●新年に現れたダモクレス
湖畔の温泉街は、新しい年を迎えていた。
大きな湖に面した一帯には大小のホテルや旅館が並んでいる。
観光客相手の土産物屋や、コンビニなどの類は休まず営業していたが、街を歩いている人はけっして多くはない。
とはいえ、客が少ないわけではなかった。多くの客が室内でのんびりと過ごしたり、あるいは家族連れを中心に各ホテルが趣向を凝らした年始のイベントに加わっている。
街全体で、ゆっくりと時間が流れているようだった。
だが、爆発音と共に、時間は一気に加速する。
破壊されたのは、外れのほうに位置するもう使われていない建物。
各建物内で、爆発音が聞こえた側の窓や入り口に人々が一気に集まった。壊れた建物に巨大な影を見つけて誰かが悲鳴を上げる。
そこにいたのはオレンジ色の丸い頭部を持った機械人形だった。
胴体は大きさの違う2つの円筒を重ねたような形をしており……オレンジの頭部をみかんに見立てれば、まるで手足の生えた鏡餅のようだ。
おそらく、全高はホテルと比べても遜色ないほどあるだろう。
もっとも悠長に観察している余裕のある者などほとんどいない。
「ベェェェタァァァ!」
殺戮の鏡餅は意味のわからない咆哮をあげて跳躍し、建物を壊しながら大型ホテルが立ち並ぶ一帯へと近づいてくる。
胴体は金属の光沢を放っているが、液体のように形を変えることが可能らしい。
浴衣姿のままで飛び出した人々に悠々と追いついて、まるで巨大な口を開くかのごとく変形したダモクレスは一般人たちを噛み砕き、殺戮していった。
●平和な正月を取り戻せ
集まったケルベロスたちに対して、リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)はまず新年の挨拶を述べた。
「あけましておめでとう。だが、新年からあまりめでたくないことを伝えなければならないみたいだ」
北海道の釧路市にある温泉街で、オラトリオによって封印されていた巨大ロボ型のダモクレスが復活するという事件が予知されたのだ。
オレンジ色の頭部に、2段重ねの円筒のような外見が、まるで手足の生えた鏡餅のように見えるらしい。
「鏡餅型のダモクレスがどこかに襲撃してくるんじゃないかと思って調べていたんだが、どうやら大物を見つけてしまったようだ」
もっとも、大きいのはサイズだけだ。復活したばかりのダモクレスは、グラビティ・チェインが枯渇しており戦闘能力は高くない。
「だが、放置しておけば人々が集まっている場所まで移動し、虐殺してグラビティ・チェインを集めてしまうだろう」
力を取り戻したダモクレスはさらに多くのグラビティ・チェインを集め、体内にあるダモクレス工場でダモクレスの量産を開始してしまう。
そうなる前に、撃破しなければならない。
「ただ、どうやら動き出してから7分経過すると、魔空回廊が開いてダモクレスは撤退してしまうらしい」
魔空回廊が開いてしまえば撃破は不可能になるので、そうなる前に決着をつける必要があるとリーファリナは言った。
リーファリナの後ろに控えていたドラゴニアンのヘリオライダーが、敵戦力について説明を始めた。
「出現する敵は巨大ダモクレス、1体のみです」
攻撃手段として、まずレプリカントが使えるのと同じ技の一部が使えるはずだ。
また、ダモクレスの体は粘性を持った液体のようになっており、ブラックスライムと同等の技の一部を使用することができるらしい。
「敵はグラビティ・チェインが枯渇しているため、性能は全体的に低下しています。しかし、一度だけフルパワーの攻撃を行うことができるようです」
フルパワーの攻撃は非常に強力だ。当たり方が悪ければ、無傷でも一撃で倒されてしまう可能性がある。ただ、ダモクレスの側も大きなダメージを受けるようだ。
「現場は北海道の釧路市にある温泉街です。周囲はダモクレスより背の低い建物が多いですが、大型のホテルなど敵を見下ろせる高さの建物も何軒かあります」
市民には避難勧告を出すので、戦闘に巻き込むことはないだろう。
死者さえ出なければ、壊れた町はヒールで直すことができるので被害を気にせずに戦うことができる。
