聖夜略奪~響き渡る叫び、ふざけるな、放せぇぇ!!

作者:ほむらもやし

●叫び
「ふふふ、まずは水族館。そして食事、酒を飲んで、それから、それから先はお楽しみ!」
 クリスマスイブを控えたこの日、その女子にはすごい気力が漲っていた。
「でも、慌てず、がっつがずに、慎重に、身だしなみは大事大事……」
 おつきあいを始めてから、初めてのクリスマスイブ、今日はきっと特別な日になるに違いない、そんな妄想をしながらデートの準備を進めて暫し……。
「ワレラのシメイは、クリスマスがオワルまで、このバを守護スル事ナリ」
 その女子は突如現れた白銀の鎧を纏った機械天使の軍勢に、取り押さえられる。
「ちーがうーまちがいだー、やめろー! 放せってんだよ!!」
「この女から、クリスマスの力を絞りダシ、絶望にカエルのだ」
「さすれば、ゴッドサンタのハイボクの証、ケルベロスのグラディウスを封印できるだろう」
 果たして、激しい抵抗虚しく、幸せな想像に胸躍らせていた女子は、輝く卵の中に閉じ込められてしまうのであった。

●ヘリポートにて
「地球に潜伏していたダモクレス、潜伏略奪部隊『輝ける誓約』の軍勢が、クリスマスの力を利用して、ケルベロスが持つグラディウスを封じようと作戦を仕掛けてくることが分かった」
 緊急事態を告げた、ケンジ・サルヴァトーレ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0076)は、状況の説明を始める。
「クリスマスのデートを楽しみにする女性の前に魔空回廊を使って現れた敵ダモクレスは、儀式用の特別なダモクレス『輝きの卵』に、女性を閉じ込め、グラディウスを封じ込める儀式を開始している。今回の目的は儀式の阻止だ」
 女性を閉じ込めている、『輝きの卵』自体には戦闘力は無いが、破壊すれば女性も一緒に死んでしまう。
「女性を助けるには、護衛についている、先に、3体の護衛ダモクレスを倒さなければならない。3体の護衛を倒した後に、『輝きの卵』の破壊という手順になる。順序を間違えば、儀式の阻止はできても、女性を殺してしまうことになるから気をつけて」
『輝く卵』を守る、『輝ける誓約』の軍勢の3体は輝きの城とも呼ばれる。
 3体ともディフェンダーのポジションを取り、防御力を生かした打撃を中心の戦術を取るようだ。
「現場となるのは高級なマンションの中層階の一室、住民の防災意識は高く、よく訓練されているから、的確な避難指示をすれば、5分以内に全室避難が完了できる。頑丈な建物だから、そうそう倒壊はしないと思うよ」
 避難指示については、管理人室に一言告げてから、部屋に向かえば、後は普段の訓練通りの手順で上手くやってくれるから心配は無い。
「それから、救助に成功したとしても、デートの約束の時間までの猶予は僅かだよね。支度も出来ていないと思うし……、一年に一度しかない大切な日、よかったらそこまでフォロー出来れば完璧だと思うよ」
 なお『輝ける誓約』の軍勢による、儀式が終了すると、輝きの卵は自爆して、閉じ込めた女性の命を奪うと共に、そのエネルギーの全てを、ケルベロスたちの持つグラディウスの封印に向けると見られる。
 気にするところが多くて難しいけれど、頑張って下さい。ケンジはそう締めくくると丁寧に頭を下げた。


参加者
ヒスイ・エレスチャル(新月スコーピオン・e00604)
キサナ・ドゥ(イフェルスの信管・e01283)
小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)
アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)
モンジュ・アカザネ(双刃・e04831)
八崎・伶(放浪酒人・e06365)
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)
朝影・纏(蠱惑魔・e21924)

