「まだ終わらないのかよ。それとも居眠りしてたのか? 仕方ねえなあ」
少年たちが桶を担いで山道を登る。
小さな子供達にとって、水汲みは重要な修行なのだ。
「手伝うなとは言わないが、修行であるということも忘れないようにな」
「申し訳ありません、師兄」
場所は山奥の寺だと言えばどれほど辛く、そして毎日の生活に欠かせない重要な仕事であることも判るだろう。
これはコミュニティの一員として連帯感を養い、日々の生活を助けてもらえることがどれだけ大切なのかを知る訓練でもある。
兄弟子である大人たちは、年かさの子供が小さい子を助けることを怒るのではなく忠告を与えて良しとした。
杓子定規に育てることよりも、温かく見守ることを選んだのである。
だが、そんな山寺に無頼漢が暴力と共に訪れた。
『こんな所にも居たとはな』
『まあいい。処分して帰還するぞ』
突如として現れた三人のエインヘリアルが、隠れ住む人々を凍り付けにし、あるいは切り裂いて行く。
「その手を離せ!」
『十年早いわ! 砕け散れ!』
その暴挙に対する怒りか、光輪拳士に覚醒し戦うのだが……。
覚醒したばかり、それも三対一とあってはまともに戦える筈が無い。
爆発的な闘気の渦に巻き込まれ、死んでしまった……はずだった。
「うわあ! って……あれ? 夢か。悪夢なら見なきゃ良かった」
目を覚ますと境内で眠りこけていたらしい。
ホっと溜息をついて、おそるおそる外に出ると温かい声が掛けられた。
「まだ終わらないのかよ。それとも居眠りしてたのか? 仕方ねえなあ」
苦笑に満ちているがとても温かな……言葉が聞こえた。
その言葉が何度目なのか理解する事は出来なかったけれど。
●
「寓話六塔戦争での勝利おめでとうさんです」
ユエ・シャンティエがまずは世頃美の声を掛けた。
同時に救出できなかった失伝ジョブの人達の情報を得たと告げて説明に入る。
「失伝ジョブの人々は『ポンペリポッサ』が用意した、特殊なワイルドスペースに閉じ込められており、大侵略期の残霊によって引き起こされる悲劇を繰り返させられているそうですわ。死ぬに死ねず、楽しくも無い日々を送っとると思われます」
これは、失伝ジョブの人々を絶望に染めて、反逆ケルベロスとする為の作戦だったのだろう。
だが寓話六塔戦争に勝利した結果、彼らが反逆ケルベロスになる前に、救出する事が可能となった。
「この特殊なワイルドスペースに乗り込み、繰り返される悲劇を消し去って、閉じ込められた人々の救出をお願いします」
ユエはそう言うと軽く頭をさげたのである。
「大前提として、特殊なワイルドスペースは、失伝ジョブの人々以外の人間は出入りする事が不可能であるようです」
そのため、この作戦に参加できるのは、失伝ジョブを持つケルベロスだけとのこと。
歴戦のケルベロスが参加できないのは痛いが、良い事も一つだけある。
「ただし、敵は残霊なので、仲間になったばかりの失伝ジョブのケルベロスでも勝利可能な戦闘力のようです」
残霊は本来のデウスエクスよりも弱体化しており、ちゃんと作戦を練っておけば戦って勝利する事も可能だろう。
「では改めて説明しますが、避難所である山寺で修行して居る最中に、三体のエインヘリアルに襲われるようですえ」
ユエはそう言いながら、修行は主に山寺に続く参道で行われると付け加えた。
被害者は参道で死に、境内で蘇って来ると言うのを繰り返すらしい。
「残念ながらワイルドスペースの中で発生している悲劇は、実際に起きた過去の悲劇が残霊化したものだと思います。救出対象者以外の一般人などは全て残霊になるので、助けられないのが残念ですわ」
ユエはそう言うと、軽く首を振って悲しそうな顔を打ち消した。
そして悲劇に閉じ込められた人々の救出、よろしくお願いしますと深々と頭を下げたのである。
参加者 | |
---|---|
リルベルト・ウィルベルヴィント(黒将・e44173) |
雪花・七月(全て全て白く白く塗れ塗れる・e44317) |
