成人式の花魁振袖ファッション許さん!

作者:秋津透

 静岡県静岡市。成人の日。
 県庁所在地としては日本最大の面積を誇るこの市では、市内のいくつもの施設で、それぞれ地域ごとの成人式を行っている。
 その中の某所、とある市民会館で成人式が行われている最中に、一台のワゴン車が乗り付けてきた。降りてきたのは、スーツ姿で火炎放射器を装備した妙に逞しい中年女性四人と、デウスエクス・ガンダーラこと鳥人間ビルシャナである。
「わてくしこそは、成人式の花魁振袖ファッション女子絶対許さない明王ざぁます! 花魁とは、江戸時代の遊女! 遊女とはすなわち売春婦! 成人になるにあたって、よりにもよって売春婦の格好を真似るとは、なななななな、なんという恥知らずにして、みだらふしだらウッキッキー! 絶対に許せない、天誅ざぁます!」
 甲高い声で喚き散らすと、ビルシャナは警備の職員を蹴散らして市民会館に突入。花魁振袖ファッションなのかろくに確かめもせずに、参列する和装姿の新成人女性に向け、孔雀の形の炎を叩きつける。更に、四人の中年女性……ビルシャナ信者たちが、一斉に火炎放射を開始する。
「ヒャッハー! ふしだら女どもは消毒ざぁます! 天誅!」
「きゃーっ!」
「何!? 何!? 何なの!?」
「誰か助けて! 人殺し!」
 嗚呼、成人式会場は、たちまち阿鼻叫喚の地獄図と化すのであった。

「成人式の花魁振袖ファッションねぇ……確かに起源を考えれば、どうかと思うところはあるけど、だからといって成人式焼き討ちはあんまりですよねぇ」
 歌河・邦絵(妖怪絵師・e44781)が額を抑えて溜息混じりに呟き、ヘリオライダーの高御倉・康が、深刻な表情で続ける。
「静岡県静岡市の成人式会場にビルシャナと四人の信者が乱入し、焼き討ち虐殺を行うという予知が得られました。ビルシャナは、えー、成人式の花魁振袖ファッション女子絶対許さない明王と名乗っていますが、花魁振袖ファッションの女性を選別して狙うわけではなく、その場にいる和装の女性に火炎グラビティを放って焼き殺してしまいます。放置はできませんが、かといって事前警告して成人式を中止した場合、ビルシャナがどこで暴れ出すか分らなくなり、阻止が不可能になってしまいます。ビルシャナ一味は車で会場に乗り付けてきますので、出現してから建物に突入するまでの間に阻止、殲滅するしかないと思います」
 そう言って、康はプロジェクターに地図と画像を出す。
「現場はここです。急行すれば、ビルシャナ一味が出現すると予知されている時間の三十分ほど前に到着できますが、デウスエクスの襲撃があるかもしれないと知られたら、式はすぐさま中止される可能性が高いので注意してください。ビルシャナのポジションはおそらくクラッシャー。火炎のグラビティを使うことが分っています。信者四人は「静岡の風紀紊乱を憂う会」という団体の幹部で、たぶんビルシャナもその団体のメンバーが変身したのでしょう。ビルシャナにたぶらかされているわけではなく、自分たちは正義の天誅を行っていると信じ込んでいるようなので、説得は非常に難しい上に、最悪、戦闘中にビルシャナ化する恐れもあります。手加減攻撃などで殺さずに気絶させることができればいいのですが、ビルシャナ化されるくらいなら……列攻撃で一掃した方が無難かもしれません。ポジションは、おそらくディフェンダーです」
 そう言って、康は首を左右に振る。
「どんな信念を持っていようと、デウスエクスと化してしまえば、それは悪です。まして、躊躇なく他人を虐殺しようなどとは、とんでもない。後味の悪い結果になるかもしれませんが、成人を迎える女性たちに被害が及ばないよう、しっかりと撃破をお願いします」


参加者
朔望・月(既朔・e03199)
アップル・ウィナー(キューティーバニー・e04569)
