新しき陽に掲げ

作者:幾夜緋琉

●新しき陽に掲げ
 岩手県宮古市、浄土ヶ浜。
 その名の通り、極楽浄土の如き白き流紋岩が林立する海岸。
 幾つもの岩の影が織り成す光景を、赤く彩るは……初日の出。
『やはり……綺麗だな! これは、写真に映す価値がある……!!』
 と何枚も何枚も、一眼レフで写真を撮る男性。
 夢中になり、初日の出を映す彼……その背後から、そっと近づいてくるのは、シャイターン『炎彩使い』の一人、『紫のカリム』。
 すっかり夢中になっている彼……真後ろにまで近づくと、次の瞬間。
 彼の周りに紫の炎を飛ばし、炎に包み込む。
『な……!』
 と、驚愕の表情を浮かべた彼に、カリムは。
「あなたには才能があるわ。人間にしておくのは勿体ない程の……だから、これからは、エインヘリアルとして……私たちの為に尽くしなさい」
 と言い放つと、その炎は消え失せ、一眼レフカメラを手にした、写真家の姿をしたエインヘリアルが出現。
 そして、彼に。
「さぁ……行きなさい」
 とカリムが指示を与えると、カメラを構え……そのレンズから、光の筋が撃ち放たれるのであった。

「ケルベロスの皆さん、集まりましたね? それでは、説明させて戴きます」
 と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロス達に一例すると、早速説明を開始。
「どうも、有力なシャイターン達が動き始めている様で……彼女たちは、死者の泉の力を上手く操り、その炎で燃やし尽くした男性を、其の場でエインヘリアルにする事が出来る様なのです」
「そして、その出現したエインヘリアルは、グラビティ・チェインが枯渇した状態になっている様で……人間を殺して、グラビティ・チェインを奪おうと暴れ出す様なのです」
「彼が人間を殺してしまう前に、急ぎ現場へと向かい、暴れようとしているエインヘリアルの撃破を頼みます」
 そして、更にセリカは。
「このエインヘリアルですが、居るのは一体のみです。しかしながら、このエインヘリアルは、その手に持ったカメラを使い、攻撃してくる様なのです」
「ちなみに、そのカメラからは、まるでアームドフォートの様な攻撃を仕掛ける事が可能の様です。かなり強烈な砲台攻撃ですし、遠距離からの攻撃も可能になります。中衛、後衛の方も決して油断しない様にして下さい」
「又、彼自身とてもプライドが高い様です。自分の写真に対する価値観は、誰の写真よりも素晴らしい、と……なので、その自尊心をくすぐる様な言葉を言い放てば、恐らく彼自身挑発に乗ってくる事と思います」
 そして、最後にセリカは。
「何にせよ、状況は予断を許しません。ですが、皆さんなら、きっとこのエインヘリアルによる虐殺事件を止めて頂ける、と信じています。宜しくお願い致します」
 と、深々と頭を下げた。


参加者
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)
虹・藍(蒼穹の刃・e14133)
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)
龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)
ラジュラム・ナグ(桜花爛漫・e37017)
雨野・狭霧(黒銀の霧・e42380)
ティリル・フェニキア(死狂刃・e44448)

