除夜のクレーシャ事件~酉年最後の大仕事!

作者:なちゅい

●『酉年をタダで終わらせない』ビルシャナ出現!
 大晦日の深夜。
 島根県出雲市の某寺には、除夜の鐘を見学に来ている参拝客がたくさん訪れていた。
 その客はさまざま。近隣の家族と思われる人々がやや多めであるようだ。中には、友達同士で集まる集団や弱いを重ねた信心深い老夫婦がいたり、暮れ行く年を甘い一時としていたカップルの姿もある。
 ゴーーーン……。
 参拝の為にと列に並ぶ彼らの耳に、除夜の鐘が聞こえてきた。
 ゴーーーン……。
 鳴り響く低い鐘の音で今年1年を思い返しながら語る人々。だが、突如として寺の境内にビルシャナが現れる。
「酉年を終わらせてなるものか!」
「な、何をする!」
 いきなり飛び込んできたそいつは除夜の鐘を鳴らす住職へと手にする太い棒で襲いかかり、除夜の鐘を占拠してしまった。
「一体何が起こっているの?」
「どうなってしまうんだ……?」
 どよめく参拝客達。人々は現われたビルシャナに不安と戸惑いを見せていたのだった……。

 もう1年も終わるというこの時期、ビルシャナの動きが活発になったという情報を受け、ケルベロス達はヘリポートへと向かう。
「来てくれてありがとう。早速説明いいかな?」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)は挨拶を簡単にすませ、依頼説明へと入る。
 すでに、赤鉄・鈴珠(ファーストエイド・e28402)が予想していたのだが、大晦日に除夜の鐘を狙うビルシャナの出現が予知されたのだ。
「今回現れるビルシャナの目的は、『除夜の鐘を占拠して鳴らさせない事によって、酉年が終わるのを阻止する』というものらしいね」
 ビルシャナは除夜の鐘の制圧を狙っている為、参拝客を襲う事は無いようだ。だが、参拝客が慌てて逃げ出して将棋倒しになるといった可能性は否定できない。
「このビルシャナは、どのような障害があっても除夜の鐘を制圧する強い意志を持っているようだよ」
 例え、除夜の鐘を突いているのが『ケルベロス』であったとしても、敵は襲撃をかけてくると予測されている。
 このこともあって、お寺側の協力をすでにとりつけ、除夜の鐘の周囲には参拝客が近づかないように、除夜の鐘を鳴らすのはケルベロスに任せる事を約束してもらっている。
「だから、皆に除夜の鐘を鳴らしてもらって、おびき寄せたビルシャナを迎撃してほしいんだ」
 現れるビルシャナ、『酉年をタダで終わらせない』ビルシャナは、酉年を終わらせまいとグラビティを発してくる。
 クラッシャーとして力ずくで攻め来る敵は、経文を唱えてこちらを惑わせてきたり、自らが持つ除夜の鐘を鳴らしたり、さらに手にする棒……橦木(しゅもく)で攻撃してくることもあるようだ。
「現場は島根県の出雲市だね。某寺周辺はすでに、参拝客の立ち入りが制限されているよ」
 ビルシャナは『除夜の鐘の制圧』を目的としている為、除夜の鐘を含むお寺の施設を攻撃する事はない。その為、ケルベロスは戦闘に集中する事は可能だ。
「ビルシャナは配下となる信者などは連れていないし、戦闘力も弱めだから、それほど苦戦はしないと思われるよ」
 一通り説明を終えたリーゼリットは更に続ける。
「このビルシャナ達は、除夜のクレーシャというビルシャナの配下のようだね」
 除夜のクレーシャは除夜の鐘を武器とするビルシャナだ。日本全国の除夜の鐘を制圧した上で、自らの持つ除夜の鐘と共鳴させることで、日本各地で酉年終わるのを絶対許さない明王を出現させる野望を持っているようだ。
「でも、日本各地のお寺で起こる事件を阻止できれば、この野望が果たされることはないよ」
 除夜のクレーシャ本体の撃破には、別のケルベロスのチームが向かっている。酉年のビルシャナ事件はここで終わりとなることだろう。
「事後だけど、お寺の住職に除夜の鐘を突くのをお願いしてもいいし、皆で除夜の鐘を打ち続けても問題ないよ」
 折角だから、除夜の鐘を突き続けてもいいし、そのまま近所の神社へと初詣に行ってみるのもいいかもしれない。
「以上だよ。それでは、よい年を」
 彼女はにっこりと笑い、ケルベロス達を送り出すのだった。


