除夜のクレーシャ事件~この鐘の音を渡してなるものか

作者:荒雲ニンザ

 この寺は、毎年大晦日の深夜になると、除夜の鐘突きを見学に来る参詣客でよく賑わう。
 小さい山とはいえ、山頂にある寺だというのに、彼らはえっちらおっちら石段を登ってやってくる。
 参詣待ちで列に並んでいる人もいれば、信心深い老夫婦や、カップルで2人の時間を過ごしたり、記念写真を撮る家族連れの姿もある。
 各々寒さをネタに会話を楽しみつつ、並んだ出店に立ち寄って、蕎麦や雑煮で暖をとる人々の姿が目についた。
 22時を30分も回った頃だ、待ちに待った除夜の鐘が鳴り始めた。
 だが次に、人々は期待を裏切られて身を氷らせた。
 突如旋風と共にビルシャナが姿を現し、境内の中で声を張り上げたのだ。
「酉年を、終わらせて、なるものかーっ!!」
 その主張と共に側にいた住職を襲撃し、除夜の鐘の前に立ちはだかると、力の限り羽根を広げた。
 一斉に悲鳴があがり、人々はその場から雪崩が崩れるように逃げ始めた。

 皆を前に、言之葉・万寿(高齢ヘリオライダー・en0207)が一礼して説明を始める。
「時神・綾(薬局店長の姫神・e06275)様が予想していた通り、大晦日に除夜の鐘を狙うビルシャナが出現する事件を予知致しましたぞ」
 今回のビルシャナの目的は『寺の釣り鐘を占拠し、除夜の鐘を鳴らさせない事によって、酉年が終わるのを阻止する』というものらしい。
 不幸中の幸い、今回のビルシャナは除夜の鐘の制圧だけを狙っている。そちらに集中しているため、参拝客を襲ったり、寺を破壊する気は無いので、戦闘に集中できるだろう。
「お寺側の協力は既に得られております。除夜の鐘を鳴らす釣り鐘の周囲には参拝客が近づかないように手配をお願いしてありますが、ビルシャナが現れて参拝客が慌てて逃げ出し、将棋倒しになるといった可能性は否定できません」
 小さな寺なので参拝客が多すぎることはないが、地元の老人や子供も混ざっているので、大事になりかねないということだ。
「除夜の鐘はケルベロスが鳴らす手筈となっております。つまり、除夜の鐘を鳴らしてビルシャナをおびき寄せ、現れた所で迎撃してほしいというのが今回の依頼でございます」

 戦闘場所は、高台に設置された鐘楼堂(鐘撞き堂)の梵鐘(釣り鐘)付近。
 寺は小さな山の頂上にあり、そこに行くまでの山道には長い石段がある。
 石段を上がると屋台のある少し開けた場所に出て、その先に寺の門が有り、奥に鐘楼堂がある。
 今回我々が相手をするビルシャナは、『除夜のクレーシャ』というビルシャナの配下である。
 各地の寺で同じ事件が起きるようだが、そのうちの1体がこいつだ。
「敵は1体。このビルシャナに配下はおりません。除夜のクレーシャに比べて戦闘能力は劣るので苦戦はしないでしょうが、その代わりに『どのような障害があっても除夜の鐘を制圧する』という強い意志を持っており、それがとても厄介なのでございます。しかしそれを逆手にとることもできるかと」
 とにかく誰であろうが、除夜の鐘を鳴そうとする者に襲撃をしかけてくる。除夜の鐘を突いているのが『ケルベロス』であろうと、ビルシャナは除夜の鐘の音を鳴らす者を止めようとするので、その性質を利用するのも手だろう。

 日本各地のお寺で起こる事件を阻止できれば、除夜のクレーシャの野望が果たされる事はない。
 今年最後のビルシャナ事件となるだろう。気を引き締めて挑んで欲しい。
「たまたまバイトで現場にいた日之出・吟醸(レプリカントの螺旋忍者・en0221)が屋台のお汁粉屋に潜伏しております。せっかくの年末ですし、景観も最高ですので、戦闘が無事終わったら、汁粉でも食べて、初日の出でも眺めながら、お互い1年の労をねぎらうのもよろしいかと」
 いつも真面目なヘリオライダーのおじいちゃんがそう言うのだから、遠慮せず遊んで帰ろう。