アテナ・エウリュアレ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16308)
ソフィア・フィアリス(黄鮫を刻め・e16957)
チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)
神無月・佐祐理(機械鎧の半身・e35450)
紅楼夢・紫月(オラトリオの妖剣士・e44322)
歌河・邦絵(妖怪絵師・e44781)

■リプレイ

●ビルシャナを待ちながら
「本日の成人式入場は、告知の通り十時に締め切られました。終了は十二時の予定です。成人式参加者と待ち合わせる方のための待機スペースを会場裏に用意していますが、近隣の方に迷惑にならないよう、気を付けてご使用ください。目に余る迷惑行為があった場合は、退去いただくことがあります、か」
 午前十一時にビルシャナと信者の乱入が予知されている、静岡市内のとある市民会館。午前十時半に現場に到着したケルベロスたちは、会館入口に立てられた告知の看板を見やった。
「んじゃまあ、とっとと待機スペースとやらへ行きますか」
 会館警備の職員が、けっこう険しい表情で近づいてくるのに気が付いたソフィア・フィアリス(黄鮫を刻め・e16957)が一同を促し、会館の裏手に回る。
 するとそこには、雑多な格好をした若者たちがたむろしていた。
「よう、あんたたち遅刻組かい? 中の誰かと待ち合わせてるんなら、お開き近くなってから来た方がいいぜ。ここで昼まで待つのは、けっこう寒いぞ」
 どてらに股引という服装の若い男が、声をかけてくる。
「あなた方は、新成人なのですか? 式に参加するつもりだったのに、間に合わずにここへ?」
 きちんと和服を着こんだアテナ・エウリュアレ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16308)が訊ねると、男は笑って手を振る。
「ちゃうちゃう。こんな格好で、式出る気はねぇよ。出ても、面白いこと何もないしな。式に出てるのは、金のかかった着物を見せたい女の子と、そういう子と付き合う羽目になった野郎だけさ」
「はぁ……」
 最近の成人式というのは、そういうものなのでしょうか、と、朔望・月(既朔・e03199)が複雑な表情をする。
 つまり、成人式に出ている女性たちは高価で見栄えのする振袖をきちんと着ている可能性が高く、ビルシャナ一味は本来ターゲットではない相手を早合点で虐殺しに来るわけですか、と、歌河・邦絵(妖怪絵師・e44781)が溜息をつく。
 一方、更に何人かの男たちが寄ってきて、中には下心ありげな声をかけてくる者もいる。
「よ、その着物、エロかっこいいね! イカしてるよ!」
「そう? やっぱりそー思う?」
 わーい、ほめられたー、と、チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)は素直に笑顔になるが、月と邦絵は複雑な表情、神無月・佐祐理(機械鎧の半身・e35450)はむしろ恥ずかしそうな表情になる。
(「ビルシャナ呼び寄せる為の着崩しなんだから、土壇場でやればよかったですかね。えっらく恥ずかしいんですけど~!」)
 そして、胸元開いたシスター服に和装の羽織という格好の紅楼夢・紫月(オラトリオの妖剣士・e44322)に声をかけようとした男が、ぎょっとした表情になる。
「あんた、その、目から血が……」
「あ、こすぷれよ、こすぷれ。どう、凝ってるやろ?」
 ひひ、と薄気味悪く笑い、紫月は左目から流れる鮮血を手で無雑作に拭い、ぺろりと舐める。これには、彼女に声をかけた男以外の連中も、思わずドン引く。
(「まア、ビルシャナ来る前に何か騒動になってもマズいデスカラ。ドン引いてもらうぐらいデ、ちょうどいいデスカネ?」)
