除夜のクレーシャ事件~さらば酉年、その時は来たのだ

作者:ほむらもやし

●2017年最後の日に
 ご〜ん、ご〜ん、と、ゆっくりとしたリズムを刻む鐘の音が夜空に響く。
 午後10時も半ばを過ぎ、11時も近くなると、除夜の鐘を目当てに、この寺を参拝する者は多くなってくる。
 そんなタイミングで突然、人々の悲鳴が湧き起こり、混乱と喧噪が急拡大する。
「酉年を終わらせてなるものか!」
 鳥の如き姿の異形、ビルシャナが怒号にも似た叫びと共に人々を蹴散らしながら、参道を駆け上がってくる。
 その先にあるのは鐘撞き堂。
「あちょ〜! あちょ〜! ほわたぁ!!」
 勢いのままに跳び上がり、繰り出したのは、ビルシャナゴールデンスペシャルキック。
 ずごごごごーん!!
 強烈な蹴撃に打ち据えられ、大人の背丈ほどもある鐘が、凄まじい大音響を轟かせ、集まっていた人々をたちまち駆逐した。
「なんてことだ、鐘に近づけなくなってしまったぞ!!」
「ひゃーはっはっはっ! もうこの鐘は鳴らさせない。酉年は永遠なり!」
 過去の自分を顧みて、未来への希望を胸にやって来ていた人たちの気持ちは、無残に踏みにじられた。
 ここにはもう、時が止まったかの如き、停滞と絶望の空気しか残っていない。

●大変恐縮です
「……というわけで、大晦日に除夜の鐘を狙うビルシャナを予知してしまったから、申し訳ないけれど、今から現場に向かう」
 ケンジ・サルヴァトーレ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0076)は眉をピクつかせながら、これは、赤鉄・鈴珠(ファーストエイド・e28402)さんが懸念していたビルシャナであると告げた。
「このビルシャナの目的は、除夜の鐘の制圧。鐘を撞かせないことで、気持ちの上で新年を迎えさせず、酉年が終わるのを阻止しようとしている」
 幸い人々を傷つける意思はないようだが、休暇を台無しにしてくれるに値する行動だから、遠慮無く叩きつぶしてくれ。とケンジは素直な気持ちのままに言うと、福井県の地図を開き、向かう寺の位置を指し示す。
「寺にはさっき連絡を入れた。鐘撞き堂の周囲には人が近づかないように、参道も広く空けておいて貰えるよう手配したから、諸君は除夜の鐘を打ちながら、ビルシャナの襲撃に備えて欲しい」
 ビルシャナの目的は、除夜の鐘の阻止。鐘を撞いているのが、ケルベロスであっても、その意思は揺るがない。
 攻撃能力は、強力なキックの他、羽ばたきと共に炎を放ったり、経文を読み上げたりして心を惑わしてくる。ただ、キック以外はビルシャナにありがちなものだから、催眠や炎に対して一般的な対策をしておけば苦しまされる恐れは低いだろう。
「人払いの必要も無いし、襲いかかってくるビルシャナを迎撃してやっつけるだけの簡単な依頼だ。手際よくパッと倒すことが出来れば——年末の休暇を台無しにしたお詫びに、朝ぐらいまでは好きに過ごせるよう取り計らう」
 寺の裏山にある展望台に上れば、雄大な山並みから出現する、初日の出を望むことができる。
「休暇をキャンセルさせてしまうことになるけれど、この非常時に動けるのは、今、ここにいる君たちだけなんだ。だから、どうか、お願いしたい」
 今年の12月は例年の5割増しで働いたケンジは丁寧に頭を下げた。しかし何ごともなかったかのように、出発しようと呼びかけた。


参加者
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
四辻・樒(黒の背反・e03880)
神宮時・あお(壊レタ世界ノ詩・e04014)
月篠・灯音(犬好きの新妻・e04557)
クレーエ・スクラーヴェ(白く穢れる宵闇の・e11631)
六海・良(思い出・e19476)
鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)
ノルン・ホルダー(星剣の少女・e42445)