参加者
湊川・亮一(地球人の鎧装騎兵・e02645)
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)
進藤・隆治(沼地の黒竜・e04573)
鏡月・空(一日千秋・e04902)
タクティ・ハーロット(重力を喰らう晶龍・e06699)
ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)
ルリディア・メリーバ(クランベリーガール・e41388)

■リプレイ

●おひ鳥様ご案内
 寺近くに到着すると、石段を前に一般市民が山の頂上を眺めていた。
 すでに住職達による市民の避難誘導が開始されており、提灯の薄明かりを頼りに、暗い足場をもたもたと下りてくる人々の姿が見える。
 せっかく山頂まで歩いたというに、例の鳥のせいで散々な年末だ。
 下山してくる一般市民を目にしたルリディア・メリーバ(クランベリーガール・e41388)が、小走りしながら先導している坊様に手を振った。
「ケルベロスですー! 避難誘導お手伝いしますー!」
 彼女の積極的な姿勢とは対照的に、男子7名は寒空に放り出された任務に目が据わっている。
 ギルフォード・アドレウス(咎人・e21730)が両手をポケットに突っ込んだまま、真っ白なため息を空に流した。
「ふぁ~……、冗談だろ……、こんな時間に。……ックチュン!」
 クールな雰囲気からは想像もつかないようなカワイイくしゃみが飛び出し、思わず一同の視線がむく。
 そこに触れてやらぬよう、進藤・隆治(沼地の黒竜・e04573)の呆れた声も続いた。
「除夜の鐘を狙うとは……まぁ」
 年明けから年末まで、酉年だけに好き勝手やってくれたビルシャナな一年。ここらでシメさせて頂きたいという思いは皆同じだ。
 もたもたしている男子に、せっせと避難誘導をしているルリディアが手を振っている。
「早く早くぅー! お正月がこないと未成年は困るのー! お年玉がもらえないじゃん!!」
 世界平和にお年玉がプラスされているのだ、それはエンジンのかかりもよかろう。
「んじゃ、避難誘導は彼女に任せるとして……、俺は周辺に人影がないか軽く確認してくるわ」
 ギルフォードが列から抜けると、それを見送ったタクティ・ハーロット(重力を喰らう晶龍・e06699)がやれやれと姿勢を正す。
「こちらもサクッとやりますかー! ミミックも一緒に頑張りましょうかだぜ!」
 主人の言葉にミミックがピョンと飛び跳ねた。
 作戦としては、ディフェンダーが囮となって鐘をつき、ビルシャナの動きを制御する方向で一致している。
 鐘を任されるのは神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)、タクティとミミック、いずれもディフェンダーだ。
 晟が建物の位置や敷地内の様子を気にして周囲を見回していると、ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)も同じように視線を投げているのに気がついた。おそらく一般市民に被害が及ばぬよう、攻撃の方向を定めているのだろう。
「今年のトリは鳥ですかぁ。まあ、鳥なき里の蝙蝠っぽいですし、さっさと倒しましょう」
 翌年の干支がお役御免の酉を嘲笑しているような、そんな構図が見え隠れしているようでもあったが、12月はもう終わろうとしている。早く年を越そうではないか。
「しかし、誘き寄せる為とはいえ、鐘を突くなんて珍しいことを体験させてもらえるとか、楽しみだぜ……」
 タクティが撞木の太い縄を手にし、力強く引いてから体重を乗せた第一打。
 ボォォォン……!!!
 ワンワンワンワン……と頭の中まで響いて渡る鐘の音に誘われて現れたのは、今年最後のビルシャナだ。
「その鐘、つくべからずゥゥゥー!!!」

