●永遠なる再演
薄暗い、荒れ果てた日本家屋の土蔵にて。
部屋の片隅に寝かされた数名の負傷者達の周りにいるのは、赤き血の滲んだ包帯を腕に巻き付けた、この世の者とは思えぬ美貌を持つ者達。
土蔵篭り。同族と婚姻を繰り返す事で、忌まわしき純血の霊能力に覚醒し、その力を呪詛として行使する者達。彼らが世話をしているのは、土蔵の近くで発見された、何の力も持たない負傷者だった。
「うぅ……た、助けて……」
「心配するな。ここにいれば、もう安全だ」
簡単な傷の手当てを施し、土蔵篭り達は負傷者を安心させるべく手を差し伸べた。だが、土蔵の近くに負傷した者がいるということは、即ちそれを成した敵もまた、土蔵の近くにいるということを意味している。
果たして、そんな彼らの不安は正しく、程なくしてオークの襲撃を告げる悲鳴が土蔵の中に響き渡った。
「このままでは、我らも危ない。……その余所者を殺せ。オークを土蔵に侵入させるわけにはいかん」
長老と思しき者による非情の決断。敵は、この負傷者に惹かれてやって来ている。土蔵を守るためには、彼らを殺める他にないのだと。
「そ、そんな……! あなた達は、我々を助けてくれたんじゃ……!」
命の危険を察し、負傷者達は一斉に怯えて部屋の隅に身体を寄せた。最初は躊躇っていた土蔵篭り達だが、オークの軍勢が土蔵に迫りつつあるという現実が、彼らに選択肢を与えてはくれなかった。
「がぁっ!? ……ひ、酷い……助かったと思ったのに……信じて……いたのに……」
「……ごめん……ごめんよ……」
鋭く、槍のように硬化した血染めの包帯が、負傷者達の身体を貫く。かくして、土蔵の存在を見失ったオークの軍勢は撤退して行ったが、しかし残された土蔵篭り達は、己の無力さに打ちひしがれるだけだった。
●囚われの咎人
「召集に応じてくれ、感謝する。まずは寓話六塔戦争での勝利を讃えたいところだが……本当の大団円に至るには、もう少しだけ頑張ってもらう必要が出たぜ」
そう言って、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達を見回すと、改めて自らの垣間見た予知について語り出した。
「戦争に勝利したことで、囚われていた失伝ジョブの人間も救出できた。それに加えて、救出できなかった失伝ジョブの者達の情報を得られたことや、俺達ヘリオライダーの予知によって、未だ救出されていない失伝ジョブの人間の行方も判明した」
クロートの話によれば、彼らは『ポンペリポッサ』が用意した特殊なワイルドスペースに閉じ込められており、大侵略期の残霊によって引き起こされる悲劇を、延々と繰り返させられているらしい。この方法で失伝ジョブの人々の心を絶望に染め、反逆ケルベロスにしようと目論んでいたのだろう。
だが、寓話六塔戦争に勝利した結果、彼らが反逆ケルベロスになる前に、救出する事が可能となった。至急、特殊なワイルドスペースに乗り込んで、繰り返される悲劇を消し去ることで、閉じ込められた人々の救出して欲しいとクロートは告げた。
「まず、簡単に説明しておくぞ。今回の作戦に参加できるのは、失伝ジョブを持つケルベロスだけだ。敵はオークが4体程だが、所詮は残霊に過ぎないからな。1体に対して2人で挑むなどすれば、ケルベロスに覚醒したばかりの者の力でも十分に勝てる相手だぜ」
今回、向かって欲しいのは、土蔵篭りの者達が囚われているワイルドスペース。土蔵に匿われた負傷者を狙って襲撃するオーク達を撃破し、彼らを救出すれば作戦は成功である。
もっとも、あまり戦闘に時間を掛け過ぎていると、追い詰められた土蔵篭り達は、匿った負傷者達を長老の命によって殺してしまう。そうなる前にオークの軍勢に勝利しなければならないため、戦闘には速攻力が要求される。
「ワイルドスペースの中で発生している悲劇は、実際に起きた過去の悲劇が残霊化したものだろう。救出対象者以外も全て残霊だから、それらを助けられないのは残念だが……」