天杭・魎月(レプリカントのブラックウィザード・e44438) |
古閑・菜々華(オラトリオの妖剣士・e44648) |
花厳・澪夜(狂咲・e44654) |
リオン・ラグナス(黒妖精・e44766) |
久里・蒼太(恩返しのために・e44787) |
八神・秋実(彼岸花と金木犀・e44915) |
●
「なんとしても救いだしましょう」
何も無い場所を抜けると山道が続く。
山中に灯った光を見て、雪花・七月(全て全て白く白く塗れ塗れる・e44317)は先を急いだ。
(「あぁ、悲劇に囚われた人を救いたい……そう、絶望に堕ちていく人を救わなければならないんだ」)
七月は声には出さず、揺れる心を敵を倒すことへの焦燥感で繋ぎ留め、自然と足早に進ませる。
「無限に悪夢を見続けるなんてしんどいよね。それこそ環境音レベルで日常になればどうにかなるかもしれないけど」
「辛い事を何度もループさせられるだなんて……そりゃ、絶望に染まっちゃうよね」
追随する古閑・菜々華(オラトリオの妖剣士・e44648)と花厳・澪夜(狂咲・e44654)は走るペースを速めながら、漏れ出た仲間の呟きに頷いた。
「でもまだ間に合うなら絶対に助け出してあげなくちゃ。……リスクあるけど、残霊の人たちも助けていいよね?」
「きっきっき、ぜーんぜん構わねえよ。俺らも囚われの間に、何度も繰り返されたからねぇ」
澪夜の頼みに天杭・魎月(レプリカントのブラックウィザード・e44438)は笑って了承する。
彼らもまたずっと夢の中で囚われ続け、自身も、夢の中で一緒だった友人達も殺され続けていたのだ。
「子猫ちゃんの救助は勿論、ヒールに巻き込んじまうくらいは良いんじゃね? 後はそうだな……これまでの鬱憤晴らしも兼ねて、派手にいくさ」
「なんだ、最初からその気なんじゃない。終わらせてあげなきゃあね」
魎月が持ち込んだカメラをポンっと叩くとは菜々華は苦笑した。
カメラが役に立つ筈は無い、だが、それがどうした! と言葉では無く体で叫ぶ男が此処に居る。
消えて行く人々に為に、思い出を置いて行く要救助者の為に、出来得る限りのことをやるつもりなのだ。
「居ました! わたしたちの最初の依頼、わたしたちの同胞をかならず助け出してみせますっ」
3mはありそうな巨漢を見付け、リオン・ラグナス(黒妖精・e44766)はダッシュを掛ける。
巡航速度から戦闘速度へ、一気に加速して喧噪の中へ飛び出して行く。
「助けに来ました。避難をお願いします」
「おう、戦闘任せるわ」
リオンが声をながら戦闘状態に入るのに対し、魎月は躊躇なく怪我して居る子供達にヒールを掛ける。
腕を切り落とされた子供には元の姿を重ね合わせ、足を砕かれた少女には元気に踊る姿のイメージを重ね合わせて行く。
確信犯である彼は攻撃して有利になるよりも、惨劇から苦しい痛みを抜き出して行ったのだ。
『無意味な……ことを。しかし何者だ?』
「でも判る気もする。最後のループくらい、助けてあげたいからね。それがきっとケルベロスとしての使命でもあるから」
澪夜は残霊のエインヘリアルと向かい合い宣戦を布告した。
「見えない筈の物を見せてあげる……ねぇ、綺麗でしょ?」
感触も音も無く、罪の数だけ増えると言う薄桃色の花が散っていく。
花は無数の花弁と化し、視界を美しく染め上げていった。
●
『敵か。敵は良いな』
『我ら不退転のエインヘリアルを恐れぬのならば、掛ってこい!』
それまで嬉しくもなさそうに子供たちを傷付けていた巨漢の男たちは、心なしか嬉しそうに向かって来た。
煙の様に燻っていた鎧がハッキリと明瞭化する。
やはり彼らは戦いの子、死地に挑むという意味での勇者なのであろう。
「何が掛って来いですか。……たかが絞りカスの塵芥が、後悔なさい」
リオンは子供達に向けたのとは裏腹に、何の感情も無い冷徹な顔で断言した。
なんの遠慮も呵責もなく徹底的に潰す為にグラビティを振るう。
