●目指す高み
山奥の森に、力強い打突音が響き渡る。
音の中心は、一際大きい大木。その太い幹に、学ランを着た一人の男が立ち向かっていた。
その男――大桐乙矢は、一心不乱に大木に拳を打ち付ける。
「まだだ……こんなものじゃない……」
ケルベロス達に救われた時のことが脳裏によぎる。力強く光り輝き悪を挫いた力。思い描かれる理想の拳。自身が悪を討ち倒すに相応しい烈光の拳を生み出さんが為、毎日のように拳を振るっていた。
不意に、気配を感じた大桐は振り返る。
そこには不気味な気配を漂わせた少女――ドリームイーター『玄武極』だ。
不敵に笑う玄武極は大桐に向けて口を開いた。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
「お前、何を言って……うっ」
大桐の身体が、その意思とは無関係に動き出す。
打ち出される拳。二発、三発……と、次々にその拳が玄武極に叩きつけられる。
そうして何十発もの拳を受けた玄武極はニヤリと笑う。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
賞賛の言葉と共に、玄武極が生み出した鍵が大桐を貫いた。
意識を失い倒れる大桐。その横にボロボロの学ランを着た大柄なドリームイーターが生み出される。
ドリームイーターが腰だめに力を溜めると、拳に閃光が宿る。その拳を大木に向けて振り抜いた。
烈光の拳が大木を破砕し、衝撃波に周囲の木々が大きく揺れる。
その様子を確認した玄武極が満足するように口を開いた。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
その言葉に頷くように、学ランのドリームイーターが歩き出す。
その力を誇示する為に――。
●
武術を極めようとして修行を行っている武術家が襲われる事件が起こるのだと、クーリャ・リリルノア(銀曜のヘリオライダー・en0262)が説明する。
「武術家を襲うのはドリームイーターで、名前は玄武極というのです」
自身が欠損している『武術』を奪ってモザイクを晴らそうとしているそうだ。
今回襲撃された被害者、大桐乙矢の武術ではモザイクは晴れないようだが、代わりに、ドリームイーターを生み出して暴れさせようとするようだ。
「出現するドリームイーターは、襲われた大桐乙矢さんが目指す烈光の拳を操り、使いこなすようで、なかなかの強敵だと思われるのです」
幸い、このドリームイーターが人里に到着する前に迎撃する事が可能なので、周囲の被害を気にせずに戦う事が出来ると、クーリャは説明した。
続けて敵の詳細情報をクーリャは伝える。
「敵は学ランのドリームイーター一体で、配下や玄武極はいないのです」
喧嘩殺法を得意とし、烈光の拳で純粋に殴りつける攻撃や、その烈光をエネルギーのように放つ攻撃、光を身に纏い自身の傷を癒やしながら破壊力を上げる力も持っているようだ。
「戦闘地域は、山奥の森の中になるのです。周囲に人影はなく、建造物もないため避難誘導や周辺への被害は気にしなくて大丈夫なのです」
戦闘に集中できる環境であることがわかる。純粋な戦闘となるだろう。
クーリャは資料を置くと番犬達に向き直る。
「このドリームイーターは、自らの武道の真髄を見せ付けたいと考えているようなので、戦いの場を用意すれば、向こうから戦いを挑んでくるはずなのです。皆さんの力を見せ付けてやってほしいのです」
両手を握り、奮起させるポーズをとるとクーリャは最後にこう言葉を繋いだ。
「被害者は森の奥で意識を失っているはずなのです。戦いが終わったら様子を見てあげて欲しいのです。どうか、皆さんのお力を貸してくださいっ!」
参加者 | |
---|---|
レカ・ビアバルナ(ソムニウム・e00931) |
