●神の膝元牙墜ちて
新年。人々は神社に向かい、初詣を行う。
ある都市の、とある神社も正月となれば人々が多く向かう場所だ。
神社へ続く、長い石段には人々が溢れ。そして、またそこに向かう人々が集っていた。
そこへ突然――巨大な牙が突き刺さった。それは鎧兜を纏った竜牙兵へと姿を変えていく。
「オマエたちの、グラビティ・チェインをヨコセ」
「タクサン、タクサン、イル!」
竜牙兵は手にした武器をふりあげ、周囲にいた人々を無差別に殺戮し始める。
高らかと響く竜牙兵の笑い声と、人々の叫び。
初詣ともあって、着物姿の者達はうまく逃げる事もできず、それは血に染まりゆくのだった。
●予知
「年始のお参りに行く人達で集う、神社の前に竜牙兵が現れるんだ」
初詣に集う人々の中に、竜牙兵が墜ちる。となれば、起こる事は一つだと夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は続け。
「多くの人が襲われる前に、この竜牙兵を撃破してほしいんだ。竜牙兵が出現する、って避難勧告をすると、他の場所に出現して阻止できなくなるから余計、被害が大きくなってしまうし……」
根回しはして、戦いやすいようにしておくから行ってきてほしいとイチは続けた。
「現れる竜牙兵は三体。時間は午前中。場所は、とある神社の石段の前。神社の敷地内ではないんだ」
けれど、人々は石段を上がって神社にお参りする。そのため、人は多いとイチは続けた。
石段の前は少し開けており、その端には屋台などもあったりする。
そこで戦闘になるので、初詣の人たちに混ざって、待機。現れたら迎え撃って欲しいとイチは続けた。
「敵は、それぞれゾディアックソードを装備してる。戦い始まれば、竜牙兵が撤退することはない。それから、戦う相手がいるのに逃げる人を追いかけるなんてことも無いみたいだから戦闘に集中してほしい」
「避難とかは、私もお手伝いするわ。だって、新年最初の思い出が襲われた、なんていうのも悲しいし……そこは、任せて!」
と、ザザ・コドラ(鴇色・en0050)は胸張って一緒に行くわと続けた。
「それで、無事に竜牙兵を倒して、皆で神様に報告に行きましょ。ちゃんと、ここにくる人達、守ったわよって」
「それはいいかもしれないね。うん、無事に終わったら、行ってくるといいと思うよ」
長い石の階段を上がった先にある神社にとイチは言う。
「奪われる命を守るためにも、ケルベロスさんたち。よろしくね」
そう言って、イチはヘリオンへとケルベロス達を誘った。
参加者 | |
---|---|
北郷・千鶴(刀花・e00564) |
アレクセイ・ディルクルム(狂愛エトワール・e01772) |
鳥羽・雅貴(ノラ・e01795) |
ローザマリア・クライツァール(双裁劒姫・e02948) |
オルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232) |
ヴェルトゥ・エマイユ(星綴・e21569) |
デニス・ドレヴァンツ(花護・e26865) |
リュイェン・パラダイスロスト(嘘つき天使とホントの言葉・e27663) |
●牙墜ちて
初詣で賑わうその場所に、突如牙が墜ちた。
その突き刺さった牙は竜牙兵となり人々を襲う。そして惨劇が繰り広げられる――はずだった。
しかし、人々が慌てふためく中、そこにケルベロス達はいたのだ。
「新年早々、ドラゴンの眷属をこの手で屠れるなんて。ふふ。幸先は占うまでもなさそうね」
オルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232)は笑って、視線を向ける。
「ザザ、よろしく頼んだわよ」
すれ違いざまにザザ・コドラ(鴇色・en0050)に声かけると任せてと明るい声。ザザはこっちと避難を誘導しはじめ、そして竜牙兵達に八人が向かう。
「新年早々、物騒な物が落ちてきたものだ。一人足りとも犠牲を出さぬ様に尽力しよう」
