慧斗の誕生日~撮影!ケルベロス出動PV!

作者:つじ

●表に出ない、こんな光景
 夜明けの風が舞うそこに、ケルベロス達が進み出る。空がいつもより近く見える、高層ビルの屋上。その中心には、我等の誇る人工巨大サーヴァント、ヘリオンが鎮座していた。
「ついに現れやがったか、待ってたぜ、この時を……!」
「気持ちは分かるが、まずは落ち着け。今からその調子じゃ保たないぞ」
 慣れた様子で歩む彼等は、開かれたヘリオンの扉を潜り、機体後部へと入っていく。
「状況は変わりないかしら。避難の進み具合は?」
「順調のようです! ただ、完全とはいきませんね。到着時にも何人か逃げ遅れた人が居ると考えておいてください!」
「そう、それなら私は予定通り避難誘導に当たるわ」
「あたしも手伝いまーす!」
 用意された座席につく者。適当なでっぱりを手摺りにして、窓の見える場所に陣取る者。皆それぞれに、一時の居場所を定めていった。
「ちょっと、アンタなに食べてんの?」
「なんだよ、腹ごしらえは大事だろ?」
「遅れてすまない、クラッシャーは任せてくれ」
「揃いましたね、皆さん! それでは、発進します!!」
 暁の空に、ヘリオンが飛び立つ。窓の外の街並みを見下ろし、一人のケルベロスが固く拳を握り締めた。
「待ってろよ、すぐに駆け付けるからな……!」

 ――と、こういう映像が欲しいわけです! 分かっていただけましたか!?

●PV撮影
 PV、プロモーションビデオとは、ざっくりと言えば宣伝や広報のための映像である。商品ならば販売促進、人や企業ならばイメージアップが主な目的になるだろうか。
「と、いうわけでですね! 『一般市民の方々に、皆さんの知られざる一面を紹介する』ための超カッコイイ動画を作るので協力をお願したいのです!!」
 嘴のようなハンドスピーカーを通して、白鳥沢・慧斗(オラトリオのヘリオライダー・en0250)の声が響き渡る。いつもの依頼のような調子で話してはいるが、どう考えてもこれは個人的な――。
「あらかじめ言っておきますが、これはケルベロスの皆さんのための、広報活動の一環ですからね! 誕生日なのをチラつかせて個人的な趣味に付き合ってもらおうとか、助演男優賞を狙っているとか、そういった事は一切ありませんので!!!」
 だだ漏れの欲望はともかく、具体的にはどうしろというのか。ケルベロスの一人、黒いレプリカントがそう尋ねる。
「そうですね、皆さんには『ヘリオンに乗り込み、ヘリポートから事件現場に飛び立つ』ところまでを演じて頂きたいと思います!」
 どのような事件に向かうのか、という指定は特にないらしい。討伐対象は竜牙兵のような残酷な敵か、はたまたトチ狂ったビルシャナか。因縁ある宿敵や、友人の宿敵、そもそも戦闘ではないヒール任務というのもある。
 とにかく、これから向かう事件を想定し、意気込みを語ったり作戦を固めたり、そういった事をすれば良いらしい。演出が凝っていればなお素晴らしい。
「過去の思い出深い事件を想定する、というのも臨場感が増して良いと思いますが、如何でしょうか!」
 そんな提案に、黒いレプリカントがふんふんと頷く。色々と吟味し始めた彼の隣で今度は黒衣の女性が口を開いた。
「私は、まだ事件に出た経験が無いのだが」
「あ、最近加わったブラックウィザードの方ですね! 貴女が初陣を飾る日はすぐに来ると思うのですが……それでしたら、その日のための予行演習だと考えて頂ければ、と思います!」
「なるほど。まぁ、これもある意味貴重な経験か」
 一応は納得した様子で、ブラックウィザードは頷いて見せる。
「飛び立ったヘリオンはその辺を一周して戻ってきます。そうしたら次のグループの撮影を開始、という流れで行います。皆さん、是非とも協力をお願いいたしますよーっ!!」
 一通りの説明を終えて、慧斗は改めて、ケルベロス等に一礼した。


