聖夜略奪~邪なりし輝きの

作者:洗井落雲

●2017年12月24日
 クリスマスイブ。
 多くの人にとって特別な日。
 2017年の今年は日曜日という事もあり、多くの人々が、その幸福に浸る事となるだろう。
 例えば、この少女もそうだ。
 村山加奈。年齢は14。幼馴染の少年に、今年の頭に告白し、めでたくその想いは成就した。
 今年のクリスマスイブは、二人きりで――そう、家族ぐるみの付き合いはあったが、二人きりと言うのは初めてだ――過ごす、初めてのクリスマスイブ。
 特別な、二人だけの記念日。
 小遣いで手に入れた、出来る限りの化粧品とアクセサリを身に着けて、今日のデートに備えていた。
 そんな彼女の家、その上空。
 突如として空間が裂け、四つの影が現れた。
 それらは一見、機械仕掛けの天使にも見えた。
 だが、その本質は、天使と言うものからはかけ離れている。
 人類の敵――デウスエクス、ダモクレスだ。

 数分後。
 村山加奈は、4体の機械天使の内、1体の身体の中に捕えられていた。
「ワレラのシメイは、クリスマスがオワルまで、このバを守護スル事ナリ」
 機械天使が、言った。
「さすれば、ゴッドサンタのハイボクの証、ケルベロスのグラディウスを封印できるだろう」
「この女から、クリスマスの力を絞りダシ、絶望にカエルのだ」
「絶望ヲ!」
「絶望ヲ!」
 おうおう、と機械天使たちが声をあげる。
 少女は囚われのまま、救いの手を待つことしかできない……。

●クリスマスイブ作戦
「めでたい日だというのに、実に非道な事をやってくれるものだな」
 アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は頭に手をやりながらぼやいた。
 昨年のクリスマスに発生したゴッドサンタ事件を覚えているだろうか?
 この事件を解決した結果、ケルベロスは『グラディウス』という兵器を獲得、ミッション破壊作戦を実行できるようになった。今年だけでも多くのミッション地域を解放する事が出来ており、着実に成果をあげている。
 とは言え、デウスエクス側も、ただ黙って事態を見ていたわけではないようだ。
「地球に潜伏していたダモクレス潜伏略奪部隊、『輝ける誓約』の軍勢が、クリスマスの力を利用して、ケルベロスが持つグラディウスを封じようとしているようだ。被害者は、クリスマスデートを楽しみにしている女性だ。連中は儀式用の特別なダモクレス、『輝きの卵』に被害者女性を閉じ込め、グラディウス封印の為の儀式を行うらしい。儀式の最後には、被害者ごと爆発し、グラディウス封印の儀式は完了だ。……リア充爆発しろ、とはよく言うジョークだが、実際に爆発するなどシャレにもならない」
 事件現場となるのは、お昼少し前の住宅街だ。ダモクレスが現れたため、付近の住人は避難している。
 既に警察が出動し、辺りを封鎖しているため、避難誘導などは必要ないだろう。
 敵は総計4体。ただし、『輝きの卵』には戦闘機能はないため、実質的に戦うのは護衛となる3体となる。
 1体目は、『輝きの斧』と呼ばれる個体。前衛――ケルベロスで言う所の『クラッシャー』に位置し、装備した一振りの斧は、ケルベロス達も扱う『ルーンアックス』に非常によく似た性能をしており、グラビティも同じ性能の物を使用することが予知されている。
 2体目は『輝きの城』。こちらは防御に特化した個体で、いわゆる『ディフェンダー』に位置する。『バトルオーラ』のようなオーラを纏い、グラビティもバトルオーラのようなものを使ってくる。
 3体目の『輝きの鞭』は『ジャマー』、このチームのまとめ役のようだ。『ケルベロスチェイン』と同等の武器を持って居る。当然、グラビティもそれに近い物を使ってくるだろう。
「この3体を倒せば、輝きの卵に囚われた少女を、問題なく救出できる。救出後、輝きの卵を破壊してくれ。くれぐれも、救出前に輝きの卵を攻撃しないようにな。中の少女にダメージがおよび、死んでしまう可能性がある。護衛を残したまま少女を救出するのは非常に困難だから、素直に護衛の3体を倒してしまった方が楽だろう。そうそう、幸い、少女には怪我はない。救出後にヒールでもかけてやれば、すぐに元気になるだろう。せっかくの記念日だ、無事に助けて、デートに送り出してやってほしい」
 アーサーはふむん、と唸り、
「人の恋路を邪魔するダモクレスは、ケルベロスに噛まれてなんとやら、だ。君たちの無事と、作戦の成功を祈っているよ」
 そう言って、ケルベロス達を送り出したのだった。


