聖夜略奪~聖なる夜の守護者達

作者:澤見夜行

●聖なる夜を邪魔する者
「ふふーん、ふんふん♪」
 立花聖は、彼との記念すべき初めてのクリスマスデートに向け鼻歌交じりに気合いを入れていた。
 去年は恋人がおらず悲しい思いをした。しかし年明け早々出会いがあり、一年間今日と言う日を楽しみにしていたのだ。
「こっちの服は……彼の好みだけど流石に乙女すぎよね。やっぱり、こっち! 大人っぽく綺麗目にまとめて、うふふ、彼どんな顔するだろ~」
 鏡を前にあれやこれやと想像し、破顔する。
 誰の目から見ても、幸せの絶頂という所だろうか。見ている方も顔がにやけてしまうだろう。
「いけない! もうこんな時間。はやく着替えなきゃ……!」
 時計を見て、慌てて準備を始める聖。だがその顔が一瞬にして青ざめる。
 聖の部屋に突如空間の亀裂――魔空回廊が現れる。
 魔空回廊より出でるは、機械然とした四体のデウスエクス――ダモクレスだ。
「な、なに!? いやぁ――!」
 現れた四体機械天使の内、輝きの卵と称されるダモクレスが聖を捕獲し、その腹部の球体に閉じ込めてしまった。
「ワレラのシメイは、クリスマスがオワルまで、このバを守護スル事ナリ」
「さすれば、ゴッドサンタのハイボクの証、ケルベロスのグラディウスを封印できるだろう」
「この女から、クリスマスの力を絞りダシ、絶望にカエルのだ」
 口々に決意表明をするダモクレス達は、来たるべき戦いに向け戦闘態勢をとるのだった。


「皆さんはゴッドサンタの事件を覚えているでしょうか?」
 クーリャ・リリルノア(銀曜のヘリオライダー・en0262)が資料を読みながら番犬達に訊ねる。
「私は着任前でしたので資料を読んだだけなのですが、昨年のクリスマスに発生したゴッドサンタ事件を解決した事で、私達はグラディウスを得て、ミッション破壊作戦を行う事ができ、この一年だけでも多くのミッション地域を開放する事が出来たのです」
 度重なる番犬達の活躍で、多くの作戦が成功に終わっている。
 この状況は、番犬達にとってみれば非常に良いことだが、デウスエクスにとっては許しがたい物なのだろう。
「状況を良しとしない地球に潜伏していたダモクレス、潜伏略奪部隊『輝ける誓約』の軍勢が、クリスマスの力を利用して、私達がもつグラディウスを封じようという作戦を仕掛けてきたのです」
 ダモクレスは、クリスマスデートを楽しみにする女性の前に魔空回廊を使って出現すると、儀式用の特別なダモクレス『輝きの卵』に女性を閉じ込め、グラディウスを封じ込める儀式を開始するという。
「『輝きの卵』自体には戦闘力が無い為、周囲には三体の護衛ダモクレスが私達ケルベロスからの襲撃に備えているようなのです。
 護衛ダモクレスさえ倒すことができれば、女性を救出して『輝きの卵』を撃破することが可能なので、まず皆さんには護衛を撃破することを重要視してもらいたいのです」
 護衛を倒し、どうか女性を救って下さいとクーリャは頭を下げた。
 続けてクーリャは敵の詳細情報を伝えてくる。
「輝ける誓約の三体の護衛はそれぞれ、ディフェンダー『輝きの城』一体に、ジャマー『輝きの爪』二体なのです」
 ディフェンダーはスパイラルアーム、マルチプルミサイル、そしてブーストナックルによく似た攻撃をしてくるようだ。
 対してジャマーは、両の爪で相手を捕縛する攻撃、神経を切り裂き麻痺させる攻撃、気力溜めによく似たグラビティを使うようだ。
「協力して戦ってくるので厄介な相手なのですが、しっかり対策をとって倒して欲しいのです」
 資料を置いたクーリャは番犬達に言葉を伝える。
「私も誕生日がクリスマス当日なので気が気じゃないのです。邪魔するなんて絶対に許せないのですよ」
 若干私事が混ざっているが気にせずクーリャは続ける。
「儀式が終了すると、輝きの卵は自爆して、そのエネルギーの全てをグラディウスの封印に使うようなのです。勿論爆破した場合、輝きの卵の中にいる女性は死亡してしまうので、そうなる前に救い出して欲しいのです」
 そして、とクーリャは付け加える。
「無事に救出できても恋人さんとのデートの約束まで時間の余裕がなくなってるはずなのです。可能なら、デートにいくおしゃれを手伝ってあげて欲しいのです! どうか、皆さんのお力を貸してくださいっ!」
 鼻息荒くクーリャは恋の手伝いをしろ、と言う。
「だって、ケルベロスは、恋人たちの味方なのですから! ね!」
 恋人に夢と憧れを持つクーリャは高らかに宣言するのだった。