特殊なワイルドスペースに長時間滞在をすれば、やがて閉じ込められている者達と同様に悲劇に飲み込まれ、悪夢の再演をさせられることに成り兼ねない。そうなる前に、何としても敵を撃破し、囚われている失伝ジョブの者達を救出せねばならない。
そう言って、クロートは改めて、ケルベロスとなった失伝ジョブの者達に依頼した。
参加者 | |
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雛罌粟・璃珠(魔女を描く者・e44077) |
篭盛・織姫(地球人の妖剣士・e44124) |
一條・東雲(血を継ぐ者・e44151) |
カイアナ・スレッズ(乱性藍楽・e44187) |
迅・正人(斬魔騎士・e44254) |
咬山・千尋(牙の娘・e44392) |
コノー・アーイスト(籠の中の鸛は・e44492) |
妹島・蜜(サキュバスの土蔵篭り・e44626) |
●土牢
淀んだ空気の漂う空間へ足を踏み入れると、その先に見えたのは古ぼけた土蔵を備える日本家屋だった。
「人を閉じ込めて絶望させようなんて、信じられないわ。ケルベロスになってからの初仕事としてはもってこいね」
粘つく空気が肌に触れていたが、雛罌粟・璃珠(魔女を描く者・e44077)は怯む様子さえ見せない。
覚醒したばかり? 戦闘経験が足りない? そんなことは関係ない。自分と同じ、失伝の力を持つ者達。それを助けられるのが自分達しかいないのであれば、絶望を希望に塗り替えるのに全力を尽くそう。あらゆる物を描き出す、神の如き筆ペンの力を以て。
「さて、敵はどこに……って、どうやら既にお出ましのようだね」
土蔵の近くに群れているオーク達の姿を捉え、咬山・千尋(牙の娘・e44392)が拳を握り締めた。
掌を覆う包帯が血の色に染まる。呪われし血の力を解放し、彼女は仲間達に告げつつも足を急がせ。
「ブヒヒヒ……臭う、臭うぞぉ……」
「隠れても無駄だぜぇ? さあ、さっさと出て来いやぁっ!!」
触手をセンサーのように広げ、獲物を探すオーク達。そんな豚どもの群れに逸早く飛び込んだのは、妖刀を携えた迅・正人(斬魔騎士・e44254)だった。
「灼甲!」
駆け出す彼の肉体を、漆黒の鎧が覆って行く。オークの内の1体が気付いて振り向けば、無数の霊体を纏いし妖刀が、下劣な触手の先端を斬り捨てていた。
「ブゲェェェッ! お、俺様の触手がぁぁぁっ!!」
「な、なんだ、貴様達は!」
突然に現れたケルベロス達を前に、オークの群れが怒りの視線をこちらへと向ける。その問いに答えるかのように、正人は静かに振り返ると、刀の切っ先をオーク達へと向けて告げた。
「斬魔騎士『鎧鴉』……見……斬!!」
「ふざけやがって! てめぇら人間風情が、俺達に勝てるとでも思って……ぶげぇっ!?」
怒りを露わにして、正人に襲い掛かろうとするオーク達。だが、彼らが攻撃に出るよりも早く、今度は鋭い槍のような物体がオークの頬を貫いた。
「初依頼はオークが相手、ですか。まぁ、全部ぶっ倒せば何事も上手くいきますよね?」
悪いが、答えは聞いていない。包帯を収縮させて回収し、一條・東雲(血を継ぐ者・e44151)が下劣な豚を睨み付ける。ついでに言うと、既に殴ってしまった後だが、細かいことは気にするなと。
「やってくれるじゃねぇか! 誰だか知らねぇが、こうなりゃ全員まとめてブッ殺してやる!」
憤るオーク達が、完全にケルベロスを敵として認めた。これで一先ず、土蔵篭りや負傷者達が、オークの毒牙に狙われる心配もなさそうだ。
「私達は、あの異形共を倒す力を持つ者として駆けつけて参りました。是により数は此方が優勢となり、この戦況は必ずや好転致します」
土蔵の中から反応はなかったが、それでも構わずカイアナ・スレッズ(乱性藍楽・e44187)は神々しい姿へと変わり高らかと告げた。
