聖夜略奪~Xmas防衛戦

作者:天川葉月

●それは星降る夜の出来事
「もっと奮発しとくべきだったかなぁ。せっかくのクリスマスなんだし」
 とあるワンルームマンションの一室で、女子大生が鏡で身嗜みを確認していた。
 今年はクリスマスイブが日曜日ということもあり、最近付き合い始めたばかりの彼と初めてのデートを彼女は心待ちにしていたのだ。
 しかし、突如として彼女の背後で魔空回廊が開き、四体の機械天使が現れる。その姿が鏡に映りこんでいるが、女性は鏡に映っている自分の姿を確認するのに夢中で気が付いていない。
 そのうちの一体が彼女の腕をつかむと、悲鳴を上げさせる間もなく自らの内部に引きずり込んだ。

●それは星降る夜の救出劇
「皆さん、去年のゴッドサンタ事件は覚えていますか?」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、招集されたケルベロス達に説明を始めた。
 昨年のクリスマスに解決したゴッドサンタ事件からの状況を変えるためにダモクレスの『輝ける誓約』の軍勢がクリスマスの力を利用して、ケルベロスが持つグラディウスを封じる作戦を仕掛けようとしているらしい。
 クリスマスデートを楽しみにしている女性を、儀式用の特別なダモクレスである『輝きの卵』の中に閉じ込め、グラディウスを封じ込める儀式を始めるのだ。
「『輝きの卵』には戦闘能力がないので、周囲には三体の護衛ダモクレスがついているようです」
 三体の護衛を倒すことができれば、その時点で『輝きの卵』の内部から女性を救出し、『輝きの卵』を破壊することが可能となる。
 一方で、女性が『輝きの卵』に囚われた状態のまま『輝きの卵』を破壊してしまうと、女性も一緒に死んでしまうため、まずは護衛を倒すことが重要になるだろう。
「護衛は『輝きの盾』が三体、ポジションや使用する武器、グラビティはすべて共通しているようです」
 今回の敵である三体の『輝きの盾』はすべてポジションがディフェンダーで、チェーンソー剣を装備しており、コアブラスター、マルチプルミサイル、ズタズタラッシュの三種をグラビティとして使用する。
「また、被害にあった女性は一人暮らしで、待ち合わせの時間よりかなり前なので、戦闘前に一般人が現場に近寄ることはないと思われます」
 ただ、同じマンションの何部屋かは、クリスマスを一人で過ごしている住民がいるようだ。
「儀式が終了すると『輝きの卵』は自爆して、そのエネルギのすべてをグラディウスの封印に使うようです。閉じ込められている女性は確実に死んでしまうでしょう。
 女性のためにも、必ず卵は破壊しなければなりません」


参加者
赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)
クロノ・アルザスター(彩雲のサーブルダンサー・e00110)
クロハ・ラーヴァ(熾火・e00621)
ユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)
海野・元隆(一発屋・e04312)
上里・藤(黎明の光を探せ・e27726)
桔梗谷・楓(オラトリオの二十一歳児・e35187)
マリー・ビクトワール(ちみっこ・e36162)