参加者
五継・うつぎ(記憶者・e00485)
愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)
イブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)
アベル・ウォークライ(ブラックドラゴン・e04735)
水咲・玲那(月影の巫女・e08978)
輝島・華(夢見花・e11960)
詠沫・雫(海色アリア・e27940)
ユリス・ミルククォーツ(蛍狩りの魄・e37164)

■リプレイ

●聖夜の略奪者
 現場へ急行する番犬達。その中の一人、イブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)は先日解決した依頼を思い出す。
(「聖夜の親子愛の次は恋人同士の愛を護るだなんて」)
「ケルベロスってのはクリスマスも休まないんだな」
 思わず想いが口を突く。
「ふふ、ホントです。大忙しですね」
「楽しいクリスマスを台無しにするされるわけにはいかないですね」
 イブに相づちを打つ愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)と、クリスマスに想いを馳せる水咲・玲那(月影の巫女・e08978)。玲那の言葉は波紋が広がるように、仲間達に伝わっていく。
「クリスマスの素敵なデートの邪魔なんて絶対にさせません! 聖姉様を必ず助け出しましょう」
 拳を握り、力強く言うのは輝島・華(夢見花・e11960)だ。
「ええ、幸せを呼ぶ鈴の音――ジングルベルを聖さんに届けなくてはなりませんね」
 詠沫・雫(海色アリア・e27940)も華に同意するように言った。
「この国では、神様のお誕生日をお祝いする感じが全くしません、が、皆さんが幸せそうだから、きっとそれでいいのです、ええ!」
 クリスマス本来の意味を考えるミライだったが、それはそれ、これはこれと言う奴だ。人々が幸せならばそれが一番、と得心した。
「クリスマスデートですか。いいですー。ぼくはまだ八歳ですが。でもいつかきっとデートというのに行ってみたいですね」
 ユリス・ミルククォーツ(蛍狩りの魄・e37164)の言葉に、「すぐ行けるようになるさ」と仲間達が笑った。
 ユリスは思う。いつかその時が来た時、きっと誰もが祝福してくれるように、自分達はカップルを守るのだと。
「プレゼントで人を幸せにするのがサンタの役目なら、その幸せな人々を護るのが私達の役目ですね」
 ユリスの想いに同意するように、五継・うつぎ(記憶者・e00485)が言葉を紡いだ。仲間達が頷く。どんなに忙しくとも、人々の幸せを護る為に、自分達は戦っているのだと。
「ならばしっかりと守らねばな。いたぞ!」
 先頭を走るアベル・ウォークライ(ブラックドラゴン・e04735)が声を上げた。
 視線の先、一際大きな家の庭先に、四体のダモクレスが警戒態勢で待ち構えていた。
 番犬達が近づくと、ダモクレス達も番犬達に気づく。
「来たな、ケルベロス。グラディウスは封印させてモラウゾ」
「この女とトモニ、クリスマスの夜に、息絶えるがイイ!」
 奥に鎮座する、「輝きの卵」を守護するように、三体のダモクレスが立ちはだかった。
「聖夜を前に無粋な連中だ。止めるぞ!」
「年に一度の特別な日を邪魔する権利は貴方達にはありません。その企みは阻止します」
 アベルとうつぎが、ダモクレスに啖呵を切ると、爆発的な殺意が広がった。
「皆さん、敵が来ます!」
「奥の卵に攻撃を当てないように注意だぜ」
 玲那とイブが警戒を促しながら、武器を構える。
 一際大きい城砦の様なダモクレスが痺れを切らし迫り来る。
 聖夜を略奪する悪しき機械兵達との戦いが始まった――。