恐らく、彼らも困惑しているのだろう。このワイルドスペースに囚われた者は、己の記憶を改変されてしまう。故に、ケルベロスという存在も、彼らの記憶からは抜け落ちているはずだから。
「……こんな私でも何かの役に立つのであれば命をかけてでも遂行します……。す、すみません、生意気言っちゃって……。でも、助けたいのは本当です……すみません」
「絶対、に……助け、ますの。コノ、達に、明るい、未来が、来たのですから」
どこか及び腰になりながらも懸命に言葉を紡ぐ篭盛・織姫(地球人の妖剣士・e44124)に、コノー・アーイスト(籠の中の鸛は・e44492)が優しく微笑む。
包帯に覆われた顔からは、細かい表情までは解らなかった。だが、それでも構わない。今、自分達にできることがあるなら、それを成すためには共に力を合わせることが必要なのだから。
「さあ、行くわよ。そして、終わりにするわ……」
後ろを守るようにして佇むビハインド、明彦さんに軽く目配せし、妹島・蜜(サキュバスの土蔵篭り・e44626)は自らの身体を盾にするような形でオーク達の前に立ち塞がった。
連綿と続く、いつ終わるとも知れぬ悲劇の連鎖。それを断ち切ることができるなら、全身全霊を以て立ち向かおう。それぞれの想いを胸に秘め、ケルベロス達は土蔵を背に、オーク達へと向かって行った。
●戒律
土蔵へ逃げた負傷者たちを狙い、この地へ集まりしオーク達。所詮は残霊に過ぎない相手であるが、しかし失伝者達が囚われているワイルドスペースは、その下劣な性質でさえも模倣していたのだろうか。
「ブヘヘヘ……。こいつ、ビビッてやがるぜ!」
先端をナイフのように尖らせた触手の先端を巧みに操り、オーク達は執拗に織姫のことを狙っていた。彼女の身体を敵の攻撃が掠める度に、その衣服までもが破られて。
「きゃっ!? む、胸が見え……す、すみません、お見苦しいものを見せそうになって!?」
「そんなんじゃ謝罪が足りねぇなぁ? 不足分は、テメェの身体で補ってもらおうかぁ?」
背中の触手を一斉に伸ばし、織姫の身体を絡め取る。そのまま手足の自由を奪い、彼女の全身を別のオークが触手で滅多打ちにし始めた。
「ブヒャッハァァァッ! 泣けぇっ! 叫べぇっ!!」
調子に乗って、欲望全開で織姫の胸や尻を叩くオーク達。しかし、それを見過ごす程、他の者達は薄情ではなく。
「おっと! それ以上、好きにさせると思ったか?」
千尋が自らの血液を飛ばして織姫へ届けたことで、彼女の身体が触手から解放される。それでも、しつこく襲い掛かろうとするオーク達だったが、そこはコノーがさせなかった。
「悪い、オークは、お仕置き……ですの」
「ぶぎゃぁぁぁっ!! お、俺様の触手がぁぁぁっ!!」
尋常ならざる怪力によって、引き千切られるオークの触手。まさか、小柄な少女にこんな力が秘められているとは、オーク達も思っていなかったようだ。
「す、すみません、皆さん。なんだか、足手纏いみたいになってしまって……」
「気にすんなって。あんたが身体張って守ってくれるから、こっちも戦えるんだしさ」
千尋がにやりと笑う。その間にも、蜜が明彦さんと共にオークを前後から挟撃し、硬化した包帯の先端で急所を貫いて止めを刺した。
「まずは一匹、仕留められたわね」
額の汗を拭う蜜。戦況は、徐々にだが自分達の方が有利になっている。敵の数が減れば減るだけ、手数の差は歴然としたものとなるのだから。だが、しかし……。
「えぇい、何をしておるか! さっさと、その余所者を殺さぬか!」
突然、土蔵の中から怒号にも似た激しい叫び声が聞こえた。
「あれは……」
「長老の残霊というやつか? 定められた役を演じることしか出来ぬ存在とはいえ、無粋なことをしてくれる……」
息を飲む璃珠に、顔を顰めて答える正人。ここで土蔵篭り達が負傷者を手に掛けてしまえば、全ては徒労、水の泡。