ヘリオンでまっすぐ移動すれば、ダモクレスが出現する少し前には現場に到着することができるだろう。
ヘリオライダーは説明を終えた。
「のんびりと正月を過ごしている人たちを襲うなんて、見過ごすわけにはいかないな。それも、鏡餅の形をしてるなんて悪い冗談もいいところだ」
必ず撃退して欲しいと、リーファリナは言った。
なお、いくつかのホテルでは餅つきをはじめ正月らしい催し物が行われているらしい。無事に解決すれば、そこに加わることもできるだろう。
参加者 | |
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天壌院・カノン(ペンタグラム・e00009) |
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132) |
ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354) |
倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552) |
リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877) |
パティ・ポップ(溝鼠行進曲・e11320) |
トープ・ナイトウォーカー(影操る戦乙女・e24652) |
レイス・アリディラ(プリン好きの幽霊少女・e40180) |
●襲撃される街へ
ケルベロスたちは雪の積もった温泉街へとヘリオンから降り立った。
「寒っ! 寒っ!!」
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)が大きく身震いをした。
身を刺すような寒さも、積もった雪も、ケルベロスやデウスエクスの動きに支障はもたらさない。……が、だからといって寒さを感じないわけではない。
「竜牙兵退治にダモクレスの撃破。このところ、北海道に縁がある気がするわ」
鎌を手にして、レイス・アリディラ(プリン好きの幽霊少女・e40180)は呟いた。
「寒いのは嫌いではないけれど、新年から働き通しも考えものねぇ……」
コートをひるがえし、雪を踏みしめて彼女は敵が現れるはずの地点へ急ぐ。
走るケルベロスたちの前方から破壊音が響く。
「……寒がっている暇はない。出たようだな」
ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)の金色の瞳に殺意が宿った。
竜の模様がついた偃月刀を振るって、雪を礫としてダモクレスへと飛ばす。
まだ有効打を与えられる距離ではなかったし、実際空を切ったが、それはヴォルフにとって想定通りだった。
目的は注意を引くこと。ダモクレスはヴォルフのほうへ視線を向けていた。
「義兄、念のために人払いはしておくぜ」
朔耶の体から殺気が放たれる。これで、避難した人々が戻ってくることもない。
「ベェェェェタァァァァ!」
ダモクレスの咆哮が響く。
建物を破壊しながら、見上げるほど巨大な敵の姿が猛然と突進してくる。オレンジの頭部に、サイズの違う真っ白い円柱が二段重ねになった胴体が近づいてくる。
「年明けだろうが、デウスエクスには関係ないか。外見は空気を読んだと言っても……いや、ないな」
武人らしい男性的な口調で言葉を発しながら、トープ・ナイトウォーカー(影操る戦乙女・e24652)が鋭い眼光で敵を睨みつける。
聞いていた通り、鏡餅を想起させるデザインだった。
「新年早々このようなダモクレスが出てくるなんて……。食べられない鏡餅なんかて良い迷惑です……!」
天壌院・カノン(ペンタグラム・e00009)の青い瞳も敵を見上げていた。
「新年早々、めでたいはずの鏡餅がこんな形になるとはな……」
ポニーテールにした銀髪をなびかせて、リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)が前進していく。
