●無限の黄泉返り
深夜、山間の森を駆け抜ける漆黒の影。木々の梢を飛び回り刃を交えるのは、合わせて4体の螺旋忍軍と対峙する忍者達。
「くそっ……なんてやつらだ……」
「こちらに付け入る隙を与えさせぬか……。デウスエクスということを抜きにしても、恐るべし手練れどもよ」
螺旋忍軍と戦っているのは、こちらも4人程の零式忍者達だった。だが、力量の差は歴然なのか、彼らの方が一方的に押されていた。
「こんな時、彼らがいてくれたら……」
「彼ら? 何を言っているんだ?」
噛み合わない会話に訝しげな表情になって零式忍者の内の1人が問い質すが、その答えが返ってくるのを待たず、飛来した螺旋手裏剣が標的となった者の急所を貫いた。
「戦いの最中、無駄口に花を咲かせるとは笑止!」
「どの道、貴様達に希望などない。あるのは闇と絶望……無間地獄への片道切符のみと知れ!」
迫り来る螺旋忍軍。奮闘虚しく、残る零式忍者達も、次々と地に倒れ伏して行く。
宵闇の中、螺旋忍軍達は姿を消し、後に残されたのは零式忍者達の亡骸だけだった。全身に手裏剣が突き刺さり、胸元を刃で貫かれ、間違いなく絶命している。そう、彼らは『死んでいる』はずだった。
だが、生きているはずなど、絶対にないのに。起き上がることなど、本来であれば考えられないはずなのに……。
「あ……あぁ……許さぬ……許さぬぞ……」
「この身、朽ち果てようと……必ず貴様達を……」
大きく見開かれた瞳が虚空を捉え、死の淵から蘇る零式忍者達。しかし、現実は残酷だ。死を乗り越えて再び立ち上がろうとも、それが螺旋忍軍達との力量の差を埋めることになりはしない。
森がざわめき、彼らは再び現れた螺旋忍軍達と対峙する。終わることなく繰り返される、死と再生の連鎖。それは、彼らの心が完全に折れるまで、幾度となく繰り返される地獄以外の何物でもなかった。
●修羅の地獄
「召集に応じてくれ、感謝する。寓話六塔戦争での勝利は見事な物だったが……もう少しだけ、お前達の力を貸してもらうことになりそうだ」
その日、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)より告げられたのは、ドリームイーター達に囚われていた、失伝ジョブの人間についての話だった。
「先の戦いで救出できなかった失伝ジョブの者達の情報と、俺達ヘリオライダーの予知を合わせて、未だ救出されていない失伝ジョブの人間の行方が判明した。彼らは『ポンペリポッサ』が用意した特殊なワイルドスペースに閉じ込められていて、大侵略期の残霊によって引き起こされる悲劇を、延々と繰り返させられているらしいな」
今回、向かって欲しいワイルドスペースに閉じ込められているのは4名の零式忍者。彼らは激しい怒りによって死の淵から蘇るものの、敵対する螺旋忍軍との力量差を埋めることはできず、その心から怒りの感情が失われるまで、永遠に殺されては蘇るという地獄を体感させられている。
大至急、この特殊なワイルドスペースに乗り込んで、繰り返される悲劇を消し去って欲しい。そうすることで、閉じ込められた人々を救出するのが今回の任務だとクロートは告げた。
「とりあえず、簡単に説明しておくか。今回の作戦に参加できるのは、失伝ジョブを持つケルベロスだけだ。敵は4体の螺旋忍軍。囚われている零式忍者達だけで勝利することは難しい相手だが、所詮は残霊に過ぎない。数の差を利用して挑めば、ケルベロスに覚醒したばかりの者の力でも十分に勝てる相手だな」
零式忍者達が囚われているワイルドスペースの内部は、山間部に位置する森の中となっている。彼らは螺旋忍軍と激しい忍術合戦を繰り広げているため、見つけるだけなら容易だろう。
「敵の螺旋忍軍は、手裏剣、刀、鎖分銅を武器として使う者が1人ずつ。後は、武器を持たずに徒手空拳と忍術のみで戦う者が1人だな。それぞれ螺旋手裏剣、日本刀、ケルベロスチェインに似たグラビティや、螺旋忍者と同様のグラビティを使用して来るぜ」