「ダメ、駄目よ。殺してはダメ。あなたたちがその人たちを助けたように、今は私たちがあなたたちを助けに来たのだから。助かるのなら、殺す理由はないでしょう?」
もはや一刻の猶予もないと、璃珠は土蔵に向かって声を掛けた。
「己の命惜しさに弱者を殺めるなら……デウスエクスと同じだぞ!」
同じく正人も声を掛けるが、しかし土蔵からの返事はない。迷っているのか、それとも未だにこちらのことを信じてくれてはいないのか。
「オラオラ、どうしたぁ!?」
「俺様達を差し置いて余所見とは、随分と余裕じゃねぇか!」
代わりに飛んで来たのは、勢いを取り戻したオーク達の触手。攻撃の手を休めるのは状況的に厳しいところだが、それでも土蔵篭り達の心まで救いたいという、ケルベロス達の決意は固かった。
「皆さん、怖がらないで。私も同じ土蔵篭りです。どうかその手を下ろし、私達と共に……ケルベロスと共に来て頂く事は出来ませんか?」
こんな場所で同胞を死なせるわけにはいかない。東雲の言葉に、土蔵の中からどよめきが湧いた。納得をしたというよりも、ケルベロスという聞き覚えのない言葉に反応しただけかもしれないが。
「手を伸ばせる人々を助けたい『欲』を、私は肯定致します。故に、我々で忌々しい異形を殲滅致しましょう」
こうなれば、後は結果を以て伝えるのみ。縛霊手の掌に光を集中させ、カイアナは巨大な光弾を精製すると、それを躊躇うことなくオーク達へと解き放つ。
「悪しき陵辱者よ、その動きをお止めなさい」
「ブゲェェェッ! な、なんじゃこりゃぁぁぁっ!!」
特大サイズの光の球が、ボーリングのピンを倒すかの如く、オーク達を薙ぎ倒して行く。終わらぬ悪夢に囚われし者達を救うため、残された時間は、後僅か。
●希望
土蔵の前での戦いは、既に佳境へと突入していた。
度重なる触手の殴打にも耐え、ケルベロス達は確実にオークの群れを追い詰めつつある。これが本当の大侵略期であればいざ知らず、ケルベロスへと覚醒した失伝者達には、彼らを滅するだけの力がある。
「汚い触手に下品な顔……全部まとめて、可愛く描き変えてあげようかしら?」
璃珠の飛ばした塗料がオークの顔面や触手を直撃し、存在そのものを塗り潰して行く。こんな放送禁止コードの塊のような存在、空間諸共消えてしまえと。
「グァァァッ! 目、目がぁぁぁっ! 顔がぁぁぁっ!!」
顔面を抑え、右往左往するオーク。そこを狙い、すかさず千尋が自らの血液を桜へと変えて。
「残霊にとらわれるな。百の命を取りこぼしたのなら、これからは万、億の命を救ってみせよう!」
土蔵篭り達に言葉を掛けつつも、桜花の乱舞で敵を焼く。その姿に鼓舞されたのか、とうとう織姫も刃を携えて自ら斬り掛かった。
「こ、こんな私でも守れる力があるのなら……喩え呪われていても構わない。救える命を救わないでいるなんて……我慢、できない!」
魂を食らう斬撃が一閃。骨の髄、心の髄まで喰らわれたオークの斬霊は、そのまま溶けるようにして消滅した。
「戦況上々、戦意昂揚。状況打破は確実に目前で御座います」
曼荼羅型の後光から放つ光線で残るオークを牽制しつつ、カイアナは敢えて戦況が土蔵の中にも伝わるように、現状を実況して叫ぶ。現に、残るオークは2体であり、その力も決して強くはない。
「オークは私たちが絶対に近づけさせないわ。だから……自分が後悔するようなことはしなくていいの」
これ以上は、悩むことも苦しむことも必要ない。土蔵篭り達に言葉を掛ける蜜の顔に、少しばかりの影が射す。
悲劇というなら、一族の掟を破って禁忌を犯し、最愛の者を図らずとも犠牲にしてしまった自分もまた同様だ。だが、だからこそ止めなければならないのだ。こんな悲劇の繰り返し、悪夢に次ぐ悪夢の再演など。
「コノ、達は、ケルベロスに、なりましたの。失伝者、は……もう、お日様の下で……歩け、ますの」