あちらへと人々へも声かけつつ、ヴェルトゥ・エマイユ(星綴・e21569)も人々の中を進んだ。
「新年早々、懲りねー連中だな。今年も何一つ思い通りにはさせねーよ」
逃げようとする人へ鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)は行く先示しつつ、敵前に。
周囲に被害が及ばぬよう、敵を包囲するようにそれぞれ動く。
「御神前に――人々の元に、狼藉者の凶刃等通しませぬ」
そうでしょう、と。傍らの翼猫、鈴へと北郷・千鶴(刀花・e00564)は凛とした声向けると。
「厄祓いと参りましょう、鈴」
鈴は一声、鳴いてそれに応じた。
「慶賀されるべき日に、無粋極まりないわね」
ローザマリア・クライツァール(双裁劒姫・e02948)はでも、と紡ぐ。
「人々の新年を護る、それもまたケルベロスの大事な役目よね」
敵の攻撃が人々に届かぬようローザマリアも陣取れば、そろそろ牙の変形が終わる。
牙から竜牙兵へ。
その姿が変わっていく様を見やり、アレクセイ・ディルクルム(狂愛エトワール・e01772)も人々を背に守るように立った。
「新年、晴れの日に惨劇などいらないでしょう。祝の日には悲鳴より笑顔を、新年の幕開けは愛しい人の笑顔で迎えたいですから」
その愛しい人――愛する薔薇の姫を思い浮かべれば、戦いの場であっても柔らかな笑み零れる。
けれど次の瞬間にはそれは払われ戦いに集中を。
「まったくもう。年の瀬年明け関係ないね。風情も情緒もなし。じゃ。頼もしい仲間にぶん殴ってもらおう」
リュイェン・パラダイスロスト(嘘つき天使とホントの言葉・e27663)は不敵に笑って、後方で癒しの役目を追う。
「崇め信ずるものは違うが神域は侵してはならないものだろう。それに」
参拝に訪れた人々も護るとデニス・ドレヴァンツ(花護・e26865)は避難の状況に目を向ける。
新しい始まりの年の日に、誰の血も流す事のないように。
そのため、できることはもうすでにしている。
人々の完全な避難はできていないが、敵の意識はすでにケルベロス達に向いていた。
その敵意に応えるべく戦いが始まる。
●剣戟響く
「その神社にお参りに行きたいので、ご退場願いますね?」
一気に距離を詰め、アレクセイは電光石火で、急所を貫くような蹴りを放った。
その一撃に竜牙兵はよろめくが倒れることなく向かってくる。
そこへ天から降り注ぐ剣戟。無数の刀剣が雨の如く降るのは雅貴によるものだった。
「テメーらにくれてやるのは引導だけ、ってな」
瞳眇め、刃の雨に踊る姿を雅貴は見遣る。
「この場に在るべきは人の笑顔と安寧――無法者は消え失せな。その願いはいつまでも、叶えやしねー」
雅貴の攻撃に続いて、デニスは古代語の詠唱を終えた。
その手より放たれる魔法の光線は敵の身を石のように固まらせてゆくもの。
千鶴は手近な相手から狙って牽制もかねて攻撃を。
「剣と成りて、斬り祓い給へ」
言の葉と共に、愛刀一振りし地を穿つ。するとその先にいる敵に菖蒲の刃が咲き誇り襲い掛かる。それは正しく研ぎ澄まされた剣の如くだ。
その様を目にしながら、鈴は後衛の仲間達へ羽ばたきを贈る。
「ま、ドラゴンに新年も何もあったものではないでしょうけど、それならそれ相応の饗しをするまでよ」
二刀一対、因果を司る斬霊刀と応報を司る斬霊刀を構え、心と刃を一体としローザマリアは霊的防護を断ち切る力を宿し敵へ切っ先を向けた。
「シビュラを疑え。ヴォルヴァを訝れ。――天を欺き、エヌマ・エリシュを覆せ!」
未来に繋がる一手は在る。オルテンシアのドローしたカードに宿る道ひらく力はヴェルトゥへ。
「さあカトル、年始の験担ぎよ。骨のある一年にするためにも喰らいついて離れない心意気を見せて」
そして傍らから、頷くようにミミックのカトルが飛び出す。カトルは一番近い敵へとぱかっと蓋開けて噛みついた。
カトルが離れた瞬間、跳ねる弾丸が敵を打ち抜く。