■リプレイ

●突入
 ベルの音と放送で避難指示が伝えられる緊迫した雰囲気の中、一行は現場の部屋に到着した。
「それでは、ゆきましょう」
 アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)が、かけ声と共にドアを開け放つと、タイマーのアラームを3分にセットした、八崎・伶(放浪酒人・e06365)を先頭にして、一行は突入を開始する。
 中は広く、柱もドアも壁紙も、あらゆる物が高級感のある作りとなっている。分譲時の価格を想像すると、ここは被害者の一人暮らしではなく、被害者の実家であると予測できる。即ちこの国ではリア充としてクリスマスを迎えるには、ある程度以上の、時間と金銭的な余裕が必要なのかも知れない。ヒスイ・エレスチャル(新月スコーピオン・e00604)は、刹那に、そんな感想を抱きつつ、その小さな幸せの続きを見させてあげたいと願い足を進める。
 果たして、部屋の奥の方では、来襲に気づいた敵が待ち構えていた。
「ワレラのシメイは、クリスマスがオワルまで、このバを守護スル事ナリ、引キ下ガラレヨ!」
 言い放つと同時、機械天使は砲身を水平に向けて、発砲した。
 砲弾の直撃に先頭を行く伶の身体が氷炎に包まれて後ろに吹き飛んだ。
 ディフェンダーは2人のはずだったが、フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)の到着が遅れている。ヒスイと入れ替わるように前に出た、朝影・纏(蠱惑魔・e21924)とアジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)が左右に分かれ、まず纏が攻撃を仕掛けるも、敵の防御に阻まれる。続いて、アジサイが加速と共に敵陣に突っ込んで、その隊列を乱す。
 避難完了までは、あと2分、長くても3分は掛からないだろう。高層階からの避難にはエレベータも使用されているようだから、しばらくは電源関係のトラブルは避けたいところ。
「ディフェンダーのくせに、なかなか当たらないとは、やりにくいですね」
 まるで嫌がらせです。と呆れつつも、ヒスイは、事務連絡で遅れてやって来た、フローネに気がついて、道を空けた。
「当たりさえすれば、手は打てるのですが……」
「これだけ偏ってりゃあ、何かしら、しわ寄せはあるだろ?」
 言い置いて、前に踊り出ると、モンジュ・アカザネ(双刃・e04831)は、三体のうち、真ん中の一体に狙いを定め、雷の霊力を帯びた刃を突き出した。瞬間、高速の刃が鎧を穿ち、青白い光が爆ぜて、室内を稲妻が巡った。
 それと同時、コンセントから、火花が噴き出して、照明が落ちる。
 そして伶の持っていたタイマーも焼け焦げたようにして破損した。
 避難完了まで、あと1、2分と言ったところだろう。
 但し室内の電化製品は全損したようだ。ブレーカーが作動したおかげで、この部屋以外への影響は食い止められたが、今確認する手立ては無い。
「この場所から、戦いの余波が及ぶなんて、ありえないでしょう」
 外はまだ明るい。窓から入る光も有り、照明が落ちたと言っても、少し暗くなったぐらいだ。
「どうも、ただ攻撃するだけじゃあ、当てさせるつもりはなさそうだぜ」
 キサナ・ドゥ(イフェルスの信管・e01283)は、自分のポジションを確かめるようにしてから、癒術を発動すると、まずは真ん中の一体を叩きたいねと呟く。真ん中の敵は左右に大きく動きにくそうだ。また攻撃を仕掛けるにも狙いやすい。それくらいの単純な動機であったが、複数の敵と戦うに当たって、筋の通った理由に基づく脅威認識と一貫性のある行動は重要になる。
「固そうなのが、立ちふさがってるな。ても、突き破るで」
 命中の見込みは相変わらず低いが、ひとつくらいは当たるだろうと、小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)は、氷河期の精霊を召喚する。次の瞬間、薄暗い部屋の中に現れた吹雪の形をした精霊は、凍てつく嵐となって、敵陣を吹き抜けて、その全てを氷の中に閉じこめ、続けて前に踊り出た、フローネが振るうはサファイア・グレイブ、高速の回転斬撃と共に走り抜ければ、ようやく足止めを重ねることに成功する。