■リプレイ

 人々の剣として、盾として、ケルベロス達は日々戦いに身を投じていく。
 これは、決して表には出ないけれど、確実に存在する……そんな彼等の日常の一コマである。

●出動せよ、特科刑部局
 会議用のスペースに集う、特科刑部局の面々。どこか張り詰めた空気を破り、まずは帳が口を開いた。
「それでは、第三回巨大ダモクレス対策会議を始めたいと思います。この会議の結果次第で、世界は大きく変化すると行っても過言ではありません」
 一同の視線が集まる中、ホワイトボードの上に最初の議題が提示される。――バナナはおやつに含まれるか否か。
「おやつは一人300円まで、バナナは含まん!」
「ダメですか!?」
 帳の主張を切って捨て、リューディガーがとりあえず路線を引きずり戻す。
「出だしから脱線するんじゃない! 議題はダモクレスの動向だ!」
「どこに行ったのかなぁ……」
 タブレットで目撃情報を探し始めたリューディガーの横で、シルがそう首を傾げる。
「海に沈んじゃった? それか、どっかのスクラップ工場でスクラップになっちゃったとか……」
「大きいと隠れるのも大変そうなの」
 じゃれついてくるスームカをあやすフィアールカの言葉に、手持無沙汰でシャドーボクシングを始めていたベルベットが反応する。そう、そんなにでかいのならば。
「良いこと思いついた! 上手く鹵獲して特科レンジャーロボに改造しちゃうってのはどう?」
「いいですなあ。どうせ改造するなら、冷蔵庫・キッチンも付けましょう。最高級のヤツを!」
「お風呂! スームカと入れるお風呂が欲しいの!」
 変形合体DX特科レンジャーロボと書かれたホワイトボードに帳が機能を書き加え始めたが、速攻で消された。
「真面目にやれ!」
「良いと思うんだけどなー、変形合体」
「悪くはないと思いますが、そのダモクレスを探すための会議ですよベルベット様?」
 やんわりと光闇が助け舟を出し、漂流しかけた議題を再度引き戻す。
「何処にいるか、ですね。あの大型ダモクレスが消息を絶って目撃情報が一切ない……いや、しかし……」
 そしてここで半回転。
「倒立してると考えが纏めやすいな……」
 片手で倒立し始めた彼が答えを導き出すその手前で、勢い良く扉を開けてヘリオライダーが飛び込んできた。
「大変です皆さん! 聞いてください!!」
「おくすまポジクラ!」
「点呼以来ですね帳さん! いやそうではなく、ダモクレスが姿を現しました! なんか最近の豪雪で立ち往生していたようです!!」
「ま、まさか、そんなところに居たなんてっ!」
 突如訪れた敵発見の報に、シルが慌てて立ち上がる。
「それでは特科刑部局の皆さん、出動してください!!」
「「「ロジャー!」」」
 声を合わせた彼等は、それぞれに準備を整えながら席を立つ。
「え、ええと、一般人の人はいるんだっけ? いるなら、わたしが人払いするからっ!」
「ああ、そちらはシルに任せるぞ。みんな、各種武装はきちんと装備したな?」
 ――『ボスは↑の人じゃなくて↓の人です』。
「それでは、連携はいつもの感じで。ジャマーは任せて下さい。なーに、あんなデカブツすぐに行動不能にして見せますよ!」
「え、今なにしたんですかフィアールカさん?」
「編集なの。あ、じゃあ私クラッシャーで! 切り込み隊長なの!」
 道すがらおにぎりを頬張り始めたフィアールカに並び、ベルベットがシルの方に親指を立てる。
「特科のエースディフェンダーのアタシが付いてるから大丈夫! バンバン行こうぜ相棒!」
「あ、ポジション、クラッシャーで攻撃は任せてっ! 相棒さん、背中は任せたよっ!」
「守りの要、ディフェンダーは任せろ!」
「自分はクラッシャーで行きます。火力はこれで十分ですかね?」
 リューディガー、そして光闇もそれに加わる。
 肩を並べ、颯爽とヘリポートを行く彼等は、そこで揃って下を指差した。

