雪上を滑走するナンパ男

作者:なちゅい

●傍若無人なスキーヤー
 山形県の某スキー場。
 そこでは、休日になると訪れる1人の男性が話題となっていた。
 良くも悪くも注目されていた青年、芦塚・雄。彼は鮮やかにゲレンデを滑走し、女性達の視線を掻っ攫う、ナンパな男である。
 その反面、男性からはすこぶる不評で、わざと相手にぶつかって蹴倒したり、手間取る男性を罵倒したりするなど、スキーヤーにあるまじき行為を繰り返していた。
「もたもたしてる奴が悪いんだ。俺様の滑りを邪魔するんじゃねぇよ」
 鼻で笑う彼は身勝手にコースから外れ、脇にある森の木々の合間を楽々滑っていく。
 そんな彼の背後に、いつの間にかいつの間にかタールの翼を生やした踊り子のような姿をした女性がついてきていて。
「すごいね、見とれちゃうほどの滑り。ナトリ、惚れ惚れしちゃうな!」
「お、なかなか可愛い……」
 黄色の衣装を纏った少女が腕を振り上げると、芦塚の体を黄色の炎で包み込む。
「ぐあああああああぁぁっ!!」
 滑りながら悶え苦しむ芦塚。彼はそのまま木に激突してしまう。
 一度、彼はそこで、命は潰えたはず。しかし、新たなデウスエクス……エインヘリアルとして生を受けた芦塚。身体は3mほどにまで膨れ上がらせた彼は、苦しそうな息遣いをして。
「お兄ちゃん、体の調子はどう?」
「ぐ、ぐるしい……」
 グラビティ・チェインの枯渇に苦しむ彼へと、少女……シャイターン「炎彩使い」の一員、黄のナトリは説明する。人間を襲ってグラビティ・チェインを奪え、と。
「精一杯頑張ってきてね! お兄ちゃんならきっとできるよ!」
 そうして、手を振ったナトリはその場から姿を消していったのだった。

 年も明け、2018年が始まったが、ケルベロス達は忙しく活動を迫られる状況が続く。
「賑わうスキー場にエインヘリアルが現れるそうですね」
 そんなアーニャ・クロエ(ルネッタ・e24974)の一言から、今回の1件は発覚する事件である。
「皆のそうした予測は、ボク達にとっても嬉しいところだね」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)は事件を未然に予知できて、助かると語った。
 活発的に動くシャイターン「炎彩使い」。彼女達は死者の泉の力を操り、その炎で燃やし尽くした男性をその場でエインヘリアルにすることができる。
 今回は、黄のナトリがまた1人のエインヘリアルを生み出してしまう。
 出現したエインヘリアルはグラビティ・チェインが枯渇した状態のようで、人間を殺してグラビティ・チェインを奪おうと暴れ出すらしい。
「説明が終わったらすぐに、現場のスキー場へと移動する予定だよ」
 現場到着時にはすでにエインヘリアルとなった男性が暴れているはずなので、被害が拡大する前に討伐したい。
 現場となるのは、山形県にある某スキー場だ。
 昼間雪が降る中、たくさんの人々が訪れるゲレンデにエインヘリアルが現われ、スキーを駆使したグラビティを使いこなし、スキー場利用者からグラビティ・チェインを奪おうとするようだ。
「人の数は多いから、避難誘導もしっかり行って欲しいかな」
 警察が駆けつけるまではある程度、エインヘリアルを抑える必要があるだろう。
 現れるエインヘリアルは1体のみ。身長は3mほどある青年で、スキーウェアを着ている。
「ジャマーとして、立ち回るのを確認しているよ。ストックでの突き、滑走を伴う突撃、急カーブによる雪の浴びせかけといったグラビティを使用するようだね」
 また、衝動のままに破壊活動を繰り返すシャイターンが選定しただけあって、かなり性格が悪い男らしい。
 どうやら、ゲレンデにおいても邪魔な男性利用者に体当たりをしたり、初級者に罵詈雑言をあびせたりするなど、目に余る行為も確認されていたようだ。
「『自身は優れていて、他人は自分の糧となるのは当然』なんて考えを持っている相手だよ」
 エインヘリアルとなり、殺人すらも厭わぬ彼をそのままにしておくわけにはいかない。
 また、倒した後はヒール作業を行い、再びスキー場利用者が安心して滑ることができる環境を整えてあげたいところだ。
 状況説明を終え、リーゼリットはそういえばとさらに口を開く。
「事態がうまく収拾したのなら、皆もスキーを楽しんでみたらどうかな」
 そうして、依頼解決に臨むと気合も入るかもしれない。楽しみが後に控えていれば、熱も入るというものだ。
 スキーを楽しむ為にも、エインヘリアルの撃破を。リーゼリットはそうケルベロス達へと願うのである。