「さて、バカでかいのをぶっ飛ばしていい年を迎えるとしようじゃないか」
「人々の安寧を守るため、きっちりと討伐いたしましょう」
拳を固めて進んでいくリーファリナから少し下がった位置で、後衛のカノンは雷をオーラとしてまとう。
他の者たちも、建物の間を駆け抜け、あるいは壁を蹴って移動しながら、それぞれの役割に応じた距離をとっていた。
「なぜこのような形状なのか気になりますが、ダモクレスの侵略はしっかりと阻止していきましょう」
長い黒髪を揺らしながら、倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552)はウイングキャットのカイロとともに走っていく。
「今回のダモクレスは、正月とはあまり関係ない気がちゅるんでちけどね。ともかくとちて、今回のダモクレスは倒ちて片付けるだけでち」
ネズミの耳をはやしたウェアライダーの少女が言った。
パティ・ポップ(溝鼠行進曲・e11320)の言葉が事実をとらえていたかどうか、確かめる手段はなかったし、またそれを考える間もなかった。
ダモクレスの巨体が、ケルベロスたちに猛然と迫ってきたからだ。
「時間が惜しい、いくぞ」
トーブが告げて、皆が動き出す。
ミカンと同じ色をした頭部で、周囲の建物やケルベロスたちを見下ろしてる目だけが、赤く輝いていた。
●進撃するダモクレス
餅のように不定形な材質でできているという敵の体が、不気味にうごめく。
ヴォルフは近くにあった建物の、窓枠を蹴って跳躍した。
さらに、壁を利用して高々と跳びあがる。
ダモクレスの体が変形し、巨大な槍と化してヴォルフへと向かってきた。
「リキ!」
義妹の声が下方から聞こえた。
飛び込んできた影が、彼に代わって槍をその身で受け止める。
朔耶のオルトロスがヴォルフをかばってくれたのだ。
リキを貫いた槍の先端を足場に、さらに敵に接近。
移動する間に、偃月刀には稲妻が宿っている。
(「さて……どこを突けば殺せるかな」)
滑らかに見える敵の表面の、微かな差異も見逃さぬよう観察する。
オラトリオの弾丸が敵表面の一部を凍らせた。カノンの攻撃だ。
すかさず、ヴォルフは凍った場所を狙って長柄の刃を敵に深々と突き刺す。
即座に引き抜いて離脱しながら、彼は朔耶へと一瞬視線を向け、オルトロスにかばわせてくれたことへと感謝を伝える。
攻性植物に黄金の果実を生み出させていた朔耶が、短く頷いてそれに応えた。
柚子がリキを回復している間に、他の者たちも攻撃に続く。
翼を羽ばたかせてトープが跳躍し、敵の体に蹴りを文字通りめりこませ、体を揺るがせた。
レイスは重力を操り、建物を蹴った。
揺らいだ拍子に、敵の頭部が少女の近くまで来る。
「あなたの頭の部分、本来は何を飾ると思う?」
近くまで来ると、頭部だけで少女の身長よりも大きいことがわかる。
「橙を飾るのよ!」
巨体へ飛び込むように、彼女もまた蹴りを叩き込む。
流体金属でできた胴体に足が深くめりこみ、同時に重力がダモクレスの足を止める。
「教えたところで、風流を解するタイプには見えんがな」
一瞬早く着地したトープが呟く。
「既に硬くなって食べられそうにない鏡餅だなぁ?」
リーファリナのハンマーと、パティの拳がさらに打撃を与える。
レイスは腕時計に目を落とした。
時間は、1分ほど経過したところのようだ。
7分しかない時間が、この戦いの最大の障害だ。
「うひゃあぁ!? 餅がべたついてぇ!?」
めり込んだハンマーが引っかかってしまったらしいリーファリナへと敵が大きく口を空けて襲いかかる。
敵の反撃を仲間が受けている間に、レイスはさらに鎌を振り上げた。
「この漆黒の闇で塗り潰してあげるわ!」
鎌に混沌としたエネルギー体が宿り、刃が長大に変化する。
刃は揺らぎ、敵の傷口をさらに広げる形状を取る。切りつける隙をうかがいながら、レイスは素早く敵の足元を移動していた。
さらに1分が経過したが、ダモクレスはまだまだ損傷した様子は見られない。
パティはダモクレスが近くにある建物に、ネズミのように素早く駆けのぼる。
