百人一首を極めし武

作者:天木一

 木々の立ち並ぶ寒空の下、地面にシートを広げその上にかるたが所狭しと並べられていた。その前には巫女の姿をした少女が真剣な顔で見下ろしている。
『朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに』
 隣に置いたポータブルスピーカーから百人一首の歌が流れる。
「吉野の里に 降れる白雪!」
 上の句が読み終わるより早く、目にも止まらぬ速度で手が振り抜かれ、札が吹き飛んだ。
 次々読み上げられる歌に合わせ、何度も手が閃き札が飛んで行く。
『み吉野の 山の秋風 さ夜更けて』
「ふるさと寒く 衣うつなり!」
 百枚目の札を取って少女は息をついた。
「うーん、ちょっとは速くなったかも。やっ!」
 立ち上がった少女は指に札を挟み手刀のように振るう。草は切れるが、木を断つにはまだまだ力不足だった。
「最終的にはこうやって木だって一刀両断にしたいな」
 木を切る振りをして、少女はばっさりと木が切れるイメージをする。
「将来はカードファイターみたいに強くてカッコいい女性武闘家になるんだから! あっそろそろ家の手伝いに戻らないと」
 休憩時間はもう終わってると近くにある神社の方へと少女が振り向く。するとそこに幻武極が現れた。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
「やあ!」
 そう少女に呼びかけると、気合を入れかるたを手にした少女が腕を振るって幻武極に叩きつける。何度も繰り返し手が痛くなるほど力を込めても、かるたが曲がるだけで幻武極はびくともしない。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 幻武極がいつのまにか手にしていた鍵を少女の胸に突き立てる。すると眠るように意識を失い少女は崩れ落ちた。倒れた少女の隣には同じ姿をした少女がもう一人現れる。
「あはれとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな」
 歌を詠みあげながらかるた札を振るうと、木がするりと両断される。更に投げた札が周囲の木々を根こそぎ切断した。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
 新たに現れた少女に幻武極が声を掛けると、少女は頷き神社の方向へと歩き出した。

「新年早々、武術家ドリームイーターが神社で暴れてしまうのですー!」
 多留戸・タタン(知恵の実食べた・e14518)がまた事件が起きてしまうとケルベロス達に告げる。
「ドリームイーターの幻武極が現れ、新たな武術の特訓をしている人物を襲い、自分に欠損している『武術』を奪いモザイクを晴らそうとしているようです」
 隣で資料を手にしたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が詳しい説明を行う。
「今回の件でモザイクが晴れる事はありません。ですが武術家ドリームイーターを生み出し、人々を襲わせようとするようです」
 生み出されたドリームイーターは理想の力を持った武術家として高い戦闘力を持ち、その力で人々を襲いグラビティ・チェインを奪っていく。
「被害が出る前に、皆さんにこのドリームイーターを撃破してもらいたいのです」
 今から向かえば、神社の手前で迎撃する事が出来る。
「戦う事になるドリームイーターは、巫女の恰好をした中学生の少女の姿をしています。武器は百人一首のかるたの札で、まるで刃物のように切り裂く凶器となっているようです」
 無数のかるたの札が鋭利な刃となり襲い掛かる。ただの紙と油断すれば痛い目を見るだろう。
「事件の起こる場所は新潟県の山の麓にある神社です。そこへ至る道の途中で敵を待ち構える事になります」
 来る場所は分かっているので待ち構える事が出来る。周辺の避難も先に警察が済ましてある。
「武を重んじるドリームイーターのようで、戦いを挑めばその武を高め知らしめる為に堂々と応じます。人々の守る為にも、武を競い見事勝利してきてください」
 説明を終えたセリカが一礼し、ヘリオンの準備へと取り掛かる。
「百人一首で戦うよりコブシで戦った方が早いと思うのですー? でもどんな戦い方なのか楽しみなのですよー!」
 タタンは百人一首を使った戦いをあれこれイメージして、実際の敵と手合わせするのを楽しみにする。ケルベロス達も新年最初の事件を縁起よく成功で終わらせようと張り切って動き出した。