●聖なる夜の守護者達
 城砦を思わせるダモクレスが、その腕を回転させながら番犬達を薙ぎ払う。
 巨大差に似合わぬスピードを持ち、その装甲は厚く硬い。
 放たれる大量のミサイルの爆煙に撒かれながら、番犬達が飛び出した。
「硬い相手だけれど……」
「ダメージを蓄積させて、ですね!」
 番犬達は作戦通りに、輝きの城に集中攻撃を浴びせていく。
「集え、蒼き冷気。凍てつく刃よ、我が敵を切り裂け!」
 玲那が口に出すと、瞬間空気が凝結し武器に冷気が纏う。放つ一撃が輝きの城の装甲を断裂させ、凍り付かせる。
 反撃を受け止めながら下がる玲那に、輝きの爪、その二体が連携して飛びかかった。
「やらせません」
 輝きの爪一体に対して、うつぎが割り込み玲那を庇う。放たれる麻痺爪をその身で受け止めながら、稲妻を帯びた超高速の突きで反撃した。
 残る一体は、玲那に追いすがり、捕縛爪でその身体を引き裂く。苦痛に顔を顰めながら間合いを取る。
 玲那の経験不足をダモクレスは見抜いたのか、狙いを定めて攻撃してくる。
 番犬達は、すぐさま玲那をフォローするように立ち回る。こうした仲間を援護する動きこそ番犬の真骨頂だ。玲那もそれを理解し、仲間達が援護しやすいように自らの動きを洗練させていった。
 アベルもまた、これ以上の連携をさせないよう、敵の分断を狙った立ち位置を維持する。この動きにより、敵の連携が乱れ始める。
「それ以上はさせませんの!」
 華は巨大光弾を輝きの爪へと放ちその動きを止めると、手に持つ杖から迸る雷を輝きの城へ向け放ち、神経回路を焼き切り、その巨体の動きを鈍らせる。
 そうして敵群の動きが止まったのを見計らって、雫とミライが連携して仲間達を癒やしていく。
「ミライさんは玲那さんをお願いします。メルお願いね」
「任せて下さい! ポンちゃんもよろしくね!」
 二人はサーヴァントに指示を出しながら、的確に回復と耐性付与を行う。
 輝きの城を落とすまで、輝きの爪が自由に動き状態異常が数多く付与されていく状況ではあるが、番犬達のメディック二名体制が見事に機能し、状態異常の悉くを打ち消していった。
「たああ――ッ!」
 ユリスが飛び込み、電光石火の蹴りを見舞うと、続けざまに大地を割るような強烈な一撃を叩き込む。ぐらりと揺れる輝きの城を見るや否や、その隙を突くようにイヴとアベルが同時に飛び込んだ。
 オーラ弾を放ちながら肉薄すると手にしたナイフで敵を切り裂くイブ。そこにアベルが大鎌を振り上げ飛びかかる。
「人々の幸せを踏みにじらせるわけにはいかないな!」
 生命力を簒奪する一撃は、同時に敵の弱点をも突いていく。巨躯を覆う分厚い装甲が破断し、内部回路が露出し火花を飛ばす。
 崩れ始める城砦。うつぎが止めの一撃を狙う。
「普段ならもっと優しくするのですが。私からのクリスマスプレゼントです」
 強い力で輝きの城に組み付くと、自らが傷つくのも厭わない、全弾発射、零距離射撃を敢行する。
