美しき風にさざめく

■リプレイ

●湖面に零れる涙
　長野県は諏訪湖の畔に咲き誇る、冬に咲く可憐な花々。
　……とても美しく、綺麗な花々は、そのままであれば美しく咲き誇る花であった筈。
　しかし、咲き誇る花を映すカメラ女子に襲いかかるは、攻性植物……自然破壊に怒り、植物を攻性植物に仕立て上げた『鬼薊の華さま』は、そのカメラ女子を攻性植物の中に捕らえる。
『自然を破壊してきた欲深き人間どもよ。自らも自然の一部となり、これまでの行いを悔い改めるがいい』
　と言う彼女の言葉は直接聞いたわけではないが……度々起きているこの人型攻性植物達の事件。
「……自然に帰れ、か……私は自然が好きだから私なら歓迎なのだが、な。だが……未来ある少女の命を捨て置く事は出来んな……」
　静かに天照・葵依（護剣の神薙・e15383）が呟くと……それに対し悲しげな言葉で園城寺・藍励（深淵の闇と約束の光の猫・e39538）が。
「こんなこと、許されることじゃないよ……自然だって、この世界で、生きてる。それを、自分の思想のために、好き勝手作り替えられて……植物が、可哀想だよ……」
　と、小さくその手を握りしめる彼女……と、その真逆に勢い付いた言葉を吐くはマーシャ・メルクロフ（月落ち烏啼いて霜天に満つ・e26659）。
「むうう、宿主を盾にするとは！！　この植物、卑怯でありまする！　許せないでありまするぞー！！」
　宿敵であるからこそ、燃え上がる怒りの炎。
　……とは言え、このままこの事態を放置しておく訳には行かない。攻性植物の侵略事件も、当然。
「まぁ侵略者が環境破壊云々とはよく言えたものっすよね？　攻性植物化も、ジュウウbンな環境破壊だと思うんすけどね」
「そうですねぇ、植物なんですから、冬はおとなしくして欲しいですよ～……あ、でも春や夏に一気に活性化されてもちょっと困りそうですねぇ～？」
「ああ……植物風情が偉そうに。環境破壊は愉しいのでな、生意気にも反乱を起こした植物どもにも味わって貰うとしよう……クク」
　神宮寺・結里花（目指せ大和撫子・e07405）、澤渡・和香（押しかけ事務員補佐心得・e13556）に対し、不敵に微笑むペル・ディティオ（破滅へ歩む・e29224）。
　そして彩葉・戀（蒼き彗星・e41638）が。
「まぁ……人型攻性植物、厄介な存在もおったもんじゃないのぅ……？　自然にあふれるこの地では、そこいら中が攻性植物だらけになりそうじゃ。随分と厄介そうじゃのう？」
　と肩を竦めると、神藤・聖一（白貌・e10619）が。
「多少面倒な状況ではあるが……それくらいケルベロスならこなさなければな。しかし攻性植物か……取り込まれている人間がいる以上、長期戦は必須だろうが、その程度の事でし損じる訳にもいかない。完璧に勝つとしよう」
　と静かに決意を固めると、和香、結里花、葵依が続き。
「ともあれ被害者を早くお助けしたいですねぇ」
「そうっすね。被害者は救助して、攻性植物は駆除するだけっす」
「そうだな。彩葉、少女の命、託したぞ。後衛は任せろ」
「うむ、了解じゃ」
　そして、ケルベロス達は覚悟と共に、攻性植物の捕らえしその場へと急ぐのであった。

●雪の下
　薄暗い暗闇の中、湖畔を歩くケルベロス達。
　幸いな事に、周りに人気は無いので……ちょっと、薄気味悪い感じはある。
　でも、それに恐怖を覚えている暇はない……攻性植物に捕われたカメラ女子は、今も、命の危機が迫っている。
「さて……何処っすかね……」
　と言いつつも、先頭を切って進んで行く結里花……程なくすると。
『た……助けて、たすけてぇぇ……』
　と、小さな声で救いを求める女性の声。
