除夜のクレーシャ事件~酉年の始末

作者:寅杜柳

●執着する鳥
 一年の終わりの日のとある島の山の上にあるお寺。そこそこ歴史があり、程々に大きなそのお寺には、年越しの瞬間を迎えようとする多くの人々が集まっていた。
 穏やかな老夫婦に初々しい恋人達、一番いい景色を写真に残そうとしている青年など、各人がそれぞれに穏やかに過ごしている。
 新たな年を迎えるまであと二時間を切り、除夜の鐘の音が境内に響き始めたそのお寺に乱入者が現れる。
「この鐘が全て終わる時に酉年は終わる……させてなるものか!」
 くえーっと奇声を上げ、脇目も振らず鐘へと駆け寄るその鶏染みた人ならざる者はビルシャナ。
 鐘を鳴らしていた住職を蹴り飛ばし、人が近づかないよう威嚇を続ける姿に年の暮れの寺は混乱に包まれてしまった。

「除夜の鐘を狙うビルシャナの出現が予知された」
 赤鉄・鈴珠(ファーストエイド・e28402)達の予想が現実となった形だと雨河・知香(白熊ヘリオライダー・en0259)は説明を始める。
「そいつらの目的は除夜の鐘を占拠して鳴らさせない事によって、酉年が終わるのを阻止するというものらしく、参拝客には目もくれず除夜の鐘の制圧を狙っているみたいだな……人でごった返してるところにこんな奴が出てきたら二次災害が起きてしまうかもしれないんだけど」
 知香がため息をつく。
「このビルシャナは何があろうと除夜の鐘を制圧しようとしてくる。……たとえ除夜の鐘をついているのがケルベロスだったとしても、だ。だからケルベロスが代わりに除夜の鐘を鳴らしてビルシャナを誘き寄せて迎撃することができるんだ」
 既にお寺側の協力は得られているからそこは安心して大丈夫だ、と知香は言った。
「戦場となるのはとあるお寺の鐘の周辺になる。ライトアップされている関係で視界には問題はないだろうし。事前に話を通しているから参拝客が周辺に近づいてくる事はないはずだ。それに、ビルシャナも目的以外は眼中にないのか人も施設も攻撃したりはしてこないし、配下も連れていないから戦闘に集中できる」
 攻撃手段としては閃光や孔雀の炎を放って来たり、トラウマを呼び起こす鐘を響かせてくるようだが、力量自体はそれほどでもないみたいだと知香が説明する。
「この騒動は除夜のクレーシャというビルシャナが元凶のようだが、本体の撃破にはほかのチームが向かっている。だから安心して此方のビルシャナ退治に専念してほしい。……あと、除夜の鐘は住職に代わってもらうのでも最後まで突き切っても良いみたいだ。それと、割と近い所に神社もあるからそのまま初詣に行ってもいいかもしれないな」
 知香はそう付け加えて説明を終え、今年最後の仕事よろしく頼む、とケルベロス達を送り出した。


参加者
キーラ・ヘザーリンク(幻想のオニキス・e00080)
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
鈴木・犬太郎(超人・e05685)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
リュコス・リルネフ(銀牙迸り駆ける・e11009)
愛澤・心恋(夢幻の煌き・e34053)
ラジュラム・ナグ(桜花爛漫・e37017)