戦闘場所となる特殊なワイルドスペースは、失伝ジョブの人間に、自身が大侵略期の登場人物であると誤認させる効果がある。ミイラ取りがミイラにならないようにするためにも、戦闘終了後は速やかな撤退が必要だとクロートは付け加え。
「涙と怒りが枯れるまで、延々と戦い続ける修羅の地獄か……。そんな悲劇は、今宵限りで終わりにしてやってくれ」
それだけ言って、改めて集まったケルベロス達に依頼した。
参加者 | |
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天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082) |
根住・透子(炎熱の禍太刀の担い手・e44088) |
紗・緋華(不羇の糸・e44155) |
ティリル・フェニキア(死狂刃・e44448) |
クーパー・ルーシェ(ウェアライダーの妖剣士・e44584) |
ベルベット・ソルスタイン(身勝手な正義・e44622) |
ハヤト・ロックフォール(なないろラジオ・e44969) |
八重倉・翔(地球人のガジェッティア・e44992) |
●疾走
山間に広がる森の中には、淀んだ空気が漂っていた。
ワイルドスペース。過去と現在が歪に絡み合い、終わらぬ悲劇を再演し続ける禁忌の場所。
「初めての依頼が仲間の救出か……。少しハードだが、やるしかねえな。神の塗り手の力、見せてやる!」
風に乗って聞こえてくる金属音を耳にして、スプレー缶を持つハヤト・ロックフォール(なないろラジオ・e44969)の手に力が入った。
どうやら、敵の螺旋忍軍達は、既に零式忍者達との戦いを始めているようだ。ならば、ここは一刻も早く彼らの下へと急がねば、それだけ救出が難しくなる。
森の中、藪を掻き分けて獣道を進めば、果たしてそこには木々の梢を足場にして飛び回る、忍び装束を纏った8つの影が。
「こっから先は地獄の番犬ケルベロスが相手取るぜ、覚悟しな!」
相手がこちらの姿を捉えるよりも早く、呪詛を纏ったクーパー・ルーシェ(ウェアライダーの妖剣士・e44584)の一撃が、螺旋の覆面を被った忍を斬り捨てる。いかに忍道を極めた者とはいえ、さすがに死角からの強襲は防げなかった。
「ぐっ……な、何奴!?」
「彼奴らの新手か!? だが、そのような手合いが現れるなど……」
突然の乱入者の登場に、螺旋忍軍達は困惑した様子で状況を窺っている。だが、それは零式忍者達にとっても同じこと。怒りと悲しみを力に変え、己の死さえも乗り越えて戦い続ける今の彼らは、正に修羅道に囚われた者達と言っても過言ではないのだから。
「よう。こいつらを倒したいんだろ? 手を貸すぜ」
続け様に、ティリル・フェニキア(死狂刃・e44448)がクーパーの斬撃で体勢を崩した忍軍を斬り付ける。だが、その光景を見てもなお、零式忍者達は警戒を解こうとはせず。
「貴様達、何者だ!」
「敵でないというのであれば、まずはそちらの名を名乗れ!」
邂逅した全ての者を斬り捨てんばかりの激しい怒り。もっとも、彼らの置かれた状況を考えれば、それも致し方のないことかもしれないが。
「突然の乱入すまない。俺達はケルベロス……デウスエクスを殺す者だ。あんた達に加勢する」
銃形態へと変形させたガジェットから大量の弾をばら撒きつつ、八重倉・翔(地球人のガジェッティア・e44992)が忍軍を牽制しながら言った。とりあえず、敵ではないことは伝わったようだが、それでも零式忍者達はどこか疑念を捨てきれないようだった。
「ケルベロス……? 聞いたことのない流派だな」
「それに、デウスエクスを殺す、だと? それが如何に困難なことか、解ってのことか?」
