失伝救出~悲劇を繰り返さない

作者:柊暮葉


 繰り返される、その日。
 その日、街が侵略を受ける。
 侵略者は強大で真っ赤な鱗を持つ--ドラゴン。
 蜘蛛の子を散らすように人々は逃げ惑い、パラディオンは人々を守るために戦う。
 逃げ落ちた先の代聖堂は、ドラゴンの攻撃を連続で受け続け、今にも崩れんとしている。
「いつから戦い続けているのだろう……」
 三人の男性からなるパラディオンで、最も年長の男が呟いた。
 どんなに聖歌でドラゴンを迎撃しても、迎撃しても、終わりが来ない。既に時間の感覚はなくなりつつあった。
 終わりの来ない、地獄。
 空で延々と鳴り響く醜悪と恐怖のドラゴンの咆哮。
 倒れては甦る仲間達。
 繰り返される悲劇の光景。
「こんな時に、彼らがいてくれたら……」
 年長のパラディオンが呟くと、他の二人が怪訝そうな顔をした。
「彼ら? 誰のことだ?」
「……?」
 年長のパラディオンは自分でも訳が分からなかった。疲弊して起きたまま夢でも見たのだろうか。
 デウスエクスを討てる者など、この星にはいない。その事を思い出すと暗い絶望に胸が支配される。
 彼らは気づいていない。ドラゴン、倒れては生き返る仲間、怯えて悲しむ人々、それら全て残霊であることに。

「寓話六塔戦争の勝利、おめでとうございます。今回の依頼は、この戦いで情報を入手した失伝ジョブ、パラディオンの救出になります」
 ソニア・サンダース(シャドウエルフのヘリオライダー・en0266)が説明を開始した。
「救出対象者は三名。いずれも男性で、ドリームイーター『ポンペリポッサ』の特殊なワイルドスペースに囚われています。パラディオン達は、ワイルドスペースの力により、自分達を大侵略期の人間と錯覚しています。ポンペリポッサの目的は、彼らを絶望により闇に堕とし、反逆ケルベロスとして利用する事ではないでしょうか」
 ソニアは説明を続ける。
 だが、寓話六塔戦争の勝利で、パラディオン達の救出が可能となった。今回の作戦では、ワイルドスペースに潜入し、繰り返される悲劇を終わらせ、男性達を救出することが使命である。

「このワイルドスペースは特殊な空間で、失伝ジョブの拾得者でなければ潜入出来ません。内部は古い聖堂を模した空間で、パラディオン達は逃げ落ちた人々を守るために、自分を犠牲にいて戦っています。空間内では大侵略期の悲劇が延々と繰り返されていますが、全てが残霊で生身の存在ではありません。囚われたパラディオン達をワイルドスペースから救出するには、ドラゴンの残霊を撃破し、彼らの心から絶望の闇を払う必要があるんですね」
「三名のパラディオンは大聖堂の入り口付近で戦っています。既に満身創痍で満足に戦える状態ではないので、前線に立たせない方が無難です」
「敵となるドラゴンの能力はこちらです。ポジションはディフェンダーと思われます」

 踏みつけ。
 頑健 近単 破壊+ブレイク。
 火炎ブレス。
 頑健 遠列 破壊+【炎】。
 体当たり。
 頑健 近列 斬撃+【足止め】。

「戦闘が長引いてワイルドスペース内に長時間とどまると、ワイルドスペースに囚われてしまう危険があります。ドラゴンを撃破したら、パラディオンを連れて迅速に離脱してください。そうでないとミイラ取りがミイラになっちゃいます」

 最後にソニアは言った。
「こんな、悲劇を乗り越えて戦い続けてきた、失伝ジョブの先達の為にも、必ず救出してあげてください」


参加者
紗・緋華(不羇の糸・e44155)
葛葉・零児(地球人の妖剣士・e44280)
ルデン・レジュア(夢色の夜・e44363)
天杭・魎月(レプリカントのブラックウィザード・e44438)
ガスト・ドライブ(黒の突風・e44577)
カタリナ・アウローラ(ヴァルキュリアのパラディオン・e44855)
八重倉・翔(バレットレイン・e44992)
レシタティフ・ジュブワ(フェアリー・e45184)