■リプレイ

●みんなの為になる仕事
 これは2017年の最後の日の出来事。
 流石にもう仕事はねじ込まれないだろうと、家族、友だち、恋人の待つ場所へ帰ろうとしていたケルベロスたちの物語だ。
「気持ちの上でっつっても、日付が変わりゃァ、戌年なんだよなぁ。やる事ちいせぇし、年末の忙しい時に騒ぎ立てるし、どうせ来年もたいして変わらねーんだからもう少し大人しくしてろよ……こっちは年末をゆっくり過ごしてぇんだ……。過ごさせろよ……! コンチクショウ!!」
「ほんと、こんなコトしたって何の意味もないのにさぁ……さっさと倒して、新年のお祝いしたいねー?」
 あと1時間30分ほどで年が明けるタイミングの仕事など面白いはずはない。六海・良(思い出・e19476)の呟きに、クレーエ・スクラーヴェ(白く穢れる宵闇の・e11631)は軽く返しつつ、階段を駆け上がって行く。
「そうだそうだ! あー、もう! 埒明かねぇからさっさと倒して新年迎えるぞー!」
 今回の敵はビルシャナ。浅薄に聞こえる教義だけ注目するならば、深刻度は低いように感じられる。
 しかし、ヘリオライダーの示す脅威度判定は通常クラス。
 やや易や易しいクラスでは無いと言うことは、それなりの戦闘能力を保有した敵だろう。
「よし、間に合った。年末もロックに決めるデース! 酉年よりドラゴンの年がロックデース!」
「……それでは後はよろしくお願いします」
 連絡を受けて鐘撞き堂周囲の人払いなど、段取りを終えた、イケメンの和尚さんが、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)の声に対して、動じることなく、丁寧な会釈で返すと、サッと引いて行く。
(「……こんなに、たくさんの、人の、気持ちを、思いを、壊そうと、するのは、駄目、だと、思います……」)
 素足に草履、簡素な僧衣を目にした、神宮時・あお(壊レタ世界ノ詩・e04014)の、ちっちゃい胸の内に闘志が燃え上がる。
 和尚さんは、恐らく年末も年始も関係ない。参拝する人のために働き、修行もしているのだろう。
 一方、知り合いに軽く挨拶を交わした、四辻・樒(黒の背反・e03880)は、月篠・灯音(犬好きの新妻・e04557)と共に鐘撞き堂の陰に身を潜めている。
「樒、寒いのだっ」
 しがみつくように身体を寄せてくる灯に樒が応じていると、和尚さんの去った、鐘撞き堂に入れ替わるように登ったクレーエとノルン・ホルダー(星剣の少女・e42445)が鐘撞きを再開する。
 除夜の鐘が鳴っている限り、ビルシャナはすぐにでも襲いかかって来るだろう。
 だけど準備はもう万全だ。
 鐘撞き堂から距離を取り、鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)は、周囲に気を払う。シィカ、あお、良もまた襲撃に備えて待機している。
 みんながあたりまえに正月を迎えられるのは、誰かがその期間のフォローをしてくれているからだ。
 休みを楽しんでいるように見えても、年始の仕事を前倒したり、納期を調整をしてくれた人もいるだろう。お年玉や年賀状、受け取る人の顔を思い浮かべて準備している人もいるだろう。もういくつ寝るとお正月。寝ているだけで、楽しいことがやって来ると、喜んでいるのは、お子さまだけかも知れない。
(「あー、もう! 埒明かねぇからさっさと倒して新年迎えるぞー!」)
 鐘を撞かれる度に、良は時間を確認する。鐘のペースは1分に1回程度で、到着からまだ5分も経っていない。
「今年最後の……これも掃除ですかねっ」
 ドスドスドスドス!!
 長い階段を駆け上がってくる気配に、そろそろでしょうか? と、奏過は得物をじゃらりと抜き放つ。
 この世の誰もが幸せを享受して欲しいとは思うことは簡単なことだが、子どもから大人になるときに、幸せを得るのは代価が必要であること、それが世の理であると弁えるようになる。