■リプレイ

●鐘を守る者たち
 年の暮れの寺に鐘の音が響く。
「せっかくの年明けだってのに野暮だよな。鐘を持ち去っても戌年はくるってのによ」
 悪態をつきつつ鐘をついているのは住職ではなく、鈴木・犬太郎(超人・e05685)。
 鐘をつくものがビルシャナに襲撃されるという予知に対し、ケルベロス達が代わりにつく事で被害を抑えようという作戦だ。事前に協力を得ているため鐘楼の周囲に一般人はいない。
(「協力してくれた人々の為にも無事に鐘楼を守りきらねばなりません」)
 そう考えるイッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)も鐘をつく者の一人だ。待機中もいつ敵が現れてもいいように、仲間を守る為にとその目は真剣そのもの。相箱のザラキも口を閉じ、主の傍で備えている。
(「除夜の鐘を襲撃だなんて罰当たりにも程があるぜ……」)
 犬太郎の次に変わって鐘をつき始めた相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)はビルシャナの行為に呆れるばかり。
「いいもんだねぇ~、新たな年の訪れを感じるねぇ~」
 そんな仲間達の姿を横目に哨戒しているのはラジュラム・ナグ(桜花爛漫・e37017)だ。ビルシャナのいち早く察知し、仲間に知らせるために備えている。甘酒でほんのり体を温めている姿は一般人のようにも見える。
「年越しから騒がしいものですねぇ……」
「年の瀬くらいデウスエクスもゆっくりすればいいのにね」
 鐘をつく仲間たちを見守りつつ、柱の影に身を潜め襲撃を警戒しているのは愛澤・心恋(夢幻の煌き・e34053)とリュコス・リルネフ(銀牙迸り駆ける・e11009)、そして心恋のテレビウムであるメロディだ。
「でも、今年が終われば次の酉年まではとても遠いですから」
 だからビルシャナもゆっくりできないのかも、と年の暮れの寒さにかじかんだ手を温めつつ心恋は思ったが、実際の所はわからない。

 そして、鐘をつく者が何度か交代して通算三十回目の鐘を犬太郎がつこうとした時、
「させぬぞぉぉおおお!」
 叫び声とともに鶏のような異形が猛烈な勢いで突進してくる。その勢いはとても荒々しく、一般人が蹴り飛ばされたら酷いことになっただろう。
 しかしビルシャナが目的を遂げる前に鐘楼の上から弾丸の嵐が降り注ぎ、更に発火までしてしまう。黒猫の姿になって鐘楼の屋根の上に潜んでいた円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)とオルトロスのアロンの奇襲だ。目的を前に視野狭窄に陥っていたビルシャナに避けられる道理などなかった。
 さらに一つの影、リュコスが柱の影から飛び出し掌底を食らわせる。
「来年はボク達イヌ科の年! 次の干支を迎えるために、邪魔する酉は煩悩と一緒にお祓いしてあげるよ!」
「何を! 酉年は終わらぬ! 戌の出番など永遠に来ぬわ!」
 狼の耳と尻尾をピンと伸ばし宣言するリュコスにビルシャナが敵意を燃やす。
「教義はバカバカしくとも信者を鼠算式に増やしていく力は侮れない。ここで、きっちり退治するぜ!」
 そのやり取りの間に予想外の方角からの襲撃を警戒していた泰地も合流。
「……酉年の最後に、やはりと言いますか、悪あがきにいらっしゃいましたか」
 大晦日まで気の休まる暇もありませんね、と音もなく占い師然とした女性、キーラ・ヘザーリンク(幻想のオニキス・e00080)が、
「新たな年を迎えるめでたい日に不届きな者が居たもんだ」
「制圧すら迷惑なのに住職を蹴るなど以ての外! 民のために妄執に憑かれたお前を退治してくれる!」
 二刀を抜いたラジュラムと、民を傷つけるビルシャナへの怒りに燃えるイッパイアッテナ、控えめに魂縛爪を構えた心恋とメロディが鐘楼とビルシャナの間に割り込み陣取った。
「ま、今年最後の仕事だ、気張ってやってみっか!」
 犬太郎が鐘楼から離れ、英雄殺しと謳われた鉄塊剣を構える。
「気持ち良く皆が新年を迎えられるように、気張っていくぞ!」
「ほざくか! そうはさせぬぞ!」
 ラジュラムが告げるとビルシャナが鶏冠を逆立て敵意で返し、そして戦闘が始まった。