指差す様に弓を構え死を告げる為に矢を放った。
(「あぁ、なんて……なんて心が躍る瞬間なんだ」)
ようやく戦える。
七月はその思いを噛み締めて、想いが口よりも先に体を動かした。
「ここを通りたければ、まず俺を倒すのだな」
『よかろう。空を埋め尽くす星々の嘆きを知れ!』
七月は虹と共に急降下、前衛に居る男の鎖骨に蹴りを浴びせた。
それに対して全身から黄金の闘気を放ち、七月の周囲が爆裂する。
『跳べ、ジャンピングクラーッシュ!』
「させないわ……よっ」
次に飛び込んで来た男に向かって、リルベルト・ウィルベルヴィント(黒将・e44173)が機械仕掛けの十字架で迎え討った。
斧のように振り降ちる強烈な蹴りが炸裂する。
「……大丈夫。必ず助けてみせるわ。燃えあがりなさい」
リルベルトは立ち上がりながら十字架を発火させ、その火を全身に移した。
当然ながら敵にも燃え移り、脱出しようとしたところに追いすがってなんとか命中させる。
その動きを先輩のケルベロスや通常のデウスエクスと比べながら、彼女は確信した。
「やはり残霊ね。強いことは強いけれど人数的な優位を維持できれば勝てるわ」
「そう……ですね。次は頑張ります」
リルベルトは強敵ならば避けれた筈だと仲間に告げる。
その言葉に励まされ、久里・蒼太(恩返しのために・e44787)は攻撃を外してしまったものの次こそ命中させて見せると拳を握った。
翼をはためかせ低空で飛翔し、仲間に場所を譲って様子を窺うのだ。
「僕らが足止めして居る間に、早くにげてね」
そして空を旋回しながら、避難する子供たちに声を掛けて励ます。
その先に何が待って居るとしても。
(「判ってる。判ってるんだけどね……。それを選びたいわけじゃないのよね」)
菜々華は自分に語りかけて来る最適解に背を向けて、言葉では無く体を動かした。
倒し易い奴から倒せばいい、危険な奴から倒せばいい。当たらないなら当たるまで守りに徹すれば良い。
救えずにつれさられてえ敵になるくらいならば命を奪えば良い。
もし誰もが最適解を選択するならば、彼女もまた生きては居なかったろう。リスクを選ぶより、その方が早いのだから。
「それでも、私は私の選びたい道を行く」
菜々華は目の前の敵を狙いたくなるのを無視して、その後ろに居る敵を選んだ。
そして時間を止めて、身も心も凍らせに掛る。
『ほう。私を先に倒す気か? 運命にでも抗う気か。やれるものならばやってみよ』
エインヘリアルは子供の我儘を相手にしている様な、緩慢な動きのまま揺らぐ手足を動かした。
二度、三度と羽ばたくように動かす事で、ようやく手足がはっきりとして来る。
『受けよ、北洋を渡る冷たい嵐を。ホーロドニィ!』
「もし……もし運命が違っていたとしたら、今も繰り返す悪夢に囚われていたのは私達の方だったのかもしれません」
八神・秋実(彼岸花と金木犀・e44915)は仲間を信じ、その場を微動だにしなかった。
仲間がカバーに割り込むのを信じつつ、自身に語りかけて運命への怒りを静かに燃やす。
絶望に染まり続ける夜など無い、明日は昨日よりもきっと良い日だと希望を胸に全身を力の紋様で染め上げる。
「私は、今まで色々な人に助けられてきました。多分、今後もそう、いっぱい迷惑かけると思います」
悲しい運命への怒り、弱い自分への怒りを力に変えて絶望へと敢然と立ち向かった。
「でも……それでも、その恩を少しでも返せるなら、誰かを救える人になりたい。これは、その為の『力』だから!」
『御托はいい、やって見せろと言った!』
冷たい風がダイヤモンドダストに変わる中で、秋実は絶望に立ち向かう心。
絶望に寄る終焉こそを終焉させる心意気によって鉄拳を叩きつけた。
●
『ゆくぞ!』
エインヘリアルは自身の顔も得物も、確かな物は何も無かった。
だが、その闘争心だけは本物だ。
双剣を構える様なポーズで拳を掲げ、大斧を振り降ろすよな勢いで手刀を振るう!