無人の街を、ケルベロスとダモクレスは徐々に移動しながら戦っていた。
幾人かはなるべく建物を破壊させないように移動していたが、しかしすべてを守りきることは難しい。
「機械なのに、この寒さと雪に平気なダモクレスって本気で味方なら便利だよな……」
朔耶が不満を述べながらも、ロッドをフクロウに変化させて飛ばした。
かわそうとした拍子に、敵はパティのとりついた建物をかすめて削り取る。
接近した瞬間、少女は建物を蹴った。
「喰らうでちゅ!」
粘性をもった体を駆け上がると、少女は首……頭部と胴体の接合部の後ろを、エアシューズをはいた足で痛烈に蹴りつける。
一瞬、動きが止まったところに、他の者たちからも攻撃が命中していった。
集中攻撃を受けながらも、ダモクレスの胴体が大きく口を開けた。
柚子はとっさに、ゴム弓を盾のように体の前へ突き出す。
その視界が、闇に閉ざされた。
意識が飛んだわけではないのは、流体金属の壁が締め付けてくる痛みでわかる。
「……餅に食べられる日が来るとは思いませんでしたが……このまま、やられるつもりはありませんよ」
いつまでもここにいては、仲間を守れない。
手足に力を入れ、彼女は自分を丸呑みにした敵の体をこじ開ける。
グラビティ・チェインが枯渇して弱体化しているそうだが、敵の攻撃力はけして侮れないようだ。
「倉田さん、大丈夫ですか?」
問いかけながら、カノンがオーロラの輝きで柚子や皆を包んだ。
「はい、心配ありません。これが私の万能薬です」
柚子はサキュバスの霧を集めて凝縮した。
桃色の液体を振りかけると、体の痛みが和らいでいく。
その間にも、ヴォルフのナイフがジグザグに切り刻み、鋼の鬼と化した朔耶のオウガメタルが敵を穿つ。
時間はもう、4分が過ぎていた。
●停止するダモクレス
背の高い建物のうち1つが、もう戦場の近くまできていた。
「上から叩き込んで、そのオレンジ頭からへこませようか!」
建物を利用して、リーファリナが鋭い蹴りを叩き込む。
よろけたところにパティの拳がうなりをあげて吹き飛ばした。
滑らかだったダモクレスの体はずいぶんとでこぼこになっていた。
動きもだいぶ鈍ってきている。妨害役である朔耶やトープを中心に、敵の状態を悪化させる技を使っていた者が多かったからだ。
「いくらコミカルな外見だろうが、ダモクレスであり、脅威であることには変わらんからな」
トープは楔状の魔力塊を正面に生み出した。
「緩やかに朽ちていけ――その魂を擦り減らしながら」
魔力塊が敵に与えるのはダメージだけではない。それはまさしく『楔』なのだ。
与えた傷を固定して、さらに敵の状態を悪化させる。
「止まっていなさい。餅は大人しく『つかれる』ものよ」
レイスの揺らぐ刃も奇妙な形の傷を刻んでいる。
「5分経ったわ! 仕掛けるなら今よ!」
攻撃の後、時間を確かめた少女が呼びかける。
だが、それより一瞬早く、別の異変に気づいた者がいた。
「表面が渦を巻いてるぜ!」
「フルパワーが来るぞ、備えろ!」
朔耶とトープが警告を発した直後、ダモクレスの表面に数え切れぬほどの穴が開いていた。
すべての穴の中で、流体金属が激しく渦を巻いている。
守りを固める暇が果たしてあったのかどうか……白色の弾頭と化した塊が破裂したかのように放たれ、真っ白な雨となってケルベロスたちに降り注ぐ。
打撃役の3人を、防衛役の1人と2体がとっさにかばっていた。
雪よりもはるかに硬い塊が地面を、建物を、そしてケルベロスたちを激しく打った。
気力で柚子は立っていたが、リキとカイロはもう動けないようだった。
カノンが雷のオーラを溜めて、柚子の回復に走った。本人も回復の技を使おうとしているようだ。
他の者たちは攻撃に回った。
「よくやったぜ、リキ……」
朔耶はパティをかばって倒れたオルトロスに声をかけた。
手にした杖をダモクレスに向ける。
「解放……ポテさん、お願いしますっ!」
ファミリアロッドが本来の姿、フクロウのポルテの姿を取り戻す。
魔力を込めたポルテを、魔法弾として撃ち放つ。
神経回路を麻痺させる力を秘めた打撃が、ダモクレスへ痛烈な打撃を与えた。
