冬の日の黄昏に

作者:あかつき


「久しぶりに飾るけど……うん、大丈夫そう!」
 秋村・蘭は、埃を被ったクリスマスツリーの箱を開けて、中身を確認する。緑色のクリスマスツリーと、ツリーのてっぺんにつける星。ツリーの大きさは130cmくらいで、星は掌くらいの大きさ。
「お父さん死んじゃってから、何もしなかったけど……もう3年経つもんね。ずっと引き摺ってる訳にもいかないし」
 いち、に、と指を折って年数を数える。
「お父さんが事故で死んじゃったの、康太が4歳の頃だから……もう5年経つんだ。私も、あの頃まだ10歳だったんだ」
 あれから色々あった。お母さんが落ち込んじゃって、クリスマスどころじゃなくなって。お父さんが買ってくれたクリスマスツリーも、そのまま仕舞われちゃって。
 ぽつりぽつりと記憶を辿るように呟きながら、蘭はツリーを立てる。
「でも、お母さんも今年はクリスマスやろうって言ってくれたし。出掛けてる康太とお母さんが帰ってくる前に、準備しちゃお!」
 その瞬間、蘭の背後から現れた第八の魔女・ディオメデスと第九の魔女・ヒッポリュテが、大きく腕を振るう。クリスマスツリーは無残な姿で床に転がる。
「あ……クリスマスツリーが……っ!! やだ、なんで、こんなっ!!」
 泣き叫ぶ蘭の胸を、二本の鍵が貫いた。
「私たちのモザイクは晴れなかったねぇ。けれどあなたの怒りと」
「オマエの悲しみ、悪くナカッタ!」
 そして、二体のドリームイーターが現れた。


「長谷地・智十瀬(ワイルドウェジー・e02352)が危惧したように、パッチワークの魔女がまた動き出したようだ。今回動いたのは、怒りの心を奪う第八の魔女・ディオメデスと、悲しみの心を奪う第九の魔女・ヒッポリュテの二体だ。この2体の魔女は、とても大切な物を持つ一般人を襲い、その大切な物を破壊し、それによって生じた『怒り』と『悲しみ』の心を奪って、ドリームイーターを生み出すようだ。生み出されたドリームイーターは、2体連携して行動し、周囲の人間を襲ってグラビティ・チェインを得ようとする。悲しみのドリームイーターが『物品を壊された悲しみ』を語り、その悲しみを理解できなければ、『怒り』でもって殺害するらしい」
 雪村・葵(ウェアライダーのヘリオライダー・en0249)が、集まったケルベロス達に説明を始める。
「戦闘では、怒りのドリームイーターが前衛、悲しみのドリームイーターが後衛で連携して戦闘を行うようだ。2体のドリームイーターが周囲の人間を襲って被害を出す前に、このドリームイーターを撃破して欲しい」
 時間は夕方、被害者の母親と弟は丁度外出中。ドリームイーターは二体、緑色のクリスマスツリーに顔と手足がついた怒りのドリームイーターと、星に顔と手足がついた悲しみのドリームイーター。両者とも、身長は一般人程度。他に配下などはいない。怒りのドリームイーターはふわふわのモールが巻かれた鍵を、悲しみのドリームイーターは松ぼっくりのついた鍵を持っている。
 二体のドリームイーターはマンション二階の秋村家リビングから移動して、外に出て行こうと行動する。夕方だが、二階に住んでいるのは秋村一家のみなので、同じ階の住民は気にしなくても良いだろう。一階はエントランスになっており、誰も住んでいない。
「思い出の詰まった大切なものを破壊されたら、怒りと悲しみを覚えて当然だが、それを利用していい訳がない。みんな、よろしく頼む」


参加者
エヴァンジェリン・エトワール(白きエウリュアレ・e00968)
長谷地・智十瀬(ワイルドウェジー・e02352)
ヴォイド・フェイス(ロストパラダイム・e05857)
デニス・ドレヴァンツ(花護・e26865)
ベルベット・フロー(母なるもの・e29652)
ウエン・ローレンス(日向に咲く・e32716)
ベア・ベア(ハントユー・e38076)