■リプレイ

●極楽浄土に
 岩手県宮古市の浄土ヶ浜。
 流紋岩が林立し、幾つもの岩の影が織り成すは、美しい光景と、彩りし初日の出。
 ……しかし、そんな美しい光景を切り取る写真家の男性に近づいたのは、シャイターンの『炎彩使い』の一人である、『紫のカリム』。
 写真撮影に夢中な彼に近づいてきて、不意に紫の炎へと包み込んで、彼をエインヘリアルへと変えてしまった……という。
「うーん……新年早々、シャイターンは何をしでかすかなぁ……」
 と溜息を吐くはシル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)。
 それに龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)、イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)も、虹・藍(蒼穹の刃・e14133)、雨野・狭霧(黒銀の霧・e42380)らが続き。
「新年早々、エインヘリアルにされるとはな……」
「うん、もー、お正月なのにシャイターンも余計な事をするよね!!」
「そうだね。シャイターンも新年から良く働くよね。少しは怠けてくれても良いのに……」
「ええ……新年早々にこんな事になるとは運の無い人もいたもんですね……」
 と、次々と言葉を紡ぐケルベロス達。
 それ程に、エインヘリアルのしでかした事に、ケルベロス達の怒りは蓄積している。
 それにここには、別の話もある訳で。
「ふむ……竜十字島からの襲来がある危険な地域に立ち入るとはな……それだけ此処には、素晴らしい初日の出が拝めるという事なのか?」
 とラジュラム・ナグ(桜花爛漫・e37017)が小首をかしげると、イズナが。
「そうだね。初日の出ってお日様が昇って神さまが現れるっていうことから、お迎えしたりありがたがって拝んだんだよね! だから神さまに願い事したら叶っちゃうかもしれないよね。えへへっ! 初日の出、楽しみだよね♪」
 ニコッと笑うイズナに、軽く笑うラジュラム。そして。
「まぁ、彼の熱意は買うが、こうなってしまっては取り返しも付かぬだろう。彼の望んだこの場所で、せめて苦しまぬ様に屠ってやろうか」
 と言うと、藍は。
「自分の作品にこだわりを持つのは悪い事じゃないと思うけど、シャイターンに目を付けられるほど唯我独尊……まぁ、気の毒ではあるね」
 と肩を竦めると、それにティリル・フェニキア(死狂刃・e44448)が。
「そうだな。新年初依頼だが、油断しないでキッチリ終わらせないとな……しかし今回の相手はエインヘリアルにしては珍しく、普段の素行が悪いとかはないのか……ま、それでも倒さないといけないんだが……」
 と言うと、シル、イズナ、狭霧らが。
「うん。エインヘリアルにされちゃ、救う方法は一つだけ……」
「そうだね。ちゃんと死者の泉に送り返さないとダメだよね。んと、初日の出撮りたかったとは思うんだけど、しっかり帰してあげるからね!」
「ええ。せめて安らかに眠れる様、楽にしてあげるとしましょう」
 と、気合いを込める。
 ……そんな仲間達を横目に、彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)は……。
「共に戦う人々に、重傷で切ない重いをさせないために……だから、私は負けません。さぁ、行きましょう」
 と覚悟を決めて……そしてケルベロス達は、浄土ヶ浜へと急ぐのであった。