●ストップ年明け
 バッサバッサと冷たい空気を羽根でかき回し、ビルシャナがご登場。
 周囲に一般市民は見当たらず、ケルベロスだけのお出迎えに辺りはしんと静まりかえった。
「お前か! 今鐘をついたのは!」
 言うやタクティに襲いかかり、鋭い鉤爪でその胸元をえぐり取ろうと腕を振り下ろす。
 タクティが後方に飛び退き、鐘を中心にグッと一同の姿勢が低くなる。
「鐘は鳴らさせない! 戌に席は譲らない! 亥も無論、他の連中にもだ! この先延々、酉の世となる! 貴様らは大人しくそこでそれを待つか、さもなくば死ね!」
 呆れた様子で肩をすくめ、ジュリアスが首を横に振る。
「諸行無常。こんな事もわからずに神社仏閣を襲うのは、鳥頭だからなのですかねえ?」
「犬!! お前は無条件で殺す!! 戌年は来ない!!」
 周辺を見回っていたギルフォードが駆けつけ、その発言にあきれ果てた。
「あのさ~、やっぱりあれだ……、お前らビルシャナって、最っ高に阿呆なんだな」
「この崇高な意思が理解できないお前達は生きるに値しない! やっぱここにいる奴らは全員抹殺!」
 のど仏まで見えそうなビルシャナの威嚇に、湊川・亮一(地球人の鎧装騎兵・e02645)がうんざり。鏡月・空(一日千秋・e04902)もため息をつく。
「いや、そんなにムキになっても時の流れは止まらんから。鐘の音と共に大人しく消えてくれ」
「酉年が永遠に続くと、有り難みがかえって無くなることに気づかないあたり、相も変わらずと言うべきなのでしょうか」
「うるさい! とっとと死ねェ!」
 石段の上から激しい轟音が聞こえ、石段の半ばで避難誘導を手伝っていたルリディアが寺の方へ顔を上げる。
「やっばい、始まった!」
 振動が伝わる度、下にいる一般市民達から不安な声が漏れ始めた。
 ルリディアは重武装モードに入ると、アームドフォートを展開。妙な振動が巨大なスピーカーから響き渡り始めた。
 ドン、ドン、ドン、チャッチャチャー! パパパー!!♪
 どこぞのロボアニメかという軽快な音楽に人々は振り返り、ビルシャナの恐怖からルリディアの励ましに意識が集中される。
「そこのお兄さん! あのお婆ちゃんを手伝ったげて! 逃げたいのはわかるけど、ほら、手伝う姿カッコイー! いよっ大統領! 来年はモテるぞー!」
 鐘にビルシャナの意識が向いているのであれば、すでにここは安全圏内ではある。人々が自発的に協力を始めるのを確認すると、その場を坊様に任せ、ルリディアは音楽のサビに身体を乗せてダッシュした。
 遠くから妙な音楽が聞こえ始め、ビルシャナを含めた全員がルリディアに視線を移す。
「お待たせ!」
 パパパー!♪
 何だこの空間は……と絶句しているビルシャナの隙をつき、晟が拳で鐘をワンパンチする。
 ボワァァァンン……!!
「何ィィ!?」
 撞木の近くにビルシャナがいるのであれば、いっそ撞木を無視して話を進めた方がてっとり早い。
 不意打ちとはまさにこの事。重ねて隙を突いたボクスドラゴンのラグナルがビルシャナの背面からボクスタックルを食らわせた。
 慌てたビルシャナが体制を整える前、空が間髪入れずに轟竜砲をたたき込む。ボルケーノバスターと共に鐘にたたきつけられたビルシャナは、妙な声を発して平らになった。
「年越しそばを食い損ねたくはないのでね、さっさと涅槃に送って差し上げましょう!」
 犬の嬉しそうなハッハッと弾む呼吸が聞こえてきた後、雷刃突がめり込んだ。
 ゴォォォォンム……!
 良い鐘の音だ。
「ゴルァァ!!!」
 ごり押しで除夜の鐘を突きに来たケルベロスに怒り心頭し、羽根を振り切るように広げると、孔雀炎がジュリアスめがけて赤く燃え盛る。
「ご苦労様だぜ」
 タクティがそれを受け止め、そのまま自らに疾走・晴輝幻晶を施して着地する。入れ替わりざまミミックがビルシャナごと武装具現化で鐘に体当たりした。
 ボォォォウン……!
 寺で何が起きているか知らない近隣の人々は、今頃こたつでのんびり除夜の鐘を耳にしていることだろう。

