正月! 巨大門松ロボを逃がすな!

作者:秋津透

 愛知県半田市、深夜。
 市の中心街に立ち並ぶビルの一つが、いきなり、どーんと音をたてて崩れ落ちた。
 その内部から出現したのは、全長7メートル強の巨大……門松であった。
 いや、よく見れば、あらゆる構造が金属であり、松でも竹でもない。しめ縄や藁のように見えているものも、すべて金属だ。巨大ロボ型デウスエクス、ダモクレスである。
 と、門松型ダモクレスは底面から轟轟とジェットを噴射し、地上一メートルほどに浮き上がる。そして、そのまま前進し、触れた建物をがらがらと壊す。
「ア・ケ・マ・シ・テ! オ・メ・デ・ト・ウ! ゴ・ザ・イ・マ・ス!」
 ダモクレスが、全身を震わすようにして咆哮する。凄まじい破壊音波を受け、周囲のビルの壁面に亀裂が走り、中にはそのまま崩れるものもある。
「オ・ト・シ・ダ・マ!」
 竹のように見える部分の上面が開き、無数のミサイルが一斉発射される。周囲の至るところで爆発が起こり、たちまち火の海となる。
「ア・ケ・マ・シ・テ! オ・メ・デ・ト・ウ! ゴ・ザ・イ・マ・ス!」
 正月早々、凄まじい災厄を撒き散らした巨大門松型ダモクレスは、やがて空間の一角にぽかりと開いた通路……魔空回廊に吸い込まれて消えていった。
 後には、轟轟と燃え続ける市街だけが残された。

「巨大門松型の復活ダモクレスねぇ……変形の一つもしてくれれば面白いのですけれど、そういうわけにもいかないようですわね」
 フィルメリア・ミストレス(夜の一族・e39789)が、嫣然と笑みを浮かべながら、呆れたとも面白がっているともつかない口調で言う。
 そしてヘリオライダーの高御倉・康が、こちらは対照的に緊張した表情で告げる。
「愛知県半田市で、巨大ロボ型ダモクレスが復活して暴れだすという予知が得られました。このダモクレスは、えー、なぜか巨大な門松のような形をしていて、えー、なぜか年賀の挨拶のような声を放ちますが、グラビティ・チェインが枯渇していていて戦闘力が大きく低下しているはずにもかかわらず、ミサイルと破壊音波で街をあっさり破壊しつくすというとんでもない奴です。例によって出現七分後には魔空回廊が開き、ダモクレスを回収してしまいますので、その前に撃破していただくよう、お願いします」
 そう言うと、康はプロジェクターに地図と画像を出す。
「ここが現場です。巨大門松型ダモクレスの出現は、今夜半、零時ちょうどと予知されており、既に周辺地域では避難が開始されています。ダモクレス出現時には、予想戦闘範囲内には誰もいない状態になります。皆さんが現場に到着するのは、今夜十一時五十五分。ダモクレス出現までの時間は五分間です」
 そう言って、康は一同を見回す。
「巨大門松型ダモクレスのポジションは不明。判明している使用グラビティは破壊音波とミサイル。いずれも列攻撃グラビティと思われます。それから、これまでの例から考えて、おそらく戦闘中に一度だけ、ダモクレスはフルパワー攻撃を仕掛けてくると思われます。まともに受けたら一撃で戦闘不能にされる危険性が高いですが、フルパワー攻撃の後は、敵もおよそ2ターン行動不能になるはずです」
 そして、康は溜息をついて続ける。
「ふざけてるとしか思えない形のダモクレスですが、破壊力は相当のものです。これを回収されて完璧に整備、エネルギーチャージされたら、どれほどの脅威になるか想像したくもありません。どうか、きっちり斃していただけるよう、よろしくお願いいたします」


参加者
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
フィルメリア・ミストレス(夜の一族・e39789)
李・風美(胡乱でチャイナな瓶底眼鏡・e40773)
龍道寺・麟華(絶対正義のメガセレブお嬢・e41604)
箒星・ぬぬ子(レプリカントの鎧装騎兵・e41647)
ヒメカ・ベイバロン(空虚な女・e42130)
エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)
サナレ・マキャフリー(四属性使いのちびっ子魔女・e43370)