●志強く
 そして、ケルベロス達は浄土ヶ浜に到着する。
 うっすらと、地平線から登りつつある朝日……そして、その前に立ち尽くすは、高身長の……エインヘリアル。
 まるでバズーカかと思える程に大きな一眼レフとカメラを手にしたエインヘリアルは……ケルベロス達を視界に納めるも、朝日の方へと向いてしまう。
「綺麗な夜明けね。良い目の付け所をしてるじゃない。でも……人物を撮るのはどうかしら?」
 くすっ、と笑いながら声を掛ける……が、エインヘリアルは余り意に介している様ではない。
 そんな彼に、殺界形成を即座に展開し、周囲を殺気に包み込むと……更にイズナが。
「わたしの緋蝶で世界を埋め尽くして、上手く撮れなくしちゃうよ。ごめんね、あきらめて死者の泉に帰ってね!」
 と、『緋蝶』を視界いっぱいに舞わせる、更に。
「全く……そんな写真を撮ってるだけで楽しいってのが良く解んないけどよ、ま、このままじゃ皆に迷惑を掛けちまうから、さっさとやらせて貰うぜ」
 と漆黒の刀身と、紅の刃という彩りが印象的な妖刀を構え、仕掛ける。
 対するエインヘリアルは……ケルベロス達の方へ、その望遠カメラを向ける。
 傍から見れば、差圧エイしよう、としている様に見えなくもないが、次の瞬間……その望遠レンズの中から放たれたのは……一筋の光。
「ととと……」
 と、ギリギリの所でその一閃を回避した藍、拳を握りしめながら。
「大切なカメラを武器にするってどうよ、それ! その辺りから心がけが間違ってるんじゃないの!!」
 と、強い口調で戒めるのだが……当然、エインヘリアルはニタァ、と笑い、意に介さない。
「やはり、最早人の心もない様だな……」
 と隆也が言うと、ラジュラムも頷き。
「ああ……まぁ、解りきってた事ではあるがな」
 と。
 そして、そのまま隆也も。
「可哀想だが、お前を救う方法はない。これ以上の犠牲者を出さない為、倒させて貰う」
 と鋭い眼光で、真っ正面から見据えると共に……一気に接近。
 至近距離からの『憤怒の魔剣』を叩きつけ、一気に大ダメージを与える事を狙う。
 が……流石にエインヘリアルも去る者で、その攻撃をそのカメラでの望遠部で受け止めてしまう。
「カメラをそんな風に扱っちゃダメだよ!!」
 と更に藍は声を荒げつつ……クイックドロウで武器封じ狙い。
 連続して、狭霧がスピニングドワーフによる服破りを仕掛ける。
 ……が、その大きな図体に似合わない、素早さで上手く交わしていくエインヘリアル。
「以外に素早いねっ……でも、それなら!」
 とシルはスターゲイザーの足蹴りで、足止め効果を狙う。
 小さな身体から繰り出された一撃を喰らってしまうエインヘリアル。そして更にティリル、ラジュラムが。
「全く、綺麗なものを記録に残す為に使うはずのカメラを破壊に使うとはな……本当にそれでいいのか?」
「そうだ! お前さんの写す、他と一線を駕す写真を撮っては貰えんか? さぁ、お前さんがここに生きてた証を残せ!」
 と言う言葉を投げかけながら、エインヘリアルへ『シゼアルディ』と、死天剣戟陣の猛攻。
 そして、仲間達の動きを一通り見据えた上で続くは悠乃。
「前衛が六人……しっかりしないと、いけませんね」
 と自分に言い聞かせる様にしながら、癒しの天使で自分へ癒アップを付与。
 そして次の刻、エインヘリアルは……動きは変わらず、その望遠レンズからまたも光を収束させたビームを放つ。
 一貫く一閃は、当たれば大ダメージになるのは間違い無い……掠っただけでも、その痕がひりひりと焼けるように滲む。
「本当、面倒臭い攻撃ね!! もうちょっと、そのカメラを別の方向に活かせないのかしら!」
 と藍が言うも、当然聞く耳は持たない。
 そして、反撃とばかりに藍がバスタービームを放てば、ラジュラムも月光斬、ティリルも呪怨斬月で次々に仕掛け、ダメージを追加。
 更にクラッシャーのシルは。
「その魂ごと、撃ち砕かせてもらうよっ!」
 と降魔真拳を抜き様に放ち、隆也は連続しての旋刃脚、そして狭霧が月光斬と続く。
 真っ正面からの直撃、とまではいかないが、確実に、少しずつダメージを追加。
 そして……一刻毎に、仲間の体力状況を見据え、悠乃が癒しの天使で、更に回復。
「絶対に、戦線は維持します……皆さんは、戦う事に集中して頂ければ……」
「了解、いつも回復さんきゅーな!」
 にっ、とラジュラムは仲間には笑みを魅せつつ、エインヘリアルには真摯な表情。
 勿論エインヘリアルにはそんな事は構い無く、ただただ攻撃。
 フォートレスキャノンの他、ロックオンレーザーの様な攻撃も織り交ぜてきて、武器封じの効果にて少しでも優位に進めようと……。
「させないよっ。こんなところで負ける訳にはいかないんだっ!」
 とシルが強い口調で宣言すると、他の仲間達もそれに頷く。
 そして藍のドレインスラッシュに、ラジュラムの死天剣戟陣、そしてティリルが。
「プレゼントだ、受け取りなッ!」
 と『シゼアルディ』を射出、巨大な氷剣を深く貫き通す。
 そして、隆也も。
「手加減はなしだ。死んでもらうぞ」
 と『憤怒の魔剣』で、その腕を斬り裂いていくと、狭霧が連携し。
「雑に潰しますよ」
 と『乱花』。
 ……その一閃が、エインヘリアルの片腕に、深い閃痕を遺すと。
『グ、グゥウウアアアア……!!』
 耳を劈く悲鳴。
 残る片腕では、カメラを上手く支えることも出来ず、生じるは大きな隙。
「今がチャンスみたいだよ!」
 と、シルが仲間達に声を上げる……それに従い、イズナが仲間達を援護する様に、稲妻突きで更なるパラライズを付与。
 全身が一気に痺れ、動きが大幅に鈍った所でシルが。
「さあ、限界突破の全力全開で行かせて貰うよ!」
 と、至近距離から『六芒精霊収束砲』を叩きつける。
 眼前で炸裂する魔力砲……力無き手を完全にぶっ放すと、残る手に対し隆也が。
「……これで終わりだ」
 と、更なる憤怒の魔剣を叩きつける。
 その一閃は、エインヘリアルの身体を一刀両断……そして。
「さあ……終わりだよ、貴方の心臓に、楔を!」
 と藍が『星虹』。
 星銀の弾丸が、次々とエインヘリアルを貫いていき……エインヘリアルは、壮絶な表情と共に、崩れ墜ちて行くのであった。