●攻防
 とにかく攻撃の集中が肝心だ。最初の一体を倒す為に全力を尽くす。作戦は分かり易くシンプルなものだった。
 ジャマーの繰り出す一手が機能しにくい状況は苦しいが、安定した精度を持つ後衛のモンジュを起点に、手数の多さを活かした前衛が、癒す手を持たない敵の回避力を奪い、じわじわと追い詰める形が次第に出来上がりつつあった。
 狙うは手負いの敵。
「クリスマスってのはもっと楽しむモンだろうが。デカイのが3体も集まってんじゃねぇよ」
 伶は肩幅に開いた両足で確りと床を踏み締め、直線的な突進をする巨体を受け止めた。
 巨体から溢れ出る力が次第に伶を追い詰めて行く。踏みとどまる足元からは摩擦の煙があがり焦げた異臭を漂わせる。火花が散って動き出すと同時、押し切られた身体は勢いのままに壁に叩きつけられる。
 だが、ダメージは見た目から想像していたほどでは無い。初手で繰り出したヒールドローンの加護が効いていたのもだが、そもそもの敵の攻撃力が緩い。
 例え戦いを不利にしたとしても、被害を最小限にする為なら打つ手は選ぶ。纏は常に1体の敵を狙い続けた。戦いを早く終わらせる為だけなら、広範囲に攻撃をばらまいた方が当てやすくダメージを重ねることも出来たが、戦いが終わったあとのことも考えて、私は私に恥ずかしくない丁寧な戦いをすると決めた。
「まったく、私も人が良いわね」
「同感だな。俺たちはあの女にクリスマスを楽しんで貰う為だけに、危ない橋を渡ってるんだからな」
 モンジュの絶空斬が、狙いを定めた装甲の裂け目を正確になぞり、積み重ねてきたバッドステータスを花開かせる。
 そこに反対側から突っ込んで来たアジサイが薙ぎ払う尾の一撃を放つ。それはモンジュの精密な一撃とは違う、無骨さを以て敵群の足元に襲いかかった。
 アジサイの胸の内にあるのは、シンプルな意地。
 絶望なんかいらないんだよ。希望に満ちた今日を取り戻すぞ。必ずだ。
 それがただの個人的な思いだと言うことは、アジサイ自身が一番良く分かっている。そして、余波が周囲にまで及ぶ列攻撃を使ってでも、足止めを重ねなければいけないのは、時間が無限にあるわけではないからだ。
 人の力は限られたものだ。
 何かを捨てて何かを選ばなければ、遂げられないこともある。それを認めるのは苦しいことだが、それでも一番大切な目標は成し遂げられるならば——。
「仲間も居るし、ヒールもあるんだよ。師匠直伝! 癒しの弾丸よ、彼の者を癒せ!」
 キサナの手、指先を掛けた銃爪(ひきがね)を中心に癒しの力が渦巻く。直後、放たれた弾丸は飛び行き当たると同時に榴弾の如くに爆ぜて、癒しの力を発動させる。
 ありがとう。助かります。
 重なった氷のダメージから解放されたフローネは、小さな声で言い置くと、この日、何度目かのグレイブテンペスト、高速の回転斬撃と共に敵中を駆け抜ける。
「悪戯が過ぎましたね。夢を見るのはお仕舞にしましょう」
 呟きと共にヒスイの乳白色の瞳から零れ落ちた光が、薄眩い翡翠色の光を纏う雷と変わり飛んで行く。その身に燻ぶる激情から成る雷は遂に、巨体の自由を奪い、その動きを水晶の如きに押し固める。
「さっさと終わらせてもらうで」
 限界まで意識を集中させた、真奈のエクスカリバールに、にょきにょきと鋭い釘が生え出す。見るも恐るべき凶器を化した、それを振り上げて、満身の力と共に振り下ろせば、甲高い破砕音を立てて鎧が砕け散る。
 次の瞬間、集中した意識により緩やかに感じられていた時間が元の早さで流れ出す。目の前で揺らぐ巨躯——輝きの城。そこに伶とボクスドラゴンの焔の連撃が襲いかかって、遂に、輝きの城の一体は爆散した。
 暗い室内を紅蓮の炎が吹き抜ける。
 電気が来てなくても作動する火災報知器がけたたましく鳴り響き、スプリンクラーが冷たい水を吐き出す中、左右に布陣していた敵が後方の、ベランダ側にある輝きの卵を隠すように間を詰めると、水平に向けた主砲の砲撃を開始する。
 それに機を合わせるように、前面に進出し、伶とフローネが飛来する闘鋼破弾を食い止めた。己の力のみでダメージを受けきった2人は、堪らずに膝を着く。
「ディフェンダーといえども、長期戦になれば、キツいな」
「ええまったく。ですが、何度砕かれようとも。この紫水晶の盾を、掲げ続けます!」
 直後、背中側から、キサナの歌声が聞こえてくる。それはブラッドスター。
「オレの歌を聴きやがれ!」