 轟音と共に上がる爆煙。その煙の中から、ボロボロの服を身に纏ったうつぎが、輝きの城の破片を手に現れるのだった。
 ――輝きの城を破壊した後、戦況は一気に番犬有利に進んでいく。
 要たる輝きの城を失ったダモクレスは浮き足立ち、その動きに焦りが浮かぶ。
「……こんな日にまで戦うなんて、ケルベロスも、そしてそこの機械天使さんもたいへんなのです。ねぇ、あなたは、なんのために、戦うんですか……?」
「ワレラのシメイはクリスマスが終わるマデ、この場を守護するコト。ケルベロスよ、シネ!」
 ミライの問いかけに、良好な反応は返ってこない。ミライは命じられたままに戦うダモクレスを哀れに思った。
 アベルの放つロックオンレーザーによって輝きの爪が分断される。その一体が玲那へ向け駆ける。
「儀式は行わせません! 絶対に!」
 間合いに入られるよりも前に、非物質化した残霊刀を振るい、汚染破壊する斬撃を見舞う玲那。仲間達の援護を受けながら必死に戦い、その役目を果たす。
「さあ、よく狙って。逃がしませんの!」
 玲那の一撃を受けた輝きの爪を、華が魔力で生み出した花弁で攻撃する。
 回避しようと逃げ惑う爪を追いかける花弁達。そうして追い詰められ切り刻まれたところに、華が卓越した技量によって繰り出される一撃を見舞った。
 膝をつく輝きの爪。しかしまだ戦意は失われてはいない。
「もうお休み。――恋人よ、枯れ落ちろ」
 起き上がろうとする輝きの爪に優しく口づけするイブ。
「生体回路に異常、機能テイシ――リカイフノウ、リカイフノ……」
 機械の身体にも廻る白薔薇の毒が、輝きの爪の全機能を停止させた。
「ん……、やっぱり機械は冷たくて味気ないね」
 イブは倒れる輝きの爪に呟くように言うと、振り返る事無く、残る輝きの爪に向けて駆けだした。
「恋人たちの夜を邪魔しようなんて無粋な真似、絶対にやらせません」
 雫はカラフルな爆風で味方の士気をあげると、オウガ粒子を放ち、味方の感覚を鋭敏にしていく。
 さらに雫は自ら輝きの爪へと肉薄すると、炎纏う一蹴を繰り出し蹴り飛ばす。
 吹き飛ぶ輝きの爪に、ユリスが掌からドラゴンの幻影を放ち、炎を追加する。
 追撃は終わらない。
「終わりだ――ッ! ドラゴニック・グランドクロー!」
 地を蹴り疾駆するアベルが、巨大変異させた両手の竜爪を持って虚空を切り裂く。切り裂かれた空間が歪みを引き起こし、超重力衝撃波が輝きの爪に向け放たれた。
 その細く長い爪が砕かれ、粉々になる。歪な音を軋ませながら、身体を拉げ、輝きの爪は活動を停止した。
「終わったみたいですね。あとは――」
 三体の護衛を倒し、奥に鎮座する輝きの卵へ目を向ける番犬達。
 戦闘能力を持たない輝きの卵は、聖を救出する番犬達へ反撃する事もなく、ただその場に鎮座し続けるのだった。
 聖を救出し無事を確認した番犬達は、輝きの卵へグラビティを集中し、これを破壊する。
 大きな爆発音を残し、輝きの卵もまた、活動を停止した。
 こうして、聖夜に起こったダモクレスの作戦を打ち破る事ができたのだった――。