●酉年を終わりに
「まずは、これ」
 屋根から飛び降りる勢いを加え、キアリが魔力のこもった飛び蹴りをビルシャナにぶち当てる。アロンの放った瘴気も続きビルシャナを毒で侵す。
 さらに心恋が用意していなかった紙兵の代わりに心を貫くエネルギーの矢を引き絞り、ビルシャナを貫く。
(「真冬の深夜なんて一番寒い時に現れてくれたビルシャナにはお礼をしないとね……」)
 猫のウェアライダーだからか、寒さが苦手なキアリの内心にはこんな寒い時に騒動を起こすビルシャナへの怨念が渦巻いている。
「筋力流剛刃脚!」
 泰地の鍛え上げて筋肉から放たれる高速の蹴撃がビルシャナを捉える。
 青系のボクサートランクスとすね当て、それに虎の爪を模したような手甲、そんな寒そうな泰地のスタイルではあるが、戦いの熱は寒さを跳ね除ける。
 蹴りの衝撃に次の動きが取れないビルシャナに、
「煩悩もビルシャナも纏めて今年に置いて行こう!」
「ぬう!」
 豪快に振るわれるリュコスの獣化した拳がビルシャナにめり込む。彼女の方針は至ってシンプル。とにかく攻撃して周囲に被害が出ないうちに仕留めきること。
(「煮ても焼いても食えない鳥に容赦は要らない!」)
「年を越す前に、なんとしても終わらせましょう」
 キーラが爆破スイッチを押し込みカラフルな煙で前衛の士気を高揚させ、さらにイッパイアッテナが黄金の果実を生成、その輝きで前衛へと加護を与える。そして彼の相箱のザラキはビルシャナに飛び掛り牙を突き立て、怯んだ隙に犬太郎の降魔の力を宿した拳がビルシャナの正中を打ち抜く。
「すまんがいい加減お前さんにはここらで退場して貰うぞ」
 ラジュラムが自然な動作でビルシャナとの距離を詰め、黒塗りの刀で強烈な抜き打ちを見舞う。
「来年はおじさん達……ケルベロスの年なのでな!」
「酉は終わらぬ! 犬など去ね!」
 ハッピーニューイヤー! と高らかに謳うラジュラムにビルシャナが怒りの氷輪を発射するが、それはイッパイアッテナが防いだ。何があっても仲間と建物を守ると定めている彼や、建物をなるべく傷つけないよう配慮しているケルベロス達の行動もあり、建物や鐘には傷一つない。
「援護いたします」
「……身も心も、私の歌で癒します」
 キーラの放った光のヴェールと心恋の心を込めた歌がドワーフの青年を優しく包み込み傷を癒やす。
 そこにアロンのパイロキネシスが炸裂、ビルシャナの袈裟が発火した。
「まだまだ行くぜ!」
 空の霊力を宿し、刀剣のような鋭さを得た蹴りを泰地が発火で悪くなった視界に乗じて一閃。さらにミミックがエクトプラズムで今回に合わせたかのような撞木を形成、箱のボディを軸にして思い切り振りかぶり、鐘をつくようにビルシャナへと叩きつけて異形を吹き飛ばした。
「ええい、この程度では止まらんぞ!」
 勿論ビルシャナはすぐさま立ち上がり、経文を唱え始める。しかしその体にはすでに多くの傷が刻まれていた。