 しかし、私もふしだら判定にひっかかるのデショウカ? と、バニー服(本人は戦闘用の強化服だと主張)をまとったアップル・ウィナー(キューティーバニー・e04569)が首を傾げた。

●説得、そして戦闘
 午前十時五十九分。表の方で車の音がした。
「行くわよ」
 ソフィアが告げ、チェリーとアップルが即座に駆け出す。続いてソフィア自身、アテナ、月、佐祐理と走り出し、紫月に続き走り去ろうとする邦絵に、男が訊ねる。
「どうしたんだ? いきなり?」
「デウスエクスの襲撃です。絶対に近づいてはいけません」
 厳しい口調で邦絵は言い放ち、あっけに取られている男たちを尻目に、会館の正面入口へと走る。
 既にそこには一台のワゴン車が乗り付けられており、妙に逞しい中年女性四人と鳥人間ビルシャナが降りてくる。
「みんな、急いで逃げて逃げてー! こわいデウスエクスが襲ってきたよー!」
 確かに警告ではあるが、あまり緊迫感のない口調で呼びかけ、チェリーがいち早くビルシャナたちの前に立ちふさがる。
「こら! 誰がこわいデウスエクスざますか!」
 ビルシャナが喚き、あんたに決まっとるやないか、と、紫月が突っ込む。
「わてくしこそは、成人式の花魁振袖ファッション女子絶対許さない明王ざぁます!」
「なんで許さないの? 花魁スタイル可愛いのに! さては肌を出すイコールえっちだと思ってるんでしょ!」
 負けじとばかりに、チェリーが叫ぶ。
「でもそれはあくまでキミの感性! こういうファッションをする人の感性では、肌の露出はかっこよくてかわいいものなんだよ! ほらボクも肩出してかっこかわいい!」
「黙れ黙れ黙るざます! この、みだらふしだら能天気女が!」
 更に喚きたてるビルシャナを、アップルが冷たい目で見やって告げる。
「花魁姿がみだらふしだら? 恥知らず全裸鳥に言う資格はナイ。羽毛は服ではナイ。風紀を憂うのなら、まず自らを正シナサイ」
 言い放つと、アップルは信者たちを見やって続ける。
「風紀紊乱は、猥褻行為だけではナイ。凶器準備集合罪を、知らないノデスカ? 火炎放射器を持ち出した時点で、モハヤ犯罪者。風紀を云々する資格などアリマセン!」
「だ、黙りなさい、みだらふしだらバニーガールが!」
 信者の一人がヒステリックに喚くと、ソフィアがずいと進み出る。
「『静岡の風紀紊乱を憂う会』だっけ? その会が、ふしだらな女性をヤマトナデシコへと正すため今まで何してきたか、教えてちょうだいよ。暴力なんて最終手段に手を伸ばしたんだから、それなりの活動をしてきたんでしょ?」
「いいえ。憂う会は、憂うばかりで何も行動しない! 私たちは、憂う会と袂を別った、静岡の風紀紊乱を糾す行動隊!」
 喚く信者に、ソフィアは露骨に溜息をつく。
「はあ? 何も行動せずに憂いていただけ? で、鳥の扇動に乗って、いきなり暴力行為? 救いようがないわね、あんた達は。自分達の思想を他人に受け入れられるように努力もせず、いきなり排斥しようとする。戦わずして敗北してるようなものよ!」
「うるさい、黙れ黙れ黙れ!」
 ビルシャナと信者は、声を揃えて喚きだす。そこへアテナが、困惑気味に告げる。
「あの……ファッションは、いつでも若い方々が作るもの……花魁調もただ先鋭的なのです。貴方たちも過去に、年長者達から、私や今現在の貴方たちが当たり前のようにしている格好が、みだらふしだらだと指摘されたとことありませんか?」
「そんなもん、あるわけないざます!」
 信者の一人が、吠えるように応じる。
「わてくしたちは、若い頃から質実剛健、風光明媚! 目上の方々から褒められる、清く正しく美しい服装で過ごしてきたざます!」
「……そのあげくが、火炎放射器しょったスーツ姿かぁ?」
 独善も、ここまでくると狂気やなぁ、と、紫月が呆れた声を出す。
 そしてアテナは、困った様子で続ける。
「年配の方々であれば、暴力で解決しようとはせず、この成人の日の晴れの舞台に、後悔しないかどうかを指摘し諭してあげるのが本当ではないでしょうか?」