■リプレイ


「ああ、悲しい。大切なクリスマスツリーが」
 悲しみドリームイーターが嘆きながら、廊下を歩く。その横には怒りのドリームイーター。そこへ現れたのは、四人のケルベロス。
「大切なクリスマスツリーだったのよ。亡くなったお父さんが買ってくれたの、でも、壊れてしまったの」
 エヴァンジェリン・エトワール(白きエウリュアレ・e00968)は、触れていたhimmelからそっと手を離し、口を開く。
「わからないわね。たかが、ツリーでしょう? 買い替えれば、済む話よ」
 必要な事とは言え、こんなことを言わなければならないとは。エヴァンジェリンは僅かに眉を潜め、心の痛みをやり過ごす。
「わからないだと?!」
 怒りのドリームイーターは叫ぶと、大きな鍵を振りかぶり、エヴァンジェリンへと飛びかかった。エヴァンジェリンはドリームイーターが階段へと向かうよう意識しながら、その鍵を避ける。
「そう。物なんていつか壊れるものです」
 続けるのは、ウエン・ローレンス(日向に咲く・e32716)。怒りのドリームイーターがエヴァンジェリンから視線を移す僅かな隙に、ドアの無くなった玄関へと目を向け、そこに居る筈の蘭の事を思う。
(秋村さん少しだけご辛抱を。弟さんやお母さま、そして亡きお父さまのためにも……)
 必ず助ける、と一人胸に誓い、ウエンは続ける。
「たかが、物でしょう?」
 エヴァンジェリンとウエンとの距離を詰める形で階段へと向かっていく二体のドリームイーターへ、二人より僅かに後方に位置する長谷地・智十瀬(ワイルドウェジー・e02352)が言う。
「物は壊れるもんなんだから、壊れたら買えばいいじゃねぇか」
「お前も悲しみがわからないんだな?!」
 目標を智十瀬に変更した怒りのドリームイーターは、智十瀬の方、つまりは一階へと続く階段の方へと向かっていく。その間に、エヴァンジェリンとウエンは階段へと走り出す。
「怒りを思い知れ!」
 大きな鍵からモールを外して手に持つと、怒りのドリームイーターは智十瀬へと狙いを定めた。そんなドリームイーターを鼻で笑うのは、ベルベット・フロー(母なるもの・e29652)。
「自分達でツリーをぶっ壊しといて悲しい悲しいと、これはなんてマッチポンプだ! これじゃあMs、顔面マッチたるアタシの立つ瀬がないじゃない!?」
 ベルベットは階段へと後退しながら肩を竦める。
「ちゅーわけでアンタの言う物を壊された悲しみなんて今は知ったことじゃないね!」
「殺してやる!」
 くるりと踵を返したベルベットが智十瀬達と同じように階段へと走ると、二体のドリームイーターはそれを追いかける。
「お前らの悲しみなんて、これっぽっちもわからねぇ」
 素早く廊下を駆けながら振り返る智十瀬に、怒りのドリームイーターは目を見開く。
「お前ぇっ!!」
 2体のドリームイーターが階段を降りきったその時。
「向き合い、進もうとする想いを踏み躙るのは見過ごせないな」
 階段の影から出てきたデニス・ドレヴァンツ(花護・e26865)は、殺界形成を発動する。
「暴れましょう、智十瀬」
 階段を駆け下りてきた智十瀬に声を掛け、メルカダンテ・ステンテレッロ(茨の王・e02283)は囮役の四人を追う悲しみのドリームイーターへと南洋の風を纏った音速の拳を叩き込む。
「ウエン、背中は任せたわ」
 エヴァンジェリンは捕縛手を構え、吹き飛び床を滑る悲しみのドリームイーターへと拳を放つと同時に霊力を放ち、その動きを阻害する。
(そう、物は壊れます。……人も、いつか死ぬんです。でも)