■リプレイ

●門松を待ちながら
「まだ松の内ではあるんだし、門松を片付ける時期ではないとは思うけど……まあ、一寸早いかもしれないけど、どんど焼きをして歳神様と、ついでにダモクレスに天へとお帰り願うとしますか……」
 ヘリオンの中で、ヒメカ・ベイバロン(空虚な女・e42130)が提供した「黒毛和牛入り豪華絢爛正月芋煮」を賞味しながら、日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)が呟く。
 するとサナレ・マキャフリー(四属性使いのちびっ子魔女・e43370)が、意外そうに訊ねる。
「ん? 今回の作戦は、ダモクレスに天にお帰り願っては失敗なのではなかったかな? 逃がすことなく、地で朽ち果ててもらわねば!」
「いや、それはそうなんだけど、どんど焼きってのはね……」
 来日して日が浅いサナレに、蒼眞はどんど焼きの風習を説明しかかったが、うまく表現できずに口籠る。
「……まあ、つまり、ダモクレスを焼いて灰と煙にしちまおうってこった」
「うーむ。本物の植物性門松ないざしらず、全構造金属のダモクレスを灰と煙にするのは、けっこう大変だと思いますぞ」
 やはり芋煮をかっ食らいながら、エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)が突っ込む。
「やはりここは、爆破に継ぐ爆破を重ね、バラバラの粉々にして始末するのが、妥当な線ではござらぬか?」
「……いやまあ、別に、それでもいいけどさ」
 やっぱり外国人に、どんど焼きについて理解してもらうのは難しいよな、と、蒼眞は呟く。
(「今日が大晦日で、新年が明けると同時に門松と戦闘開始、なんて状況だったなら色々と揃っていて面白かったんだけどな」)
 声には出さずに蒼眞は続ける。どうも、さほどどんど焼きにはこだわっていないらしい。
「正月を祝いたいのかぶち壊したいのか……少なくともワタシ達の正月休みは壊されたアル。でも、美味しい芋煮をゴチになったから許すアル」
 こちらも芋煮をかっこんで、李・風美(胡乱でチャイナな瓶底眼鏡・e40773)が言い放つ。
「更に、戦闘終了後には、豪華おせちが我らを待っているアルー! やったるでぇー!!」
「ええ、その通りですわ。作戦成功の折には、我が龍道寺家で用意した豪華なおせちを皆様に振舞いますわ! 十段重ねのお重ですわ! ご遠慮なさらず食べて下さいまし! オーッホッホッホッホ!」
 龍道寺・麟華(絶対正義のメガセレブお嬢・e41604)が高笑いを放ち、フィルメリア・ミストレス(夜の一族・e39789)が苦笑する。
「あらあら、それはごちそうさま。せっかくですから、私もお雑煮でも作って振る舞おうかしら」
「……その時には、貰いすぎて余ってるお歳暮の高級ハム詰め合わせセット『継承』を提供するよ」
 ヒメカが物憂げに言い放ち、麟華に訊ねる。
「それとも、おせちに追加した方がいいか?」
「ええ、それもよろしいですわね」
 麟華は鷹揚にうなずき返すが、箒星・ぬぬ子(レプリカントの鎧装騎兵・e41647)が少々心配そうな表情で、一同を見回す。
(「皆さん、もう、勝つのは前提という感じで、倒し方とか事後の宴会の相談とかで盛り上がってますね……自信があるのは大変よいと思いますが、今回の敵、なかなか厄介な気がするのですが……」)
 でも、あんまり弱気なことを言うのも憚られますし……と、ぬぬ子は躊躇気味に視線を漂わせる。そこへ、ヘリオライダーからのアナウンスが響く。
「現在、現場到着五分前、目標出現十分前です。降下準備願います」

「ふむ。敵は、あのビルを内部から壊して出現、この通りへと前進してくるのでござるな」
 降下と同時に、エドワードはヘリオライダーの予知図と現場を照らし合わせ、爆薬らしきもののセットにかかる。
 蒼眞は地上で、ヒメカは空から周囲を巡回。併せて避難情報を検索し、万が一にも逃げ遅れた市民がいないか確かめる。
 そして、五分間はあっという間に過ぎ、配置についたケルベロスたちの目の前で、どーんと音をたててビルが崩れ、最大高7メートル強の巨大門松が出現した。