「黙れ! そんな生ぬるいことを言ってるから、どんどん風紀が悪くなるざぁます!」
 別の信者が決めつけ、アテナは溜息をつく。
 続いて月が、説得にかかる。
「花魁の衣装は、背景を考えれば確かにふしだらなのでしょう。けれどその歴史や衣装の違いなども、しっかりと学んだ上で意を唱えるべきだと思います。偏見に満ちた物言いに無差別な暴力なんて、教養ある大人のすることではありませんよ?」
「いいえ、花魁の悲惨な真実を学ぶ必要があるのは、私たちではなく、かわいかっこいいなどとほざいて花魁の真似を安易に楽しんでいる連中でしょう? どんなに華やかに見えても吉原は苦界、花魁は四姓の人と枕を交わす卑しい身、死ねば投げ込み寺で無縁仏扱い。知ってますよ、そのくらい」
 信者の一人が言い放ち、険悪な目つきでチェリーを睨む。
「本当は、花魁は肩など出しません。着物をだらしなく着て客を誘うのは、安娼婦の夜鷹です。彼女たちが、どれほど辛く悲惨な生活をしていたのか知った上で、あなたは肩だしをしてるのですか?」
「え、えーと……」
 チェリーが困った表情になって、信者と月を等分に見る。
 そこへ佐祐理が、口を入れる。
「こほん! 貴方は和服に強そうですが、「丹前」はご存じかしら? 元はと言えば、これも勝山という遊女の衣装の真似から始まってますし「売春婦の格好を真似る」といいだしたら、これもダメというつもりかしら?」
「当たり前です。勝山は湯女、丹前は一種のバスローブで、どてらの別名ですよ? どてらを着て成人式に出る馬鹿が、どこの世界に居ますか?」
 信者が言い放ち、これは意外に手強い、と、佐祐理は唸る。
 そして紫月が、投げやりな口調で告げる。
「人の好みは自由やと思うけど、強要させてまで否定すんのはどうかと思うんよねぇ。それで好きな人や娘さんに嫌われて喧嘩して別れたり、口聞いてもらえんくなったりしても文句言えんくなるけど、あんたらはそれでええんやなぁ?」
「きちんとした格好を、常時強要するつもりはありません。でも、悲惨な立場の遊女が強要されていた煽情的でだらしない格好を、個人の感性、服装の自由、かっこかわいいなどと言って成人式で通すのは、さすがに許せません」
 きっぱり言い放った信者が、不意に動揺した表情になる。
「……でも、許せないからといって殺してしまうのは、確かにやりすぎ……本末転倒?」
「ええ、そうです。その通りです」
 月が、懸命に言葉を張る。
「和装を着崩して成人式に出るのは、確かに違うとは思います。でも、違うからと言って焼き殺すのは、明らかに行き過ぎです! 未熟でものを知らない相手は、教え導いてあげなくては!」
「私は、花魁の境遇を知っています。確かに、悲惨な面もあったでしょう。ですが、彼女たちは当時の一般女性より遥かに高い教養を身につけ、富裕な客を感服させて高額な報酬を得ていたのも事実です」
 髪に多くのかんざしを挿し、実在した花魁と似た服装をしている邦絵が、落ち着いた口調で告げる。
「花魁を真似るのは、私たちの普通でありたくないという意思の表れです。たとえ一般的には眉を顰めるような衣装でも、胸を張って参加するつもりで、入念な準備を重ねて今日を迎えました。拒絶、叱責は覚悟の上ですし、討議討論は望むところ。ですが、火炎放射器で焼き払われては耐えられません。止めてもらえませんか?」
「た……確かに……どうして私は、人を殺そうなんて……」
 呻いた信者に、ビルシャナが慌てた声で告げる。
「しっかりするざます! 風紀を乱す者は許さないという鉄の意志を……」
「やかましい。まず、お前が黙れ」
 冷ややかに言い放ち、ソフィアがビルシャナに一撃を放つ。信者の一人が飛び込んで庇うが、それは想定済み。ソフィアは、抜け目なく手加減攻撃を放っていた。
「安心なさい、峰打ちよ」