●戦い
「酉年を終わらせてなるものか!」
 で、このビルシャナは弁えてなさそうと、言うことで、奏過はサークリットチェインを発動した。
 鐘撞き堂の近くに展開されたケルベロスチェインの放つ魔方陣の輝きが盾の如くに立ち上がる中、ビルシャナに迫る黒い輝きが大きく逸れて飛びぬけた。
「かなり気になるんだが、あなたの目論見通り、酉年が終わらなかったら、お節やお年玉はどうなる?」
 それはノルンであった。だが攻撃を外したことなど全く気に止めない様子で言い放つ。
 当然のようにビルシャナは全力で切り返してくる。
「ならば問う、おまえはクリスマスじゃなければシャンパンを飲まないのか、ケーキを食べないのか、ゲーム機を買わないのか——」
 要するに酉年が終わりにならなければ良いだけで、それ以上のことは考えていないらしい。強いて言えば、折角用意してあるものなのだから、酉年二周目ということにして、使えばいいだけの話だ。
 まるで今でっち上げたようないい加減な返答に、戦う理由を見失いかけるノルンであったが、無理矢理に許したくない敵ということにして、気を引き締めると、雷の輝きを帯びた突きを繰り出す。
「未成年だからシャンパンは飲めない。ケーキは好きな時に食べる! というか、モフモフな戌年を迎えたい!」
「ほわちゃぁ! それがどういうことか分かっているのか?」
 足の爪で突きを食い止めたビルシャナが、劇画調の表情で問い返す。
「……正月を楽しむことだが」
「そうだ、酉年が終わってしまうと言うことだ。これは許せない罪だよなあ」
 そんなタイミングで、また鐘の音がひとつ響き渡る。
「酉の年は終わり、今度は僕ら戌の年なんだから大人しく成敗されなー」
 酉はビルシャナ、戌はケルベロスと掛けつつ、クレーエの薙いだ、空の霊力を帯びた刃が巨躯の傷を裂いた。
「年末もロックに決めるデース! それでは年越しケルベロスライブスタートデス! イェーイ!」
 頬を上気させて叫んだシィカはギターをかき鳴らし、ローラーダッシュの火花を散らしながら駆け出した。
 火花から炎が燃え上がり、巨大な篝火の輝きと化した蹴りがビルシャナを打ち据える。徹底した酉年への拒絶に除夜の鐘さえ止められればと思っていたビルシャナの闘志は高まりを見せ、その勢いのままに読み上げる経文が、凄まじい音量の響きとなって頭の中に染み入って来る。
(「拙い……」)
 お前は誰だと問われれば、樒と応えられる。妻は誰かと聞かれれば、灯と応じられる。じゃあ来年は酉年かと尋ねられれば、戌年と応じられる気がしなかった。
 ビルシャナを狙って突き出そうとしていた刃に映る自分の表情に、不意に切なさが膨れ上がり、殺さなければという思いに突き動かされて自身に刃を向ける。煌く刀身は止まらない。無造作に突き下ろした黒い刃は、ずぶりと体内に吸い込まれて血を溢れさせる。
「何をやっている、樒?!」
 腹に刃を突き刺したままの樒は応じず、灯音は激昂の叫びと共に薬液の雨を降らせる。苦辛い雨は催眠の効果に捕らわれた者たちの意識を解放し、正気を取り戻させ、此処に来た目的を思い出させる。
 ビルシャナを倒して、ちゃんと除夜の鐘を響かせて、酉年にお別れをして、みんなで新年を迎える。