それはヴェルトゥが放った弾丸だ。
続けてボクスドラゴンのモリオンも竜の吐息で攻撃を。
しかし敵も攻撃されてばかりではない。
敵の攻撃の動きを見て千鶴が庇いに入る。振り下ろされた一撃は重いものだ。
「さあて年始め、天使の歌だ! 全部聞いてけ!」
そこへ響く声がある。その声の主はリュイェンだ。
「今を歌おう。本当を歌おう。置いてきた過去でも見えない未来でもない、今目の前にある本当の今を歌おう」
リュイェンは自分自身を使い、ヒールグラビティを歌として放出する。動けばドレスの布が翻り、歌声に共鳴するように閃いていた。
戦いは激しく。けれど敵に押し切られるという事も無く戦線は作られていた。
攻撃を受ければリュイェンがすぐさま、最善の手を打つ。癒す事はそれで充分、間に合っていた。
その支えもあり攻撃にも、そして防御にもそれぞれが専念することができていた。
ひゅっと敵が斬撃を放つ。
それを間に入って受け止めたのはオルテンシアだ。
これくらいじゃ倒れないわと煽るように笑って、その攻撃を凌ぐ。
その攻撃の終わりに隙を見て、オルテンシアはその手に時空凍結弾を生む。
仲間達を支えることに徹していたが、一手くらいは、目の前に敵があるのだから。
至近距離から放たれた弾丸は物質の時間を凍結するものだ。
それを喰らった敵は身の一部を凍り付かせていく。
「一山幾らの兵隊で僕らを何とかしようなんてね! 見通しが甘い! 考えが甘い! なんもかんもが、甘っちょろいよ!」
今は少し、余裕がある。
リュイェンは九尾扇を躍らせる。それぞれの立ち位置から見出す陣形。
それによって仲間達には破魔力が与えられる。
「無礼な……神の御前ですよ? 最も、私が信じる女神は、ただ1人ですが」
攻撃を受け、どうにか身体を保っているような一体へ向かい、アレクセイは星魔法を紡ぎ始める。
「師を穿つ死の矢にて、安らかなる眠りを」
眠りに誘う、優しき言の葉。星煌めくその一瞬、英雄放つ死の矢尻が如く。星が流れるように放たれたそれが敵を貫き、身を砕く音が響いた。
最初の一体目が倒れるのを感じ、千鶴は目前の相手も追い込むべく日本刀を構え、一瞬の静止。
此処は人にとっての神が御座す、静謐なる地。其を乱す者達に捧ぐものは何一つ無いと心の内に紡ぐ。
これはここに居てはならぬもの。
「さぁ、御覚悟を。静まりなさい――斯様な願いの成就は訪れぬと知れ」
雷の霊力を帯びた日本刀、その切っ先で放つ突きがその身を、骨を砕いて敵の命数を削る。
「――――オヤスミ」
その敵へ雅貴は囁くような詠唱ひとつ。
刹那、音も無く。首へ、背後へ、死角へと影より生じた鋭刃が迫り、骨と刃の硬い音が響きあった。
敵は追い込まれている。そう見て、ローザマリアは走りこむ。
「劒の媛たる天上の御遣いが奉じ献る。北辺の真武、東方の蒼帝、其は極光と豪風を統べ、万物斬り裂く刃とならん――月下に舞散れ花吹雪よ!」
ローザマリアが繰り出す不可視の超高速多段斬撃。
それは劒を振るう腕のみを重力から解放することで可能とするそれは、一戦ごとに陽光で反射する刃が舞い散る桜吹雪のように見えるものだ。
「Do widzenia.アンタ達の新年は、ここでお仕舞いよ」
その斬撃に襲われた敵はその身崩し、果てた。
残るは一体。
モリオンがタックルをかけたところへ、ヴェルトゥは狙い定める。
「少し、じっとしていてもらおうか」
敵のその足元から忍び寄るように鎖が這う。それは敵を絡めとり締め上げるとともに桔梗の花を無数に咲かせていく。
そしてその花は役目を終え星屑のように散りゆく。
「――味わってみるか?」
影よりいずる月の如き銀色に輝く狼がデニスの元より駆ける。
獲物を前に赤い瞳が敵を捕らえ獰猛に染まる。長い爪が閃き、叩きつけるように破壊する一撃。
その爪に骨は砕かれ、地に崩れ落ちてゆく。
人々を脅かすものは、すべて打ち砕かれたのだった。
●初詣
戦いが終わりその場には、人々が徐々に戻ってくる。
