矛ってところさね、矛盾の陣とでも名付けようか」
 後方から仲間の立ち位置を確認した辛夷は、陣形に名をつけて破魔の力を与える。
「この程度で盾は砕けぬ!」
 顔を血で染めた戦士は盾を巨大化させた。
「その自慢の盾を、この拳でぶっ潰してやるぜ!」
 この一撃に全力を込めると、雄太は勢いをつけ真っ直ぐに拳を放つ。渾身の一撃は盾をひしゃげて亀裂を入れた。
「その鉄壁、ここで破らせてもらうよ」
 追い打ちにウェインが拳を叩き込み、亀裂が広がるとバキンと盾が割れて半分近くが地面に落ちた。
「来ると分かっていても、この攻撃は防げまい!」
 レッドレークは張り巡らせた蔓を針山のように変化させ、足を串刺しにして縫い付けた。
「背後からの攻撃も防げないよね」
 気配を消したクローネは影のように背後に回り、背中を蹴りつけ地面に手をつけさせた。
「盾にはこういう使い方もあるっス!」
「何だと!?」
 黒岩は象の盾を投げつけ大きな耳の部分が刃のように驚く敵を切りつけた。
「これ以上長引かせないよ、回路コネクト、霹靂閃電ッ!」
 体内の回路を直結させた辛夷が激しい電圧を放つと、敵は割れた盾で器用に受け止める。だが電気が流れ神経をショートさせた。そこへステラが無数のナイフを放つと敵は大盾で弾く。
「その血を喰らってあげますわ」
 その間に背後に回った紫姫は槍で貫き腹から穂先を飛び出させた。止めと正面から一之瀬が拳を放つと割れた盾で敵が受け止める。
「盾こそが最強の武器なのだ!」
「割れた盾も見事に使うか、だがその技は貴様のものではない!」
 足を強く踏みしめた一之瀬は拳を捻じり込み、伝わる勁が体の内部から破壊して、戦士の姿は幻のように消え去った。

●盾を極める道
「助ていただいてありがとうございました」
 目覚めてから事件の話を聞いた男性は礼儀正しく頭を下げる。
「此度は災難ではあったが、夢喰いに狙われる程に技を磨いているということ、俺様も見習いたいものだ!」
 男に賛辞を送りレッドレークが励ます。
「――だめだな。俺には向いてない」
 雄太は落ちていた男性の盾を拾って振ってみたが、重心がぶれて腰の入らぬ一撃になっていた。
「だからこれを使いこなせるあんたを尊敬するよ。ケルベロスじゃないかもしれないけど、これならデウスエクスからだって守れるさ」
「はい!」
 盾を差し出しながら雄太が微笑むと、それを受け取った男も釣られたように笑みを浮かべ盾を手に持った。
「その夢を追い続ければ、きっと最強に近づけるよ」
 強くなりたければ努力を続けるしかないとウェインが語る。
「同じ盾使いとしてこれからも精進するっス!」
「おお! 盾の道を極めましょう!」
 自分も盾を使うと黒岩が言うと、どのような盾を使うのかと盾の話題で盛り上がる。
「攻防一体はいいセンスだが、武器に過信しすぎているねぇ。まぁ何事も経験だ。私としてもいい勉強になったよ」
 盾がどれほど実用的であっても、その考えに凝り固まっては強くなれないと辛夷が諭す。
「正々堂々とした勝負でしたわ。強くなったらいつでも勝負を受けますわよ」
「盾以外の事も学び、必ず強くなってみせます!」
 紫姫は挑発的な笑みを見せると、男は闘志が燃えてきたと盾を振るう。
「見事な技であった! だが盾は仲間を守る時こそ真価を発揮する。その背を任せられる友を見つけるといい!」
「守るべきもの……」
 そう言いながら一之瀬は仲間達を振り返る。その言葉に男は深く頷き、もう一度礼をすると町へと向かった。
「レッドもお疲れ様。……怪我、してない?」
「ああ、クローネのお蔭でな」
 これで事件解決だとホッと息をついたクローネがレッドレークの傍に寄ると、ストレートに感謝の言葉が返ってきた。
「それにしても、盾を武器にする武術か……武術の世界も、結構なんでもアリなのかな。そのうち、レーキを扱う熊手武術の使い手が現れたりするかもね?」
 照れを隠すようにクローネはレッドレークの持つ武器に視線を落とす。
 どんな武術家が現れようとも仲間と共に戦うなら敵ではないと、ケルベロス達も歩き出した。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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