 それは鎌倉時代から続けられていると言われる伝統。過去を引き継いで、未来へと繋げる。それが定命の理を受け入れた種族の役目、種族の記憶を繋いでゆくことなのだろう。たぶんそれがこの人たちの生きるということ。そんな解釈をしつつ、電光石火の蹴りをビルシャナに叩き込んだ。
(「……おとなしく、退去、して、いただきます、です」)
 一年を振り返りながら、毎年同じ鐘を鳴らし、新しい年を迎える。生きることに意味なんて無い。やったことに対して意味が生じるだけだ。その意味で酉年を終わらせないというビルシャナの投じた一石は意味深いかも知れない、単なる我が儘とも言えるが。
 そんなことはどうでも良い。早く終わらせる為には一手でも多く攻めるだけだ。良の繰り出す達人の一撃、続けてサーヴァントのコウが金縛りに縛められて、戦闘力におけるビルシャナの優位が遂に崩れる。
「ならば、まずお前からだ! 食らえ、ビルシャナゴールデンスペシャルキック!!」
 ビルシャナは夜空高く飛び上がると未だ傷の癒え切れていない樒に狙いを定めて急降下を始める。
 だが、その意図と動きをクレーエは読み切っていた。直後、跳び上がったクレーエの一撃に弾かれるビルシャナの蹴り。
 その機を逃さずに、奏過が繰り出したウィッチオペレーションが樒のダメージを一挙に回復させ、懸念を一掃する。
「さぁ一気に行きマスよ!」
 シィカは叫び、オウガメタルを鋼の鬼と化すと、満身の力を乗せて拳を突き出した。回避しようと横に跳ぼうとするビルシャナの足の踏み込みに合わせて重心を傾けた拳は吸い込まれるようにビルシャナの頬を捉える。
 勢いのままにシィカは飛び抜けてビルシャナの身体は斜めに揺らぐ。そこに一挙に間合いを詰めた樒の黒い刃の一閃が狙い定めた通りに傷口を斬り広げる。瞬間、重ねられていたバッドステータスが一挙に花開き、ビルシャナは窮地に追い込まれる。
「兄さま、こっちはお任せを」
 灯音も素早く判断し、前列にライトニングウォールを展開する。早く戦闘にケリを付けたいのは山々だが、再び前衛の4人が一挙に催眠状態に落とされる懸念を消すために、この一手は必要だろう。
 他人との関わりはよくわからないが、ビルシャナは追い込まれ、自分らが優勢であることは理解出来る。
 ここで攻勢の手を緩めれば敵に立ち直りの猶予を与えてしまう。
 あおは無言のままに、掌を突き出した。放たれた巨大なドラゴンの幻影は一直線にビルシャナに襲いかかり、その輝きの中でビルシャナを焼いた。幻影が消えてなお燃え上がる炎はそのままで、生きたまま焼かれる苦痛にビルシャナは悲鳴を上げる。
「覚醒、黒雷閃迅」
 この日二度目の黒い雷を纏ったノルンがビルシャナに迫る。神速の軌跡が描かれると同時、生まれた衝撃はビルシャナを打ち据えて、黒い稲妻を煌めかせる。一挙に体力を削り取られたビルシャナがよろめくように間合いを広げようとする様を見て、背後に回り込んだ良が星のオーラを籠めた蹴りで打ち付けて、さらに体力を奪い取る。
「くそっ、まだ足りないのかよ」
 僅かな緩みもない連続攻撃の直後、ビルシャナは天を仰ぐ。
「させないよー」
 果たしてビルシャナが経文を読み始めるよりも一瞬早く、獅子座と乙女座の輝きを帯びた十字の斬撃がビルシャナを捉えた。次の瞬間、クレーエが刃に重力を籠めると刃はぬるぬると食い入ってビルシャナの身体を4つに斬り裂いた。肉塊と化したビルシャナの身体は低い水音を立てて崩れて、燐光に似た無数の光の粒を舞い上がらせて、消滅した。