荒れた場所はヒールがかかり、元通りだ。
「さて、お参りしたら少し出店を見て回ろうかしら」
ローザマリアはまず神社へ足を向ける。その後に温かい甘酒に、大阪焼きがあれば言うことはないわねとその後のお楽しみも考えて。
「始まりが再び幸いな思い出で満ちる様に、どうか皆様良い一時を――そして良い新年であります様に」
守り抜いた光景。溢れる笑顔を見つつ瞳細め、千鶴は零す。
「オネーサン、一人なら一緒に――って冗談だよ冗談!」
と、そこへ一人で屋台も見るかと思っていた雅貴は千鶴の姿を見つけ声かける。
その軽い調子に千鶴は一瞬呆れつつも微かにその表情緩めた。
「普通に付いてくからたまには良いだろ、こんなんも」
「一人ではありません、鈴もおります……ですがこれも何かの縁、折角ですからご一緒致しましょう」
長い階段を上がって行く。その一歩先を楽しげに、尾を揺らしながら鈴が進んでいた。
時折、早くというように振り返る。 へらへらと笑いながら雅貴はあれこれに視線巡らせ千鶴もそれにつられる。
けれど、参拝は厳かな気持ちで。
(「在り来たりでも、この平穏が誰にも続くように――今年も尽くす」)
心の内で雅貴は誓願を。それは千鶴もだ。
(「本年も人々が心穏やかに過ごせる様――尽くします、どうかお見守り下さい」)
参拝の作法に則って、千鶴は願う。
ここに住まう神の膝元に集う人々の安寧を。
そして、他の人々の為にその場所を譲り、鈴と呼びかける。
「さっき素敵なお店があったのです。新年の贈物に首飾りを新調するのはどうでしょう?」
その提案に鈴は尾を振って応えた。
「お疲れ様、アレクセイ! 怪我は?」
駆け寄り問うロゼにお待たせしましたとアレクセイは礼を一つ。そして怪我はないよと笑いかける。
その着物姿も美しくて、アレクセイは目を奪われる。
そのことを告げるとロゼの頬はぱっと熱を帯びてしまう。
今、彼女が笑っていることはアレクセイにとって幸いだ。
それは誰も傷つかずに戦いを終えられたからでもある。
戦って少し汚れてしまったのは悔やまれると零せば。
「アレくん、服装なんて気にしないで大丈夫! 充分かっこいい、です」
その言葉にありがとうと紡いでアレクセイはロゼに手を差し出した。
その手を取って思うのは、感じるのは嬉しさだ。
いつまでも慣れないが、アレクセイの愛は光降る雨のようでいつもロゼを支えてくれるのだ。
その手の温もりは幸福。視線向ければ笑顔があり、それはアレクセイにとって生を実感させてくれる事。
だから、願うことは一つだ。
(「ずっとずっとロゼと共にいられますように」)
(「どうか神様。この先も大好きな人と一緒にいられますように。私には歌うことくらいしか出来ないけれど、愛する人たちのためならばいくらでも、捧げます」)
言葉にしない願いは、互いに知らないけれど思うのは同じことだ。
参拝の後、お腹すいちゃったとロゼは笑い、二人手を繋いで人波の中へ。
アレクセイはその前にペアでもてるお守りでも授けて貰おうかと、微笑みを。
ラズリア、と名を呼んでヴェルトゥは人混みに紛れないようにその手をとる。
「これで迷子にはなりませんね」
暖かいな、ふふとラズリアは笑い零す。
一緒に石段を上がって、まずは無事ここに来た人達を守った事の報告を。
「後は……、願い事をしても良いのだっけ」
「お願い事……家内安全・無病息災、でしょうか。あと、今年は少しでも平和になりますように」
ラズリアはそう言ってお願いごとをしつつそれからと、その続きは心の内で。
(「エマイユ様のお傍にいられますように……こんなにお願い事をしたら、神様に叱られてしまうかしら?」)
その隣でヴェルトゥも思う。
(「今年も平穏な日常が送れますように……いつもの、よくある願い事」)
それから、でも今はもう一つ。
ちらりと視線を向けたるのは傍らのラズリア。
(「これから先も彼女の隣に居られたら」)
けれどそれは。
自分自身で叶えなくてはなと小さく紡いで、なんとなくラズリアの方を見れば目が合って、お互いふわりと微笑みを。