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●そんなことよりお腹が空いたよ
 現場に急行せよ、そう通達を受け、ヘリポートを訪れたのは【萌風小隊】だ。
「みんな、敵の情報はもう聴いてる?」
 ヘリオンへと乗り込んだ吾連が、集まりつつある仲間達に声をかける。
「聞いたぞ吾連。味は二の次……とんだ素人ですのだ」
 ゆらり、と影から現れしパンダの着ぐるみ、千がそれに頷いて返した。
 情報によれば今回の敵は『食事は栄養さえ取れればいい明王』、味も楽しさも二の次、食事は栄養摂取の為にある、という教義を掲げている。
「美味なる物ハ、ただ味が良いだけではないのデス……」
 二人に続いてエトヴァがそう付け加える。手にした紙には『カメラはブーツから徐々に上げて下さい』の文字……あっすいませんやりなおします。
 ブーツの靴裏がヘリオンの床を叩く。すらりとした細身の体躯。羽織られた黒いコートの中で、ポーラー・タイ、そして流れる髪が蒼く輝いていた。……では続きをどうぞ。
「作る者の拘り、籠められた想いが隠し味となるのデス」
「皆で食卓を囲むことで仲良くなったり、自分の好きな味を発見したり……そんな経験を積む機会を奪う明王は退治しないとね」
 エトヴァの視線は、頷く吾連の胸元へ自然と引き寄せられていく。――なんかTシャツに『ケニア』って書いてある。
 しかしそこを追求する前に、ジェミが続いて口を開いた。
「食事、それは生きる糧。風味や香りづけにも拘って、食欲を湧きたたせるのが人というもの……」
 その手によって取り出されたのは、某武将の紋所入りの箸だ。
「生きるか死ぬかの武将でさえ饗応用の料理レシピを残したのに、栄養さえ取れれば良い等とはナンセンス!」
「そう、皆の知るおいしいご飯を食べた時の喜び、皆で食べるご飯のおいしさを知らしめるのだ。
 千達なら絶対にできる……!」
 カメラ目線で千が拳を握る。そう、このタイプの敵は教義を崩してやることも重要な戦略だ、何もおかしい事はない。
「そしてその説得を可能とするのが、これ!」
「食事に彩りを添えるマイお箸ですネ」
 威勢の良い掛け声に、エトヴァと吾連も箸を取り出す。ジェミに至っては六種の神器、選ばれし調味料の小瓶達を手にしている。
「皆のマイお箸、そしてジェミの六刀流……無敵であるぞ!」
「ん、ほふれへふははい」
「モカ隊長!」
 そのタイミングで、颯爽とパンツスーツを着こなしたモカがヘリオンに到着した。何を言っているかわからないのは咀嚼しているタンドリーチキンのせいだろう。
「へっふぁふ……せっかくフェルドールで友人と楽しく食事していたのに、そんな私に喧嘩を売るような教義のビルシャナだな」
 口元を拭って、モカが続ける。食の楽しみを否定する存在……彼女にしてみればそうそう許す事のできない相手だ。
「モカ隊長、その様子ダト準備は……」
「マイ箸を使うのだろう? 持ってきたぞ」
 エトヴァの声に、モカが店から借りてきたそれを取り出す。
「言うまでもなかったか、さすが隊長だ」
 メンバーは揃った。発信に備え、吾連がTシャツの上にケルベロスコートを羽織る。
「ケニア……? いや、千、似合っているね、その着ぐるみ」
「ふふふ、防御も完璧ですのだ」
 声をかけつつ仲間達の様子を確かめ、モカは運転席に乗るヘリオライダーに届くように声を上げた。
「よし、皆準備はできているようだな、出発しようか」
「待ってました! それでは皆さん、えーっと……」
 何でこの人達不敵に笑って箸構えてるの? 振り向いた慧斗が当惑の表情を浮かべる。落ち着いて考えれば納得のできる答え辿り着きはするが、何だか絵面の圧が凄い。
「……俺ハ、よき人達と食べる食事が、一番美味で楽しいと思うのデス」
「よし、それじゃ終わったら打ち上げだな!」
 エトヴァの言葉に吾連が応じる。そして、ジェミと千もまたそれに頷いた。
「仲間と食べる楽しい時間は最高のスパイスですからね!」
「美味しい打ち上げのためにも頑張ろ! そしてモカ隊長はあとでお店の場所教えてくださいのだ!」
「おや、皆も興味があるのか。ならば一緒に行こうか!」
 高い士気を保ったまま、和気藹々と……五人分の箸と少年の困惑を道連れに、萌風小隊は暁の空へと飛び立っていった。

●このPVはイメージであり実際のケルベロスとは異なる場合がございます
 俺は、ついてゆけるだろうか、サポートのいない依頼の難易度に。
 二藤・樹は思考する。現状、八ツ音というのが同乗しているが極端に口数が少なく役に立たない。つまり、この思考こそが作戦会議である。
 手を交差し太ももに添える。いや、違う、もっと前衛芸術を意識しろ、目指すべきは洗練された無駄のない無駄なポーズだ。悟りに至った彼は、そしてある声を聴く。