■リプレイ

●それは星降る夜の防衛戦
 クリスマスイブの夜に、ケルベロス達は現場のマンションに突入する。
 突入してすぐにクロノ・アルザスター(彩雲のサーブルダンサー・e00110)は一般人が入って来ることができないようドアの前にキープアウトテープを使用する。
「一人でも多くの人に良いクリスマスと新年を迎えてもらいたいものだもの。絶対にしくじれないわね」
 突入前に周辺住民に避難を促していたユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)は、ダモクレスの犠牲者を出さないために自分のできる限りのことをしようと考えていた。
「折角のクリスマスです。幸せになってほしいですし、必ず助け出しますよ」
 彼女の決意に赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)は同意する。恋を部外者に台無しにされるなどということはあってはならない。
「やれやれ、クリスマスだってのに、この前のハロウィンといいデウスエクスってのはつくづくイベントを狙い撃ちにしてくるな。読みやすいのはいいが、巻き込まれる方はいい迷惑だろう」
 と、海野・元隆(一発屋・e04312)はこぼした。
「存外ダモクレスという軍団は少し思考回路に問題があるのかもしれませんね」
 彼に同調し、クロハ・ラーヴァ(熾火・e00621)はこんな年の瀬まで仕事をさせられる身にもなってほしいと思っていた。
 上里・藤(黎明の光を探せ・e27726)は昨年のクリスマスの事件を思い出していた。グラビティチェインが足りずにただの的となったゴッドサンタ。それからもらったプレゼントはありがたく使わせてもらっている。
「その悪行をやめるのじゃ!」
 マリー・ビクトワール(ちみっこ・e36162)は勢いよく指をつきさし物申す。身勝手な目的のために女性の恋心を引き裂き、利用するという行為に対して。
「クリスマス前にリア充爆発させようってか? リア充爆発させる前にお前らが爆散しやがれ!」
 と、桔梗谷・楓(オラトリオの二十一歳児・e35187)が合わせて言う。そこには今後自身がそうなるかもしれないという強い希望があった。
「爆発は、敵だけでよいのぅ……。爆発させられる側になった時が嫌じゃ」
 と彼女は言った。
 三体の『輝きの盾』は『輝きの卵』を守る壁となるべく立ちふさがり、ケルベロス達の行く手を阻んでいる。
 起爆へのカウントダウンが始まろうとしていた。

●それは星降る夜の攻防戦
「あーだめだめ! クリスマスはカップルが幸せになる時期なのよ! こんな不幸な事件、絶対に許さないわ!」
 クロノはブレイブマインを起動させ、仲間たちを支援する。自分に恋人はいないが、今日くらいはカップル達が浮かれていてもいい。
 楓は雷の壁を構築し、仲間の異常耐性を高める。守りを固める盾が三つも存在する為に長期戦が必至になるとはいえ、卵がいつ爆発するかわからない。早急な決着が望ましいが、そのためには相手の妨害に対抗しなければならないのだ。
 いちごは魔力を込めた瞳で『輝きの盾』たちを凝視し、同士討ちを誘う。『輝きの盾』のうちの一体がチェーンソー剣をもう一体の『輝きの盾』に振り下ろし、襲い掛かられた『輝きの盾』も応戦する。
「早々に退場願いましょう。降誕祭には似つかわしくない客人だ」
 その隙をついてクロハは口から炎の息を吐き、同士討ちをしているダモクレスたちを焼き払った。火の手が『輝きの卵』には届かないように調節しながら。
「間違って卵を割らんようにの!」
 と、マリーは地獄の炎を大斧にまとわせて残る一体の『輝きの盾』にたたきつけながらいった。盾をまとめて破壊するのはいいが、卵まで巻き添えになってしまっては女性も道連れになってしまいかねない。
(「あの子の時とは違う……それでも。私の前では、二度とさせないッ」)
 ユスティーナは同士討ちせずに前へ出ている『輝きの盾』に、心の中で歌を響かせながらナパームミサイルで攻撃する。身内がダモクレスに改造されたこともあって、今回の被害者を見過ごすわけにはいかない。
 藤は如意棒に紅蓮の炎を装填し、前に出ている『輝きの盾』の剣戟をいなしつつ一撃を加える。後で修復するとはいえ、できる限り部屋に損害を出さないように気を付けながら。
 その前に出ていた『輝きの盾』はにわかに動きを鈍らせる。結果的に同士討ちをしている二体をかばったために損傷が大きいからだ。
「そら、お迎えだ」
 元隆はとどめと言わんばかりに彷徨える幽霊船を繰り出し、弱った『輝きの盾』を押しつぶす。そこには、どこから見ても再起不能なスクラップがあった。
 残る『輝きの盾』は二体。
 卵が爆発する瞬間も着実に近づいていた。