●ラストチキン
 元々大した敵ではなかったが、メディック支援がなかったので、じわりじわりと体力が落ちてきてはいる。
 地味に列攻撃を食らって足踏みすることもあり、速攻という程でもなく戦闘は続いていた。
 トラウマにやられた仲間を回復しつつ、隆治が声をかけてやる。
「うぅ……笹身が調理しても調理しても片付かないぃ」
「しっかりしろジュリアス! ササミは目の前だ、さくさくっと倒して年明けを迎えるぞ」
 とりあえずフルボッコという意気込みなのは変わらず、ビルシャナを優先的に調理しつつ、合間に鐘を響かせていた。
 そうこうしていると、遠くからヒールが飛んできて、一同が振り返る。視線の先には、日之出・吟醸(レプリカントの螺旋忍者・en0221)がライトニングロッドとおたま片手に息を切らせていた。
「バイト中にて、手伝うつもりはなかったでござるが、年越し蕎麦がのびちゃうから、助太刀に参った!」
 これで若干補助に厚みが出た。その分攻撃に集中できるだろう。
 ギルフォードが横から達人の一撃で切り込み、その間に晟が鐘を打ちに行く。
「我々の邪魔をするな辰!」
 干支に対する敵対心がものすごい。亮一はしつこいビルシャナのジャマを阻止するべく、バスタービームで敵の足下を狙い撃ちした。
 相手が避けるのを計算に入れ、アサルトブースターを使って大ジャンプ。味方のいる位置を確認した後、正確にビルシャナめがけて追撃を発射した。
「それじゃあちょっと早いがお年玉だ。遠慮なく受け取ってくれ」
 ボボボという低い発射音、一気に周辺が煙に飲み込まれ、視界が遮られた。
 ルリディアがその煙を利用し、ズタズタラッシュで蹴散らしながらビルシャナに突撃するが、鉤爪で止められてしまった。
「わあん!」
「ハ、ハハハ! この鐘の音は、誰にも渡さん……!」
 切れる砂煙の隙間、月をバックに、ふらつきながらも大きく羽根を広げるビルシャナが鐘楼堂の前に立ちはだかった。
「本当に往生際が悪いですね! 真の意味で!」
 実力は大したことがないのに、中々しぶとい相手にジュリアスが皮肉を言う。
「そろそろ、カウントダウンが始まりますかねえ?」
「今、何回目だ……?」
 隆治の声に晟がフウと息を吐き出し、手の指の関節をポキポキと鳴らして言った。
「次で108つだ」
 様々な場所でカウント10が始まろうとしている瞬間。晟が霹靂寸龍の構えで飛躍した。
「砕き刻むは我が雷刃。雷鳴と共にその肉叢を穿たん!」
 神をも殺すその一突きは、蒼く轟いてビルシャナの顔面にめり込んだ。
「うぉぉぉぉ……!!」
 そのまま力任せに拳を押し込むと、背後の梵鐘に体当たり。
 ゴォォォン……!!
 最後の鐘の音が深く深く鳴り響き、その音が空に消える頃、押しつぶされてぺしゃんことなったビルシャナは砂のように崩れて消えた。