■リプレイ


 ワイルドスペース内に囚われた失伝者達を救う--それが今回のケルベロス達の任務であった。

「グォオオオ……ン……!!」
 耳をつんざくドラゴンの咆哮。
 ワイルドスペース内部の大聖堂。
 そこで、延々と惨劇は繰り返されていた。三人のパラディオン達の心身は既に限界を突破していた。それでも彼らは避難者を守るため、同じ歌を繰り返していた。
 一人が「悠久のメイズ」を歌い上げてドラゴンを麻痺させようとし、わずかにタイミングをずらしてもう一人が「リペリダンス」を駆使してドラゴンに斬撃を与えようとする。
 しかし、その途端にドラゴンは炎を吐き散らしながら突進してきた。
「危ない!」
 火炎に巻かれた仲間達が踏みつけに合いそうになる。残された最後の一人が懸命に「スカイクリーパー」を唱え、回復させようとする。
 だが、間に合わない--!!

 刹那、ガジェッティアの「人体自然発火装置」が起動した。
 遠距離のドラゴンの体が炎に包まれ、仰天したドラゴンは首をのけぞらせながら慌てふためく。
「待ってろ同士よ今行くぞ!!  俺のスピードの全てを賭けてお前たちを救ってみせる!!!」
 駆け込んできたガスト・ドライブ(黒の突風・e44577)は、呆気に取られているパラディオン達とドラゴンの間に割り込むと、鋭くガジェットを構えてドラゴンと対峙した。
 跳び蹴りを決めたかったが、通常攻撃では残霊とはいえドラゴンには効力がない。
 抗戦姿勢を見たドラゴンが目を剥く。
 そこに紗・緋華(不羇の糸・e44155)が身を割り込ませると、重い重い重力を帯びながらスターゲイザーでドラゴンの胸元を蹴り上げた。ドラゴンが後退する。
「加勢に来た。アンタ達は……消耗しているみたいだから、無理はしないで。戦うとしても後方(Md)で、回復に専念していてほしい」
 パラディオンを振り返ると緋華はそっけないぐらいの口ぶりで事実をありのままに告げる。
「……大丈夫。この程度なら、私達でも相手出来る。今日までで、絶望は終わり。今日からが、希望の始まり。それを、証明して見せるから」
「あ、なたたち……は?」
 最年長の男がかすれきった声でそう尋ねる。
「ケルベロス」
 パラディオンに背を向け、ドラゴンを険しく睨み付けて緋華はそう答える。
 そこに葛葉・零児(地球人の妖剣士・e44280)が現れた。女性にしか見えない顔に笑みを浮かべて隣人力をふるい、緊張しているパラディオン達に話しかける。
「もう大丈夫だ。俺達ケルベロスが来たから安心してくれ。絶対に守るから!」
 ワイルドスペースに囚われた魔力と、かつての記憶、そして希望がパラディオン達の中でせめぎあう。
 ケルベロス。その記憶は。ケルベロス。その未来は。

「まさか--!」
 助かるのか、と、踏みつけにされそうになっていたパラディオン達は彼らを見上げる。

(「周囲を常に気を付けないと……ああ、戦う前にパラディオンの人達はジャマーからメディックに移るよう……言っとかないと……」)
 ルデン・レジュア(夢色の夜・e44363)はドラゴンの前で位置を取りながら口の中でぶつぶつ言っている。
「……後ろから支援を頼む……」
 まだ状況に戸惑っているパラディオン達に、ルデンはそう告げた。
「来いよドラゴン。私達が相手だ」
 そして彼は、最強を謳われるドラゴンに向かってきっぱりと言い放つ。

 天杭・魎月(レプリカントのブラックウィザード・e44438)は疲れ果てているパラディオン達に次々にとゴーストヒールをかけた。
 その片手には使い捨てカメラ。
「きっきっき、例え幻でしかなかったとしても仲間と共に戦いドラゴンから守り抜いた『想い』はここにってねぇ。カメラ要るかい? 要らないなら俺が貰ってくな」
 そんなことを言いながら周囲の残霊達を撮影していく。