上野・零(原初の零・e05125) |
志藤・巌(壊し屋・e10136) |
ケイト・クリーパー(灼魂乙女・e13441) |
神居・雪(はぐれ狼・e22011) |
レティシア・アークライト(月燈・e22396) |
エング・セナレグ(重装前進踏襲制圧・e35745) |
椚・暁人(吃驚仰天・e41542) |
●森の中の衝突
山中の森を、番犬達が索敵しながら進む。
先導するのはレカ・ビアバルナ(ソムニウム・e00931)だ。森で生まれ育ったレカは険しい森の道も易々と進んでいく。
森に侵入してから五分ほど、予知された現場へと向かう山道の途中で、レカは足を止めた。
「見つけました」
レカが目的の夢喰いを見つけ、仲間に合図を送る。視線の先、学ランを纏う大柄な夢喰いが歩いていた。
番犬達は顔を見合わせ頷くと、夢喰いの正面から姿を現した。
突如現れた番犬達を睨み付ける夢喰いが、大声で威嚇する。
「なんだァテメェら?」
「ケルベロスだよー、勝負しよっか」
椚・暁人(吃驚仰天・e41542)が注意を引くように呼びかける。
「勝負だァ? ハッ、上等だァ!」
夢喰いは乱暴な物言いながら、その身体に隙はなく、すぐにでも襲いかかってきそうな戦意と殺意を滾らせている。
「アンタ、見たところ強そうだな。ま、見かけ倒しって事もあるかもしれねぇが」
挑発するように言葉を投げかける神居・雪(はぐれ狼・e22011)。夢喰いは不鮮明な顔でニヤリと笑った。
「やりゃぁわかる。テメェらの命は無くなるがな!」
「それじゃあ、見かけ倒しかどうか試させてもらうぜっ!」
雪は武器を構えると、戦意を迸らせた。
「上等! 俺の拳に砕けねェものはねェ!」
夢喰いが腰だめに拳を構える。夢か幻か、夢喰いの拳がぼんやりと発光し、その力を溜め込んでいく。
強大な力と、そこに込められた殺意を感じ取る番犬達は、一斉に武器を構えた。
「オオォァァ!!」
夢喰いが裂帛の気合いを込め、雄叫びを上げる。
「そんじゃま、かかってこいでございますよ――さぁ、戦争でございます!」
ケイト・クリーパー(灼魂乙女・e13441)の怪しい敬語を合図に、戦いが始まった――。
●借り物の力
戦闘開始と同時、地を蹴り突撃してくる夢喰いの鼻先を、雪が炎纏う蹴りで牽制する。
「うらァァ!」
夢喰いは放たれた蹴りをその身に受けながら、その光り輝く烈光の拳を雪へと打ち抜いた。その衝撃に雪の身体が吹き飛び木々を破砕する。
「痛ってぇ……。デカい図体しやがって! 見た目通りって訳か」
「すぐに手当てしますね」
レティシア・アークライト(月燈・e22396)がすぐに雪を癒やすとともに破壊のルーンを付与する。
腰だめに構える夢喰いへ、志藤・巌(壊し屋・e10136)が飛びかかる。
「オォ――ッ!」
「ラァァァ!」
互いに気合いを込めながら真正面から殴り合う。
巌にとってみれば、真正面から思い切りぶつかれる今回の相手は、個人的に好みの相手だ。全身全霊をもって挑む事ができる。
「穿て……羅漢把心掌!!」
形作られた虎爪より放たれる、心臓狙いの掌底は紙一重で躱される。反撃の烈光をその身に受けながら、巌は鎖を放ち、守護の魔方陣を地面に描き出した。
巌と入れ替わるように上野・零(原初の零・e05125)が疾駆する。
卓越した技量から放たれる達人の一撃が、夢喰いを捕らえ、その身体を大きく後退させる。
「―――さぁ、貪欲に喰らえ」
零は止まる事無く、自身の地獄化した右目を抉りだし、その手に銃を創り出す。
地獄の炎が不安定に揺れる。いつもより若干生成が遅い。
(「……地獄が不調なのはやはり不便だ」)
自身の地獄の不調を感じながらも攻撃の手は休めない。放たれる弾丸が夢喰いを捕らえていく。
追撃を免れるため、夢喰いが回避行動を取りながら、素早く森を駆ける。