参加者
篁・悠(暁光の騎士・e00141)
流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)
神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)
修月・雫(秋空から落ちる蒼き涙・e01754)
リーゼン・トラ(さすらいのヤンキードクター・e03420)
大首・領(秘密結社オリュンポスの大首領・e05082)
ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)
ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)

■リプレイ

●大晦日 鐘をならせば 鳥来たる
 島根県出雲市。
 とある寺へと、ケルベロスの1隊が向かう。
「フハハハ……、我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスが大首領!!」
 全身、漆黒の衣装で覆う大首・領(秘密結社オリュンポスの大首領・e05082)は名乗りを上げつつ、彼の容姿によってざわつく人の波の間を進む。
「へぇ、こんなに沢山の人が除夜の鐘を見にきてるんだな!」
 ドイツ人のハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)は、寺を遠巻きに見ている人々の姿を見て感嘆する。
「年の瀬の風物詩、邪魔させるわけにはいかないんだぜ!」
「年明けに酉年様が出たと思ったら、今度は酉年を終わらせまいとするビルシャナですか……」
 年明けも、そして、今回も酉年に拘るビルシャナの登場に、赤い髪に金木犀の花を咲かせ、女の子にも間違われそうな容姿をした修月・雫(秋空から落ちる蒼き涙・e01754)は辟易としてしまう。
「厄介者は倒して、新しい年を迎えられるようにしないとですね」
「それにしても、一体なんで酉年に拘るんだ?」
 雫の言葉を受け、ハインツが素朴な疑問を口にすると。
「信者も作らずに必死なんやなぁ」
 やや小型なロボットという出で立ちの流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)も達観した様子でビルシャナについて語る。
「ビルシャナ的には、トリ年がよっぽどたいせつなのかな?」
 そこで、ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)は金髪ツインテールを揺らして首を傾げた。
「干支戦争っぽいが、この場合はタダの戯言だな」
「私には、鶏肉料理の年ぐらいのイメージなんだけど」
 猫耳をピクピクと動かす篁・悠(暁光の騎士・e00141)がビルシャナの思考にただただ呆れる。なお、ドイツ出身のユーロには干支というものがいまいち理解できていないらしい。
「鐘が鳴らなくても、アラームが鳴れば日付変わるのにね」
 そうして、彼女はスマートフォンのアラームを午前0時にセットしていた。
「年の瀬まで活動してくるたぁ、デウスエクスも職務熱心だ事で」
 呟く、大きなリーゼントが特徴的な、リーゼン・トラ(さすらいのヤンキードクター・e03420)が前方に見えてきた寺の入り口を目にして。
「さっさとビルシャナ倒して、年を越そうぜ」
 門を潜って中に入るケルベロス達は住職を含め、人の波を抜けて彼らが遠巻きに見守る大きな鐘を前にした。
「ほう……、除夜の鐘か……。今年もまた1年が過ぎ行くのは侘しいものもあるが……。これこそ、来る年への活力に変えたいものだな」
 ともあれ、この場にビルシャナをおびき寄せる為、鐘つき希望のメンバーが前に出る。
 まずは、ユーロが撞木を手に取る。
 なお、4人で分裂して突きたいとユーロは考えたが、グラビティは遠慮してほしいという住職の願いで控えていたようだ。
「初めてだし、思いっきりつくよ!」
 ゴオオオォォォ……ン。
 彼女の大きな胸が揺れるのと同時に、周囲に重く低い音が響き渡る。
 それが鳴り止む頃、今度は領が前に出て。
「フハハハ……、ビルシャナよ……。鐘はココにある。さぁ、来るがいい!!」
 ゴオオオォォォ……ン。
 領もまた、趣のある鐘の音を鳴らす。
 それ以外のメンバーは、周囲の警戒を強めていた。
 銀の髪を纏めたシャドウエルフ、神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)などは実家の菩提寺で小さい頃に鐘つきの経験があった為、警戒班に回っていたようだ。
 すると、人ごみの中から鳥頭の怪人が飛び出す。
「タダでは酉年は終わらせぬ!」
 こいつこそ、『酉年をタダで終わらせない』ビルシャナ。鐘を占拠しようと走ってくるそいつの進路を、ケルベロス達は塞ぐ。
「極東ケルベロス軍団、見参!」
 スタイリッシュモードとなって前に立った悠が騎士然と構え、相手を牽制する。
 飛び出すリーゼンは相手が突き出す撞木を避け、カウンターで蹴りを食らわせようとした。
 しかし、互いの攻撃は空を切り、カウンターとはいかず。
「先制攻撃、ありじゃねって思ったんだけどな」
 奇襲に失敗したリーゼンは専門の医療技術を使う為、仲間の後方に回る。
「どうか、落ち着いてください」
「危険だから、下がっていてくれ」
 その間に、ビルシャナの出現を受けてやや混乱を見せる参拝客に、雫が呼びかける。ハインツも割り込みヴォイスで避難を呼びかけていた。
 状況を見て瑞樹は殺界を展開しようとするが、この場は混乱が大きくなる可能性もあって控えることにしたようだ。
「酉年を終わらせてなるものか!」
 臨戦態勢を整えるケルベロスに対し、ビルシャナも次なるグラビティの準備をしている。
「時は必ず移ろいしもの。それすら解さぬのは、余りにも狭い見識だろう……」
 額にVマークがついたモルモットモドキを肩に乗せた悠がビルシャナへと告げながら、相手との距離をはかって。
「狭く閉ざされし、己が箱庭の見識のみにて生きる者……人それを『甕裡醯鶏』(おうりけいけい)という!」
 悠は腕を猫のそれに変え、仲間と共に相手に飛びかかっていったのだった。