参加者
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)
ギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)
天尊・日仙丸(通販忍者・e00955)
アウィス・ノクテ(ルスキニア・e03311)
夜陣・碧人(影灯篭・e05022)
多留戸・タタン(知恵の実食べた・e14518)
除・神月(猛拳・e16846)
影渡・リナ(シャドウランナー・e22244)

■リプレイ

●百人一首ゲーム
 人の集まる元旦の神社。だが今は道が通行止めされ、一時的に人の流れが止まっていた。
「好きなものを夢見て、頑張ることは素敵なことだと思います。ただ、このままではだれかに迷惑をかけてしまいそう」
 好きな事に熱中できるのは良い事だと十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)は微笑む。
「ですから、注意に参りましょうか?」
 だがその夢が独り歩きしてしまっているなら止めに行こうと、神社から出て拓けた道へと移動する。
「ヒャクニンイッシュなるものは日本の良き文化として興味はございますが、如何せんその言葉遣いも難しゅうございます」
 調べてみた和歌の難解さに、ギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)は戦いよりも困難だと眉を寄せた。
「百人一首は難しいので、タタンはこのいろはカルタで戦うです!」
 寒さに負けぬ元気さで、多留戸・タタン(知恵の実食べた・e14518)はカルタをカードホルダーに装着する。
「百人一首でカードバトル、ちょっと楽しそう。召喚ものとかもいいのかも」
 カードバトルの亜種として人気が出るかもと、アウィス・ノクテ(ルスキニア・e03311)は想像する。
「カードバトルアニメに憧れるのはいいとして、チョイスが百人一首とはなかなか渋いでござるな……」
 百人一首で戦うなど想像した事もなかったと、天尊・日仙丸(通販忍者・e00955)は感心する。
「百人一首……言葉だけ聞くと何やら不吉なイメージがありますねえ」
 夜陣・碧人(影灯篭・e05022)は知らない人が聞けば首が並ぶさまを思い描くだろうとイメージした。
「正月早々にバトルとはナ。カードバトルだろうがなんだろうが付き合ってやるゼ!」
 除・神月(猛拳・e16846)は来る途中コンビニで購入しておいたカードを開封して手札のように広げる。
「百人一首って武術だったんだね。引っかかる部分はあるけど武で挑まれたら応えるまでだね」
 そんな思い違いをしながらも、影渡・リナ(シャドウランナー・e22244)は戦う気十分で敵が来る方向を見る。するとその道の先から一人の巫女姿をしたドリームイーターが堂々と道を歩いて現れた。