●ジングルベルが響く夜
「ああん! どうしよう、デートの時間に間に合わないよぅ!」
 意識を取り戻し事情を聞いた聖は、番犬達にお礼を言うと共に現在時刻を見て愕然とした。
 二時間はあったはずの時間は残り一時間を切っていた。
「大丈夫、まだ間に合いますよ。私達もお手伝いします」
「大丈夫です、デートまであと一時間。ダモクレスに襲われてもなんとかなっちゃうんですから。デートも上手くいきますよ」
 玲那とユリスをはじめ、番犬達は皆でおしゃれを手伝うと聖に提案する。
 うつぎはサンタの衣装に変身し、少し赤面しながらぐっと拳を握り励ましていた。そんなうつぎを見たユリスは「サンタさんですー!!」と大はしゃぎ。子供らしい反応に皆が笑った。
「うぅ、ありがとう~」
 泣きそうな聖と共におしゃれ開始。大人の男性であるアベルは一人外で待機する。
 メイクをしながら着ていく服の選定。玲那と雫、そしてミライが中心となってあれやこれやと相談する。
 そんな面々を後ろから見て学ぶ姿勢にいるのはうつぎとイブだ。お洒落に疎いという二人は真剣に話を聞いている。
「彼氏さんとはどうやって出会ったんですか?」
 華が彼との馴れ初めを聖に聞く。それはなんともひどい出会いだったと聖は語った。
「……正直申し上げて彼氏さんにとって第一印象最悪だったのではと思うのですが、優しくて良い人そうで羨ましいですの」
 華が質問する。彼は聖のどこが好きなのか聞いた事あるのか、と。
「何事にも真剣で真っ直ぐなところって言ってくれたんだ。まあ隠し事下手なだけなんだけどね」
「では初心に帰るつもりで、そんなイメージのお洋服やメイクにしてみたらいかがでしょう。誠実さ、隠す事のないナチュラルなメイクが良いかもしれませんわね」
「だとすると、やはり落ち着いた色合いのコートがいいでしょう、か! ほら、コートの下はどんな風になってるのかなぁって、ドキドキさせられますよ♪」
「うーん。その白い服に合わせるならこの薄いピンクのコートを着たほうが印象が柔らかくなるでしょうか?」
「飾らず自分らしく。良いかも知れませんね。その方向でまとめてみましょうか」
 みんなで意見を言い合いながら、聖をコーディネイトしていく。
 そんな番犬達の優しさに聖の目が潤む。
「あぁ、ほら泣いたらメイク落ちちゃうよ」
「うぅ、だって~」
 聖を励ましながらのおしゃれは進む。そして――。
「完成!」
「どう、かな? 変じゃない? 平気?」
「バッチリですよ!」
「大丈夫ですよ、変じゃありません」
 雫が微笑む。シンプルに纏まってはいるけれど、ポイントを抑えてインパクトも忘れない。洗練された着こなしはオーラがでるかのようだ。
「うわー素敵なのです」
 ユリスが拍手しながら褒める。大人の衣装は素敵だと心の底から思っていた。
 褒められた聖が破顔し笑顔を見せる。
「うん、やっぱり最後のお洒落はその笑顔かな」
「ありがとう……って、あれ。もしかしてRaison d'etreの……?」
 いまさら正体に気づいた聖が名を呼びかけて、イブに制止される。
「ふふ、僕はただのケルベロスだぜ。さ、愛しい人のもとへ、気をつけていってらっしゃい。頑張ってね」
「そうだ、時間!」
 約束の時間まで、十五分を切っている。
 慌てて外へ出る面々をアベルが迎えた。
「相手の男性の、女性を見る目は確かなようだ」
 それはアベルから送られた最上の褒め言葉だ。
「どれ、時間もないだろう、なんだったら私が飛行で送ってやってもよいが?」
「本当に! ぜひ、お願いします!」
 聖はそういって、頭を下げた。
「結局はどんな装いでもお姉様が元気な姿を見せることが、彼氏さんにとって一番嬉しい事だと思います。どうかお気をつけて、頑張って下さい」
 別れの前、華がそう言って聖を元気づける。
「貴女の星座は、素直な気持ちでぶつかる事が大切とあります。健闘を祈ります」
 ユリスに抱きつかれたサンタうつぎが、ファッション雑誌の星座コーナーを見せながら聖に言う。聖は「うん、頑張る」と笑顔を見せた。
「では、いくぞ」
 一声掛け、アベルが聖を抱えながら飛び立つ。
 すぐに姿は見えなくなった。
「さて、僕も行かなくちゃ」
 この後は、多くの人の幸せの為に奔走した自分へのご褒美の時間だ。仕事のあとでお洒落していけないのが心残りだとイブは思った。
「えー、イブさんもデートですかー? 恋人? 恋人です?」
「not恋人。けれど僕にさいわいを届けてくれる、灰の眼をしたサンタさんさ」
 そう言ってイブは仲間達に別れを告げ、その場を後にした。
「うーん、いいなぁ」
「ミライさんは恋人とかいないんですか?」
「……え? 恋人? いませんよ? ……いませんよ! だって、ほら、みんなのアイドル……ですから……!」
 どこか悲しげな顔をしながらミライが力説すると、残った番犬達に笑顔の華が咲いた。
 そうして残った番犬達も家路へとつく。
 どこからか、ジングルベルの鐘の音が届いた――。

 アベルのおかげでギリギリ間に合った聖は、お礼を言うと駆けだした。
「恋人のため美しく着飾ろうと努力をしているのは、想いの強さ故。きっと相手に伝わるだろう」
 アベルの言葉が聞こえたのか、聖はもう一度振り返ると手を振りお礼をした。
 混雑するモニュメントの前。でもすぐに相手は見つかった。
 一息深呼吸、そして最高の笑顔で話しかけた。
「ごめんね、待った?」
 驚きながらも笑顔で首を振る彼に、ホッとする。
 煌びやかな灯りが広がる聖夜の街。
 番犬によって救われた仲睦まじい二人の姿が、ゆっくりとその街の風景に溶け込んでいった――。

作者:澤見夜行 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。