参加者
リィンハルト・アデナウアー(燦雨の一雫・e04723)
相川・愛(すきゃたーぶれいん・e23799)
アーニャ・クロエ(ルネッタ・e24974)
ロフィ・クレイドル(ペインフィリア・e29500)
リョウ・カリン(蓮華・e29534)
キアラ・エスタリン(光放つ蝶の騎士・e36085)
ミカエル・ヘルパー(白き翼のヘルパー・e40402)
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)

■リプレイ

●目に余る悪行に……
 山形県のスキー場に現われた、8人のケルベロス達。
「エインヘリアルにされちゃってかわいそうかなって思ったけど、元々ちょっと悪さもしてたんだね……」
 メンバー唯一の男性だが、女性にも見紛う容姿のリィンハルト・アデナウアー(燦雨の一雫・e04723)。それもあって、女性ばかりにも見える一行の目的は、エインヘリアルとなった男性の討伐だ。
「敵の狙いは一般人ですか……、それは大変ですね。一刻も早く、こちらへと目標を移して頂かなければ……」
 お嬢様のような立ち振る舞いのロフィ・クレイドル(ペインフィリア・e29500)は、この状況にも落ち着いていて。
「えぇ、問題ありません。皆様の為であれば、この身を投げ出す事に一切の迷いはありません……ふふふ……」
 ただ、その怪しげな笑みもあり、周囲の一般人がロフィから少し距離を取っているように見えた。
「ふふふふ。今回は機嫌がいいの」
 青い長髪のミカエル・ヘルパー(白き翼のヘルパー・e40402)もまた微笑むが、こちらは自愛に満ちた微笑を浮かべている。
 というのは、ミカエルを含め、ヴァルキュリアがチームの半数を占めていたからだ。
「性格の悪いエインヘリアルですね……。お仕置きしてあげなくちゃですね……!」
 明るい笑顔で意気込みを見せるアーニャ・クロエ(ルネッタ・e24974)に、生真面目なキアラ・エスタリン(光放つ蝶の騎士・e36085)が頷く。
「……エインヘリアルは好かぬ。無論、奴らを生み出す者もだ」
 失伝者救出以外の依頼は初めてとあって、天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)は内心緊張してはいるが、それを表情には見せずに依頼に臨んでいる。
「元になった者も、選定される素質を持っていたのであろうな」
 そんな誇らしいヴァルキュリア達の姿に、ミカエルは実の娘と同じくらいの愛しさを感じて目を細めていた。
「やれやれ、なんでシャイターンはこういった人ばかり選ぶんだろうね?」
 悪態づく中華娘、リョウ・カリン(蓮華・e29534)は考える。面が良くたって魂がくすんでいたら強い兵が生まれるなんて無いだろうに、と。
「なんて文句を言ってても、しかたないか」
「エインヘリアルとなった人に、同情の余地はない、かな」
 例えスキーがうまくとも性格が悪いんじゃ台無しだと語るリィンハルトは、更なる被害が周囲へと及ぶ前に僕らでしっかり止めなきゃと語る。
「取り返しのつかないことをされる前に止める、しかないよね」
 他の人にさらなる被害が及ぶ前に。リィンハルトがそう告げるとメンバー達は頷き、取り急ぎエインヘリアルの捜索に向かうのだった。