「行かせませんよ。此処まです」
「その通りです。貴方達まで現世に連れて行くわけには行きません」
七月の拳は外れてしまったものの、敵の一撃を受け止めるには十分だった。
自分は壁役、ならば良いと向かう彼に続いて、リルベルトもインターセプトに成功する。
そして十字架を変形させると、摩擦で生じる炎を押し固めて吹き出した。
「あなたの魂を冥界へ送り帰してあげるわ! 受けなさい! 烈火死霊斬!」
リルベルトの振り降ろす十字架は、炎を上げることで死神の鎌と化す。
だが燃やすのは肉体ではなく魂。焦がすような臭いと共に、魔界ならぬ黄泉へと招聘するのだ。
「黄泉に送る霊ですか。ならばそれを見せてあげましょう。
菜々華は刀をスクリーンに変えて、霊を無数に映し出した。
そして白刃に纏わせたまま、喰らいつかせて内側から汚染する。
「きっきっき。真打ち登場ってな! いくぜえ」
子供達を癒し誘導して居た魎月は、此処に来て本気を出す。
杭の様なミサイルが無数に浮かび、杭による軍隊が包囲陣を作っているかのようだ。
それは前面の敵を越えて、後ろに居るエインヘリアルを穿った。
「全員無事でした? ……みんな助けられたらよかったんです、けど」
「とーうぜん。それとな、思い出なら持って帰れるんだぜ」
蒼太が尋ねると口笛を吹いて気を引いていた魎月は、指の形を変えてペンか何かを挟むようなポーズを見せた。
そしてキャンパスの上で筆を滑らせるようなパントマイムをして見せる。
「えっと……そうですね。僕も後で眺めて良いですか?」
「おうっ。好きなだけ見とけ」
子供は大人の背中を見て育つというが、それはこんな時のことなのかもしれない。
蒼太は魎月の何の気ない言葉を、はにかみながら微笑んだ。
そしていつか自分も同じ様なことがあったら、誰かに教えてあげられるだろうかと思う。
「もう心配はいらないですよね。……僕から逃げられるなんて思わないでください!」
蒼太は初依頼・最初の実戦ゆえの緊張が、何時しか融けて行くのを感じる。
今はまだ未熟でも、頼もしい仲間達と一緒ならば大丈夫だ。
勇気を込めて羽ばたき、猛禽類の様に急降下しながら斬撃を浴びせるのであった。
そして草や木を傷つけないように、V字に飛び上がって行った。
●
『ぬおっ!』
『戦いの中で逝ったか。少しはやるようだな』
何度目の攻防の後、ようやく一人目が倒れる。
仲間が倒れたと言うのに、……いやむしろ羨ましそうにしていた。
「もしかしたら、彼らも。いえ、なんでもありません」
「敵に同情している余裕は有りません。このまま殲滅しましょう」
秋実はリオンの言葉に頷き、静かに走りだした。
彼女の突撃を支援すべく、リオンは影を矢として変換。
援護とばかりに放つと、黒い矢が今度は目の前の敵に突き刺さる。
「はっ!」
秋実がが放つ鉄爪は、まるで虎が掴みかかる様だ。
繰り出される無数の爪の中で、一つ二つを交わしても意味が無い。
『ええい、うっとおしい!』
「おっと、そいつは困るなぁ」
澪夜は靴音を響かせながら、香り高い風を前線で戦う仲間達に届けた。
ステップ踏むたびに花弁が空を彩どり、戦いに華を添えて行く。
長い戦闘で敵もまた満身創痍。我慢比べだ。
「さっきまでの例だと撃った方が確実なんだろうけど、時間も無いし、こうさせてもらうわ」
菜々華は時間を止めるのではなく、刀に宿る呪いを表面化させた。
唸る様に迸る力の奔流を制御して、闘気の渦を越えて迫っていく。
「痛っ……でも!」
『ここまでか。まあ佳い戦いだった』
仲間のカバーが間にあわず菜々華を敵の闘気が包み込むが、後少しの踏み込みだ。
呪いの刃を伸ばすことで残霊を断ち切ったのである。
「残り一体? おーし、治療の方は任せたぜ」
「ん。攻撃の方は任せたよ」
魎月は内側から取り出した杭を、戟か槍の様に構えて白兵戦を挑んだ。
戟刃が何度も火花を散らす中、澪夜は指を噛み切って包帯を力で染め上げて行く。
赤い布で傷を覆う時、菜々華は禍々しさよりも温かさを感じた気がした。
最後に最も倒し難い相手が残ったが、根競べなら負ける筈がない。
何故ならば、彼ら達は救出するまで粘り切ったのだ。
今度はそのおすそ分けをするだけの話である!