●初日の出を拝もう
 かくしてビルシャナの撃破を終えると、クレーエはノルンと一緒に再び除夜の鐘を鳴らし始めた。
(「もし妹が居たらこんな感じなのかな」)
 実の弟も異母弟妹もいるけれど、幼い頃に起こった事件がクレーエの心に違和感と自覚の欠如をもたらしていた。
 一方、戦闘の状況を一通り聞いた和尚は、後片付けをしてくれている、あおに手を合わせてお辞儀をすると、ビルシャナが消滅した跡に向かって、暫くの間読経した。
 進入禁止が解除された参道には再び一般の参拝客が見られるようになり、午前0時が近づく頃には、鐘撞きをしたり、年明けを待つ人々で賑わい、いつもの年と変わらない様子に戻った。
「間に合って良かった。灯はまだ寒いのか?」
「樒、また、寒くなってきたのだっ!」
 またしても、むぎゅぅぅっと抱きつく灯音を宥めつつ、樒は持って来た甘酒を皆に勧める。
 説明をしたり後片付けをしたり、ひと休みしたり、あれこれしている内に時間はあっという間に過ぎた。
「あー、終わったァ……。もう年も明けてしまったし、折角だから、初日の出でも拝んでいくか」
 けじめをつけて、自由に動けるようになったのは午前1時過ぎ、皆やれやれという調子だったが、これから山登りをする体力は残っていると良は元気に言った。
「折角ですし……私も見に行ってみましょう」
 果たして、奏過も賛意を示し、お節介かもと思いながら展望台に向かう者を募ってみれば、即答で全員で行くことになった。
「まあ、今度こそ仕事は舞い込んでこないでしょう……」
「じゃあ行くか、おいコウ、コートとマフラー持ってきたから冷えねぇようにちゃんと着込めよ」
 日の出の時間は午前7時頃、まだ6時間ほどあるから、急がなくとも大丈夫だと樒が告げると、結構長いじゃないかと、良はビハインドのコウを気遣いつつ、頬を膨らせるが……。
「なら、ボクの歌を聴くと良いデスよー!」
 と言うわけで、シィカが歌い続けたので、意外に暇にはならなかった。
 時間は過ぎ、日の出が近くなってくると、風景は青色を帯びて来る。この頃になると、不眠不休で歌い続けるシィカも流石に疲れて果てているように見える。
 それでも続けようと思えば続けられたかも知れないが、初日の出は皆で拝むもの、自分だけの時間ではないからと弁えて、シィカは歌を終えた。歌声が途切れて、静寂が風景を支配するのと前後して、風景の青が急速に濃くなり、やがて完全な青に満たされる。
「ブルーモーメント、珍しいですね」
 奏過が呟いた直後、山並みと空の間に太陽が現れて、青色は急速に薄くなって行く。
「綺麗だな。やはり初日の出は良いものだ……ん?」
 言いながら、灯音の肩を抱き寄せようとするが、腕が宙を撫でる。
「クレーエさん、奏兄ぃー! みてみて朝日が昇るのだっ。初日の出なのだ」
 なんだか大はしゃぎで声を上げている。灯音が見えた。
 これはこれで良いかと思う樒であったが、すぐに襟を正した灯音が丁寧にお辞儀をする。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします、兄さま クレーエさん。樒も今年もよろしくね」
「今年もよろしく。皆にとっても良い年になることを願う」
「こんな年越しってなんだか不思議な感じ。へへー、今年も宜しくお願いします、だよ♪」
 一緒に戦った仲間と迎える新年、そして初日の出に、暫し仕事で来ていたことも忘れそうになる。
 ほんの僅かな時間で風景は明るくなり、澄み切った青空と雪を冠した山並みが何処までも続く様にあおは思う。
(「……初日の出……。……今年は、どんな、年に、なる、のでしょう、ね……」)
「今年も良い年でありますように……」
 そして奏過は呟くと、懐からスキットルを取り出して蓋を開けた。
 ——世界の美しさに乾杯。
「じゃあ、わたしは温かいお汁粉だな」
 昇る朝日の方を向いたままの格好で、ノルンは大盛りのお汁粉を堪能する。
 初日の出はきれいだけど、とにかくお腹も空いた。寒いし、眠いし、ヘリポートを出発してから、いったい何時間経ったのだろう。もう誰も数えていなかった。

作者:ほむらもやし 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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