大きく迂回しながら狙いを定めると、暁人へ向けて躍りかかった。
不意を突かれた暁人だったが、夢喰いの拳は暁人へは到達しない。間に割って入ったエング・セナレグ(重装前進踏襲制圧・e35745)がその身を盾に防いだ為だ。
重い一撃に装甲が鈍く軋む。
「助かったよ」
「大丈夫だ、これが俺の役目だ」
暁人の礼に答えながら、夢喰いとの間合いをとるエング。
その視線はいつでも仲間を庇えるようにと、仲間達と敵との位置関係をよく観察していた。
「陣形『各々イイ感じでよろしく』でございます!」
ケイトが仲間の陣形を見出し、仲間に破魔力を与えていく。
「かませでございますよ、相棒!」
サーヴァントのノーブルマインドに指示をだしながら、ケイトが走る。
手にした獲物を振り上げ、夢喰いに襲いかかると、防御を打ち破る無慈悲な一撃を喰らわせた。
慎重に弓を引くレカ。怒りはその矢に託し、牽制の一矢を放つ。鋭く飛んだ矢は夢喰いの右肩に刺さった。
肩に刺さった矢を抜きながら、夢喰いがレカへと迫る。
「強さは認めざるを得ないようです、ね。……一つ言わせていただくのならば、それは貴方自身の武術ではありません」
「なに?」
戦闘を継続しながら、レカは夢喰いへと言葉を紡ぐ。
「あくまで乙矢さんから盗んだお力に過ぎません。人様の努力の結晶は、赤の他人が使ってよいものではありませんよ」
「だまれ! これは俺の力だァァ!」
拳から放たれる光が、光弾のようになって襲いかかる。
巌とエングが仲間達を守るように立ちはだかり、光弾をその身で受け止めた。
「……話を聞くような奴でもないね」
「ああ、そうだな。返さないっていうのなら、力ずくで返して貰うまでだな」
「ええ、そうですね」
番犬達の脳裏に、森の奥で倒れて居るであろう被害者大桐乙矢の姿が思い浮かぶ。
被害者が積み上げてきた力の礎。それを利用し、悪の手先へと落ちた、この夢喰いは今ここで倒さなくてはならない。
今一度想いを固めると、番犬達は夢喰いへと立ち向かっていく。
戦いは続く――。
●唸るは烈光の拳
鬱蒼とした森に光輝が満ちる。
放たれる烈光。強大な一撃が、森を振るわせ、番犬達を苦しめていた。
「俺を倒さぬ限り、自由に進めると思わないことだ」
エングが仲間を庇い烈光をその身に受け止める。拉げた装甲を見たサーヴァントの『彼』が、応援動画を流しすぐさま癒やす。
癒やしがもたらされるとエングは素早く攻撃へと転じる。
「我が体躯は重鈍。されど刃は飛燕の如く!」
放たれる高速の突きは重く鋭い。直撃を受けた夢喰いの足が鈍るのを感じた。
「いくぜ、はたろう」
サーヴァントのはたろうと共に、夢喰いへと仕掛ける暁人。
見えない地雷を一斉に起爆し、夢喰いの足を止めると、氷結の螺旋を放ち、その身体を凍り付かせていく。
はたろうもまた、状態異常を多く付与する動きを見せ、夢喰いを自由に動かさないように絡め取っていく。
「まだだ……まだ、こんなものじゃ――!」
夢喰いが自身に言い聞かせるように呻くと、烈光をその身に纏っていく。
「オオォォォ――!」
気合い一閃。放たれる烈光の拳が唸る。
破壊力を増した夢喰いの一撃は、次々と番犬達を吹き飛ばしていった。
「もうちょいだ。耐えろよ、イペタム!」
雪はサーヴァントのイペタムと共に果敢に夢喰いへと立ち向かう。
「猛き雷、その力の一端を今ここに」
生み出された雷が四方へ広がる。直撃を受けた夢喰いが炎に包まれた。
さらに雪は夢喰いへと肉薄すると、流星纏う蹴りを繰り出し、重力の楔を打ち込んでいく。
決め手に欠ける攻撃ではあるが、状態異常や行動阻害を多く与える事で、確実にダメージを蓄積させていった。作戦通りだ。
「霧よ、勇ましく応えよ。暁を纏いて、彼の者共に戦神の加護を」
レティシアの周囲を漂う薔薇の香りの霧。それはレティシアのグラビティに他ならない。