「当たる当たらないは気にしないで。今までの蓄積もあるし、倒せる筈よ」
「そうですね。時間の問題です。……終わった後の時間は忘れましょう」
リルベルトは十字架を摩擦熱で発火させながら、まるでハーケンのように振り回す。
合わせてリオンは相手の動きを予測しながら矢を放ち、回避をさせずに直撃させた。
「外したら後はお願いしますね」
「僕も同じ様なもんです。いち・に・のさんでいきましょう」
蒼太が自信なさげに両腕を巨大化させると、七月はゴクリと唾を呑みこんで走り出した。
共に命中させる自身は無いが、それだけに倒せば大金星だ。
一人は虹と共に降り注ぎ、一人は腕を引きずりながら突進して行く。
どちらが倒したかはあえて言うまい。みなで倒して結果的に二人でトドメを刺したと言うべきだろう。
「きみは、覚えてる? 暮らしていた日常を、隣りにいた人の思いを、きみ自身の願いを」
菜々華は全て終わったところで唄う様に話しかけた。
「私もね、たまーにしんどくなる。ああしなきゃいけない、こうしなきゃいけない、なんてずっと聞いてたら鬱陶しくなる。でも、大丈夫」
何をしなきゃならないかじゃなくて、何をしたいかで全部決めちゃえば大丈夫。
「さあ、思い出そう。きみはきっと、こんな夢に囚われる為に生きているんじゃあない」
きみの夢を、今此処に描き出すんだ。
菜々華が言祝ぎながら山寺の方に語りかけると、そこには逃げた筈の事もたちが居た。
「どういうこと?」
「あなたはこの世界に捕らわれている人間なの」
「過去を元にした偽りの夢の中です。この終わらない悪夢を終わらせる為にも、一緒に来ていただけませんか?」
首を傾げる子供達に、リオンと秋実は簡潔に説明した。
残酷であるが、伝えねばならないことがある。
「他の人たちは? 大人の人も、もっと小さい子も居るよ」
「本当は生きているのは君たちだけなんだ。最初の悲劇の時に、駆けつけられなくてごめんね……」
澪夜は悔しそうに質問に答える。
辛いが誰かがやらねばならないことだ。まして時間がないのだから。
(「いざとなれば無理にでも連れて行きますね」)
(「それは最後の手段ですね。その時は手伝います」)
七月とリルベルトは説得が成功しなかった場合に備え、声を小さくして相談。
その時が来なければ良いと思いながら。
「心残りなら、せめて思い出だけでもどうだい子猫ちゃん? 『撮った証、想い』くらいは残るぜ。何も写らなきゃ俺が書いてやるさ」
「カメラ……?」
魎月が見せたカメラは当時無かったものである。
子供達はともかく数少ない大人達は何なくは察したであろう。それに治療までしてくれた彼が嘘をつくとも思えない。
「そうしてもらうと良いですよ。僕も見て見たいです」
「うん……」
蒼太が最後に残った手を取ると、みなで手を売りながら山寺の残滓を後にしたのである。
作者:baron |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年12月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 0
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