ミッション破壊作戦～竜を崇めし者達

■リプレイ

●作戦決行直前
　ヘリオンが飛ぶのは、神奈川県横浜市上空。
　その中で、ケルベロス達は個々の時間を過ごしながら、到着を待つ。
「ふんふふんふ　ふんふふんふ　ふんふふんふふん……♪」
　黒い髭を口元に蓄えたエドワード・リュデル（黒ヒゲ・e42136）はアームドフォート「空挺強襲支援用装着ユニット Ju-87G『Stuka』」を点検しつつ、空挺部隊の歌を口ずさんでいた様子だ。
「魔空回廊によって、日本各地が危険に晒されているであります」
　重鎧を纏う、クリームヒルト・フィムブルヴェト（輝盾の空中要塞騎士・e24545）が改めて日本の危機を仲間達に再確認する。
　この地、高級住宅地としても知られる山手町もまた、ドラグナーの群れが蔓延っていると言う。
「直に到着だな。今回は頑張ろうぜ！」
「人々を護るため、少しずつでも奪還を目指すであります！」
　その機内にて、地図を広げる天音・迅（無銘の拳士・e11143）は陽気に振舞い、仲間の緊張を解そうとしたものの、クリームヒルトは変わらぬ軍人口調で気合を入れていた。
「一撃破壊の可能性は低くても、不可能じゃないかもかな？」
　小柄な白ウサギのウェアライダー、因幡・白兎（因幡のゲス兎・e05145）がスマートフォンを見ながら、仲間達へと主観を語る。
　今回のミッションは破壊作戦として、初めて決行される場所。白兎はミッション攻略が盛んな方面を調べ、撤退経路などを探っていたのだ。
　そこで、機内に響く現場到着のアナウンス。
　身支度を済ませたメンバー達はグラディウスを手に、ヘリオンから次々に降下して行ったのだった。