「お、おのれ! こいつら、やっておしまいざぁます!」
 ビルシャナが喚き、気絶した一人と動揺した一人を除く二人の信者が火炎放射器を構える。しかし、チェリーとアップルが素早く飛び込み、手加減攻撃で二人を気絶させる。
「あ……あ……」
「さあ、危ないですから、こちらへ。そんなものは、外して」
 動揺している信者にアテナが駆け寄り、火炎放射器を外して保護する。ソフィア、チェリー、アップルも、それぞれ自分が気絶させた信者を抱え、ビルシャナから引き剥がす。
「ちょ、ちょっと、ちょっと……」
「さて……もう遠慮は要りませんね」
 信者の人たちがビルシャナにならずに済んでよかった、と、呟きながら、月が砲撃形態のドラゴニックハンマーを構える。
「お気の毒ですが、冥府には一人で行ってください」
 言い放つと、月は容赦のない一撃を叩き込む。続いて、姿を現わした彼女のサーヴァント、ビハインドの『櫻』が金縛りを仕掛ける。
 そして佐祐理が、オリジナルグラビティ『鷲の目』を放つ。
「Das Adlerauge!!」
 彼女はレプリカント化された右目に搭載された、距離計測用レーザーを高出力で放出する。
「当たった!」
「よっしゃ、一気に畳みかけるで」
 紫月が告げ、オリジナルグラビティ『血桜・絶(チザクラ ゼツ)』を放つ。
「呪われた一太刀を受ける覚悟はあるかいなぁ?」
「ひっ!」
 妖刀から放たれる血飛沫の様に細かな斬撃で呪いつつ斬まれ、ビルシャナが悲鳴をあげる。そこへ邦絵が、オリジナルグラビティ『妖怪画『脛擦り』(スネコスリ)』を発動させる。
「妖怪絵師、歌河・邦絵が一筆『脛擦り』を食らいなさい!」
 気合とともに邦絵が大きな筆で虚空に妖怪画を描くと、その妖怪にそった効果が発揮される。ビルシャナの足が急にもつれ、ずってんどうと転倒する。
「な、なんざますかーっ!」
「勇往邁進! 避けられないよねっ!」
 隙を逃さず、チェリーがオリジナルグラビティ『雷鳴拳聖の発勁(ライメイケンセイノマジカルブラスト)』を発動。雷の如き速さで、ビルシャナに勁を打ち込む。
 そしてアップルが、オリジナルグラビティ『輝煌豪兎掌(シャイニング・ゴット・ハンド・スマッシュ)』を発動させる。
「幻兎変身、シャイニングモード! この輝きは、邪なるものを浄化する愛の光! シャァァァイニング・ゴット・ハンド・スマッシュ!」
「ぎょえー!」
 アップルは輝く愛の光を身に纏い、変身中のみ使える巨大な豪兎掌(ゴットハンド)でビルシャナを掴む。本人は浄化する技だと言い張るが、ビルシャナは全身ズタボロになる。
 更にアテナが、オリジナルグラビティ『戦闘神ノ破城槌(アレスノハジョウツイ) 』を発動させる。
「十二神アレスの名の下に、邪悪なるモノを貫き穿て……」
 詠唱に応じ、武骨な大型機械槍が出現する。投擲すると、槍は見事にビルシャナの胴中を貫く。
「し……死ぬ……死んでしまう、ざます……」
「そう、あなたは戻れないところに来てしまった。さあ、自分の罪を数えなさい」
 厳粛な口調で言い放ち、ソフィアがオリジナルグラビティ『ジャッジメントレイ』を放つ。
「『デウスエクスと化してしまえば、それは悪』……調停期後(せんご)生まれなら、そういう考えも間違っちゃないわね」
 呟くソフィアの翼から聖なる光が放たれ、瀕死のビルシャナを容赦なく焼き尽くす。
「やってることは同じでも、信者は生かし、ビルシャナは殺す。何が罪かを決めるのは、いつも裁く側のエゴなのよ。天のせいなんかにしちゃダメよ?」
 どこか遠くを見るような表情で、ソフィアは独言する。応える者は、なかった。

作者:秋津透 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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