●それは星降る夜の包囲網
 同士討ちをやめた『輝きの盾』二体はそろって胸部を変形展開させ、発射口を出現させる。そしてそこから眼が眩むほどのエネルギー光線が放たれた。
「私の力を貴方に。聞いてください、この歌を」
 いちごは与えられた快楽エネルギーを歌声に乗せ、傷を負った仲間に癒しを与える。
「さて、機械にもトラウマがあるものやら。試してみましょうか、ねぇ?」
 クロハは目の前にいる『輝きの盾』に、煉獄宿す瞳の奥を覗かせる。奈落の底の目はそれを覗き込んだ『輝きの盾』の運命を見せた。
 恐怖を焼き付けられた『輝きの盾』は動きを止め、小刻みに震えだす。
 動きを止めた『輝きの盾』にユスティーナは破鎧衝を与え、確実に破壊する。
 二体目の『輝きの盾』も機能停止に追いやられた。
「わらわの必殺技受けてみるのじゃ!」
 マリーは残る『輝きの盾』に対し自慢愛用の斧を力いっぱい振り下ろす。
「その斬風には気を付けろよ。…痛ぇじゃ済まねぇぜ?」
 追撃として楓も敵を容赦なく切り刻む風を巻き上げる。
「畏れろ」
 とどめに藤は最後の『輝きの盾』に台風のエネルギーを凝縮した蹴りを放つ。膨大な風と水による大破壊は、機械製の盾にとっては致命傷に他ならない。
 三体目の『輝きの盾』が機能を停止し、残る敵は無防備となった『輝きの卵』だけ。
「今助けるわ!」
 クロノが『輝きの卵』に囚われている女性に手を差し伸べ、引きずり出した。
 これで憂いはなくなった。盾をなくし、中身も取り出された卵は、たやすく割られる。
「いっちょあがりっと。護り手を置くのはいいが、守るだけじゃ勝てんよな」
 最後に元隆が『輝きの卵』に、ダモクレスたちの敗因を告げた。

●それは星降る夜の恋物語
「それでは、私はこれで」
 クロハは救助した女性と現場となった部屋にヒールを使用し終わると、速やかに帰還した。常に冷静沈着な彼女は戦闘の跡の余韻も残さず事務的に立ち去る。
「しかし、グラディウスを封じるやり口があるっていうのは問題ね。すべて防ぎきるしかないわけだけれど……。来年も暇はなさそうね」
 周辺の修復を終えたユスティーナは今後のダモクレスの動向にある種の不安を覚えていた。また似たようなやり口で行動を起こすのではないか、という懸念が。
「そうかもしれないッスけど、今はクリスマスを楽しみましょうよ」
 と藤は笑いかける。ダモクレス討伐のために駆り出されたが、だからといってクリスマスを祝わない道理はない。降誕祭はこれからだ。
「無事でよかったです。楽しいクリスマスを過ごしてくださいね♪」
「はい♪」
 いちごが救助された女性にアイドルスマイルを向けると女性も笑みを返し、部屋を後にする。その足は恋人との待ち合わせ場所に向かっていた。
「やれやれ、やっと終わりか。んじゃ、一杯行くと……」
「さー! 私達もクリスマスパーティの準備をやらないと。元隆さん! 飾りつけ手伝ってね」
「あ、店の方か? 仕方ないな、まぁもうちょっと動いたぐらいの方が酒も回りやすいか」
 クロノは常連を誘い、パーティの会場へ向かう。
「終わったようじゃな。楓殿、わらわ達も町に出発じゃ」
「……! 案内は任せろ!」
 マリーからの思わぬ誘いに、急激に心拍数が上昇した楓は、エスコートを名乗り出て彼女とともに町へ繰り出した。
 それは星降る夜に起きた出来事。
 願わくば、ケルベロス達によって守られたこの幸せが末永く続きますように。

作者:天川葉月 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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