 メンバー達がゲレンデを登っていくと、そいつはすでに姿を現していた。
「おらおら、俺の糧となりな、愚民どもが!」
 スキーウェアを纏った大男が周囲のスキー場利用者に向けて、ストックを突きつけている。これ以上放置すれば、犠牲者が出てしまいかねない。
 そいつの手前へと、リィンハルトと共に、ドジっ娘メイドの相川・愛(すきゃたーぶれいん・e23799)が前に出る。
「えと、スキー場はみんなの場所、なので、めーっ! ですっ」
 臆病な愛だが、この場はおどおどしながらもしっかりと相手に言い放つ。
「んだと……?」
 エインヘリアルと成り果てた男、芦塚・雄は歯噛みし、自分の身長にも満たない愛を睨みつけていた。
「皆さん、エインヘリアルの襲来です! 落ち着いて避難してください」
 その間に、避難誘導に当たるメンバーがデウスエクスの出現で混乱し始めていたゲレンデにいた人々に呼びかける。
「私達ケルベロスがエインヘリアルを足止めしている間に、安全な場所へ避難してください。必ず私達が彼を倒しますので!」
 真摯な態度で誘導に当たるキアラにスキーヤー達は声援を送りながら、急いで傾斜を滑っていく。
「けが人や遭難者が出ないように、いち早く救助をしなくちゃ……!」
 リフトはこれから頂上に向かう人がいないようにとすでに止まっており、それに乗ったままの人々を光の翼を持つアーニャが降ろしに向かう。同じくヴァルキュリアのミカエルも呼びかけながらも、その手伝いをしていたようだ。
「……少々残念ではありますが、楽しみは後に取っておくもの……。先にお役目を済ませてしまいましょう……」
 相手が発する流れ弾を警戒しながらも、ロフィは仲間が降ろしてきた人々を中心に、麓に降りるよう誘導していく。
 この為、敵を抑えるメンバーは、麓への道を遮ることとなる。
「……獲物としては、こちらの方が大きいぞ?」
 抑えに回る水凪は相手の気を引くべく、挑発する。そんな彼女に、エインヘリアルはストックを向けて。
「ケルベロスがなんだ。俺の方がつええってこと、教えてやんよ!」
「もう貴方を救うことはできない。放っておくこともね」
 グラビティによって加速し、雪上を滑るエインヘリアルへとリョウは対して。
「悲しい人よ……。せめて、その最後を華々しく飾ろうか」
 彼に誰かを傷つけさせるわけには行かない。リョウは九尾扇を手にし、相手に向かって飛び込んでいくのだった。

●迷惑なスキーヤーに仕置きを
 スキーウェアを纏う3mの大男。
 その姿は白いゲレンデにおいて、異様なほどに目立つ。
「おらおら、食らえぇぇっ!」
 グラビティを活かし、敵は坂ですらも登って滑走してくる。
 そいつを足止めしようと、リョウは地獄化した四肢の腱を勢いよく燃え上がらせ、相手の間近で掌を広げて竜の幻影を発した。
 竜より吐き出された炎を浴びながらもエインヘリアルはニヤリと笑い、急カーブをかけて手前に立つケルベロス達へと撒き上げた雪を浴びせかけていく。
 それをミミック、トイボックスと共に被った愛は、腕に巻きつかせたオウガメタルに呼びかける。
「し、シルキー様、お手伝い、お願いしますっ!」
 応じたオウガメタルは粒子を放ち、前線メンバーの感覚を研ぎ澄ます。
 すぐ後ろにいたリィンハルトも前線メンバーの凍傷を気遣い、ライトニングロッドを振るって雷の壁を構築し、相手が繰り出してくる攻撃に備える。
 後方からは、周囲に一般人が近づいてきていないかを確認する水凪がただ一言、声を発した。
「……頼むぞ」
 水凪の呼びかけによって、大地からおぞましい何かが溢れ出す。
 それは、死者の無念。彼女はそれを抽出し、纏わりつかせたエインヘリアルの動きを鈍らせようとしていく。
 しばし、4人でエインヘリアルを相手にしていたが、周辺から一般人の姿がなくなれば、徐々にメンバーが終結してくる。
「美しいこの雪上を、血で赤く染めるわけにはいきません」
 光の翼を広げたキアラは、この美しいゲレンデを守るべく舞い降りてきた。
「生まれたてのエインヘリアル、申し訳ありませんが退場してその罪を償ってもらいます」
 半透明の御業から、キアラは炎の玉を飛ばす。
 雪上なれど、グラビティの炎は普通の雪で溶けはしない。
 ならばと、相手は雪上を疾走して炎を消そうとしながらも、ケルベロスへと突撃してくる。
 その手前に立ち塞がったロフィ。相手の突撃を受けた彼女はなぜか至福の笑顔を見せていた。
 後方からテレビウムのクーが顔面に応援動画を流し、ロフィの傷を癒す。
 そのロフィは履いた錆色鉄枷でステップを踏み、身体を凍らせる仲間へと紅の花びらのオーラを降らせていく。
 後方に駆けつけていたアーニャも、共に避難に当たっていたキアラへとClaireを突き出して電気ショックを飛ばし、その力を高めていた。
 アーニャのウイングキャット、ティナも翼を羽ばたかせ、後続メンバーを中心として汚れを振り払おうとしてくれていたようだ。
 そして、最後に駆けつけたミカエルは戦場を自在に滑るエインヘリアルへと、こう告げる。
「相変わらずジョークが滑って寒くってよ、下等種族」
 そして、彼女は高く飛びあがり、敵の動きを先読みして流星の蹴りを叩き込む。
「失っても惜しくない命と自覚なさいな」
 母性溢れるミカエルの辛辣な一言に、エインヘリアルは強く握ったストックをケルベロスへと突き出してきたのだった。