「聖王女様、私達に彼らを救う力をお与えください」
 カタリナ・アウローラ(ヴァルキュリアのパラディオン・e44855)は祈りを捧げるとパラディオン達の前に立った。
「みんなの言う通り、メディックに下がって、自分達と仲間の回復に専念してください。後は、私達が」

「悲劇はここで終わりだ。君達を助けに来た。ここまでよく人々を守り、頑張ってくれたな」
 八重倉・翔(バレットレイン・e44992)は、傷つき疲れ果てているパラディオン達に礼儀正しく声をかけた。かつて、自分を救ってくれた憧れのケルベロスをリスペクトしながら。
「心配ない。あれは必ず俺達が倒す。そうだな、もし協力してくれるのなら、後方支援をお願いできるか?」
 パラディオン達は、顔を見合わせている。

 レシタティフ・ジュブワ(フェアリー・e45184)は、リボルバー銃でクイックドロウを行いながら現れた。ドラゴンの攻撃を封じながら、やっと回復を始めたパラディオン達を振り返る。
「諸先輩方よ。パラディンの先輩方。貴様らの勇姿には感動している。助太刀に来た、もう大丈夫だ。我々は打ち勝てる。貴様らの歌は確かに響いている。さぁ、奮迅し立ち向かおうではないか。共に立ち向かおう!」

 パラディオン達は、ケルベロスの事を完全に思いだした訳ではなかった。だが、彼らには強い力があること、そして最早自分達が失った希望を胸に抱き、ドラゴンに立ち向かっている姿を見た。だから彼らは、何も言わずに後列に下がり、扉の前を完全に塞ぐと、足手まといの邪魔にならないように自身達の回復を始めた。

 大聖堂の前を涼やかな風が吹きすぎる。戦況が変わった。
 そのことをドラゴンも感じ取った。醜悪な瘴気を放ちながらドラゴンは恐怖を誘ううなり声を上げ、ケルベロス達の方へと突進してきた。
「卑劣な下等生物が……貴様らに未来などない……!」
 呪いのような声を響かせながら、ドラゴンは足を振り上げる。
 咄嗟に身を庇ったガストだったが、ドラゴンの巨大な足が彼を踏みつぶそうとする。ダメージを半減しつつもその場に崩れ落ちるガスト。

「跪け! 絶望しろ! 貴様らに未来などない!! 貴様らは我らデウスエクスの餌! 飼料に過ぎないのだ!」
 吼える。猛る。ドラゴンはいたぶってきたパラディオンを奪われた事が口惜しいのか。

「人間は餌なんかじゃありません」
 カタリナはぶるりと体を震わせると、唇を噛み、高々と跳躍した。
 七色の虹を纏いながら、急降下しつつドラゴンに蹴りを入れる。
「お返しします!」
 ファナティックレインボウで踏みつけたカタリナへ、ドラゴンが怒りの視線を当てる。
 緋華は杭(パイル)に「雪さえも退く凍気」を纏わせ、ドラゴンを突き刺し凍らせた。
「きっきっき、さてはてどの攻撃がお好みかねぇ?」
 魎月はドラゴニック・パワーを噴射しながら超加速したハンマーでドラゴンの足を叩き潰す。
 レシタティフは自身を光の粒子に変えると、ドラゴンへと特攻を行った。
「初陣が竜退治か……とりあえず斬るか」
 零児はチェーンソー剣を振るい、卓越した技量の一撃でさらにドラゴンを凍らせていく。
「では始めるか。バックアップは任せてくれ」
 翔は動力装甲から魔導金属片を含んだ蒸気を噴出し、傷ついたガストを回復させて防御を固めた。
 ガストは立ち上がると、エアシューズの摩擦熱を燃え上がらせながら、ドラゴンを強烈に蹴り上げた。
『夜の終わり、始まる我ら、刮目されし色彩よ。花となりて世界を映せ……夢幻色/紫』
 ゴッドペインタ-、ルデンが夢幻色/紫(ドリーム・カラーヴィオレス)を塗り上げる。
(「我らは私で私は色。花を描き武器にする。見る者を魅了し傷つける色彩。花の種類はもちとん形も全部その時々で違う……」)
 紫の花の刃がドラゴンを足止めにしていく。