●正月早々、激闘七分間!
「いくぞ」
 門松ダモクレス出現とほぼ同時に、蒼眞が斬霊刀を振りかぶって飛び込む。達人の一撃が決まり、切断面を凍りつかせる。
 するとダモクレスは、全身を震わせて破壊音波を放った。
「ア・ケ・マ・シ・テ! オ・メ・デ・ト・ウ! ゴ・ザ・イ・マ・ス!」
「うわっ!」
 前衛の四人に攻撃が及ぶが、麟華はディフェンダーのぬぬ子に庇われ無傷で済んでいる。その代わり、庇ったぬぬ子は二人分のダメージを受ける。
「ダメージもさることながら……心配なのは催眠ですわね」
 眉を寄せ呟くと、フィルメリアは前衛に薬液の雨を降らせ、治癒と状態異常解消を行う。
 続くエドワードは、バスターライフルから冷凍ビームを撃ち、蒼眞が張り付けた氷を強化する。
「コレがウワサのカドマ=Ⅱ……こんだけでかいなら、旅団に持ち帰って飾ってもいいでござるな!」
 爆破で粉微塵に砕くつもりでござったが、中枢のみを破壊して外殻はリサイクルするのもまた一興、と、エドワードはデュフフフと笑う。
 一方ぬぬ子は、自分自身にマインドシールドを展開。ダメージを癒し、防御力を高める。
 そして風美は、門松ダモクレスを見据えて叫ぶ。
「目には目を! 竹には竹を! 出番アルヨ、『商竹売』!!」
 そう言うと風美は、チャイナ服の袖から黄金のタケノコを取り出し、その輝きで前衛を癒す。これでほぼ、前衛が催眠に冒される恐れはなくなったわね、と、フィルメリアがやや表情を和らげる。
 そしてヒメカが、ぶるぶるっと頭を振るい、門松ダモクレスを睨み据える。
「全力攻撃……降魔真拳・奥義……晨覇降魔拳!」
 いきなりオリジナルグラビティ『晨覇降魔拳(シンハ コウマケン)』を発動させ、ヒメカはダモクレスに正面から突撃、拳を叩きつける。拳に纏った紅の輝くオーラが尾を引き、喰らいつく龍のように見える。どーん、と重い音がして、ダモクレスの竹のように見える部分の基部から黒煙が噴き出る。
 そこへ麟華が、フォートレスキャノンを撃ち放つ。
「お正月らしく派手にゴージャスにいきますわよ!」
 そしてサナレが、懐に手を突っ込んだ途端、わずかに表情を引き攣らせる。
(「オ、オリグラの薬液瓶、忘れてきた!?」)
 予定では、前列に命中率上昇エンチャントを行うはずだったが、いかんせん、オリジナルグラビティの装備がない。やむを得ず、サナレは元々の予定通りに行動しているような顔で、蒼眞に破壊力上昇と治癒の電撃エンチャントを行う。
 その支援を受け、蒼眞は斬霊刀で敵の傷口を更に斬り広げる。装甲が破れた部分に氷が貼りつき、内部へと侵食していく。
 すると門松ダモクレスは、竹のように見える部分の上面を開き、無数のミサイルを一斉発射する。
「オ・ト・シ・ダ・マ!」
「うわっ!」
 ミサイルは再び前衛を襲い、今度はぬぬ子はヒメカを庇う。ダメージに加え、炎が着火するかに見えたが、状態異常耐性が発動してすぐに消える。
「今度は、攻撃に出てもよさそうですわね」
 フィルメリアが呟き、ブラックスライム『蠢く粘装』を放つ。さすがに巨大ダモクレスを丸呑み捕食はできないが、基部の下側にまとわりつき、巨体を浮かせているジェット噴射部に損壊を与える。
 一方、エドワードは、意外なほどに軽快なフットワークでダモクレスに殺到。オウガメタルで拳と腕を包み、文字通りの鉄拳を叩きつける。
「デュフフフ……近接戦闘も、やる時はやるのですぞ」
 重要なのは、常に相手の意表を突き、パターンを読ませないことでござる、と、エドワードはしたり顔で告げる。もっとも、門松ダモクレスが意表を突かれているのかどうかは、よく分からない。
 そしてぬぬ子は、今回庇えなかった麟華を、オリジナルグラビティ『重力供給式圧迫止血法(グラビティ・アストリクション)』で治癒する。
「今、直します」
 全身に張り巡らされた重力回路を介して、ぬぬ子は麟華に触れてグラビティ・チェインを流し込む。グラビティ・チェインは傷を圧迫して繋ぎ止め、状態異常を解除、多少の痛め止めとしての効果も発揮する。
 そして風美が、オリジナルグラビティ『偏竹林・竹箆返し(ヘンチクリン・シッペガエシ)』を発動させる。
「商売繁盛! 笹もてこーい!」
 風美は竹の攻性植物『商竹売』を地面に突き立て、地中で増殖、一気に成長させる。増殖した『商竹売』は無数の竹槍と化して、門松ダモクレスのジェット噴射部に連続攻撃を行う。
 ……え? 笹と竹とは違う? 似たようなもんアルヨ。
 続いてヒメカが、再びダモクレスへと突撃する。正面突破の降魔真拳、あるいは晨覇降魔拳とは異なり、竜翼を使って機動性を高め、装甲の裂けたところを狙って竜爪を打ち込む。
 そして麟華が、バスターライフルから冷凍ビームを放つ。
「年のはじめのめでたい時に現れるなんて、空気の読めないダモクレスですわ!」
 そしてサナレは、今度はヒメカに破壊力上昇と治癒の電撃エンチャントを送った。