●魂の叫び
　空を落下するケルベロス達の真下には強襲型魔空回廊が渦巻くが、その周囲をバリアが覆い、一行の行く手を阻む。
「こんなものに、負けぬでござる！」
　ニホンザルの獣人、岩櫃・風太郎（閃光螺旋のガンカタ猿忍・e29164）は両手でグラディウスを握り、弾かれぬようにと踏ん張る。
　そこで、ヴォルフ・フェアレーター（闇狼・e00354）がグラディウスを握り、バリアを打ち砕く。
　直後、人派龍巫術士の少女、メイリーン・ウォン（見習い竜召喚士・e14711）が魔空回廊を上空から狙う。
「今ここに我は誓う。一族の使命を果たすため。過去の過ちの償いのため」
　龍の封印を守る一族の末裔であるメイリーンは、一族の禁を犯してしまった過去を持つ。その清算の為にボクスドラゴンとなったクロノと共にドラゴン関連依頼へと参加している。
　当然、ドラゴンに作られたドラグナーも例に漏れない。
　メイリーンは手にする小剣を、七星破邪の型で振るう。
「何より、この地に住まう未来ある子供たちのために！　邪龍の徒よ、退け！」
　メイリーンの叫びと共に、魔空回廊に突き刺さるグラディウス。そこから、眩い雷光がこの地を照らし出す。
　ケルベロス達の強襲はなおも続く。
「デウスエクスめ、不当に占拠しやがりおって……！」
　降下用の装備から、エドワードがサイレンのような音を響かせて落下してくる。
「ガキを攫う……。こちらの後方を荒らしつつ、味方の戦力拡充を図る全くもって見事な戦略だ」
　鋭い眼光を放つ彼は、如何にも面白くないといった様子で顔を歪ませた。
「だが、我々を無視して、自由に闊歩出来ると思われるとは……。舐められたものだ、教育してやるか」
　そばに続く白兎はエドワードにちょっとした親近感を覚えていた様子であるが、それはさておき。
「子供をさらう……。さらわれるような子供だけじゃなく、周辺の住民だって不安に陥れるんだ」
　この地域を取り戻すという気概を、白兎はグラディウスに込める……のだが。
（「ここが奪還できたら、周辺の女子高生にチヤホヤされたい」）
　山手町には、ミッション系の女子校もあるという。
　この地を解放できたなら、女の子達に囲まれて……。そんな光景を思い浮かべた白兎は、にんまりと笑みを浮かべてしまう。
　とはいえ、これもまた思いの強さにつながり、グラディウスを高めることに繋がる。だからこそ、彼は欲望を隠そうとはしない。
「この街の安心と安全を取り戻させてもらうよ！」
　そして、エドワードと白兎がグラディウスを構えて。
「貴様ら全て殲滅してくれる！！　休んでいる暇はない出撃だ！！」
「そうした悪影響が、周囲の女子校にどれだけ悪影響を及ぼしてると思ってるのさ！」
　２つの刃は魔空回廊に突き刺さり、激しい爆炎を巻き起こす。
　次に、迅とクリームヒルトが降下してきた。
「子供を狙う。ああ、兵法としてはアリだろうな。他種族の子供ならってのもあるんだろ？」
　この地の状況を聞き、迅は包み隠すことなく本音を語る。
「だけど、オレはケルベロス。人類の守護者の端くれさ」
　柄ではないと自認しているが、「今を変えていく」という気持ちを込め、迅はグラディウスに想いを込めて真摯に叫ぶ。
「これからの未来を担う子供たちを攫うなど。言語道断であります！」
　こちらは、ポニーテールを揺らすクリームヒルト。
　デウスエクスに苦しめられる人々を見過ごせぬ彼女は、子供が誘拐された親の悲しみは筆舌に尽くしがたいほどだろうと推し量る。
「守護の騎士として、絶対に見過ごせないであります！」
　叫ぶスタンスや内容こそ違うが、２人の想いは強い光となり、グラディウスの刃を輝かせて。
「だから、この企みは打ち壊す！！」
「人々の安寧のため！　この魔空回廊を破壊することで、皆様を護るであります！！」
　さらに、突き刺さる２つの刃。そこから噴き出す濃いスモークが周囲に立ち込め、視界を狭めていく。
　最後に、自称吸血鬼の少女、神苑・紫姫（断章取義の吸血鬼伝説・e36718）と、風太郎がほぼ同時に飛び込む。
　２人は、うどん屋を営む風太郎に、紫姫がその客といった間柄である。
「嬰児の誘拐殺人……。未だ抵抗する術を知らぬ幼子の虐殺を、我等ケルベロスが、この私、吸血鬼シキが指をくわえて見ているとでもお思いですか？」
　こういう時だからこそ、紫姫は吸血鬼としての自らの願望だという体裁で叫びたいと考えていたのだ。
「あなた方にも生存への執着はあるでしょうが、デウスエクスに治外法権は不要。凄惨で陰湿な殺人者を許しはしません」
「少子高齢化社会の日本にとって、幼子は国の未来そのもの！　その幼子を文字通り食い物にする悪逆非道、断じて許すまじ！」
　そばの風太郎もまた、この地の状況を憂いて叫ぶ。
　まして、かの有名な三渓園の付近でドラグナーが屯す状況は、想像するだけで腹立たしい。義憤に閃光螺旋が呼応し、彼の体に紫電が走る。
「貴様等の醜悪さは歴史ある景観を損ね、すなわち万死に値するでござる！　今こそ、拙者の魂を完全燃焼させる時！」
　風太郎が叫んだ直後、まず紫姫がグラディウスを振り下ろす。
「その罪、あなた方の命で購いなさいな！」
「この地球上から貴様等を塵芥残さず殺すッ！　イイイイヤアァァァァアアーッ！！！」
　さらに、風太郎が真下に向け、眩い光を放つグラディウスを突き入れた。
　８本の刃が次々に突き刺さった魔空回廊。
　着地したケルベロス達はそれをじっと見つめる。
　…………。
　…………。
　所々に傷痕は残るものの、魔空回廊は動き続けたままだ。
「破壊できないのは想定内だし、さっさと撤退して次に繋げよ」
　この地と同等の強度を持つ地域では、４度ほど襲撃に必要だという記録もある。それもあって、白兎は落胆すら見せずに仲間達へと告げた。
　ぼやぼやしていると、スモークが晴れてしまう。
　敵が集まる前に撤収を行うが、その際、各自グラディウスだけはしっかりと管理してから離脱を図っていく。
　しかしながら、煙の中からゆらりと人影が現れる。量産型嬰児殺戮用ドラグナー、ブギーマンだった。