 ビルシャナのものではない鐘の音が響く。戦闘中も途切れさせないよう、目まぐるしく入れ替わる立ち位置を利用し、隙を見てイッパイアッテナが鐘をついているのだ。その分、鐘の制圧を狙うビルシャナに経文や鐘の音の分も含めて多く狙われるが、
「大地の力を今ここに――顕れ出でよ!」
 対抗して常立で大地を踏みしめ、刃を地面に突き立て清浄なる力を呼び覚まし、周囲の仲間ごと傷と呪縛を癒す。
 さらにキーラやメロディが回復に専念しているため、彼が倒れる様子はない。直撃を受けて危険な場合は心恋も回復に回る為、危なげな様子もない。
 惑わしの鐘の音も対抗手段は万全に備えられている。ビルシャナへと戦局を傾けるには至らない。
 地獄の炎を英雄殺しに宿し、それを弾丸として犬太郎が放つ。敵の生命力を奪うグラビティを多く準備していた彼は、広範囲を狙うビルシャナの攻撃に対して護り手としての役割を果たしつつも体力は安定。さらに泰地が疾風の如く距離を詰め、鳥の頭部を蹴り飛ばす。
「鐘を鳴らすから新年になるんじゃない、新年になるから鐘を鳴らして綺麗な気持ちで新年を迎えるんだ」
 寝る前にシャワーでさっぱりするのと同じだよ! とリュコスが掌底を叩き込みつつビルシャナの行為を否定する。
「我らの酉年を汚い気持ちで過ごしてきたというか貴様!」
「酉年といってもビルシャナを祀るわけじゃないんだけど……」
 視野狭窄なビルシャナと話はかみ合わない。ビルシャナが氷輪を放とうとしたが、序盤から着実に蹴撃を命中させ続けていた泰地の攻撃あってか、放とうとした手が止まり、氷の輪は霧散する。
 それを機と見た心恋の引き絞った弓から一条の矢が放たれる。それは上空に上った後、軌道を急に変えてビルシャナの肩を貫く。
 連撃は止まらない。泰地が両手に装着した虎爪刃手甲で傷口を更に深く抉る。それに繋げるのは流れるような動作から放たれる犬太郎の斬撃。
「ええい、この鐘さえつききらせなければ酉年は終わらないのに……!」
「鐘が鳴らなくても酉年は終わって戌年が来ますよ……?」
 俯きがちに、けれど真顔で心恋がビルシャナにツッコむ。正論だがしかし、ビルシャナは無視して経文を唱え始める。
「……年月の流れは誰にでも平等です」
 占い師の女が厳かに、冷徹にそう告げると竜の幻影を呼び出しブレスを吹き付けさせる。さらに相箱のザラキが偽の財宝をばらまく。
「釣鐘が増えただと!?」
 ダメージと催眠に惑わされ、ありもしない物を見てしまっているのかもしれない。そこに生まれた隙を突きイッパイアッテナが攻性植物の蔓を伸ばし、触手と成してビルシャナの体を縛り付ける。
「今です!」
「任されたよ! ここでキミはご退場!」
 威勢よくリュコスが磁縛殺界・餓狼の檻を発動。締め上げられたビルシャナを特殊な磁界で引き寄せつつ地面から磁力で創り出したいくつもの杭でビルシャナを刺し貫き、飢えた猛獣達に蹂躙されたような姿に変えてしまう。
 だが、まだビルシャナは倒れない。最後の足掻きか鐘楼に突撃を敢行しようとし、
「季節外れの満開の桜を咲かせてやろう」
 それを受け流し、ビルシャナの勢いを殺いだのはラジュラム。カウンターを流派とする彼の、桜色の炎を纏った名刀の透明感ある刃がビルシャナを音もなく通り抜けると桜が花開くように全身へと広がり、
「除夜の鐘の代わりにあなたの釣鐘を鳴らして、その煩悩を払ってあげるわ……!」
 勢いを付け、スピードを乗せ、キアリが跳躍。そしてその落下点は桜の木染みた異形の正中線、高さは身長の半分よりやや下で、
「ギャッ!?」
 とても、いい音がしたという。ケルベロスの半分、男性陣は思わず目を逸らしかけた程の見事な蹴りにビルシャナは崩れ散った。
「……冬に咲く桜もいいものだろう?」
 空気を変えるようにラジュラムがそう呟き、懐から取り出した辛口の酒を口に含む。
 キーラが一枚カードを引く。番号は十、運命の輪。
「……12年後に、また」

