失伝救出~失伝の癒し手

作者:のずみりん

 自分は無力だ。
『こんなものか……ふん』
 破壊と暴力の嵐をまき散らしたドラゴンを見送る事しかできない自分に、黒髪の少女の瞳はまた曇る。髪と同じ色の瞳の、それよりも更に黒く。
「リーアが……いかなきゃ……」
 少女は身を隠した壕から機械的に這い出した。もう何度目か、いつからだろう……いつから? そもそも、この街は何処だ?
「う、ぅ……」
「誰か……助け……」
 小さな困惑をうめき声にかき消される。傷ついた人と街をほおってはおけない。それが自分を更に追い詰める事とわかっても、少女は動かずにはいられない人間だった。
「大丈夫……リーアがついてる……諦めちゃダメ」
 少女の優しい声にこたえ、風が街に吹く。さきほどまでの竜の吐息と対照的な、傷と心を癒す風が瓦礫を幻想的に、人々と共に癒していく。
 エクトプラズムを使い人の心身を癒す、それが彼女の手にした力。だが、あまりにも無力だと少女は知っている。
「ありが、と……けど、俺は……もう……」
「ダメ……諦めちゃ……ダメ……」
 半身を失った戦士に呼びかける少女の何処かが自分を嘲る。なんと白々しい台詞だ、慰めて欲しいのはどちらなのだ?
「……諦めちゃ……」
 見知った顔が、また一人死んだ。
 彼だけではない。エクトプラズムで作られた擬似肉体をもってしても、失われゆく生命は救えない。彼女が必死に頑張ろうと、街の人々は少しずつ、少しずつ消えていく。
 まるで少女の抗う意志のように。
「だれか……助けて……」
 助けを求める少女に応える声はない。

「寓話六塔戦争の勝利、おめでとう。皆のおかげで色々な情報も手に入った」
 ドリームイーターの指揮官『ジグラットゼクス』との決戦をたたえ、リリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は早速と得られた情報を説明する。
「今回の戦いでは囚われていた失伝ジョブの人々の救出とあわせ、救出できなかった者たちの情報も得られたわけだが……それらと予知を合わせた結果、彼彼女らの行方が判明した」
 失伝ジョブの人々の捕らわれた先はジグラットゼクスの一塔『ポンペリポッサ』が用意した特殊なワイルドスペース。
 彼らはそこで大侵略期の残霊によって引き起こされる悲劇を体験させられ、絶望に染まった『反逆ケルベロス』へと変えられようとしているという。
「だが気づけた今なら間に合う。特殊なワイルドスペースに乗り込み、繰り返される悲劇を断ち切って閉じ込められた者たちを救出して欲しい」

 今回、リリエが得た情報は一人の心霊治療士の少女についてだ。
 彼女は失伝ジョブの人々以外は出入りできないワイルドスペースの中、大侵略期の悲劇を繰り返し体験させられており、助けられるのは失伝ジョブを持つケルベロスだけだという。
「リーア……と、一人称で呼んでいた少女は、大侵略期のドラゴンに襲撃された街のワイルドスペースにとらわれている」
 強大なドラゴンと戦う術を持たぬ彼女は、瓦礫と化した街で助けきれぬ人々を癒し続ける事しかできない。手に余る惨劇を、それでも必死に癒す彼女を待つのは再びの襲撃。
 終わらぬ石積のような繰り返しの無力さ、少女の心は遠からず折れてしまうだろう。
「やるべきことは一つだな、ケルベロス」
 ドラゴンを倒せ、それですべて解決する。
 普通なら言うは易く行うは難しではあるが、所詮は残霊。今のケルベロスたちでも八人でかかれば十分倒せる程度だろう。
「ドラゴンは風を操る白鱗の……ストームドラゴンとでも呼ぶか。能力自体はオーソドックスなブレス、ドラゴニアンと同種の爪撃、破壊力を高める咆哮の三種だ」
 ブレスはドラゴニアンの火炎と異なり、竜巻状の突風を放つ。威力は同程度だが巻き込まれると身を捕縛されてしまうので注意してほしいと、リリエは補足する。