 生きることへの罪を前向きに捉えるメッセージが、伶とフローネ、そして前衛に立つ全ての者を癒して行く。
 刹那、輝きの卵の半身に囚われた女性の姿が見える。
 意識を奪われているのだろうか? 助けを求めることも、悪態をつくことも叶わないようだが、現時点では命に別状は無さそうだ。
「休んでいる間はありません。時間は止められませんから」
 残る輝きの城は二体。右と左で見れば、攻撃を掛けるケルベロスたちの利き腕の向きのせいなのか、右側の敵の方が傷ついているように見える。
 同時に敵数の減少は連続攻撃によるリスクの低減を意味する。故にフローネは自らを癒そうとする力を攻撃に切り替えて、現状よりも、さらに前に踏み出して、右側の敵との間合いへと飛び込んで行く。
「エメラルド姉さんの奥義―――」
 咄嗟のことに熱を帯びたままの砲身を掲げて、やり過ごそうと目論む敵。しかし、エメラルド・ソードとアメジスト・シールド発生装置の連結により生み出されたアメジストとエメラルドのビームが、フローネの剣を包む。
「全てを、断ち斬ります!」
 掲げられた砲身を力任せに絶ち斬って、二色の光を纏った剣は緩やかなカーブを描きながら、分厚い胸の装甲を斬り砕いた。甲高い音を立てて吹き飛んだ白銀の破片が曲がったベランダの柵を突き破って落下して行く。
「ったく、前に出すぎだぜ、急がば回れっていうよな」
 追撃を掛けるフローネを窘めながら、伶が突き出したのはスパイラルアーム。穿孔するドリルの刃が痛打に怯む敵をさらに追い詰めて行く。耐久力を頼りに突出しても、良い結果にはならない。もし前後を敵に挟まれれば、たちまち窮地に陥ってしまうのだから。つまり遠回りのように見えても、皆でよく話し合った役割をひとつひとつ丁寧に果たすことが勝利への一番の早道。
 そんな当たり前を行動で示す伶に、フローネは少しだけ笑みを向けた。
 次の瞬間、左からの攻撃。巨岩をも砕く拳が迫る。躱し切れず、受け身の姿勢も不完全なままに、伶はその一撃を受け止める。肋骨にヒビが入り拳圧に耐えきれずに砕ける音がして、激痛と同時に口元から血が溢れ出る。
「悪い、やっぱり急げ」
 回転を停止したドリル刃で、右側の敵を指し示して、一気に倒せと、伶は叫ぶ。
「あまり真顔で言うな。俺たちはな、デートに遅刻しようとしている女性を助ける為に戦っているようなもの、なんだからな……」
 一発も外すこと無く、冷静に敵にダメージを刻み続けてきた、モンジュの皮肉めいた言葉。そして打ち込まれた電光石火の蹴りが右の敵の膝を折らせる。
「遅刻を軽くみないで欲しいわ、年に一度のクリスマス、しかもデートなのよ」
 大上段に刀を構え、一挙に間合いを詰めた纏は、モンジュに向かってぽつりと言い置くと、自身の守りを忘れたかのように、敵を目がけて刀刃を振り下ろす。
「一念天に通ず、乙女の一念、受けるがいいわ」
 刀刃が孕んだ強大な念は呪いの如き気配と変わり、あらゆる物を絶ち切る刃となって敵に襲いかかる。
 次の瞬間、精強を誇った輝きの城の城は、乙女の怨念を受け止めることも出来ず、木っ端微塵に斬り砕かれて死んだ。
 残る敵戦力は一体。
 未だ余力を残しているものの、戦いの結果は火を見るよりも明らかであった。
「何ダト、我ラの護リが破ラレタとイウか?」
「討ち込む!」
 問答無用とばかりに、アジサイは自身が持つ最強のグラビティを叩きつけた。続けて、今までに喰らったグラビティを炎に変えて繰り出す因果応報の理——真奈の繰り出す必殺奥義が巨大な鎧を紅蓮の炎で包み込む。
「毎回、イベントごとにこういうやからが出るのは勘弁してほしいで」
 何も言わなくても、こいつさえ倒せば、戦いを終わらせられることは分かっているが、その堅さには心底ウンザリしていた。
「クリスマスだってのに、折角のクリスマスだってのになあ……! 恋人と引き離されるその辛さ、オレにはもはやわかりみしか存在しねえ! 念入りにブッ壊すぜ、輝きの城!!」
「羨ましくはない。でもさ、てめえらダモクレスのこの、空気読め無ささはむしろ凄いな……」
 怒りと呆れ、衷心から来る使命感、仁義などなど、ケルベロスたちの万感のこもった攻撃の乱舞にサンドバッグのように揺れるしか出来ない、最後の輝きの城が砕かれたのは、間も無くのことであった。
 果たして、輝く卵に到達した一行は、その体内に閉じ込められた女性を救助すると、鼻紙でも丸めるかのようにして輝く卵を破壊して、救助作戦に終止符を打った。