雪のように白い煙を吐き出しながら、ダモクレスはなおも動きを止めなかった。
残りは2分。
「後は、攻撃に全力を尽くしましょう」
カノンはかつていた『彼女』のことを思い出す。
「私は撫子、冷たい撫子。名前は教えてあげないわ」
紡いだ『彼女』の言葉が、魂のリンク……紫陽花の花を形成する。
氷が河となって、敵へと流れ込む。
『彼女』が得意としていた魔法が、共にあるという感覚をカノンに与えてくれる。たとえ一時的なものだとしても。
花びらが、1枚散った。
「後少し、しのいでみせます」
柚子が続き、オウガメタルの拳を叩きつける。
他の仲間たちも、次々に攻撃を加えていく。
「もうすぐ6分よ!」
叫ぶような言葉と共に、レイスが混沌の鎌で切りつけた。
最後の1分に、ケルベロスは全力の攻撃を加えていく。
敵はミサイルで範囲攻撃を仕掛けてきたが、それで倒れる者は誰もいない。
「どこまで逃げてくれますか?」
距離を取った敵を、ヴォルフの投げた刀がどこまでも追いすがり、深々と切り裂く。
さらに、ネイルガン型のパイルバンカーでトープが敵を貫き、凍り付かせた。
「絶対に逃がさないでちよ!」
パティの手刀が首部分をまた強く叩いた。
リーファリナは大きなホテルの前で、魔術円を描き出す。
カーテンの開いた窓に見えるのは、無人の部屋ばかり。
独り身の彼女はもしカップルでも見えたならばジェラシーを感じたかもしれないが……だからといって、なにも感じない光景を見てよかったというわけにはいかない。
「全てを打ち砕く界の怒りよ。力の猛り、轟きをもって我が敵を討ち滅ぼさん」
数多の砲門より異なる界の炎が吐き出される。
炎は命あるもののように這いずり回り、ダモクレスの体へと食らいつき、すべてを焼き尽くしていた。
●餅つきの時間
それなりの時間をかけ、ケルベロスたちが町のヒールを終えた頃、避難していた一般人たちも戻ってきていた。
「こんなところでしょうか。景観には影響しない程度に直したつもりですが」
柚子が周囲を見回す。
「疲れましたね……できれば、温泉にでもつかって疲れを癒したいところです」
カノンがゆっくりと息を吐いた。
「腹減った……ラーメン食いたい……」
雪の上にへたりこんだ朔耶が、義兄を見上げる。
「食べに行くなら、つきあってもいいがね」
答えるヴォルフの声はいくらか穏やかで、朔耶にはくつろいでいるときの声だということがわかった。
「ラーメンも美味しいけど、せっかくだから私は餅つきに参加していきたいな!」
リーファリナが言った。
「餅と言えばきな粉とかが好きだな。ぜんざいとか作れたりするとベストだったりするかもしれないが、どうかな~」
物色するような目で、周囲に並ぶホテルや旅館へ視線を向ける。
途中で、仲睦まじく戻っていくカップルを見て妬まし気な目を見せたりもしたが、とりあえず今はお餅だ。
「ぜんざいね……和菓子の甘さもたまには悪くないわね。お餅をもらえたりするといいんだけど。とりあえず、偵察に行ってみようかしら」
レイスが頷く。
「お餅を食べて、2018年こそ頑張るぞー!」
気勢を上げ、リーファリナはホテルの1つへと突入していく。レイスや、他の者たちのうち何人かも彼女と共に移動していった。
ケルベロスも餅つきに加わるとあって、町はすぐに明るさを取り戻したようだった。
威勢のいい掛け声とともに、昔ながらの臼と杵で餅をつく音が響く。
「本物の餅はこうでなくてはな」
トープが微かに口の端を緩めた。
「とにかく、これでいいでちね」
パティが呟く。
ダモクレスの襲撃によるショックもすでに薄れ、新しい年が明るいものとなることを、誰もが願っているようだった。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年1月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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