「それともう一つ注意だが、ワイルドスペースへの長居は無用だ。ミイラ取りがミイラになるぞ」
 少女が捕らわれたワイルドスペースには失伝ジョブと関係した者に対し『自分が大侵略期に生きている』と誤認させる効果があり、それは侵入者であるケルベロスたちにも有効だという。
 時間をかけての探索などをしている余裕はなさそうだ。
「今回は救出が第一だ……決着をつける機会はまためぐってくるだろうし、今回はまだ戦い慣れないものもいると思う」
 確実に一歩ずつ進んでいこう。リリエははやる気持ちを抑えるよう、そう話を締めた。


参加者
安達・美愛子(オラトリオの心霊治療士・e44208)
ニャルラ・ホテプ(彷徨う魂の宿る煙・e44290)
ベヤル・グリナート(自己犠牲マン・e44312)
花実・創也(地球人のゴッドペインター・e44380)
サリア・エルアディス(黒死の大罪術師・e44528)
テルミナ・クアルヴィ(渾炎をつぐもの・e44597)
パスカル・マフタン(ドワーフのゴッドペインター・e44602)
ルナミリア・ミューズライン(オラトリオのパラディオン・e44726)

■リプレイ

●終焉の街に希望を描け
 降り立ったワイルドスペースはルナミリア・ミューズライン(オラトリオのパラディオン・e44726)の目の前、セピア色にかすんで見えた。
「ここが大侵略期の街……どこも瓦礫で元の姿が想像できないね……」
 血と埃の不快な匂い、少女の瞳の色と似た、しかしどんよりとした炎が誘うように揺れる。
「気をしっかりもってください。世界にのまれないように」
 テルミナ・クアルヴィ(渾炎をつぐもの・e44597)の声がルナミリアを現実に引き戻す。そうだ、この世界は過去の光景。失伝者を絶望に導く偽りにすぎない。
「さーて、ドラゴンとやらは……と。いたいた」
 ニャルラ・ホテプ(彷徨う魂の宿る煙・e44290)は香をつめた煙管をひと吹かし、それを空に向けた。
 この世界の目的は失伝者を絶望させること。ならば絶望させるものが向かう先にこそ、救うべき者はいる。

 また、きた。
『こんなものか……ふん』
 破壊と暴力の嵐をまき散らすドラゴンの姿を、ただリーアは隠れ見上げる事しかできない。自分が死ねば、すべてが終わる。だが心霊治療士の力をしても死に行く人々は治せない。
「俺の事はいい! 皆を……!」
「街が、燃えて……っ」
 響く人々の悲鳴。緩慢と近づく破滅に、少女はただ声を殺し泣くしかできない。
「もう……ダメ……リーアは」
「諦めるには早い、俺達が助けにきた」
 しかし声は遮られた。唐突に。
「同じ失伝者の癒し手が苦しんでいるんだ、今この力を使わないでどうする……『その時』が来たんだ。いけるな、じーさん!」
「皆まで言うな。さあ、この絶望を希望に塗り替えて行くぞ! 笑顔の障害となる絶望なんぞ塗り潰してくれる」
 失伝者の少女は色を見た。背中越しに振り向く、花実・創也(地球人のゴッドペインター・e44380)の瞳の金を。
 パスカル・マフタン(ドワーフのゴッドペインター・e44602)がペイントブキの絵刀で描く、絶望を切り裂く『完全絶対領域』を。
 二人のゴッドペインターの情熱が、かすんだ世界に色を与えていく。
『ナニ……!?』
「リーアちゃん、みんな、助けにきたよ」
 ドラゴンの戸惑う仕草を前に、安達・美愛子(オラトリオの心霊治療士・e44208)の声が重ねて言う。
 ファンタスティックに染められたワイルドスペースに激昂する白鱗の竜へ、ミミック『メディちゃん』の武器が叩きつけられた。
「助け……だ、だめっ! みんな、やられて……!」
「大丈夫。僕たちが必ずあの竜を倒すから。諦めちゃダメ」
 悲痛な少女の献身を優しく否定し、ベヤル・グリナート(自己犠牲マン・e44312)の拳が突風を裂く。
「犠牲を払うのは、ボクからだ」
 青年の極めつけの純潔が生んだ黒真珠の肌、髪、瞳は少女には悲しくも眩しく見えた。
「クゥアァァァーッ!」
「もう大丈夫。覚めない悪夢はここでおしまい。さっさと蜥蜴を片付けて現実に戻りましょう……」
 怒り狂った方向が響く。誰より早くリーアに駆け付け、寄り添ったサリア・エルアディス(黒死の大罪術師・e44528)は少女を軽く抱きしめ、旋回。迫る咆哮めがけてエアシューズを叩きつける。
 滑車の摩擦が炎をあげ、くすんだ世界は更に赤く染められた。