●除夜の鐘を守りきれ!
 戦いの舞台は寺の敷地内。大きな鐘を背にケルベロス達はビルシャナを迎え撃つ。
「酉年全ての罪と欲、108の煩悩を解放せん!」
「相変わらずやる事極端というか、あほっぽいというか……」
 ビルシャナが再度攻撃を仕掛ける前に、瑞樹が相手の行動に呆れながらも飛び込む。
 彼は周囲を見て、できる限り寺院の建物に被害が及ばぬようにと配慮しながら立ち回る。
「酉は鳥じゃねーし。つか、お前らは鳥でも鶏でもないはずだろーが」
 並ぶ事の多い鐘つきにトラブルは持ち込んで欲しくないと考える瑞樹は、とりあえず、ビルシャナに対して螺旋の一撃を浴びせかけていく。
「此処がお前の逝く年、来る年だ!!」
 あと1時間余りで、2017年も終わるはず。領もビルシャナへと竜砲弾を撃ち込み、その動きを止めようとする。
 されど、相手も本気なのだろう。
「我らと志を同じくする者の為に!」
 ビルシャナは、自らの持つ鐘の音を鳴り響かせて来る。
「煩悩は捨て去らんから除夜の鐘はつく予定ないんやけど、酉年は終わらせんとなぁ!」
 敵との距離を詰める清和はそれにトラウマを植えつけられそうになりつつ、ドローンを展開していく。清和は攻撃を仲間に任せ、壁としての役割に徹する心積もりだ。
「こんなことで、命を落とさなくてもいいじゃんよ……」
 そんな相手に複雑な感情を抱くハインツ。
 彼の隣にいたオルトロスのチビ助がくわえた剣でビルシャナに切りかかった直後、ハインツは自分達の背後にカラフルな爆発を巻き起こし、清和や自身に浮かぶトラウマを払拭させていく。
「待ってろよ。今、治してやっからな」
 さらに、リーゼンが自らの立派なリーゼントに癒しの力を溜め、光弾として拡散放出していく。痛みを伴う荒業ではあるが、前線メンバーの傷を塞いでしまう。
 一方で、攻撃に徹するメンバーの姿も。
 ケルベロスの布陣中ほどに立つ悠は雷を纏って戦場を高速で駆け抜け、獣となった腕を振り下ろす。
「穿て!」
 彼女は鋭い刃で重い一撃をビルシャナに繰り出す。
 相手も重そうな棒と鐘を持っているように見えて、意外にも素早い。切り裂きはできても、貫くには至らない。
 後方のユーロは、自分達にオウガ粒子を纏わせて感覚を覚醒させていく。
 それを受けた雫は、御業の力でビルシャナの体をきつく縛り上げる。
「酉年だからといって、暴れていい理由にはなりません!」
 雫は力ずくで押さえつけようとするが、ビルシャナは抵抗して。
「我等の本願の為に!」
 そいつの紡ぐ経文は、ケルベロス達の思考を乱す。
 ただ、ケルベロスにも大義がある。前線メンバーはまたも万全の回復態勢で迷いを振り払い、ビルシャナを攻め立てていくのだった。