●カードバトル
「あなた達カードバトルにやってきたの?」
 警戒した巫女が百人一首の札を袖から取り出す。
「さあ、私たちと戦おう? ──カードセット」
 ふわりと舞台に立つように前に出たアウィスは、敵に合わせて用意しておいた百人一首のカードを手にし、投げつけながら竜の幻影を呼び出して炎を浴びせた。
「受けて立つ! どちらが最強のカードファイターか勝負! カードオープン!」
 百人一首を一枚表向けて巫女は炎を切り裂く。
「カードバトルスタートでござる!」
 纏うメタルから日仙丸はオウガ粒子を放出し、仲間達に超感覚を与えていく。
「あけましておめでとござます! タタンです! ドリームイーター、いざジンジョーにショーブです!」
 礼儀正しく挨拶をしたタタンは目の上の瘤のカードを抜き、高々と跳躍して流星のように星のオーラを帯びて蹴りを浴びせようとする。すると敵の足元でミミックのジョナ・ゴールドが足に齧りついて敵の動きを封じ、頭に蹴りが直撃し瘤を作った。
「目と目があったら即バトル……じゃないですけども」
 碧人がモンスターカードをチラリと見せる。
「一勝負と洒落込みましょうか」
 そしてカードを一枚見せ、影の弾丸を放って敵の足を穿ち、よろめいたところへボクスドラゴンのフレアは突っ込んでタックルを叩き込む。
「準備はOKみたいだナ、それじゃあ始めよーゼ!」
 こっちも混ざらせてもらうと、神月は素早くカードを投げて敵の服ごと胸を切り裂く。
「カードバトルならこういうのだよね」
 リナは竜の幻影を呼び出し、その顎から炎を吐き出させる。
「やるね、なら次はこっちのターンよ!」
「攻撃は私が引き受けましょう」
 札を構える巫女に跳躍したギヨチネは虹を纏わせ、頭上から押し潰すように蹴りつけ、着地して敵の前に立ち塞がる。その体に巫女が指に札を挟んで振り抜き、袈裟斬りに真っ赤な鮮血を噴き出させた。
「あなたの運命を占ってみましょうか……愚者のカード。確かに百人一首を武器にした武術なんて自由な発想力は愚者が合っているかもしれません」
 引いたタロットカードを読み解いた泉は間合に踏み込み、刀を抜き打ち敵の胴を斬り裂いた。
「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む」
 札を詠みながら巫女が鋭利な刃として投げつけてくる。
「ヒャクニンイッシュとは難解なものでございますな」
 攻撃を食らいながらもギヨチネは力強く金砕棒を横に振り抜き、敵の体を軽々と吹き飛ばして木にぶつけた。
「月のカード。幻や欺瞞。今のあなたの存在を示していますね」
 合間にタロットを引きながら、弧を描いて泉は刀を振り下ろし、切っ先が腕を抉り血が地面を濡らす。だが反撃に反対の腕で札を振り切った巫女の一撃が泉の肩を深く裂いた。
「拙者のターン! 拙者はポイントカードを発動! これにより通販をよりお得に活用することができるでござる! さらに加えて魔法のカードを発動! これで支払いを先送りに! いざ、通販忍法・癒やしの術!」
 ポイントカードと何でも買える魔法のカードをバトルカードに見立てた日仙丸は、通販で購入した炬燵を召喚し、泉の体を暖めて寛がせ心身共に癒し、リラックスした体が限界を超えた力を発揮させる。
「山里は 冬ぞさびしさ まさりける」
「人目も草も かれぬと思へば。インターセプト成功! こちらのターン」
 巫女の上の句に合わせて下の句を詠みながらアウィスはカードから白銀の戦棍を生み出すように演出し、舞うように軽やかに振り回して敵に幾度も叩きつける。
「っなら、世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る」
「そこへ泣きっ面に蜂のカードを使うです!」
 相手の詠みを妨害するようにタタンは声を重ね、拳を叩き込んで敵をぶっ飛ばした。
「どうしタ? 百人一首ってのはそんなもんカ?」
 挑発しながら神月は拳を放ち、札を打ち抜いてそのまま顔を殴りつける。
「言わせておけば!」
 左右の手でばら撒くように巫女が札を飛ばしてくる。
「鋭い攻撃だけど、まだまだ甘いよ」
 リナは槍を連続で突き札を空中で貫き重ね、槍を振るって札を放り捨てた。
「カードドロー! 恐怖の具現化、さあ何が現われるかな?」
 戦いに入り口調の変わった碧人はカードを引いて敵の恐れるものを具現化する。それは早く家の手伝いをしなさいと迫る母親らしき姿だった。
「こんなもので!」
 必死の形相で巫女は札を投げてその幻影を切り裂く。
「太陽のカード。誕生、成功。その武術の未来を暗示するカードです」
 幻と入れ替わるように接近した泉は刀を突き入れ、太腿を抉り傷口から凍らせていく。
「なら私が勝つ!」
 負傷しながらも巫女は踏み出してカードを振るう。
「カードバトルであれば、そうですな……タロットカードなどは存じております。太陽のカードなどは己に合っているような気がいたしませんでしょうか」
 その眼前を遮るように割り込んだギヨチネは星のオーラを脚に纏い回し蹴りを放ち、敵の攻撃と正面からぶつかり合った。
「あなたみたいなのは節制がお似合いよ!」
 飛び退きながらカードを投げつけギヨチネの体に突き立てる。
「次はこの歌で……天の原 ふりさけ見れば 春日なる」
 上の句を詠みながらカードを放ちオーラを纏ったアウィスは、目にも留まらぬ速さで突っ込み拳を打ち込んだ。
「三笠の山に 出でし月かも」
 それに対し下の句を詠みながら巫女が札で切り返し腕を裂いた。
「やるじゃねーカ、ならこっちも新しいカードだゼ!」
 神月は紙を投げ、それを貫くように横蹴りを打ち出して敵の腕を撥ね上げ、その隙に胸に連続して蹴りを叩き込んだ。
「ココは続けて攻める!」
 碧人はカードと共に影の弾丸を飛ばし、敵の腕を撃ち抜いた。それに対して巫女もカードを投げつけた。
「刃の速さと切れ味なら負けないよ」
 刀を抜いたリナは飛ぶ札を切り捨て、返す刃で胴を斬りつけた。
「回復のカードを使い続ける事で、仲間のHPを回復し続ける事ができるでござる!」
 日仙丸はオウガ粒子で仲間達の傷を治療し、敵の攻撃によるダメージを残さない。
「犬も歩けば……」
 敵の注意が逸れている間にタタンがしゃがんでぐぐっと足に力を溜める。
「棒にあたる!」
 力を開放し人間魚雷のように飛び出すと、頭から相手のお腹にぶつかりくの字に吹き飛ばした。