●明けましておめでとうございます!
 ボコボコの梵鐘が鐘楼堂に転がっている前で、せっせと破損箇所をヒールに回るギルフォードと隆治とタクティ。
 鐘が中央からパックリ二つに割れているのは、主に最後の晟の一発のせいであるが。散々ビルシャナごと鐘を突いたせいで、本人の手も真っ赤に膨らんでいる。
 粗方片付けが済んだ後、亮一が大きく一息。
「やれやれ、これでゆっくり初日の出を拝めるな」
「立つ鳥後を濁しましたね。鳴かなければ討たれなかったでしょうにねえ?」
 ジュリアスの皮肉が年始めを飾る。
 坊様が手を合わせて参拝客達を迎え入れているのを眺めつつ、いよいよ2018年となった空気に目を細めた。
 バイトに戻って割烹着に着替えた吟醸が、3軒並んだ屋台からおたまを振っている。
「初日の出までまだ時間があるでござるよー! 何か食べていかない?」
 ルリディアが憤る。
「お父さんとお母さんが家で待ってるから、初日の出までは一緒にいれないかな……。でもお汁粉は断固として食べるよ!!」
「あ、俺も俺も」
「まいどぅ!」
 亮一とルリディアの汁粉を用意していると、空が覗いてきた。
「俺は蕎麦をもらいましょう」
「こっちも蕎麦を5つ頼む。あと酒ももらおう。あ、勝手にもらっていくから勘定に入れておいてくれ」
 隆治が屋台横に設置された燗銅壺から熱燗を数本つまみ上げ、あちちと皆の元へ戻る。
 安い酒だが、てっとり早く身体をほぐすには具合が良い。
 大暴れした後に大掃除。じっとしているうちに身体も冷えてくるもので、温かい飲み物が運ばれてくるとほっとした。
 入れ替わり、ルリディアが慌ただしく立ち上がる。
「ごちそうさまでした! 先に帰るね、今年もよろしくねー!」
 空が酒と蕎麦を手に、一般客の隙間を縫って帰宅してゆく彼女の後ろ姿を見送った。
「年末年始もバタバタでしたねえ……」
 屋台から吟醸が声を出したので、近くに腰を下ろしていたギルフォードが応えてやる。
「あんたいつもバイトしてんのな」
「マニアなグッズとニッチなDVDはしょっぱい金額でねぇ~」
 そんな会話をしつつ二人でスチロールの器を運んでいると、晟に器を渡そうとしたギルフォードの手が止まる。
「その手、箸持てんの?」
 くっ……と、晟が表情を曇らせたが、ぐるぐる蒔かれたタオルの隙間に箸を突き刺し、意地でも食べると示して見せた。バイトの合間を見て、もう少しちゃんとヒールをしてやろうと吟醸がホロリとしたとかしないとか。
 プルプルしながら蕎麦を食べている晟の横で、ジュリアスが風呂敷を広げた。
「私の作った栗きんとんです。御節に入れていない方はどうぞ。金運の他に勝負運も祈願するものなので、命のやりとりをする我々にはうってつけでしょう?」
 さりげなく良い日本酒も持参しているところ、この犬、ぬかりがない。
 屋台のモーター音が寒空に響いてはいたが、それも賑わう寺の風物詩のようなもの。蕎麦、酒、汁粉、栗きんとんときて、やっと正月気分になってきた隆治が懐から煙草を取り出す。
「はー……」
 煙がスーと空に溶けていくと、遠くの方が白けているのに気がついた。
「あ、初日の出見えてきた!」
 参拝客の声で、皆が東に顔を向ける。
 餅が膨らむように太陽が姿を現す様は、身も心も浄化されたような清々しさを人々に与えた。
「こうして初日の出を拝めることが出来るのは、幸せなことなのだろうな。……今年も無事に過すことが出来ればいいのだが」
 隆治の台詞に思うところがあったのか、タクティがミミックを自分に寄せてやる。
「……今年もよろしくな、ミミック。色々迷惑かけると思うけどなだぜ」
 おもむろに亮一が立ち上がる。
「初詣してこうかな。目の前に本堂あるし、せっかくだし」
 鐘の次は鈴を鳴らそうということか。
 おみくじも気になる所。この先、我々ケルベロスの運勢はどうだろうと、ちょっと覗いてみたくもなり。
「今年一年、いい年になりますように」
 重力にひかれた神様が、願いを叶えてくれやしないものかと、淡い期待で手を合わせた。

作者:荒雲ニンザ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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