 ――テーマは?
「一言でいうなら、スタイリッシュ。前にこの事について話し合ったことをヒントにしたんだ」

 ――依頼相談という体ですが、何と戦うんでしたっけ?
「昨日の自分……かな」

 ――なぜこんな事を?
「そうですね……働いたら負け、なのかなって」

 ――本日はお越し頂き本当にありがとうございました。ヘリオン発進します。

●セカンドステージ!
 ライブハウスに詰めかけたファンに、ステージ上の少女達が手を振る。ガールズバンド【quatre☆etorir】のライブは、今まさに佳境に差し掛かっていた。が。
「――!」
 そんなタイミングで入ったコールに、彼女等は互いに視線を交わす。何事もなかったようにライブを終えて、4人はそのままヘリポートへと直行した。
「おはようございます。お待たせしました!」
 着替える間も惜しみ、ステージ衣装のままにララと鞠緒、ヴィヴィアン、そして最後にロゼがその後に続く。
「ロゼ、到着です! カト☆エト4人、スタンバイおっけい、いつでもいけます!」
「お集まりいただきありがとうございますサインください! ではなく、まずはこちらの映像をご覧ください!」
 慧斗によって映し出されたのは、先程とは別のライブ会場。ステージ上のバンドの演奏に、観客達は皆魂を抜かれたように虚ろな表情を浮かべている。デウスエクスの仕業、か。
 しかし……。
「え、まさか……」
「あの子達が、デウスエクス?」
 ララとロゼが口元を押さえる。ステージ上に居るのは、最近カト☆エトにやたらと絡んでくるバンド、【Black☆Wizard】の三人だ。
 中央に立った黒衣の少女が、画面越しに指を突き付ける。
「ふふん、親愛なるカト☆エトの諸君! この観客全てが人質だ。私達を止めてみたまえ!」
 映像はそこでぶつりと途切れた。どう見ても、これは名指しの挑戦状。
「あの子達がデウスエクスだったなんて……なんだか複雑」
「今回はただの戦いじゃなくて、バンド対決になりそうね」
 ヴィヴィアンの言葉にララが頷く。こういう形で決着をつける事になるとは、思いもよらなかったが……。
「今度の対バンは絶対に負けられませんね」
「正体を知ったら、ますます負けられないよね!」
「今度はケルベロスとして、あたしたちの歌の力をぶつけようね」
 決意を新たに、四人は互いに視線を交わす。
「それでは、ヘリオンの方へどうぞ!」
 緋色のケルベロスコートのヴィヴィアンに、黄鮫の腕章と青いコートをはためかせた鞠緒が並ぶ。
「今日は新曲でどーんと行きましょう!」
「バトルライブの開幕ですね、私も気合入れていきますよー!」
 水色コートのララと、黒猫モチーフの衣装を着たロゼもそれに加わり、彼女等は揃ってヘリオンに乗り込んでいった。
「到着までにもう一回おさらいをしておきましょうか」
「リハーサルだね、それじゃ最初から――」
 華やかな音色を乗せて、ヘリオンが空を駆ける。
 そして【quatre☆etorir】ライブの第2ステージが、今始まる――!

●だびでびでびで
 ヘリポートに踏み込む前、作戦会議を行う彼等にカメラが向く。無造作に会話しているように見える彼等だが、その並びはそれぞれの体の大きさを元に、絵作りに配慮したものになっている。画面端で輝くオウガ粒子の演出もにくい。
 背の高い者は他者の見切れに配慮して腰を下ろすなど、パーフェクトな絵面を用意してきた【燕】の面々ではあるが。
「だびで……び?」
 訝し気に、謎の呪文を口にしたイサギが眉根を寄せた。そして、陣内の問いにアジサイが答える。
「もう一度聞くぞ、合言葉は?」
「だびだびだびで」
「さっきと違ってんぞ」
「だびでびでびで、っスよ」
「そもそもアジサイさんが言い出したことでは……?」
「……そうだったか?」
 それに対して白とイッパイアッテナも間違いを指摘する、が。
「びでび、ぴっぴか、えーと」
「びで……だび……びびでばびだびで!」
 アンセルムとフェイトがもっとひどいことになっている。
「もはや合言葉の意味を成していないな」
 アガサが一つ溜息を吐く。とにかく、まずは話を進めなくては。
「……で、今回の目的は?」
「廃ビル群に現れた、三本頭に金銀銅ボタンを持つ8mのダモクレスですね」
「ああ、体が黄金で金星あたりを滅亡させたという噂の凶悪な奴だ」
 陣内の声にイッパイアッテナとアガサがまとめた情報を再度提示した。この世界はいつだって危機に瀕している。
「なんかすごい敵っスね。でも、頭の数はもちろん翼の数も負けてないっスよ!」
「本当に、厄介なダモクレス……でも、ボクたちなら勝てるよね」
 白とアンセルムが頷き合うのを横目に、イサギが口を開く。
「状況は把握した。なんという出鱈目なダモクレスだ……。それで、作戦は?」