もう、敵に怯えて隠れながら暮らす必要はない。この先に待っているのは、明るい未来。それを体現するかの如く、コノーもまた光り輝く姿へとその身を変えて。
「幻影に、辛い……過去に、惑わされないで……一緒に、帰り、ますの……っ!」
何ら躊躇うことなくオークへと突撃し、高速回転で触手を斬り捨てる。その勢いに気圧されしたところを狙い、東雲が血溜りから血濡れの大太刀を抜き出した。
「これは私の一族に伝わるものです、たっぷり堪能下さいね」
呪われた力を応用すれば、こんなこともできるのだ。その言葉と共に大太刀を振り下ろせば、衝撃は津波と化してオークへと襲い掛かり。
「ブギュルァァァァッ!!」
鮮血の海に飲み込まれ、そのまま消えて行くオークの残霊。これで、残す敵は1体のみ。絶望の使徒を気取る豚に、ここまで来れば遠慮など不要。
「我が一撃が悪を断つ! 喰らえ! 無双の必殺剣! 無双迅流口伝秘奥義! 冥王破断剣!」
全身全霊の力を刃に込め、正人が大上段から振り下ろす。思わず触手を集結させて防ごうとするオークだったが、そんなもので必殺の一撃を防げるはずもなく。
「ぎょべぇぇぇぇっ!!」
大地を斬り裂き、地の底に座する冥府にさえも届かんとする一撃を前にしては全くの無力。真正面から両断され、そのまま左右に分かれて消滅した。
「過去の幻よ……我が斬魔の刃を以て消えるがいい」
刃を納め、改めて土蔵へと振り返る正人。狂気の修練の果てに得た斬魔の力が、無限の悪夢に終止符を打った瞬間だった。
●黎明
全てのオークを撃破して、ケルベロス達は改めて隠れていた土蔵篭り達と対峙していた。
「さて、何とかなりました……かね?」
東雲が、確認するようにして仲間達に目配せする。
オークを倒して、一件落着。そう言いたいのは山々だが、実際はこれからが本番だ。
「ここにある戒律も悪夢も、全ては幻影に過ぎないわ」
「皆様は……もう、隠れる、必要……ありませんの」
蜜とコノーが、それぞれ土蔵篭り達に告げるが、しかし彼らはどうにも戸惑っている様子だ。どこか違和感を覚えながらも、今までのことが現実ではないと、なかなか納得できないのだろう。
「戸惑われるのも解ります。しかし、だからこそ我々は、先の戦いで最後まで諦めることをしなかったのです」
こちらの真意も誠意も見せた。だからこそ、ここは信じてくれないかとカイアナが土蔵篭り達に頼み込み。
「私達と共に来てくれませんか……? すみません生意気言って。でも本心です」
「それが、あたしたちに課せられた新しい使命なんだ。あたしの呪われた血でも、こうして皆の役に立てるのだから」
そう、織姫と千尋が告げたところで、土蔵篭り達も覚悟を決めたようだ。
「……解りました。これより我々は、貴方達と共に行かせていただきます」
「自分達を信じてくれた人達を、この手に掛けようとした罪……その、贖罪を果たすためにも……」
血塗られた手と、呪われた血筋。それでも、誰かの役に立てるのであれば、それを惜しむことはしない。後ろで残霊の負傷者や長老達が何かを叫んでいたが、今はそれに耳を貸すのも時間が惜しい。
「詳しい話は外へ出てからにしよう。早く抜け出さねば、我々もまたこの空間に囚われることになる」
正人の言葉に、頷く一向。目的を果たしたからには、長居は無用。
「さあ、行きましょう。もう二度と、悪夢に囚われることのないように」
差し伸べられた璃珠の手を取った土蔵篭り達と共に、ケルベロス達はワイルドスペースに設けられた土蔵を後にする。かくして、ここに4人の土蔵篭りが、悪夢の輪廻から解放された。
作者:雷紋寺音弥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年12月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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