●絶望の嵐の盾となれ
 雄たけびを上げ、ドラゴンの身体が旋回する。
「ルォアァァァァッ!」
 蹴り上げられた頭部から血しぶきが飛び、蹴り上げるサリアの身体を滑らせた。落ちる彼女の眼前で、巻き込まれた家屋が吹き飛び瓦礫の雨を降らせてくる。
「そうやすやすとはやらせてくれない、か……」
 ささくれた鱗に裂かれた足の痛みをこらえ、偽骸を装着。あくまで冷静に、余裕な態度は崩さない。
「初陣が竜退治。まあ、箔を付けるのにちょうど良いわね……」
 情報の通りなら、十分に勝てるはず。
「でもドラゴンってケルベロスさんたちでもかなり苦戦する奴だよね……あ、今はもう私もケルベロスか」
「お、お姉さん、危ないっ!」
 飛び上がる竜の羽ばたきがルナミリアたちを舐める。リーアの警告に間一髪身をかわし、そういえば名前をいってなかったと彼女は気づいた。
「ありがとう、リーアちゃん。ルナミリアよ……やっぱり、すごい迫力ね」
 ここは過ぎ去った過去の世界。敵もまた弱い残霊に過ぎないとはいうが、間近をフライパスする巨体の風圧は紛れもなくドラゴンだ。
 ただ歩むだけで地面は割れ、羽ばたきの余波だけで街路樹や看板が宙を舞う。
「引き付けられちゃおるが、この竜巻は厄介じゃの!」
 渦巻く風に身体が引っ張られる。パスカルのアートがドラゴンに与えた怒りは確かに効果を発揮しているが、それは彼と同距離すべてが烈風のブレスに晒されるという事でもある。
「ちょいと筆を加える……立て直すぞ!」
 大声で暴風に抗い、創也は『虹色絵の具』を投げた。暴風がチューブをちぎれ飛び散った絵の具を絵筆で受ける。
 伸ばす。
 描く。
「この絵、どう思う?」
「あってます――今の私たち……託され、奪い返すものに」
 創也の作品に、テルミナはありのままの思いをいった。
 グラビティと思いを形にした『ナゾカケグラフィティ』……描かれた美しいケルベロスの印は、ワイルドスペースというキャンパスに癒しの力を加えていく。
「たくされ、奪い返す……あ」
「テルミナ・クアルヴィ――勝てます。きっと……」
 怒りによる攻撃の誘導はおよそ五分、その誘導しきれぬ一撃にテルミナは小さな体で食らいつく。腕を覆うワイルドウェポンが水から剣へ。
 支える手を裂かれながらもソードブレイカーの如く、混沌の鉤で絡めとる。
「ベヤルだ。僕は前の戦いで多くの人が助けられた。そんな僕のような奴でも誰かを守れるなら!」
 ドラゴンの爪撃が言葉を引き裂いた。自己犠牲を誇りに、縋り付いてベヤルは叫ぶ。血染めの包帯へ自らの血を塗り重ね、突き出した血装刺突法が竜爪を弾く。
「リーアちゃん。心霊治療士は無力じゃないよ、こんなに役に立てるんだよ」
「勝てます。きっと、あなたがいれば」
 エクトプラズムで傷口を埋め、あるいは時に大槌として咆哮を叩き潰しながら、美愛子は少女を励ます。重ねて、テルミナが頷いた。
 同じ心霊治療士、きっとリーアにも出来るはずと信じている。一人では無力でも、仲間がいることで数倍になる力だってあるのだと、美愛子はニャルラに向くドラゴンの顔へ『プラズムハンマーブレイク』を叩き込む。
「援護ありがと。この程度で、倒されてあげるわけにはいかないわ……ふふふ。その大口、まともに動けなくなるまで嗅がせてあげる」
 裂傷を癒され、ニャルラは大きく伸びをする。再び暴風を浴びせんと息を吸うドラゴンめがけ、その横顔に愛用の煙管をひと吹き。さわやかにも怪しげな香りが廃墟の街に漂った。