「グォオオ……!!」
 怒り猛るドラゴンの咆哮。
「貴様らごときが……! よくも……!!」
 手傷を負わされた事に怒り狂い、ドラゴンは醜悪な罵詈雑言を叫ぶ。
 呪いの言葉を吐き散らしながらも大きく口を開け、臭気を放ちながら、口から巨大な火炎を吐き出した。
 劫火は猛烈な勢いで燃え上がりながらケルベロスの前衛を飲み込んでいく。
 炎の中で喘ぐ、魎月、ガスト、カタリナ、レシタティフ。

「回復する。少し待ってくれ」
 翔は地面にケルベロス・チェインを展開し広げていく。そして仲間を守る魔方陣を描き、炎の中の仲間達を回復し、守る。
 ガストは自らにスチームバリアを使って火傷を癒やしていく。
 カタリナはエクトプラズムを圧縮すると巨大な霊力弾丸を作り、ドラゴンに向けて発射した。
 緋華はズタズタラッシュで無慈悲な斬撃を繰り出していく。
 魎月は虚無魔法を唱える。不可視の虚無の球体を放ち、ドラゴンを消滅させようとする。
「倒れるまで斬るだけだ」
 零児は熱を持たない「水晶の炎」で遠いドラゴンを斬り刻む。
「小柄な事はいいことだな」
 レシタティフは小さい体を華麗に回転させて勢いをつけ、無数の黒鎖を投げ放ち、ドラゴンを捕らえる。
 じわじわと弱らせられ、ついに捕らえられたドラゴン。
「怖いがみんなでやれば倒せる!」
 そこにルデンは走り込んでいくと、死の淵で得た「零の境地」を拳に載せて、ドラゴンを石化させていった。

「ヴ……グ……!」
 度重なる被ダメージにドラゴンは信じられないというように目を見開き、ケルベロス達を凝視する。
 その奥にはいたぶってきたパラディオン達が、絶望を捨てた眼差しでドラゴンを見上げている。
「ユル……サヌ……!!」
 ドラゴンは臭い唾液を飛び散らせながら叫ぶ。
「赦さない! 貴様らの行く手に、希望などない! あってはならないのだ!!」
 ドラゴンは巨体をうねらせ、持ち上げ、さらにひねるようにしてのたうつ。
 全身で怒りを表現しながら、太い足を振り上げて接近してくる。
 ケルベロス達は逃げたくとも、背後にパラディオンを庇っている。
 パラディオン達は頑なに大聖堂を守り、動こうとしない。そこには彼らが守り抜いてきた大切な避難民達がいるのだ。逃げるなんて出来ない。
 弱者を庇い動けない者へと、醜悪で巨大なドラゴンは、渾身の力をこめて体当たりをぶちかました。
 小さなレシタティフなどたやすく吹っ飛ぶ。魎月、ガスト、カタリナも無傷ではいられない。衝撃に耐えきれずに地面に倒れ伏す。

 そこで一斉に、傷つき弱り果てていたパラディオン達が「スカイクリーパー」を歌い出した。三重奏で共鳴しながら「スカイクリーパー」が倒れたケルベロス達を包み込むように回復していく。
 絶望に呪われた彼らは、再び立ち上がるケルベロスの背中にも悪夢を見る。
「どうか、二度と倒れないで……ください」
 か細くうめき声を絞り出すパラディオン達。