●戦い終わって
 気を遣ったつもりではあったが、結果として戦いがあった部屋は盛大に壊れた。
 その他の部屋はと言うと、幸いにも扉がちゃんと閉まっていたおかげか、目立った被害は無かった。
 ともあれ、いつものようにヒールを掛けると、壊れた部分は概ね元通りに修復された。
 そして目を醒ました女性——菜穂子は、すぐにでも家を出ないと約束の時間に間に合わない状況だった。
「よし気張れや。あきらめなきゃあ、なんとかなるもんやで」
 真奈はデートを諦めようとした菜穂子の背中を押す。それならば、事情の説明は移動をしながらにしようと、伶は譲歩して、モンジュの方はと言えば、後始末はまかせておけと、胸を叩く。
「ありがとうございます! このご恩は必ず——」
「急がなければいけないのは分かるけど、ちょっとだけ待って」
 ヒスイは乱れていた菜穂子の髪を軽く直して、鞄と小物をコーディネートしてみせる。すると疲れたようながさつな雰囲気は霧散して、フェミニンな雰囲気が出てくる。
「これが……私?」
 特別な日は特別な自分になってみるのも良いでしょう。そう告げるヒスイに少女のような笑みを返す菜穂子。
 そんな様子に、フローネも、キサナも、目を細める。
「よし。これは萌える。この戦い(デート)、勝てるぜっ!」
 そんなタイミングで纏の黒い携帯に着信が入る。
「頼んでおいた車が来たわ。あとはアジサイさん、頼むわね」
「来い。行くぞ」
 纏の意図を理解して、頷きで返した、アジサイは素早く菜穂子を抱きかかえると、背中の羽根を広げて、ふわりと窓から飛び出る。
 向かう先には、戦いが始まる前から、纏が手配したタクシーが待っていた。

作者:ほむらもやし 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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