●その手を掴め
 大きく吸い込んだ息が、漏れた。
「グァォッ!?」
「君はもう、動けない」
 ニャルラが美味そうに噴かせる『幻覚香・止』は、敵対する竜には強力な神経毒として作用した。まるで抜歯手術後の麻酔患者のように、閉じられぬ口から息が漏れ、よだれがこぼれる。
「……ニャルラちゃん、そんなの吸って大丈夫?」
「私はへーき。普段から吸って慣れているの」
 美愛子に答えて一服。煙管をくるりと回すとニャルラは呪いの宝珠を手に取った。
「まだ全身には回り切ってないようだけど……そろそろかしらね」
「そうしたいところだが……そうは問屋がおろさんようじゃ、と!」
 空に描いたパスカルの『道』が踏み潰される。ストリートダッシャーの構えから転がり飛ぶドワーフに目もくれず、ドラゴンは叫び、飛び上がる。
「怒ってるの……?」
 サリアのレゾナンスグリードが振り払われた。飛び散るブラックスライムを庇いつつ、ベヤルは空へと構えを取る。
「動けるうちの一撃にかける、ってところかも」
 推測は恐らく正解だった。
「オォォォォ……ォアァァーッ!」
 あらかた壊れきった街の廃墟をかき混ぜるミキサーが如く、烈風が戦場を吹き荒れる。
「あと一押しだというのに……!」
 外壁へ着弾するオーラの弾丸に創也がうめく。動けない……もっとも当てやすい気咬弾ですらこれだ。
 ドラゴンが噴きつける風は攻撃であり、捕食者を捕らえ縛りあげる縄でもあった。
 ニャルラの幻覚香やテルミナの拳が勢いを削いでくれていなければ、どうなっていたか。それらがあってなお、状況は拮抗し決め手を欠いている。

 降り注ぐ瓦礫を身で受け、ベヤルは少女の身を守る。
「平気、負けはしないよ。でも、リーア……もしもの時は、構わないで。僕を盾にすればいい」
「……ダメです、そんなの……それじゃ」
 少女の声が怯えだけではないのをベヤルは感じた。ウェアライダーの尻尾が彼の心中のように、ふんわりと揺れる。
「君も、そうなんだね」
 少女は動き出そうとしている。この絶望を押し付けてくるワイルドスペースにありながら、再び手を伸ばしてくれた。
「たたかいましょう。あなたひとりでじゃなく、わたしたちと」
 ならばあとは手を掴むだけだ。テルミナに頷き、少女は瓦礫の中を立ち上がった。