●赤子を狙う都市伝説
　向かい来るブギーマンはケルベロスを逃がすつもりはないらしく、退路を塞ぐように現れる。
　会敵と同時に、ヴォルフが飛翔し仕掛けた。
「何処まで逃げてくれますか？」
　嘆きの意を持つナイフ「Lament」を手にした彼は、どこまでも相手を追い詰める。【気狂いの暗殺】から逃れる術はない。
　同時に、自身の腰にグラディウスを縄でくくりつけた封太郎が螺旋仮面を被り、合掌したまま一礼を行う。
「ドーモ、ブギーマン＝サン。エイプニンジャでござる。イヤーッ！」
　間髪入れずに「言霊銃AMATERASU」の砲塔を敵に突きつけた彼は、早撃ちで凍結光線を見舞っていく。
　だが、ブギーマンは２度の攻撃を凌いでみせる。口元を吊り上げたそいつは右腕を突き出し、関節を鳴らす。
「時間もかけられないし、さっさと終わらせてもらうよ！」
　距離を取る白兎もさながら兎のようにちょこまかと跳び回り、相手を翻弄しながら氷結の螺旋をブギーマンに浴びせかける。
　だが、ブギーマンは笑みを崩さず、腕を伸ばす。
「皆様はボクが護るであります！」
　その手前にクリームヒルトが出て、敵の腕を盾で防いでみせる。
　だがその瞬間、敵の腕は大きくなり、彼女の体を鷲掴みしてその動きを縛りつけようとしてきた。
　クリームヒルトがそれに抗うと、そばにいた彼女のテレビウムが応援動画を流す。
　ほっこりとするような癒しの映像によって、力をもらったクリームヒルト。
　彼女は掴みかかるブギーマンの手を振り解いて爆破スイッチを押し、敵の胸部に仕掛けた不可視の爆弾を爆発させた。
「立ち塞がる敵は速攻で倒しませんと」
　前線へとビハインドのステラを盾役として送った紫姫は、九尾扇「大救世羽扇」を手にする。
　陣形を見定めた彼女は破魔の力を自分達後方メンバーへと与え、自身は仲間の回復メインに動いた。
　それを受けたメイリーンもまた箱竜クロノに前線を託し、自らはこの場で術を展開していく。
「これ成る偽符をもって竜威を招く、百八眼の混沌竜よ、吠えよ！」
　メイリーンの言葉に応じて現われた竜形の影は、大きく咆哮を上げた。
　百八の因子を身に秘めた混沌の竜は、ブギーマンの身体を食らいつくさんとする。
　前線に出たステラは敵の背後より刃を振るい、クロノはケルベロスを庇いながら、属性注入に当たる様子だ。
　こちらも破魔の力を受けたエドワード。
　飄々とした態度で猛禽類のような鋭い視線を敵に投げかける彼は某国軍の急降下爆撃隊の歌を歌いながら、「Ju-87G」より凍結光線を相手に浴びせかけていく。
　ケルベロス達の攻撃を受けるブギーマンは暗い目から爛々と光を輝かせ、怪しげな動きを見せる。
　それをさせじと、ヴォルフは竜の紋様が刻まれた「Unterwelt」に雷を纏わせて一閃した。
　鋭い突きがブギーマンに痺れを覚えさせると、自身に幻影を纏わせた迅が前線に向かったメンバーを支援すべく、飛び込む。
（「仲間を支えていきたい」）
　その考えを実践すべく、迅はアウトレンジからブギーマンを狙う。
「さあ、どう捌くんだい？」
　掌打より巻き起こされる衝撃波の嵐。紡がれる演舞の連撃が次々にブギーマンを襲い、痺れを強める。
　だが、衝撃波を堪えた敵はなおも、全身から怪しげな気を放って。
「来るぞ」
「…………」
　ヴォルフが仲間達に警戒を呼びかけた次の瞬間、不気味な笑いを浮かべたブギーマンはその気をケルベロス達へと浴びせかける。
　トラウマすら呼び起こすその気に耐えながらも、一行はそいつを打ち倒す為に攻撃を繰り返す。