●激闘の果て
 その時、不意に門松ダモクレスが絶叫した。
「カ・ド・マ・ツ・ハ! メ・イ・ド・ノ・タ・ビ・ノ・イ・チ・リ・ヅ・カ! メ・デ・タ・ク・モ・ア・リ! メ・デ・タ・ク・モ・ナ・シ!」
「来るぞ、全力攻撃!」
 特に根拠はないが、直感的に覚って、蒼眞が叫ぶ。応じて、ヒメカが宙に飛ぶ。
 しかし、前のめりに攻撃に熱中していた麟華は、一瞬、反応が遅れる。それを狙ったのかどうかはよくわからないが、門松ダモクレスの巨体が、全力で叩き潰さんとばかりに麟華の頭上から襲い掛かる。
「ひっ!」
「危ないっ!」
 立ちすくむ麟華を、ぬぬ子がグラビティ回路全開で突き飛ばす。吹っ飛んだ麟華は、間一髪でダモクレスの全力アタックを免れるが、入れ替わりで飛び込んだぬぬ子がまともに潰される。
「ほ、箒星さぁん!」
 わたくしを庇って、と、麟華は絶叫したが、そこへアイズフォンで通信が入る。
「大丈夫、死んでも力尽きでもいません……手痛くやられましたが、動けます」
「ああ、よかった……申し訳ありませんわ……龍道寺麟華、一生の不覚……」
 麟華が通信を返すと、ぬぬ子はいつになく厳しい口調で告げる。
「反省はあとで。それより、今こそがダモクレスを叩き潰す、千載一遇のチャンスです。私は内側から壊して出ますから、全力で攻撃してください」
「そ、そうでしたわね!」
 今こそチャンス、時は金なり、全力アタックのお返しですわ、と、麟華はオリジナルグラビティ『聖霊武真拳『ミリオネアエクスプロージョン』(セレブシンケン ミリオネアエクスプロージョン)』の構えを取る。
 するとそこへヒメカが舞い降りてきて告げる。
「合わせるぞ。合体技、行こう」
「望むところですわ!」
 麟華が応じると同時に、ヒメカは『晨覇降魔拳』の赤いオーラを発動し、麟華の全身を包む。
 そして、麟華の背を押すように、晨覇降魔拳を打ち込む。
「降魔真拳・奥義……晨覇降魔拳!」
「いただきましたわーっ!」
 絶叫とともに、赤いオーラに包まれた麟華は擱座した門松ダモクレスへ突撃、全身のセレブグラビティを拳に込めて金色の一撃を放つ。
「オーッホッホッホ! 100万ドルの黄金拳を受けてみるですわ!!」
 そしてインパクトの瞬間、ヒメカと麟華は声を揃えて叫ぶ。
「くらえ、無敵合体、赤金聖霊武龍影弾!」
 どかーん、と、痛烈な爆音があがり、門松ダモクレスは中央部をまともにぶち抜かれる。
 そして次の瞬間、エドワードが仕掛けていた爆薬が、ダモクレスの周囲で一斉に破裂する。
「ヒャッハー!! 爆破の時間ですぞー!!」
 哄笑をあげながらエドワードはダモクレスに取りつき、どかどかと爆薬を破裂させる。
 これは彼のオリジナルグラビティ『Haunt and Stalk(ハウント アンド ストォーク)』の発動で、通常なら、地形、天候、時刻問わず小さな嫌がらせから妨害、罠、煙幕、破壊工作、煽動、同士討ちの誘発、放火に爆破、果には略奪、強奪、遅滞防御、強襲と有りとあらゆる手段を用いて相手を妨害し行動力を奪うのだが、巨大ダモクレス相手では、グラビティ爆破以外では実質ダメージが与えられず、こういう形になった。