 絡め手も多い『酉年をタダで終わらせない』ビルシャナだが、比較的強引にこの場を押し通ろうとしているようにも見える。
 だからこそ、ケルベロスもまた布陣を組んで対し、この場を死守する。
 神雷剣に空の霊力を纏わせた悠がビルシャナの体を大きく切り払うと、ユーロがここぞと4人に分裂して。
「私たちと遊びましょう!」
 分裂体と合わせてビルシャナを取り囲んだ彼女は弾丸やら剣やらを使い、徹底的に相手の体をボコボコにしてしまう。
「ぐ……」
 それから逃れたビルシャナはまたも、橦木を構えて突っ込んできた。
 そいつからすれば、除夜の鐘に取り付きさえすれば勝ちも同然。だからこそ、相手もなりふり構わず襲い来る。
 もちろん、ケルベロスも通す気など微塵もない。
 小柄な清和だが、相手の射線を塞ぐ彼は敵の手にする大きな棒をしっかりと受け止めて強く押し、できるだけ除夜の鐘から相手の位置をずらそうとした。
 その上で、清和は隙あらば、幾度も自分達の周囲にドローンの数を増やして盾となす。
 時に、ライオットシールド型のエクスカリバール「Heiligtum」を使って身構えるハインツはチビ助と一緒にダメージを肩代わりしつつも、黄金のオーラを蔦状に変形させて。
「これで大丈夫だ、あと一歩頑張ってこうぜ! トイ、トイ、トイ!!」
 その蔦を清和に触れさせることで、ハインツはビルシャナが植えつけるトラウマすらも完全に振り払っていく。なお、『トイトイトイ』は彼の故郷における魔よけのおまじないとのことだ。
 仲間達が抑えや回復に立ち回ってくれていたことで、瑞樹はかなりスムーズに敵へと攻撃グラビティを使うことができていた。
 頑なに自分の考えを曲げぬビルシャナ。瑞樹はそいつの主張に首を振りながらも半透明の御業を使い、炎弾を発して敵の体を焼き払う。
「ぐおっ……」
 身を包む炎に、ビルシャナが嗚咽を漏らす。
「今です。一気にいきましょう」
 ここが攻め時と判断し、雫は仲間達へと呼びかけて。
「焼き鳥にしてしまいましょう!」
 呼び出す御業から、彼もまた炎弾を飛ばし、ビルシャナの羽毛を燃え上がらせた。
 御業に締め付けられ、動きを止めてしまうビルシャナ。そいつがもがく間に、攻撃に転じたリーゼンがライトニングロッドから迸る雷を飛ばし、敵の身体に痺れを走らせていく。
「フハハハ……そろそろ戌を迎えて、酉年終了のお知らせだ!!」
 不敵に笑う領は発する冷気と共に、冥府に住まう三つ首の犬を呼び出す。
 それは猛然と駆け出し、ビルシャナの体を捕えて貪り喰らっていく。領の言葉通りに酉年を締めくくり、戌年を迎えようとする状況を顕現させているかのようだ。
 牙を突き立てられるビルシャナの背後にはいつの間にか、悠の姿が。彼女はビルシャナを掴み、高々と飛び上がる。
「往生せよ! 神雷ッ!! 天墜―――ッ!!!」
 重力加速と電磁加速をつけ、悠は地面へと叩きつけた。
「ぐはあっ……」
 その衝撃に耐えられず、ビルシャナは完全に白目をむいて果ててしまう。
「成敗!」
 銀の髪を舞わせて着地した悠の姿に、遠巻きに戦いを見守っていた人々から拍手が巻き起こり出したのだった。