　量産型とは思えぬ力を持つドラグナー、ブギーマン。
　デウスエクスである上、赤子を狙う敵を野放しにはできない。
　攻撃が当たるようになってくると、エドワードは技のループを変更し攻め立てる。
「休んでいる暇は無いぞ、出撃だ！！」
　跳び上がった彼は軍歌を歌いながら急降下し、「Ju-87G」から相手の装甲を易々とぶち抜く威力を持つ砲撃を放つ。
　だが、撃ち貫かれたブギーマンは攻撃を止めず、腕を伸ばして掴みかかってくる。
　それでも、相手は１体だ。クリームヒルトが前に出るサーヴァント達と共にしっかりと相手を押さえつけ、光の盾を展開して防御を高めていく。
「私のノブレスオーラ、受け取ってくださいませ！」
　さらに、紫姫が盾となる仲間をオーラで包み込む。ジョブレスオーラでしかないのだが。
「『ノブレスオーラ』、ですわ！」
　夜を統べる貴族と自称する紫姫は、そのオーラを貴族の威光と主張してやまない。
　その間に、風太郎が敵の懐に潜り込む。
「辞世の句を詠んで地獄へ落ちろ、ペド怪人ッ！」
　彼は至近距離より、螺旋のエネルギー光球を左足でシュートする。金属を貫くような音を立てて射抜いた一蹴。
　白兎もジグザグに変形させたナイフの刃で斬りかかり、仲間の与えた異常を強めていく。
　少し下がるブギーマン。
　敵は小さく笑い、またも腕を突き出して今度はじっと狙いを定めている。傷が塞がるところをみると、グラビティで己を癒しているのだろうか。
　だが、跳び上がった迅が流星の蹴りを浴びせて相手の動きを止め、メイリーンが巫術によって召喚した氷の騎士を突撃させた。
　体表面を僅かに凍らせ、身を竦ませた相手に、ヴォルフが迫る。
「逃がすか」
　その名は【裏切りの狼】を意味する。
　狼となったその腕は蹂躙するように敵へと薙ぎ払われ、その命までも奪い去っていく。
「…………」
　最後の最後まで、笑みを崩さぬ果てていくブギーマン。
　だが、倒れ行く敵に興味を失ったヴォルフはすでに、反転して背を向けていたのだった。

●警戒しつつ撤退を
　ブギーマンは倒れども、これで終わりではない。
　今倒した１体は、量産型の１体でしかない。続々とこちらに向かってきているのだ。ヴォルフなどは即座に離脱に転じていた。
「さぁ、撤退でござる！　……ところで紫姫殿、その恰好は寒いでござろう？」
「……店主さん？」
　仲間に後退を呼びかける風太郎は紫姫を気遣い、その肩に陣羽織を掛けた。やや戸惑いつつ、彼女は敵の気配を察して足早に移動する。
「敵が来るよ！」
　高所に視線をやる白兎。新手のブギーマンの群れが近づいていたのだ。
　エドワードはそれらにアームドフォートを発射して牽制し、後退しながら仲間の撤退を支援する。
　その中で、クリームヒルトも予め見定めていた離脱ルートを仲間と共に辿っていく。
「次は笑って、終えることができたらいいな」
　そんな願いを抱きながら、迅はこの地を離れていくのだった。

作者：なちゅい	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年12月14日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 6／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 2
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