参加者
ミチェーリ・ノルシュテイン(青氷壁の盾・e02708)
リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)
空飛・空牙(空望む流浪人・e03810)
ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
ウォリア・トゥバーン(獄界の流浪者・e12736)
レイン・プラング(解析屋・e23893)
八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)

■リプレイ

●聖なる日の戦い・ケルベロス編
 ヘリオンから降下したケルベロス達は、現場の封鎖を行う警官や、やじ馬たちの歓声を受け、現場へと向けてひた走っていた。
「――みつけた、のです!」
 八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)が叫んだ。被害者となった少女、村山加奈の自宅。その門前に、さも当然のように居座る四つの機械天使の姿。
「ケルベロス、カ!」
 機械天使のうち一体、輝きの鞭が言った。
「噛みつきに来てやったぜ? 全く、面倒で迷惑な連中だぜ」
 空飛・空牙(空望む流浪人・e03810)が言いながら、首にかけたヘッドホンを耳にかける。彼が戦闘態勢に入った事を意味していた。
「馬に蹴られて、とか随分生ぬるいという事を教えてあげよう。変身!」
 ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)がバトルベルト、『プリズムファクター』にグラビティを送る。『チェーンキー【虹彩】』をかざすと同時に、プリズムファクターが変形。突き出された左手には、虹色の鎖が巻き付き、燃え上がるかのようなグラビティが彼の身体を包み込んだ。
「クリスマスの幸せ、それを滅茶苦茶にしようだなんて、絶対に許さないからっ!」
 リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)がケルベロスチェインを構える。
「元ハ、貴様ラ……ケルベロスガ、我ラノグラディウスヲ簒奪シタノガ原因、ヨ!」
 輝きの鞭が笑いながら言うが、
「それはあなた方の手落ちでしょう」
 さらり、と、ミチェーリ・ノルシュテイン(青氷壁の盾・e02708)が、冷静に切り返す。
「いずれにしても、あなた達の行動を正当化する理由にはなりません。聖夜に相応しくない天使もどきには、即刻ご退場願いましょう」
「そうです。グラディウスを封じる、それ以上に、聖夜を汚す行為、許される事ではありません」
 と、レイン・プラング(解析屋・e23893)。
「素敵なクリスマスを台無しにして、絶望に染め上げようなんて……絶対に許さないよ!」
 ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)が、続ける。
「ナラバ、チカラズクデ、止メテミルガイイ!」
 輝きの鞭の言葉に従い、輝きの城、輝きの斧が構えた。
「……元より、そうするつもりよ」
 地獄化した右目から炎を吹き出し、ウォリア・トゥバーン(獄界の流浪者・e12736)が言った。
「ではその邪なる願い……不死の理ごと我が地獄に焼べてやろう」
 その言葉を合図に、ケルベロス達の戦いは始まった。