「カギになるのは、あの頭上のボタンで間違いないだろう」
「……ああ」
 そうだな、と腕組をしていたアジサイも頷く。そこで魔導銃を手にしたフェイトが、ここぞとばかりにキメ顔をカメラに向けた。
「部位狙いでしたら、この間魔導書から紐解いたばかりのオリグラ遠単狙アップがオススメなのですよ!」
「そんな手間、私は御免だよ。たった8メートルだろう? 一息に駆け上がるさ、この翼で」
 イサギが自らの背の翼を示す。
「ボタンを押せた首から落としていくが、構わないね?」
「それは構わないが……ついでに俺も上まで持ち上げてくれよ。直前まで『小サイズ』になっておくから」
 言いつつ、黒豹が小さな猫へと動物変身してみせる。しかし。
「ダメだ。機動が落ちる」
「大丈夫、大きくなったら放り出せ。ダブルジャンプだからイケる」
「一瞬の慢心が生死を分ける強敵相手だ……そんな馬鹿は私一人で充分さ」
 ふ、と遠い目になるイサギ。恐らくそこには余人の予想もつかない過去があるのだろう。多分。
「ところで、ボタンを押すとどうなるんでしたか?」
「ああ……確か解放されるんでしょう、アレが」
「アレだな」
 イッパイアッテナの疑問にアンセルムが曖昧に返し、アジサイもそれに乗っかる。まぁ、何の答えにもなっていないが。
「アレとは一体……?」
「何でしょうね……はいはい、おやつあげるのでみんなと仲良く食べるんですよ」
「あ、マーブルも行ってくるっスよ」
 フェイトのテレビウムがザラキにじゃれつきはじめ、白のオルトロスもそれに加わった。可愛いマスコット達のじゃれ合う映像の前では、先程の疑問など些細なものだ。
 とにかく。
「ボクはスナイパーとして、皆の支援を担当するよ。どんなに強い敵でも、いつも通りやれば問題ないよね……?」
「そうだね、僕たちの友情パワーの前にはどんな奴でも敵じゃない!」
 アンセルムの言葉に白が頷く。戦闘経験豊富な彼等には、これもまた『いつものこと』のはずだ。
「僕はお巡りさんらしくみんなを守るよ!」
「私もです。何があっても、身を粉にして盾となりましょう」
 小柄と言って良い体型の白とイッパイアッテナだが、その意気込みは立派な戦士のそれだ。
「帰ったら皆でパーティをしよう。白鳥沢も、お土産を楽しみにしていてね」
「はい、約束ですからねアンセルムさん……!」
 意気込みも含めて、良くないフラグが乱立しているような気もするが。
「大丈夫、バックアップは任せろ。背後に魔法陣描いたり爆発させたり、エイサー踊りながら蹴り飛ばしたりしながら傷を癒してやる」
 多様な回復グラビティを備えたアガサが、そうはさせないと胸を張る。
「……お前、いつもそんな回復の仕方してんのかよ」
「あ? 回復は回復だから大丈夫、ちょっとくらい痛いのは我慢しろ、ケルベロスだろ!」
 陣内の指摘にも動じることなく、彼女はヘリポートへと視線を向けた。
「それじゃ、そろそろ行くか」
「おくすまポジ美少年! トドメは任せてください!」
「フェイト、そういうところだぞ」
「もちろん嘘ですよたまにゃん!」
「慧斗さん、降下場所の方ですが……」
「了解ですイッパイアッテナさん。ギリギリまで頭に近付けるので、派手に決めてください!」
 互いに視線を交わし、頷き合った一同は、プロペラ音を立て始めたヘリオンに向けて歩き出した。
 向かい風にコートを靡かせ、イサギとアジサイ、二人のアタッカーはそれぞれカメラに視線を向けた。仲間達へ、そしてそのレンズの向こうの人々へ。
「我々が征くのだ、討伐は成功する。そうだろう?」
「任せろ」
 そう告げて、彼等は戦場へと飛び立っていった――。

●切れ端
「――と、こんな感じでどうでしょうか?」
「誕生日おめでとう慧斗、出来はどうだ?」
 あ、皆さん協力ありがとうございました!

作者:つじ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月8日
難度:易しい
参加:24人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 7
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