山中の森の中ピンヒールを履く姿は異質でありながら、その美しく流れるような所作は見る者を魅了する。
放たれた霧が味方を包み込む。吸い込めばそれは闘争心に働きかけ、秘められた力を解放する。
「ルーチェ、皆さんをお願いしますね」
レティシアはサーヴァントのルーチェに味方を守るよう指示をだし、美しく舞うように踊ると、戦場に仲間達を癒やす花びらのオーラを降らせた。
――今回の戦いにおけるレティシアの的確な回復は目を見張る者があった。体力に注視し、大きなダメージが出る前にしっかりと回復をこなし、仲間達を支えていた。
強大なダメージを叩き出す相手との戦いではあったが、レティシアの支えのおかげもあり、番犬達は十全の力で戦う事ができたのだった。
巌が地を蹴り夢喰いに肉薄する。その側面を零が地獄から生み出した銃を構え走る。連携行動だ。
巌の魂喰らう一撃が夢喰いの腹部に直撃した。耐える夢喰いの反撃を零が弾丸を放ち牽制する。
更に巌が指天殺を繰り出し、夢喰いの左腕を石のように重くすると、零が敵の生命力喰らう地獄の炎弾を放って追撃する。
追い詰められながらも夢喰いは気合いを込め、その拳を振るう。自分にはそれしかないのだと言うように。烈光は今だ衰える事無く輝き続けていた。
ケイトが飛びかかり獲物を振るう。
紙一重で躱す夢喰いの反撃を、獲物で受け流すと、手にした獲物を上空へと振り投げた。
「あらよっと、でございます!」
空を舞う獲物。その下では、燃ゆる魂を機械仕掛けの拳に宿らせたケイトが、焦熱を乗せた渾身の殴撃を叩き込んでいた。
吹き飛ぶ夢喰いを尻目に、落ちてきた獲物をキャッチしたケイトは攻撃を継続するために進む。
「これで――!」
レカが竜砲弾を浴びせながら接近すると、視認困難な斬撃を繰り出し傷口を広げていく。切り刻まれた学ランが千切れモザイクと消えていった。
反撃を受けながら大きく飛び退ると、得意の弓矢を射かけていく。心貫くエネルギーの矢が、夢喰いを催眠状態へと誘った。
「全力で守りを固めさせてもらうぞ。お前の拳、この前線を越えられると思わないことだ」
エングがヒールドローンを展開し、仲間達を守護させる。
夢喰いが舌打ちしながら、ドローンごと撃ち貫くが、ダメージは確実に軽減されていた。
エングは一気に駆け寄ると、弧を描く一撃を見舞う。切り裂かれながら夢喰いは歯を食いしばり、反撃の一手を繰り出す。
放たれた烈光がエングの装甲内部へとダメージをもたらす。エングは裂帛の気合いと共に、倒れる事を拒んだ。
「まだだ、俺はまだ立っているぞ。幾多の拳を受けようと、何度でも立ち上がってみせる」
「上等だァ!」
共に倒れる事を拒んだ二人の気合いが森を揺らす。
満身創痍の夢喰いに対し、盤石の構えの番犬達。されど、どのような攻撃を喰らおうとも、膝を付く事のない夢喰いに、番犬達は畏怖の念を感じていた。
これほどまでに強い心、敵で無ければどれだけ心強かったか。この先に訪れるかもしれない可能性に、心が躍る。
しかし、全てはこの敵を倒してからだ。番犬達は決着へと向け戦況を加速させていく。
「これなら――!」
暁人がブラックスライムを解き放ち、夢喰いの身体に纏う烈光ごと喰らい尽くすと、
「影を縫い、喰らい付け! 暗流縛破!」
体内のグラビティ・チェインを鎖のように編み込み、手から放出する。放たれた鎖が夢喰いの死角を突くように動き食らいついた。
夢喰いの動きが止まる。その隙を逃す者はこの場にはいない。
一斉に仕掛けられる攻撃に防戦一方となる夢喰いだが、いまだ倒れず。
「どこまでもタフな方ですね」
「これで倒れろ、でございますよ」
レカが飛びかかり斬撃を加えると同時、ケイトもまた傷口を広げる一撃を見舞う。
噴き出るモザイクはまるで血潮のよう。だが笑みすら浮かべる夢喰いは次々に番犬達を殴り飛ばしていく。