ワイルドスペースに囚われた彼らの記憶からは、ケルベロスに関するものが抜けている。それ故に、デウスエクスを撃破することは、即ち神を殺すことに等しい難題であるとも思い込まされているのだろう。
「おのれ……何者かは知らぬが、我らの邪魔立てをするのであれば、死あるのみ!」
傷口を抑えつつも、態勢を整えた螺旋忍軍達が、一斉にこちらへと襲い掛かって来た。このままでは戦闘に零式忍者達が巻き込まれる可能性もあるが、だからと言って戦いを止めるわけにもいかない。
「わたし達は敵ではない。あやつらを倒すことで証明しよう」
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)が周囲に光源を投げ付けながら叫ぶが、しかし螺旋忍軍達は、お構いなしに向かってくる。完全なる暗闇でない限り、過剰な光源の存在は、そこまで戦況に影響を与えない。
「我らの秘儀、その身で味わうがいい!」
「そして、貴様達も二度と抜け出せぬ無限の闇に、そのまま飲まれて消えて行け!」
鎖分銅がティリルの身体へと巻き付き、そこへ螺旋を纏った掌底の追い撃ちが加わる。残霊に過ぎないとはいえ、それでもなかなか強烈な一撃だ。連続で食らい続けたら、数分と身が持ちそうにない。
「ふふふ……貴様達の技は、口先だけか?」
「ならば、その程度では何も守れぬということを、身を以て教えてやろう」
調子を取り戻した螺旋忍軍達が狙うは、ケルベロス達の後方に控える零式忍者達。なるほど、確かに彼らは絶望を再演するために用意された存在だ。そのためには手段を選ばぬというのもまた、忍らしいと言えばそうなのだろうが。
「よく頑張ったわね。後は私達、ケルベロスに任せなさい」
「ここは私達が引き受けます。一旦下がって英気を養ってください」
投げ付けられた手裏剣を、振り下ろされた鋼の刃を、ベルベット・ソルスタイン(身勝手な正義・e44622)と根住・透子(炎熱の禍太刀の担い手・e44088)が自らの身を持って受け止めた。
「幻惑の薔薇吹雪、舞い散りなさい!」
「私が注意を惹きつけないと……。お願い、劫火……! 力を貸して!」
お返しとばかりにベルベットが周囲の空気を凍結させて、透子もまた自らの駆る妖刀から強烈な熱気と妖気を解き放ち斬り掛かる。氷と炎、光と妖気の入り混じる空間は、忍軍達の身体だけでなく心までも狂わせて行き。
「おのれ……貴様達、もう容赦はせぬぞ!」
「小癪な小娘風情が! まずは貴様から刀の錆にしてくれるわ!」
完全に我を忘れ、ベルベットと透子を標的に絞ったようだ。こうなれば、後は手負いの者から片付けることで、零式忍者達に攻撃が飛んで行く可能性も減るというもの。
「この程度、すぐに片付けるから……。一旦下がって、けれど、しっかりと見ていて! 私達が、ケルベロスが、アンタ達の希望になる」
梢の上から飛び降りる形で螺旋忍軍を蹴り跳ばし、紗・緋華(不羇の糸・e44155)が零式忍者達に告げた。
絶望に次ぐ絶望。怒りと悲しみにまみれ、その心が折れるまで修羅として生きることを強要される悪夢の輪廻。その円環を断ち切るべく、ケルベロス達と螺旋忍軍との戦いが幕を開けた。
●活路
鳴り物入りで乱入し、螺旋忍軍との戦闘に突入したケルベロス達。血気逸る零式忍者達を庇いながらの戦いは難しいと思われたが、実際に戦ってみると、敵の防御は意外と脆かった。
「どうした? 動きが止まっているぞ」
「ぐぅ……口惜しや……」
翔の石化弾による一撃を受け、螺旋忍軍の内の1体が膝を突く。残霊とはいえ、個の力ではケルベロス達を凌駕する実力を誇る忍軍達であったが、さすがに数の暴力を利用した集中砲火を前にしては、押し負ける以外に未来はなかった。
「ははっ、君らも中々やるじゃあないか。さぁ、次は誰が首を取る?」
「ここで折れるわけにゃ行かねぇだろ! 散々やられた分、押し返してやろうぜ!」
ティリルとクーパーの呪剣が擦れ違い様に敵を斬り裂き、とうとう徒手空拳で戦う忍軍が呪詛に喰われて消滅した。