●勝負は最後まで
「やるね、でもカードバトルは決着までどちらが勝つか分からないものだよ!」
 巫女は新たな札をオープンし、コンボ発動と無数の札を舞わせて踊るようにギヨチネの全身を斬り刻む。
「そのカードの武術、私の体で存分に試し打ちしていただきましょう」
 その逞しい体で受けながら、ギヨチネは金砕棒を振り下ろし地面ごと砕かんと敵の体を叩きつけてバウンドさせた。
「塔の逆位置。不幸や屈辱。この戦いの結果を意味していますよ」
 休む間を与えずに泉は刀を横薙ぎに払い、敵の腹を深く斬りつけた。
「ここでもう一度拙者のターンでござる! また2枚のカードを使い、通販忍法・癒やしの術発動! これでそちらの勝ち目は消えたでござるよ!」
 日仙丸の呼び出した炬燵にギヨチネが窮屈そうに入り、身体を癒し暖め普段以上の力を与える。
「朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに」
 起き上がった巫女が新たな句を読み上げる。
「そうはさせない! 吉野の里に 降れる白雪」
 アウィスはカードを投げ、それを貫くように弾丸を生み出し敵をカードごと凍結させてしまう。
「音に聞く 高師の浜の あだ波は」
 巫女が投げる札に、フレアは光を吐いて消し飛ばしてしまった。だが新たな札が反対の手に用意されている。
「まだこちらの攻撃ターンだ!」
 杖を手にした碧人はカードを引くと同時に杖を青いツバメに変えて放つ。飛翔するツバメは敵の腕の傷口を引き裂いた。それでも札を投げて碧人の首を狙う。
「そういう時はこの鬼に金棒です!」
 タタンはカードを見せるように差し出し、光の盾を生み出して攻撃を受け止めた。
「どこが金棒? カードの選択ミスよ!」
 新たに札を取り出す巫女の足元で、ジョナが林檎飴型の棍棒を具現化しこれが本当の金棒だと脛に叩きつけた。
「っ……かけじや袖の ぬれもこそすれ!」
「そいつは見切ったゼ、カウンターを食らいナ!」
 ジョナを札で斬り上げながら巫女は札を投げつける。神月は札を指に挟んでキャッチすると投げ返し、敵の顔を切りつける。
「こういうゲームにトラップはつきものだよね」
 リナは槍に稲妻の幻影を纏わせ突き出す。それを敵は札を飛ばしながら後ろに跳んで避けるが、幻影の切っ先を伸ばして敵の胸を貫き、さらに纏わりつく雷の幻影が敵の動きを封じ込めた。
「くっ残りのデッキが……でもまだ逆転の目はある!」
 残った札を取り出し、巫女はそれでも闘志を燃やして札を振り抜く。
「分身のカードにより残像を纏い、そちらの攻撃が当たらぬうちにこちらが一方的に攻撃を浴びせるでござる!」
 分身して近づいた日仙丸が札の刃を躱し、四方から蹴りを浴びせる。
「こいつで最後ダ。そのカードごとズタズタに引き裂いてやるゼェ!」
 獣人のカードを放った神月は獣化した手足に重力を集め、高速で接近しその勢いのまま腕を振るい、刃物のような爪で敵を切り裂いた。
「投了したほうがいいと思うんだよ」
 リナは刀を振るって札を斬り飛ばし、踏み込んで振り上げた刃を斬り下した。
「最後まで、諦めない!」
 札を手にした巫女は切り返して抵抗する。
「静寂の彷徨い歩く、馨しき葬列の時を愛せよ」
 ギヨチネは己が戦いの記憶から一冊の書を生み出し、そこに刻み込まれた傷と苦痛を相手に移し与える。呪詛を受け敵の体中に激痛が走り、その場で倒れ地面をのたうち回る。その体が伏したカードの上に乗った。
「踏んだな? トラップカードだ」
 ドラゴンのカードを表向けた碧人は、敵に忍び寄り現れる竜の牙を召喚し、敵の足元から噛み砕いた。
「あはれとも いふべき人は 思ほえで……」
 最後の力を振り絞り巫女が歌を詠みながら札を手にした。
「おや? これで終わりですか。審判の時です」
 審判のカードを見せた泉は、相手の動きに歩を合わせ進んだだけ正確に間合いを取って刀を斬り下ろし、肩から切っ先がちょうど内臓を通るような斬撃を浴びせた。
「嘆けとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな」
 カードを空に飛ばしたアウィスは美しく澄んだ歌声を響かせ、歌は不可視のエネルギーとなって敵を打ち倒し、体中を虫食いのように消滅させていく。
「最後は、念には念を入れよ、でいくですよー!」
 そこへタタンは飛び込み、パンチを叩き込んで一遍残さず存在を消し飛ばした。