「……これで終わりだ」
零の放つ鹵獲弾が夢喰いを捕らえる。必死の一撃と思われたその弾丸。だが、その一撃をその身に受けながら、夢喰いは轟音にも似た気合いを放ち、耐えると同時に反撃にでる。
「学ラン拳士。お前はよくやったよ」
零と夢喰いの間に割って入った巌が、夢喰いの一撃を受け流すと、勢いそのままに、心臓狙いの掌底を放った。
抉り込むようにして放たれた一撃は、直撃の瞬間に大量の気が流し込まれ、夢喰いの肉体と気脈を破壊する。
そうして烈光の拳を操る夢喰いは、ついにその動きを止めた。
「チッ、タイマンなら負けなかったのによ」
吐き捨てるようにそういうと、徐々にその身体がモザイクに包まれ消えていく。
結局、最後まで膝を付く事無かった学ラン拳士の夢喰いは、その姿を見せ付けるように仁王立ちのまま、モザイクと共に消失していった。
番犬達の勝利だ――。
●激闘の後
戦いの後、周辺の森をヒールしながら森の奥へと進むと、破壊された大木の傍に学生服の大柄な少年――大桐乙矢が倒れているのを見つけた。
「さて、ご無事でございます?」
「傷はないようだね」
「よかった」
介抱しながら様子を伺うこと数分。大桐は静かに意識を取り戻し、頭を振るった。
「俺は……いったいどうしちまったんだ」
「お怪我はありませんか?」
「私達はケルベロスです、貴方は――」
レカとレティシアが事情を説明する。
事情を聞いた大桐は悔しそうに地面をその拳で叩いた。
「ちくしょう、また救われちまった……俺は弱いな……」
悔しそうに顔を歪ませる大桐の肩を番犬達は叩く。
「気に病む事はないさ。デウスエクスに目をつけられたのは災難だったけど、それだけ君の武術が凄かったんだ」
「お前の武術、デウスエクスに狙われるだけの物だった。いずれ、それに俺達も救われるかもしれない。共に、精進し続けよう」
暁人とエングが励ましながら、戦った相手の強さを誇らしげに語る。
「貴方のお力はよく存じ上げております。近い将来、誰かの救いとなるのでしょうね。さぁ、これをどうぞ。暖まりますよ」
レカは用意していたブレンドティーを差し出しながら、未来へと向けさせる言葉を紡いだ。
口々に語られる、自身の夢見た武術の形。自分の思い描いた武術が、番犬達を苦しめたと聞いた時、罪悪感を感じると同時に、嬉しさを感じた。
自分の道は間違っていないのだと、そう思った。けれど――。
大桐は自身の拳を見て、フッと笑った。
「へっ、俺自身がやったんじゃねぇなら意味ネェや。……また一から出直しだ。あの輝きを目指して」
大桐が空へと手をかざす。太陽の光がその手を包み込んだ。
「……君なら、……何時かその輝きを自分の物に出来るんじゃないかな? ……応援してる」
「今回は運が無かったけどさ、アンタみたいな真っ直ぐな奴は嫌いじゃねぇよ。がんばんな」
零と雪が大桐の背中を押した。
きっと彼は目指すべき高みへと、いつか至る事だろう。その時はきっと仲間として力持たぬ人々の為に戦えるはずだ。
振り返れば、砕けた大木の跡。いつか自らの力で、それを成し遂げる。
番犬達に背中を押され、少年はその時を夢に見る――。
――一人離れたところで巌は物思いに耽っていた。
武術家を狙う玄武極。玄武極のモザイクを晴らせるような武術とは何か? そのような武術が存在するのか?
いつか来る玄武極との決戦へと想いを馳せながら、巌は静かに眼を閉じた――。
作者:澤見夜行 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年12月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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