●破城攻撃
 ケルベロス達がその役割に基づき戦うように、ダモクレス達も、各々に役割を持って戦列を組んでいたようだ。
 敵の攻撃を受ける盾としての役割を持つ輝きの城。
 敵への攻撃に専念する輝きの斧。
 そして他二体のサポートを行う輝きの鞭だ。
 ケルベロス達は、まず盾を破壊する事を選んだ。盾の役割通り、タフな敵である輝きの城ではあったが、これを撃破すれば、そのまま一気に敵を追い込める可能性もあるのだ。
「うにゃーなのです!」
 あこの獣の拳による鋭い一撃が、輝きの城の装甲に深く傷をつける。あこのウイングキャット、『ベル』は主人に続き、羽ばたき、清浄なる風でケルベロス達を浄化する。
 盾に攻撃を集中するという事は、敵の戦法をそのまま受けるという事ではあるが、そんなことは、ケルベロス達にとっても織り込み済みだ。それより、盾役を放置して中途半端にダメージを分散させてしまう方が、余計に戦闘を長引かせてしまうだろう。そして今回の場合、それは正しい判断だったと言える。
 あこの攻撃により、たまらずよろける輝きの城。恐らく、限界が近い。そして、常に敵の動きを観察していたレインは、その動きを見逃さない。
「恐らく輝きの城は限界です! 皆さん!」
 レインの叫び。真っ先に動いたのは、ミリムだ。
「一気に畳み掛けるよ! クー!」
 ミリムの声かけに、
「ああ、せっかくのデートに遅刻させたら可哀想だ!」
 空牙が応えた。ミリムの役割はメディック、回復役ではあったが、現在の味方の状態から、攻撃へと転じられると判断。輝きの城への一撃を優先とした。
 ミリムがゾディアックソードを構え、走る。それを追うように、空牙もまた、ドラゴニックハンマー『異装旋棍【銃鬼】』、そして如意棒『異装旋棍【斬刹】』を構え、走る。同時に、空牙の姿がぶれ、次の瞬間にはその姿が複数に分身。どれが本体であるのか、わからぬまま、その姿は一斉に掻き消える。と、
「その絶望はボクのモノだ……! 裂き咲き散れ!」
 先にグラビティを繰り出したのは、ミリムである。ミリムの剣が緋色の闘気を纏い、輝く。繰り出される刃の軌跡は、さながら緋色の緋牡丹を描くように。輝きの城の装甲を鮮やかに切り裂く。
「そんじゃ……その存在狩らせてもらうぜ? 悪いが悪く思うなよ機械天使!」
 ミリムが離脱した次の瞬間、目の前に現れたのは空牙だ。あらゆるスキルを応用し、姿を消して現れる、『正面からの不意打ち』。両手の獲物を次々に繰り出し、輝きの城に叩きつける。
 『緋牡丹斬り(ヒボタンギリ)』。そして『螺旋不意討重(ラセンフイウチガサネ)』。連続で放たれた2人のグラビティは、輝きの城を文字通りに粉砕。城は崩れ去った。
「バ、馬鹿ナ!」
 うろたえる輝きの鞭。
「今日は、恋人たちの幸せな日、大切な日なんだよっ! それを邪魔するなんて……っ!」
 鋭い蹴りを輝きの斧に叩き込みつつ、リディが叫ぶ。
「絶対にぜーったいに、許せないんだからっ!」
「ソノ、クリスマスノチカラコソガ、我ラノ儀式ノ糧トナル!」
 そう言い放つ輝きの鞭へ、
「幸せは、あなた達が利用していい物じゃないっ! それに、それを奪う権利なんて、誰にもないっ!」
 リディが返す。次に動いたのは、ライゼルだった。
「クラヴィク!」
 自身のライドキャリバー、『クラヴィク』へ、ライゼルが声をかける。主人のもとに駆け付けたクラヴィクは、ライゼルを乗せると、輝きの斧へ突撃。
「……ライダーァー……パンチ!」
 オウガメタル、『メタル・チェインボルト』をその身にまとい、繰り出される必殺の拳が輝きの斧へ叩き込まれる。吹っ飛ぶ輝きの斧へ、クラヴィクが炎を纏い、追撃の体当たりをぶち込んだ。
「人々の幸せな時間を踏みにじる……悪趣味にもほどがあります」
 ミチェーリはパルバンカーを構え、輝きの斧へ肉薄する。
「馬に蹴られて……ケルベロスに噛まれて……色々ありますが、私の場合はこうです」
 装填されるは、グラビティにより生まれた氷の杭。撃ち放たれた氷の杭は、輝きの斧の装甲をぶち抜いて、内部深く突き刺さった。
「氷柱に刺されて、砕け散りなさい」