●初詣
「あの、皆さん! ありがとうございました!」
 介抱され事情を聞いた巫女の少女が深く頭を下げる。
「『忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな』何とも美しい詩句にございましょう」
 ギヨチネが百人一首の歌を詠み感慨にふける。
「どうか艶やかな言葉の数々に倣った、美しき日々をこれからも送っていただきたく存じます」
「は、はい!」
 そう言ったギヨチネの言葉に深く頷き、少女はこれからも百人一首に自信を持って付き合っていこうと手にした札に視線を落とした。
「百人一首とカードバトル楽しかったですよー!」
 元気づけるようにタタンが戦闘の事を面白おかしく語る。
「一緒に修行してみてもいい?」
 アウィスが尋ねると、もちろんと嬉しそうに少女は頷き札を並べる。
「ケルベロスには奇特な戦い方をする者も大勢いるでござる。お主のその武も、いつかそういった高みに届くかもしれぬでござるな」
 その熱心な様子に将来が楽しみだと日仙丸が語りかける。
「再戦ならいつでも受けて立つゼ」
「百人一首拳が完成するのを楽しみにしておくね」
 神月とリナがこの調子なら百人一首の武術家が真に生まれそうだと微笑む。
「一首は詩の単位で首刈りじゃないんですけどもねえ」
 やはり言葉を深読みしてしまうと碧人がぼやく。その横ではフレアが落ちている札を拾い、何が書いてあるのか首を捻って珍妙な顔をしていた。
「甘酒やリンゴ飴などを皆さんで調達して帰りましょうか?」
 ドリームイーターの鎮魂の為にブルースハープを演奏していた泉は、仲間達に振り向きながら正月らしい屋台の甘味に誘う。
 少女を送りに再開した神社に向かう。正月はまだまだ始まったばかり。一年最初の事件を無事に終わらせて縁起よく迎えられると、皆は初詣を楽しむ人々の中に入って行くのだった。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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