●寒風吹いて
 そして……どうにか無事にカメラマンのエインヘリアルを倒したケルベロス。
「ふぅ……どうやら終わった様だな」
 と息を吐き、武器を降ろす隆也。
 一度目を閉じて、死した彼への冥福を祈ると……それに藍も手を合わせて、彼の冥福を祈る。
 ……確かに、彼はここで生きていた。
 ただ、普通に写真を撮って生きていた筈……。
 そして、その痕跡を示すが如く、目の前にコロンと転がったのは……彼の遺品である一眼レフ。
 それを拾い、彼の撮った今迄の写真を見ていくラジュラム。
 様々な所で撮影した、美しい日の出の写真。
 どうも彼は、日の昇る瞬間に魅せられ、色々と撮影していたらしい。
「……ふむ」
 と、ラジュラムはその写真を見つつ……その身分を証明する写真、家族の写真などを探していく。
 幸い、彼の家族写真も見つかった。
 そして、ラジュラムは撮影されたメモリーカードを取り出し。
「これは……一人の人間が確かに生きた証だ。これは、彼の家族の元へと送ってやろう……」
 と、そのメモリーカードを包む。
 その傍らで狭霧は、自分の持参したカメラを取り出し、薄暗くも、日が出つつある流紋岩とのコントラストを数枚撮影。
 新年最初の初日の出と、赤く色付く朝焼けの光景が、ケルベロス達の目前に広がる……幻想的な光景。
「……朝焼け、綺麗だね。これに見送られて逝けるのなら、少しは良かったのかな……」
 と藍が言うと、イズナやシルも。
「うん。きっと、この初日の出が、エインヘリアルさんを弔ってくれるハズだよ……」
「そうだね……今年も、いい年でありますように……」
 と、それぞれが祈りを捧げ、初日の出の光景に自分の祈りも捧げる。
 そして……しっかりと初日の出を拝んだ上、周囲の戦闘の痕跡を一つ一つヒールグラビティで癒していく。
 ……すっかり空に初日の出が上がる頃には、その回復も大方終わらせて……。
「……これ位で宜しいでしょうか。それでは……帰りましょう」
 と悠乃の言葉に皆も頷き、そしてケルベロス達はその場を後にするのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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