それは、闇の中に垣間見えた、ほんの僅かな一滴の光明。だが、それでも修羅として死するまで戦うことを宿命づけられた零式忍者達にとっては、大き過ぎる程のものであり。
「これで、わたし達を信用してくれただろうか?」
エクトプラズムで零式忍者達の傷を塞いだ水凪が、改めて彼らに問い掛ける。それに言葉で答える忍軍達ではなかったが、彼らの寡黙な瞳が全ての答えを語っていた。
「私達やあいつらを見て強いと思った? 敵わないと思った? ……いいえ、そんなことはないわ。もし、敵わないと思ったなら、それはあなたたちが自分の力に気づいていないだけ」
「諦めないでください。活路は私達が開きます!」
手裏剣による攻撃を自らの血を以て捌きつつベルベットが告げ、透子もまた敵と刃を切り結びながら零式忍者達に語り掛ける。その言葉が、彼らの医師を決める決定打だった。
「忝い……。この恩義、我らの行いを以て返させてもらおう!」
「我らとて、守られてばかりいるのは性に合わぬ。可能な限り、そちらの加勢に報いてみせるぞ」
そう言うが早いか、零式忍者達は円陣を組み、後方から一斉に雷撃を発射した。
「「うぉぉぉぉっ!!」」
怒號の雷撃が、夜の闇を切り裂いて螺旋忍軍へと向かって行く。その力はケルベロス達に比べれば微々たるものだが、それでも牽制としては十分だ。
「おのれ、小童どもが……! つまらぬ力など合わせおって!」
鎖分銅を駆る忍軍が後方の零式忍者達を狙って攻撃を放とうとするが、それよりも先にハヤトが仕掛けた。
「てめぇらの相手は、こっちだぜ!」
ついでに視界を奪われて、無残に同士討ちをするがいい。スプレー缶から発射された塗料が敵の顔面を塗り潰し、それに怯んだところへ仕掛けたのは緋華だ。
「私が成る。私が求む。運命を断つ、赤い糸。【糸の如く】」
そちらが鎖を使うのであれば、こちらは鮮血の糸を紡ごう。どちらが運命を紡ぐのに相応しい器か。その身を以て、決めるがいいと。
「が……はっ……! な、なんだ……これ……は……」
緋華の指先から解き放たれた赤い糸。それは鋼糸のように絡み付いて敵の身体を斬り刻むが、それだけでは終わらない。傷口から染み込む無数の呪詛が、敵の身体だけでなく魂さえも侵食しているのだ。
「馬……鹿……な……」
血溜りの中へ、溶け落ちるようにして消えて行く螺旋忍軍。修羅の森にて続く戦い。されど、残る敵は、後僅か。
●光明
零式忍者達を襲う螺旋忍軍の内の半数を片付け、残りの敵は既に2体。
「敵は動揺しておるぞ! ここで一気呵成に攻めるのだ!」
ケルベロス達の活躍により、零式忍者達も勢いを取り戻していた。彼らは決して強くはなかったが、その信念だけは紛うことなき本物だった。
「えぇい、五月蠅いやつらよ! 邪魔立てが入らねば、纏めて斬り捨ててやるものを……」
刀を武器とする螺旋忍軍の覆面から、悔しそうな声が漏れる。近接攻撃しかできない彼にとって、後方から仕掛けてくる零式忍者達の群れは、煩わしいことこの上なく。
(「どれだけ傷ついても敵に立ち向かうその執念。ああっ、なんて美しいのかしら! ……それに比べて」)
零式忍者達の戦う様を見て恍惚とした表情を浮かべるベルベットだったが、直ぐに自身の相手取っている螺旋忍軍へと向き直り、一転して侮蔑の視線で睨み付けた。
「役者が一流でも、筋書きがこれでは何の美しさもないわ」
誰も喜ばぬ悲劇の再演程、陳腐で薄汚い舞台はない。そろそろ退場の時間だとばかりに、燃え盛る蹴りを叩き込み。
「ぐはっ……! えぇい、格なる上は、纏めて地獄へ送ってくれるわ!!」
後方へ向け、無数の手裏剣を投げ付けて来る螺旋忍軍。しかし、そこは翔がさせはしない。
「……狙い撃つ!」
迫り来る手裏剣の雨を、ガジェットを使って撃ち落とす。それでも捌き切れなかった分は存在したが、しかし後列に立つ者が多過ぎた結果、その威力は却って拡散されてしまっていた。