「ハァ女の子prprしなきゃ……男? 魚の餌ですぞ」
 連続爆破を仕掛けながらエドワードは呟くが、口癖のようなものか、いまいち意味がわからない。
 そして風美がチャイナ服の袖からフォートレスキャノンを撃ち放ち、フィルメリアがオリジナルグラビティ『噛み砕くベスティア(エクスティアビリス・エクスティアリス・ベスティア)』を発動させる。
「さぁ、いらっしゃい。私のかわいいワンちゃんたち」
 妖艶な笑みを浮かべてフィルメリアが呟くと、青黒い煙と共に彼女の影より幻影の猟犬が群れを為して出現、そのまま先を争って擱座したダモクレスに取りつき、金属装甲をものともせずに食らいつく。
 すると、ダモクレスの基部の一角を突き破り、ぬぬ子が外へ出てくる。その手酷く傷ついた姿を見て、麟華が息を呑む。
「箒星さん……」
「大丈夫、生きて動いてます。手足は効かないけど、重力回路で補助してますから」
 後でヒールお願いしますね、と、ぬぬ子は半ば潰れた顔に笑みを浮かべる。
(「……ホントに後でいいのかの?」)
 ま、本人が言うんじゃからな、と、サナレはぬぬ子を横目で見ながら、ダモクレスに雷撃を浴びせる。
 そして蒼眞が、破壊力は絶大ではあるが、命中率が悪くてなかなか使えないオリジナルグラビティ『巨大うにうに召喚(ギガントウニウニコーリング)』を発動させる。
「お年玉ならぬ、落とし玉を食らわせてやるぜ……! うにうにっ!」
「な、なんじゃこりゃあ!」
 サナレの叫びは、おそらく蒼眞以外の全員の気持ちを代弁していただろう。
 不気味に蠢くプリンのような謎の巨大存在『巨大うにうに』を相手の頭上へ召喚。その圧倒的な巨体と質量で相手を押し潰す。
 ちょうど先ほど、ぬぬ子がやられた攻撃をやり返された形で、門松ダモクレスは落下してきた巨大うにうにの下でなすすべもなく圧潰し、続けざまに爆発を起こす。
「いやはや、これでは持って帰れないでござるな」
 危うく巻き添えを免れて飛びのいてきたエドワードが、残念とも呆れたともつかない口調で呟く。
 そしてフィルメリアが、厳粛な口調で告げる。
「七分経過。魔空回廊は出現しない。ダモクレスは回収不能状態と確定。任務成功よ」
「やったー! おせち、豪華おせちアルー!」
 歓声をあげる風美に、フィルメリアは笑顔になって告げる。
「そうね。でも、その前に街を直さないと……いえ、ぬぬ子さんを治癒するのが最初ね」
「よ、よろしくお願いします……」
 任務達成と同時に、やっと痛みとダメージが実感されたのか、ぬぬ子が半べそをかきながら頭を下げた。

作者:秋津透 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 7
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