 ミチェーリのグラビティ、『сосулька(サスーリカ)』。それにより生じた氷の杭は、その役目を終え砕け散った。その様は、まるで輝きの斧の内部から、輝く氷の鮮血がほとばしるようでもあった。
「天に輝く凶星を見よ……オマエに死を告げる赫赫たる星こそが我……」
 その目に地獄の炎を燃やし、ウォリアが輝きの斧の前に立ちふさがる。
「……来たれ星の思念、我が意、異界より呼び寄せられし竜の影法師よ」
 呟きと共に、ウォリアの足元より火柱が生じる。四方八方へ飛び散ったその火柱は、その内より、様々な武器を持ったウォリアの分身が複数現れた。
 『戦神竜皇・翔崇星影ノ断(センシンリュウオウ・ショウスウセイエイ)』。現れた分身たち、そしてウォリアは、一斉に輝きの斧に向かって駆け出す。
「……さぁ、オレ/我がオマエを此処で殺す……終焉の時は、来たれり」
 その双眸より地獄の火炎を吹き出しながら、ウォリアたちの一斉攻撃が開始された。
 斬りつけ、すりつぶし、打ち貫き、殴り飛ばす。ありとあらゆる暴力の奔流。
 数秒の攻撃の後、ウォリア分身たちが灰となって崩れ去った後には、その機能を完全に破壊された、輝きの斧の残骸が残るのみ。
「ナ、何故ダ!? 貴様ラ、ドコカラ、ソンナチカラヲ……」
 悲鳴に近い叫びをあげる輝きの鞭へ、
「……あなたの所業が許せないから、です」
 レインが言いながら、グラビティの弾丸を放つ。
 思わず回避行動をとる輝きの鞭。だが、その先に、レインがいた。
「幸せ……という気持ち。私にはまだわかりません。ですが、それは、とても大切なものだと教えてくれた人がいます。そして、私達、ケルベロスはそれを守る者です。だから」
 ナイフの刃がきらめいた。輝きの鞭の装甲に、深い、深い傷がつく。
「それを踏みにじるものを、私達は絶対に放ってはおかない」
 『Laplace's territory(ラプラス ノ リョウイキ)』。敵の回避パターンを完全に読んだレインの攻撃から逃れられる者はいない。
「オノレ! オノレ、オノレェ!!」
 ヤケになった輝きの鞭が、手にした鞭を全方位に向けて打ち放つ。だが、そんなものはもはや悪あがきに過ぎない。
「今日のような幸せな日に、あなたのような偽者天使はおよびではないのです!」
 あこが手にした『にゃんこぬいぐるみ』をかざした。にくきゅうをぷにっ、と押すと、
「にゃーん」
 ぬいぐるみが鳴いた。
「人の幸せを邪魔する悪い奴は……にゃんこに鳴かれてどっかん、なのです!!」
 あこがそう言うと同時に、輝きの鞭に貼り付けられていた見えない爆弾が爆発。
「馬鹿……ナ……」
 断末魔の叫び声も、爆音に紛れて消えて行った。
 あこが持つにゃんこぬいぐるみ。
 爆破スイッチであった。
「護衛は倒しましたね……後は」
 ミチェーリが言う。
 そう、まだケルベロス達のやる事は残っている。輝きの卵に捕えられた少女を救出しなければならない。
「任せて!」
 ミリムが叫び、飛んだ。
 輝きの卵の腹部、カプセルを破壊する。少女を捕えていた拘束具を引きちぎり、ミリムは少女を抱きかかえ、再び飛ぶ。
 距離をとり、着地したミリムは、少女の様子を確認した。予知通り、ケガや衰弱はない様だ。
「こっちは大丈夫だよ! 皆!」
 ミリムの言葉に、
「最後のトドメだ、一気に行こう!」
 ライゼルが頷き、叫んだ。
 ケルベロス達は武器を構え、一斉にグラビティを叩き込んだ。
「絶望ヲ……絶望……ゼツ……ボボボボボ……」
 ケルベロス達の一斉攻撃を受けた輝きの卵、うわごとの様な言葉を繰り返しながら、その身体を爆発四散させた。
「たーまやー……というのは、ちょっと違うのですかね?」
 あこが言いながら、小首をかしげる。
「それでは季節外れですね」
 ミチェーリが冗談なのか、真面目なのかわからない、冷静な表情で言う。
「花火じゃないんだから……」
 リディが苦笑しながら言った。
「とりあえず、これで事件は解決だねっ。後は……」
 そう言って、リディは、ミリムの腕の中で眠る少女へと視線を移した。
 戦いは終わり。
 次は、恋する乙女を、幸せな戦場へと送り届けてあげなければならない。