　その声の元に急ぎ、更に駆けていくケルベロス達……木々の間を抜けていくと、闇の中に姿を現わす攻性植物と、彼女の姿。
　身体半分近くが最早取り込まれており……その顔は、絶望の色が強い。
　そして、その瞬きも……かなりスローペースに……。
「さて……そこの運の無い輩もついでに助けてやるか」
　大人びた、ペルの言葉。
　その言葉を遮るように結里花が。
「大丈夫っす。絶対に助けるっすから……だから、頑張って欲しいっす！」
　と、絶望からどうにか引き上げようと声を掛けつつ、そっと甘酒を口にし、戦闘モードへシフト。
　そして、軽く覆い尽くした足元の雪を踏み固めながら、武器を構え、戦闘体勢へ。
　……とは言え、まずは攻性植物に捕われている彼女の体力の具合は、既に……限界に近い。
「取りあえず、先に回復しなければ危険そうだな……」
　と葵依の言葉に頷き、藍励が。
「大丈夫だから、今は少しだけ我慢して……永望、零之型『希楽』――――《ハピネス・ホープ》』
　と彼女に『ホープ・ハピネス』にて彼女の体力を回復。
　更に戀、和香も。
「すまぬ……必ずや助け出す故、今は、耐えるのじゃ……諦めるでない！　まだ助かるのじゃ！」
「そうですよぉ～。大丈夫、大丈夫です～！」
　と励ましつつ、和香が祝福の矢を飛ばして回復。
　そして、葵依は前衛陣に紙兵散布、月詠は属性インストールで仲間達の強化。
　更にペルが。
「そら、すぐに間引いてはやらん。動きを一つ一つ奪ってからじっくり嬲ってやろう……視界を灼き、白き光景を刻み、瞬間に砕けろ」
　と『白く眩い雷光の災拳』の一閃を放つと、戀も御霊殲滅砲を叩き込むのだが……その一撃、身体をぐっと動かし、真っ正面にカメラ女子を動かす。
「む、宿主を盾にするかの……厄介じゃな」
　と戀はギリギリの所で、その砲筋を逸らして、彼女の被害を抑える。
　ともあれ、宿主を盾にする攻性植物……救う事は、かなり容易ではない。
　しかし、そんな攻性植物の元へ。
「さぁ、行くでございまするー！！」
　威勢良い声を上げながら、雷刃突の服破りの一閃と、マーシャのライドキャリバー、まちゅかぜのキャリバースピンで確実なるダメージを与える。
　苦しみの表情を浮かべる彼女……その苦しさを思慮しながら、更に聖一は、ツバキと共に。
「ツバキ、やれ」
　と金縛り攻撃を仕掛ける一方、聖一も達人の一撃で体力を削り取る。
　そして、ケルベロス達の行動が一巡し、対し攻性植物が反撃。
　蔓をウネウネと鞭のように振るわせて攻撃。
　しかしその攻撃は、聖一が。
「ツバキ、庇え」
　と、淡々と言葉で指示を与え、仲間達の前に立ちふさがらせての防御。
　……グルグルと、その手足を拘束。
　ただ、ツバキは敢てその攻撃を惹きつける事で、攻性植物を惹きつける。
　そして次の刻、マーシャ。
「苦しいでござるよね！　でも、元気を出すでござるよー！！」
　と、声をかけ続け、励まし続ける。
　そして、そんなマーシャを支援する様に、まちゅかぜはキャリバースピンで攻撃し、マーシャ自身もホーミングアロー。
　更に戀のジグザグスラッシュが、敵のバッドステータスを倍増させると、ペルも。
「ほらほら、飴と鞭のなんとやらというやつだ。簡単に死なせはしないぞ……？」
　と、フードの下に笑みを浮かべながら、ハウリングフィストで攻撃し、敵のエンチャントをブレイク。
　更に結里花が。
「その魂魄を喰い穿つ！」
　と降魔真拳で殴り掛かると、更に聖一はサイコフォース。
　ツバキはグググ、と腕足を惹きつけながら、攻性植物の攻撃を受け続ける。
　……そして、仲間達の攻撃が一通り一巡した所で、和香の祝福の矢、藍励の『ホープ・ハピネス』。
　一方、葵依が。
「蔦を司る申の神よ！　今こそ白雪に咲き添いて、枯れたる苦界を潤わさん！　いざや聞こし召せ蔦ノ花神！！」