「絶対に負けない。全員、救い出す!」
 勇気づけるために翔は宣言すると、オリジナルグラビティを行使する。
『心配ない、回復弾だ』
 グラビティで作り上げた回復効果のある榴弾を前衛へ向け投擲する翔。
 ヒーリンググレネードの爆風により、完全回復していく前衛達。
 カタリナは再び天空高く跳躍すると、ファナティックレインボウでドラゴンを蹴り下ろす。
 ガストは肘から先をモータードリルで回転させながらドラゴンの肉を抉るように攻撃。
「こ、怖いけど……やらなきゃ! 終わらせなきゃ!」
 ルデンは卓抜した技量の一撃でドラゴンを凍らせていく。
「残霊は消えろ!」
 零児はチェーンソー剣で傷口を切り広げ、ドラゴンの苦痛を増して行く。
『私が成る。私が求む。運命を断つ、赤い糸。【糸の如く】』
 詠唱とともに緋華は自身の指先から、血を細く硬化させつつ射出する。呪いをこめられた血の糸は鞭のようにドラゴンに絡みつき、物理ダメージを与える事は勿論、生命エネルギーそのものを損傷させていく。
『我が血と鋼を以て、永劫をも穿つ銀となれ 私は穿つ者の始にして頂 我が心臓に誓って唯一つ――もはやそなたを縛めるものはそこにない』
 魎月のコル・アルゲントゥム。
 魎月のドラゴニックハンマーが粒子状に分解さ、胸が開かれ現れたた混沌の心臓に吸収されていく。超複合金属と化した銀色の心臓を掴み、取り出して「銀色の杭(パイル)」に変え、指笛を鳴らす。ドラゴンを封じる様に天空より無数の杭を召喚され、共に、「銀色の杭」を槍として飛翔突撃、敵を穿つ魎月。
「貴様らには絶望を! 死を!」
 呪詛を吐き散らしながらのたうち暴れるドラゴン。しかしその体は斬り刻まれ、血を流し、醜悪な臭気を放ちながらも絶命の寸前。
 そこにレシタティフがリボルバー銃を構える。
「さぁ、惨めに死にさらせ、蛆虫め」
 銃声--。
 完璧な操作によりレシタティフはドラゴンの眉間をヘッドショットで射抜いた。

「がっ……はっ……」
 ドラゴンはそのまま大きくのけぞり、重量感の漂う音を立てながら、大聖堂の前の地面に横に倒れた。痙攣していたのも束の間、すぐに動かなくなり--息絶えた。


「お、終わった……? ……ドラゴンこっわぁ……この場所に、喰らわれる前に帰るか……」
 ルデンは冷や汗を拭いながらそう言った。
「ふぅ、年明け早々からこんな仕事とは、地獄の番犬もなかなかに難儀なものだな」
 レシタティフもそう呟いた。
 魎月は写真を利用してゴーストスケッチなどをしたかったが、もう時間がなかった。
 カタリナはぐったりしているパラディオン達に駆け寄ると、幻夢幻朧影で片っ端にヒールをかけた。
「ありがとうございます」
 パラディオン達は、皆、礼を口にして頭を下げた。
「……付いてきて」
 戦闘が終わっても油断は出来ない。即刻、ワイルドスペースから脱出しなければケルベロス達まで囚われてしまうのだ。
「悪夢の出口へ、アンタ達の帰るべき場所へ、連れて行く」
 パラディオン達は立ち上がったが、その緋華に背を向けた。そして、両腕に力を強くこめ、大聖堂の扉を開いた。
 中には、絶望に表情すらもなくした避難民達が体を縮めて耐えていた。
「みんな、ついてこい。戦いは、終わった。脱出するぞ」
 最年長の男がそう言った。
「俺達は、助かったんだ!」
 避難民達はすぐには信じられないようだった。だが、気力をなくした彼らは、ただ銘じられるままに、パラディオン達の方へ歩いてきた。
「外には助けを待つ人々が大勢いる。悲劇を防ぐため、よければ俺達に力を貸してくれないか?」
 翔は気力を取り戻したパラディオンや避難民達にそう声をかけた。
 パラディオン達はゆっくりと微笑んだ。彼らは笑顔まで、取り戻していた。
「同じ悲劇を繰り返している人がいるのならば……その絶望を終わらせたい……」

 一つの悲劇に終止符が打たれた。
 男達は絶望を捨てた。希望と呼べるものがあるかは、まだ、分からない。
 だが、同じ失伝の仲間とともに、パラディオン達は絶望の罠から抜け出して、明日へと一歩を踏み出したのだった。

作者:柊暮葉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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