●新年を迎えて
 ビルシャナを倒した後、メンバー達は戦場となった寺の敷地のヒールに当たる。
 オウガ粒子を撒くユーロの傍で、気力を撃ち出していた雫は鐘に視線を向けて。
「折角の機会ですし、鐘を突いていきたいですね」
 最後の1回を丁度午前0時に突くのが通例とあって、メンバー達はそれに合わせるべく、回数を重ねて突くこととなる。
 ゴオオオォォォ……ン。
 ゴオオオォォォ……ン。
 雫が一突きした後は、リーゼンも続いて打ち鳴らす。戦闘前と同じく、瑞樹はそれを傍から眺めていた。
 ユーロはセットしたアラームが鳴るのと同時についに、最後の一突き。
「これで、トリ年終了!」
 ゴオオオォォォ……ン。
 こうして、新たな年、2018年が明けたのである。

 その後、メンバー達は近場の神社へと移動していく。
 ユーロは初詣の前に、赤い振袖に着替えていて。
「着慣れないいので、少し動きにくいな」
 とりわけ、彼女が気にしていたのはその大きな胸。ちょっとばかり窮屈だったようで、大きく動くと着崩れしそうになってしまう。
 そんな中、ユーロは両手を合わせて願い事。姉や友達と今年も仲良く遊べるように。美味しいものをいっぱい食べられますように、また、ゲームで遊びたいと祈る。ちなみに、直後引いたおみくじは中吉だったようだ。
 瑞樹は縁結びを願う。相棒のような存在ができればと願う彼の傍で、ハインツと悠が一緒にお参りしていて。
「日本の神社には色んな神様がいるっていうけど、ここは何の神様なんだろ?」
「祭神は元締めみたいな人だよ」
 参拝方法がよく分からぬハインツへ、悠が丁寧に説明する。
「えーと、二拝二拍手一拝って言ってだね……。あ、あと道の真ん中歩くのはNGね」
 それにハインツは倣い、お参りしていた。
 年端も行かぬ雫もまた、作法はしっかりと守ってから両手を合わせて。
「人々と地球を守れますように。……それと、周りの人々が無事に過ごせますように」
 今年は少しだけプラスして、雫は昨年と同じ願いを捧げる。
「フハハハ……、今年も我がオリュンポスの威光を知らしめてくれよう!!」
 そこで、大声で笑う領が境内を歩く。
 ただ、彼はその見た目に反して、しっかりと無駄に参拝作法を行う。
 表面上は「神様は願いを聞いてくれるだけもの」という理論から神様に対して今年1年の意志宣言を行う。
(「今年1年も、痛い目に遭いませんように!」)
 とはいえ、領の本心での願いは、思った以上に俗なものだったようだ。
 こうして、一通り祈りを済ませたケルベロス達。
 そういえばと、ハインツは声を上げて。
「出雲は蕎麦も有名なんだっけ。帰りに食べに行っても良さそうだな!」
 そうだなと、悠は赤い一房の髪を揺らしつつ答え、彼と共に近場の店へと向かうのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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