 いつもならば、スキー場を思いのままに滑走するエインヘリアル芦塚。
 いくら力をつけたとはいえ、8人のケルベロスとサーヴァント達に囲まれた彼は徐々に押されてしまい、表情を陰らせていく。
「雪の翼を纏いて、胡蝶は羽ばたきを続ける……。耐えられますか? 身も凍る胡蝶の舞に」
 敵に近づくキアラは、取り出した札から銀色の光を放つ胡蝶を呼び出す。
 凍てつくような体温の胡蝶達はエインヘリアルの周りを飛び回り、その体温を奪い去っていく。
「が、がんばれー! がんばれー! わ、わたしも、がんばります、からっ!」
 敵が突き出してくるストックを受け止めるメンバーへ、愛は元気を召喚することで癒しに当たる。
 この場はロフィがその癒しを受けていたが、敵を抑える彼女も桃色の霧を発して個別に回復へと回っていたようだ。
「援護は任せてください!」
 光り輝く月のオーラを放つアーニャ。優しい光が仲間1人1人を包み込み、治癒していく。
 その間も、仲間達の攻めは続いている。
 リョウがリフトの柱を駆け上がるようにして飛び上がり、身軽な身体を活かして敵の頭上から影の如き斬撃を浴びせかけていき、正面からは稲妻を帯びた「Gewitter」をリィンハルトが突きつけていく。
 ほぼ同時に、水凪がエクトプラズムで作った零段を発射してエインヘリアルを足止めすれば、ミカエルが色とりどりの宝石を彩った「王笏と宝珠」を振りかざし、雷を発射して敵の体を撃ち貫いた。
 徐々に相手が動きを鈍らせてくれば、盾役の負担も軽くなってくる。
「みんなに迷惑をかける人は、スキー場を使っちゃダメ、なんですからっ!」
 回復に当たっていた愛も炎を舞わせて蹴りを繰り出し、ロフィも続けて燃え上がる一蹴を浴びせかけた。
「ぐぬ……」
 序盤は気を大きくしていたエインヘリアルもケルベロスの猛攻に苦悶の表情を浮かべるが、ストックを突き出して応戦を続ける。
「ふふ……いいですよ……」
 攻撃されて笑ってみせるロフィに、敵もさすがにゾッとしてしまっていたようだ。
「むーちゃん、やっちゃえ!」
 リィンハルトがそこで腕を伸ばすと、そこから飛び出したブラックスライムが大きく口を開いて、エインヘリアルへと食らいつき、その身体を縛りつけてしまう。
 さらに、メンバー達は畳み掛ける。
 水凪が手にする宝珠から水晶の炎を発して相手の体を切り刻み、光の翼を広げて飛び込んだキアラが露出してきていた敵の体へと直接、蝶夢光槍の刃を浴びせかけていく。
 ここまで来れば、攻撃に回ったアーニャも戦場に仕掛けた見えない地雷を爆破させ、敵の足ならぬスキー板を止める。
「私が天国より再臨した今、――祝福されなさい、私のかわいい子孫たち。――呪われなさい、私を憐れまなかった者ども」
 ミカエルが発した言葉は、古のヴァルキュリアを信仰せざる者に審判を与える。眩い光がエインヘリアルを包み込み、強い力がその身体を飲み込もうとする。
「お、おのれ……」
 エインヘリアルはその光に耐え切り、さらに雪上を滑走しようとストックを握った。
 ただ、両腕の腱を燃え上がらせたリョウがその手前に立ち塞がって。
「過去を糧に燃え上がれ私の焔 理不尽を払い 不条理を覆し 心のままに舞い踊ろう」
 舞い踊る彼女はまさに鳳凰のよう。煌々と赤く輝く炎は、エインヘリアルを捉えて逃がさない。
「が、ああああぁぁっ……」
 炎に包まれ、その全身を崩していくエインヘリアル芦塚。雪崩が起きぬようにと気がけていたリョウは、周囲に異変が起こらぬことにホッと息を漏らす。
「無事終わって、良かったです」
 戦闘の終わりを実感したキアラも安堵を見せていたが、その頬から一筋の輝きが雪の上へと落ちていったのだった。