「だ、大丈夫か?」
「ぬぅ……やはり、我らだけで先走るのは危険よのぅ……」
切り裂かれた肩口を押さえ、零式忍者の一人が倒れかけた仲間へと肩を貸した。
こんなところで死なれては、今まで戦ってきた努力が水の泡だ。そうさせないためにも、早く敵を仕留めねば。
「そら! もういっちょ、オマケだ!」
ハヤトの蹴りが炎を呼び、今度こそ完全に螺旋忍軍を消滅させた。これで、残る敵はついに1体。日本刀を駆り、透子と斬り結んでいる者だけだ。
「今です! 早く……私が押さえている内に!」
ともすれば押し込まれそうになっている透子だったが、それでも彼女の瞳は死んでいなかった。その想いに応えるべく、同じく呪剣を携えたティリルとクーパーが前に出て。
「一気に行くぜ。遅れんなよ?」
「そっちこそ、先走り過ぎて失敗するなよ?」
互いに苦笑し、同時に駆け出す二人。距離を取った透子と入れ替わるようにして、貪欲に魂を求める妖刀が螺旋忍軍の身体を十字に斬り裂く。
「まだだ! ここで逃すわけには……」
続けて、飛び込んだ緋華の拳が、螺旋忍軍を森の奥まで吹き飛ばす。そのまま近くの巨木に激突したところで、最後に仕掛けたのは水凪だった。
「……ここに」
死霊魔法、魔槍(アイドーネウス)。冥府の冷気より生まれし無数の槍が、驟雨の如く降り注ぐ。
「あ……がぁぁぁぁっ!!」
逃れることなど、適わない。払うことなど、できはしない。全身を氷結の槍に貫かれ、巨木に縫い付けられる螺旋忍軍。その様は、さながら酷寒の地獄にて早贄とされた、憐れな亡者の成れの果てのようだった。
●脱出
戦いの終わったワイルドスペースにて。ヒールも早々に零式忍者達を立ち上がらせ、ケルベロス達は改めて、彼らに脱出を促した。
「お怪我は大丈夫ですか? ここに留まると新手が来るかもしれません。まずはここから撤退しましょう」
「何から何まで、忝い……。だが、我等には我等の里が……帰るべき場所がある故に……」
手を差し伸べる透子だったが、零式忍者達の腰は重い。恩義こそ感じているのだろうが、改変された記憶が邪魔をしているのだ。
「お前ら、このままで良いのか? デウスエクス共に、一泡吹かせてやろうじゃねーか!」
再び戦いになったとき、今度は助けてやれる保証などない。だからこそ、自分達が力を付けねばならないと、ハヤトは零式忍者達を鼓舞するように諭す。
「先の戦いで、アンタ達も見たでしょう? これが、希望……デウスエクスに対抗出来る、力」
ここから抜け出し、共に来れば、直ぐにそのくらいは出来るようになる。このまま決して勝てぬ戦いを続けるか、それとも共に未来を歩むか、改めて選べと緋華が告げ。
「……承知した。我等はこれより、『ケルベロス』とやらの軍門に下ろう」
「どの道、一度は捨てた命。奴らを倒すための力を得られるというのであれば、そこに断る理由もなし」
どうやら零式忍者達も、改めてこちらへ来ることを納得してくれたようだ。もっとも、彼は修羅道を極めるための修行の一環と思っている節もあるようだが、細かいことを気にしている場合でもない。
「……付いてきて。今度は、アンタ達が誰かの希望になる番」
それだけ言って、緋華は零式忍者達を先導するように歩き出す。そんな中、クーパーはようやく始まった自らの戦いの勝利を実感し、心の中で一人息子に向かって叫んでいた。
(「見てろよノーグ……。3年も遅れたが、俺の冒険活劇はここからだぜ!」)
作者:雷紋寺音弥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年12月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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