　と、ツバキに『神器開放：蔦ノ花神』で回復。
　その後も、次々とケルベロス達の猛攻は攻性植物の体力を削っていく。
　が……体力を削るだけでは単に倒して仕舞うだろうから……その攻撃に合わせるようにして、他の仲間達がしっかりと回復。
　当然ながら、時間はかなりかかるが……少しずつ、少しずつ……攻性植物の体力を削り落とす。
　そして、戦闘開始から十数分。
　流石に、攻性植物も……カメラ女子も、かなり疲弊。
「頃合いか、ではそろそろ遊びも終わりだ」
　とペルが一言言い放ち、そして……仲間達が頷く。
　攻性植物を取り囲み、ペルが『白く眩い雷光の災拳』の拳を叩きつけると……攻性植物の蔓一つ、叩きおとされる。
　そして……。
「ごめんね、すぐに助けるから……」
　と、謝罪の言葉と共に、稲妻突き。
　合せて戀も、御霊殲滅砲を叩き込み……もう一つの蔓を打ち砕く。
　そして、全ての蔓がもげた攻性植物に、マーシャが。
「さー、これで終わりにするでござるよー！！」
　と、元気よく叫びながら、雷刃突で突っ込み……攻性植物は、そのまま打ち砕かれていった。

●声は届かず
　そして、攻性植物を無事に倒したケルベロス達。
　消えた攻性植物の痕には……気を失っているカメラ女子の姿。
「ととと……大丈夫ですかぁ～？」
　と駆け寄り、和香が祝福の矢にて彼女の体力をヒールしつつ、怪我したところの手当を行う。
　更に藍励や戀も、カメラ女子のところに近づき、意識を取り戻すまで、確りと状況確認とヒールを継続。
　……暫しの間、回復しながら状況確認を継続していると……。
『……うう……ん……』
　と、身じろぐ彼女。
　そんな彼女に心配そうに顔を覗き込みながら、戀が。
「ふむ……大丈夫じゃったかのぅ？」
　幼さの残る彼女の声掛けに、彼女は……戸惑う。
『え、あ……あの……？？』
　状況を理解出来て居ない様な彼女に、藍励が更に。
「よく頑張ったね……大丈夫だった？　いや……怖くて、一時的に記憶が飛んでるかも……？」
「そうか……ふむ。まぁ、あとで思い出すかもしれぬしの。しかし痛い思いをさせたのは謝るのじゃ。妾の一曲、聞いていくと良い」
　と言いつつ、戀は『星雲の儚き光』のメロディを奏でて、彼女の心も癒すが如く、回復。
　そして……彼女の傷もしっかりと癒し、終わった所で。
「大丈夫そうでござるね！　でももう夜も遅くなってしまってるでござるから、注意してホテルまで帰るでござるよ！」
　とマーシャが元気づけるように声を掛けて、彼女を送り出す。
　そして……彼女がいなくなった後に、結里花は。
「ふぅ……終わったっすね。皆さん、お疲れ様っす」
　と汗を拭いつつ、笑顔を浮かべる彼女に、聖一と葵依が。
「ああ……結里花もお疲れ様だ」
「そうだな……中々大変だったが……無事に終わったな」
　と頷き合う。
　そして、攻性植物の残した痕跡などがないかを一応、確認するが……特に、残した者などは無く。
「仕方ないな……まぁ、自然破壊をし続ける限り、あいつらから仕掛けてくるだろうしな……ククク」
　笑うペルに、マーシャも。
「そうでござるね！　でも、出来れば早く始末を付けたいところでござるよ！」
　と、宿敵に対する闘志を拳に込めつつ……ケルベロス達は、その場を後にするのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年12月24日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 2
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