●ようこそ戌年
 鐘楼や寺の建物に破損はなかったものの、地面にはわずかに戦闘の痕が残った。
 それもケルベロス達のヒールグラビティで手早く修復され、泰地が住職に危機が去ったことを報告、一般人が鐘楼周りに集まり、百八回目の鐘の音を待つ。
 そして、新しい年に変わった瞬間に最後の一回の鐘の音が響く。わっと新年を祝う声が寺中に響いた。

 危機を退けたケルベロス達は寺に一番近い神社へと初詣。せっかくの機会だからと参った彼らを迎えたのは、深夜にもかかわらず賑わう境内の空気。
 手水で清め、二礼二拍一礼。
 作法を守り、犬太郎とイッパイアッテナ、心恋が祈りを捧げる。サーヴァント達も主に寄り添い、そのような仕草を見せている。
 泰地も格好は変わらずだが作法を守り参拝している。年の節目の行事はきちんとするタイプなのだ。
 キーラも静かに祈っている。礼を忘れることなく静かに祈る様は、腰まで届く銀髪の上にフードを被った姿も合わさりミステリアスな雰囲気。
(「今年も、皆様が息災でありますように。そして……」)
 もう一つの願いは私的なもの、そしていつもの彼女を知る者なら驚くかもしれない、良縁を願うものだ。ケルベロス達の祈りが叶うかは、これからの彼ら次第だろう。
 華やかな振り袖に装いを変えたリュコスは初詣を済ませてすぐに元気に屋台を回り、好みの甘味に瞳を輝かせている。こんな寒さでも駆け回るように楽しむ様は狼のウェアライダーである故か。ラジュラムも日の出まで時間があるからか、振る舞われた甘酒を楽しみつつ境内を回っている。ほんのり酒気が残っているが足取りや振る舞いはしっかりしており、初詣に賑わう神社の雰囲気を楽しんでいる。
 ちなみにキアリは神社に到着し、出店を視界に捉えるとすぐさまダッシュ、暖かなたこ焼きを手に収める。彼女には新年を祝うことよりも、今晒されているこの寒さに対抗する為の温かな食べ物のほうが重要だった。そんな主の様子をアロンは何とも言えない表情で見つめていた。

●新たなる年の始まり
 賑わう神社を離れ、ケルベロス達は神社近くの海岸で日の出を待っていた。
 ちなみにキアリはもう帰っている。今頃は炬燵でぬくぬく丸まっているだろう。
「あっ、そろそろ日の出の時間みたいですよ」
 夜目が利くイッパイアッテナがいち早く水平線がほんの少し白んだ日の出の兆候に気づき、仲間に知らせる。
 そのうちに空が明るみ、水平線が光の帯のように輝き始める。そして程なく新しい年の最初の太陽が姿を見せ、海岸と神社を照らし出す。日の出を待つ間筋トレしていた泰地もその美しさに目を奪われる。普段俯きがちな心恋にとっても、その日の出ははっきり顔を上げて見つめるくらいに素晴らしいものだった。キーラも何かインスピレーションを得られたのか、静かに朝日を眺めている。
「ボクらの新しい年の幕開けだよ!」
 神社で振る舞われた甘酒を味わいながら眺める初日の出は、リュコスにとっても今年を祝福するような素晴らしい景色だった。
(「酉年は終わったんだな」)
 煙草を咥え初日の出を待っていた犬太郎は、それを見てようやくそのことを実感する。
「今年も賑やかな年になりそうだな」
 日の出の太陽に乾杯だ、とその光景を眺めるラジュラムが辛口のカップ酒を掲げ、ぐいっと呑み干す。

 古き干支は過ぎ去り、新たな干支が巡ってくる。
 過ぎ去るべき、執着に囚われた異形による悲劇を防いだケルベロス達の前には新たな脅威も現れるのだろう。
 しかし今日、この瞬間くらいはそれを忘れ、今ある自然の素晴らしさを楽しんでもいいのかもしれない。
 十分日が昇り元旦らしいゆったりとした空気が流れ始めた頃、ケルベロスたちは海岸を後にし、日常へと戻っていった。

作者:寅杜柳 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。