「屋台を見ていこうか。一仕事終えてお腹も空いたしね」
「あ、屋台私も行きたいですっ!」
もう一度手を繋いで、賑わいの中へ。
そして一足先に屋台を楽しんでいたのはリュイェンだ。
「っかぁ! うまい! あけおめだね!!」
初詣は恋人と、と思い今日はせず。屋台でビールとアテになりそうなものをいくつか選んで舌鼓。
賑やかな雰囲気に自然と笑みも零れる。
「ザザ、ジィジ……お疲れ様だよ」
人々の誘導を請け負っていたザザ達をデニスは軽く手をあげ振りながら、良ければ一緒に行こうと誘う。
その、デニスの横には娘のアウレリア。
「あのな、アウレリア――娘もいるんだ」
「わたしは、アウレリアというの。よろしくね。ザザ、それから――ジィジ」
はにかみながら紡ぐ挨拶にザザもよろしくねと笑い、足元のボクスドラゴン、ジィジを抱え上げて紹介も改めて。
「……お話しをしてみたいと、ずっと思っていたのよ」
恥ずかし気にアウレリアは紡ぎ、こっそりと仲良くしたいみたいなんだとデニスはザザに囁いた。
するとザザは瞬いて、笑み浮かべる。
「ええ、一緒に行きましょ!」
そう言って、三人で屋台眺める。
綿あめ、林檎飴、焼きそばにタコ焼きと色々。
「ザザとアリアは何が食べたい?」
「お父さま。わたし、林檎飴が、食べたいの。ザザは……? 甘いものはすき?」
「もちろん好きよ! 今の気分は……綿あめかしら。ちょっとわけっこしましょ!」
そんな楽しそうな様子にデニスは微笑み浮かべ。
「食べたあとは、参拝に行ってみようか」
お願い事、しようなとデニスは誘う。
「ええ、もちろんよ。参拝して帰りたい、わ」
「そうね、お願いしっかりしなくちゃ!」
そう言って、ザザは何をお願いするか、決めとかないとねと笑う。
アウレリアはもう願うことは決まっているのと小さく微笑んだ。
(「みなの健康と、倖せと。それから――あなたと、仲良くなれますように――」)
そう心に思えば、あれも気になるから行こうとお誘い。
そんな、楽しそうな姿をデニスは見守るように微笑んでいた。
周囲の片付けも終わったところで、オルテンシアにかかる声。
「討伐お疲れさん。さぁて、此処からもう一仕事。歩けるか?」
ヒコは見事な石段、その先に或ると鳥居の立派なたたずまいに感嘆漏らす。
その様に誘った甲斐のある反応とオルテンシアは小さく笑み零し、先に一歩踏み出した。
参拝は初めてかと問われ、まあそんなところと歯切れの悪い声。
その様に訝しむもヒコはその先探らず。
「――……先ずは御手洗。鈴で魔除けてからの二礼二拍一礼な」
基本の礼儀を開設してヒコは進む。
あなたとははじめてね――と、オルテンシアは零す前にだ。
「戦後報告は任せるわ。ほら、信心深い人間からの方が神様も喜ぶかしらって」
「戦後報告なんてのは当人がやるべきだろうが」
私は祈年だけ、と開手打ち鳴らし真剣に思う。
ヒコは言い切られてしまってはもう何も言えず。
二礼二拍の後、慣れ親しんだ天津祝詞を口にする。
それに込められたのは今後の平穏と無事を。
「ねえ、ザザたちも誘って御神籤引かない?」
参拝の後、ひとびとの一喜一憂の姿を示してオルテンシアは誘う。
吉凶の結果はどうであれ、と。
「御籤か。悪かないな。年初めの運試し、誰が一番いい結果か勝負といこうぜ?」
そしてふと、そうそうと今思い出したかのようにオルテンシアは振り返った。
「明けましておめでとう、今年も変わらずよろしくね」
今更だなと笑って、ヒコも同じように返す。
昨年も世話になったが今年もよろしく頼もうと。
作者:志羽 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年1月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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