●世界を変えるために
 風が向きを変えた。
『バカな』
 狼狽え、怒るドラゴンの暴風が癒しの風を押し返そうと力を増す。散々に翻弄してくれた連中ごと……吹き荒れる嵐にパスカルは笑った。
「目論みにはまったな、間抜けめ!」
 散々に怒りをたぎらせたのはパスカルだ。それはリーアの知るものを守るためであり、的を絞らせるため。
「創也さん、傷が……」
「これは赤い絵の具のようなものだ、問題ない」
 癒しの届かぬ傷も蓄積してきているが、風の束縛が止んだのは大きい。創也はリーアに大丈夫というと、ナイフで器用に血を拭う。
「描けるかの?」
「あぁ、ただの強がりだけじゃあない」
 初手の援護の返礼とばかし、パスカルの拳がドラゴンの脛を割る。飛び上がる体制をぐらつかせた胴体へのナイフアート、聖なるオーラが不死の存在へ死の重力を打ち込んでいく。
「あら、イニシャルじゃないの?」
「仕留め損ねたらかっこ悪いだろ」
 ニャルラの軽口に応じる余裕ができていた。気づき、創也は口元を少し緩める。
「さぁ、一気に決めちまおう」
「わかったわ。少し時間稼ぎ、お願いできる……?」
 サリアのワイルド化した左腕が禍々しい宝珠を握る。
「リーアちゃんと二人なら、たぶん……どうするの?」
「必殺技……かな」
 首をかしげるルナミリアへ手短に答える。
 年よりも幼く見える姿と混沌の水で補った目、腕が示す壮絶な過去。世界を呪う絶望の中で手にした禁呪……風の凪いだ今なら、できる。
「古より交わせし盟約の元、顕現せよ嫉妬と猛毒の龍蛇。汝は全ての意思ある存在に囁きかける者……」
『させるか』
 咆哮が詠唱の声を遮って響く。波立つ銀の髪が呼び起こさんとする危険を察知し、空に逃れたドラゴンが急降下してくる。
「おめぇの相手はわしらじゃろうが!」
 迎え撃ったのは飛びあがるパスカルの両脚。ドラゴンの注意が中年のドワーフに向いた。だが押し切れる……ドラゴンはそう考えただろう。
「おねがい、リーアちゃん。力を貸して!」
「はいっ」
 慢心を覆したのはルナミリアの歌とリーアの一撃。
「届いて、希望――スカイクリーパー」
「届けますっ!」
 美愛子の技がヒントになった。圧縮したエクトプラズムを叩きつけるという攻撃の発想……渾身のプラズムキャノンがパスカルを後押しし、竜爪撃を蹴り抜く。
 その時、詠唱は完成した。
「我が妬心を糧として森羅万象を噛み砕け――インヴィディア・ヴェネムデンス!」
 ネクロオーブを握る手から伸びた光が形成する魔法陣へ、サリアは右手……刀状に研ぎ澄まされたワイルドウェポンを掲げるように突き入れる。
「アーティスティック……!」
 砕ける空間から伸びあがる大蛇をパスカルは落下しながらに見た。
 それは大罪魔術、その名は『艶羨の龍毒牙』。ドラゴンへと喰らいつく牙は猛毒と共に、嫉妬という感情を流し込み心身の傷を抉り開いていく。
「ガアッ……ガッ……ヌゴアァァァ!」
 攻撃を受け続けた残霊の竜に効果は絶大だった。ボロボロと鱗がはがれ、千切れるように姿が消えていく。 蛇の姿が消えた後、あとには廃墟だけが残っていた。

「やったね……げほっ! ゴホッ! ガフッ!」
「ルナミリアさんっ!」
 崩れ落ちせき込むルナミリアをリーアが支え助け起こす。
 気が付けば彼女もケルベロスたちに溶け込んでいた。助ける対象でなく、共に戦う仲間として。
「あまり時間はありません。なごりおしいかもしれませんが、ここはかりそめの世界です」
 テルミナのワイルドウェポンが一薙ぎ。遠慮なく。
「えっ!? あれ?」
「なおしたのですが、傷を。――だめでした?」
 カオススラッシュの癒しに驚く二人へ、少女は小首をかしげる。その一閃は、この世界への区切りのようでもあった。
「これでもう、ここは大丈夫だから、リーアさんは美愛子たちと一緒に来てほしいの。まだまだ、助けを必要としている人がいるから……」
「はい」
 美愛子が呼びかた少女の顔に、憂いはもはやない。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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