●初めてのスキー
 たくさんのスキーヤーが麓で待っていることもあり、メンバー達は手早く後片付けを行う。
 リィンハルトは広範囲へと雷の壁を構築し、それをひび割れた地面に埋め込むようにして修復に当たる。
 アーニャも広域に薬液の雨を降らせ、安心して滑る事ができる環境を整えようとする。
「こ、これでちゃんと直った……でしょうか?」
 オウガメタル、シルキーの粒子で傾斜を整えていた愛は幻想に包まれたゲレンデを見つめ、首を傾げる。
「ちょっとファンタジックです、けど、雪景色なら、むしろこっちの方がちょっとロマンチック、かもですねっ」
 癒しの風を巻き起こしていた水凪も作業の終了を確認してから、仲間達へと問う。
「……皆はスキーをやるのか?」
「折角だもんね。スキーやったことないけど、滑ってみようかな」
 そう答えたリィンハルトは早速、スキー初体験してみる……のだが。不器用な彼は雪の上で派手に転んでしまう。
 どうやら、初めてのスキーというメンバーが多い。
 スキー板を履いて滑っていた水凪は運動が苦手らしく、方向転換しようとしてそのまま後ろ向きに滑ってしまっていた。
 アーニャも同じく初めてやって見たが、どうにも安定せずに尻餅をついてしまう。キアラも戸惑いながら傍でチャレンジしていて。
「少しずつ、上手く滑れるようになっていこう!」
 マイペースに練習を重ねていたアーニャに、キアラも初滑りを楽しんでいたようだ。
 一方で、ミカエルは頂上からスノーボードで鮮やかに滑り落ちていく。
「やっぱり、てっぺんから一気に滑り降りるのって、爽快だね!」
 運動神経抜群のリョウも見事な滑走で、多数のスキーヤーを魅了していた。
 対して、静かにこの場の雰囲気を楽しもうとするメンバーの姿も。
 愛は天使の翼で飛び上がり、空から修復し忘れた部分がないかと見回す。試しにスキー、と踏み出す勇気が出なかったらしい。
「ふふ……やっぱり雪は、静かに楽しむのが一番ですね……」
 こちらはロフィ。彼女はスキーウェアに身を包んではいたが、ほとんど滑ることなく頂上付近で舞い落ちる雪を眺め、黄昏れていた。
「そう思いませんか? クー」
 主の呼びかけに、クーは画面で笑顔を作ってみせたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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