●聖なる日の戦い・少女編
 村山加奈が目を覚ましたのは、周囲を飛ぶドローンの音によってだった。ミチェーリのヒールドローンである。
「あれ……私……」
 まだどこかぼんやりしている様子の加奈へ、
「助け出したところだけど大丈夫?」
 同じくヒールをかけていた、ミリムが声をかける。その言葉に、加奈は、はっとした様子で、
「そ、そうだ、私……」
 襲われた事を思い出したのだろう、呟き、表情が青ざめていく。
「災難だったね……でも大丈夫。デウスエクスはボクたちがやっつけたよ。それに、本番はここからだよ、頑張れ!」
 ライゼルの言葉に、加奈は小首をかしげた。
「デートなんだろ? まぁ、難しいとは思うが切り替えて出掛けてくれ」
 けらけらとした表情の空牙の言葉。そうだ、と、加奈は慌てた様子で立ち上がった。
「ちょっと待って……大事なデートなんだよね。身だしなみは……はい、コレでいいね」
 ミリムが言って、笑う。
「景気づけに存分にベルをもふもふしてから行くと良いのです!」
 むふー、と得意げに笑うあこが、ベルを抱いて差し出す。おずおずと手を伸ばす加奈。ベルの頭を撫でながら、
「あ、ありがとうございます……えっと、猫のウェアライダーさん……?」
「にゃー、猫ではないのです、虎なのです……でも許すのです! 今日は特別な日なのですから!」
 ちょっとしょんぼり、でも気持ちを切り替えて、あこは笑う。
「幸福の光がお前を待っている。人の子よ、汝の願う幸せがあらん事を」
 いつもの表情で、しかし声音は穏やかに、ウォリアが言う。
「貴女の幸せ、きっと掴んでねっ♪」
 リディが笑って、手を振った。加奈は嬉しそうに頷くと、ケルベロス達に一礼してから、駆けて行った。向かう先には、今日の事件を吹き飛ばすような幸せが待っているだろう。
「……行っちゃったね。……なあ、こっちもこれからデートとかどう……だ?」
 おずおずと、空牙へ尋ねるミリムに、
「そうだな。せっかくのクリスマスだ。どっか遊び行って見るか」
 と、空牙は笑いながら返した。
「オレは、一足先に、帰らせてもらう」
 ウォリアは言うや、その翼を羽ばたかせ、空へと消えて行った。
「ゆっくりして行けばいいのに」
 ライゼルが苦笑しつつ言うのへ、
「彼なりの、クリスマスの過ごし方なのでしょう」
 ミチェーリが言う。
「そうですね。色んな過ごし方があって、色んな幸せがある……ですよね?」
 穏やかに笑うレイン。
「うんっ♪ 今日は特別な日。皆が幸せになれる、素敵な日なんだからっ♪」
 リディの言葉に、その場にいたケルベロス達は、笑顔で頷いた。
 そう、今日は特別な日。すべてのケルベロス達に。すべての人々に。
「メリークリスマスなのです!」
 あこが叫んだ。
 願わくば、世界中の皆に幸福を。
 その想いは、きっと多くの人々に届くはずだ。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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