 それは誰かが決める事ではないと、蜜の様な瞳を鋭く向けるウエン。彼は仲間達を援護するため、背中を任せてくれたエヴァンジェリンを守るために、ヒールドローンを飛ばしていく。
「悲しみがわからないのか!」
 ケルベロス達へと視線を向ける怒りのドリームイーターに距離を詰める赤い影。
「ドリームイーターってのは我侭な奴ばっかだナ?」
「退け!」
 苦笑するヴォイド・フェイス(ロストパラダイム・e05857)を押し退けようとする怒りのドリームイーターに、ヴォイドはいい考えがある、とばかりに手を打ち、そして。
「ほあああああっ!」
 携帯しているあらゆる爆薬に対してグラビティブレイクを付与しつつ、体当たりを食らわせた。それと同時に爆発するヴォイドだが、彼自身は身体から溢れ出るインフェルノリアクターの炎により無傷だ。
「ぐあっ!!」
 炸裂したヴォイトラダイナマイトによりふらりと身体を傾ける怒りのドリームイーターの瞳に強い怒りが滲む。
「よそ見してる暇があったら俺様にかまうといい!」
「お前ぇ!」
 怒りのドリームイーターは、ヴォイドに向けて鍵を振り上げた。
「こっちにもいるよ!」
 ベルベットは鉄塊剣を怒りのドリームイーターへ、力の限り振り下ろす。
「ぎゃ!」
 叩き潰された怒りのドリームイーターは鍵を振り回す。
「このぉ!」
 怒りのドリームイーターは、キラキラのモールを投げ縄のように振り回して投げる。そのモールは鉄塊剣を再度構えるベルベットへと巻き付いた。
「ぐっ!」
 身体の自由が効かなくなり、膝をつくベルベットへ駆け寄ってきたのはベア・ベア(ハントユー・e38076)のテレビウム。
「さぁ、アタシ達も頑張りましょ」
 そう言うベアに、クリスマスの気配にそわそわしているテレビウムは大きく頷くと、蘭に渡すためのオーナメントを大切そうにその背に庇いながら、画面にベルベットを応援する動画を映し出す。
 それと同時に、ベアはマインドシールドを発動し、防御力を向上させた。
「嫌よ!」
 悲しみのドリームイーターはキラキラと輝き、怒りのドリームイーターを回復していく。
「こっちだ!」
 悲しみのドリームイーターの隙をつき、距離を詰めた智十瀬は、オウガメタルに覆われた拳で身体の真ん中を撃ち抜いた。
「ああ!」
 崩れ落ちる悲しみのドリームイーターへ、デニスは指を向ける。
「行っておいで、食事の時間だ」
 影よりいずる狼は、デニスの指差す方へと月の如き銀の軌跡を描きながら、悲しみのドリームイーターへと躍りかかる。その鋭い爪は、ドリームイーターを跡形もない程に切り裂いた。


「アァ、お前だけになっちまったナァ?」
 僅かに首を傾げながら、ヴォイドは怒りのドリームイーターにOriginal Aceの鋒を向ける。体力に留意して戦っているとは言え、消耗はしている。しかし、それはヴォイドだけでなく怒りのドリームイーターにも言える事だった。
「お前らのせいで!」
「モノが壊れる悲しみナァ? 俺様にゃよく分かんネェな。なんせ、普段から壊してばっかで壊れてばっかなもんでサ。……お前らを壊したらその悲しみてのも分かるカナ?」
 ヴォイドがくるりと視線を巡らせれば、駆け寄って来るベルベットが見えた。
「クリスマスだもの、派手にやらなきゃ。ってことで、ベルヴィちゃん!」
「いっくよー!」
 怒りのドリームイーターを挟むようにして、二人は叫ぶ。
「「フォーメーションW・V・F!!」」
 ヴォイドはヴォイトラダイナマイトで、ベルベットはベルちゃんダイナマイトで、派手に爆発する。
「最大火力! トアアアアア!」
 気合いを入れるベルベット。二人の炎は、怒りのドリームイーターを燃やす。しかし爆炎の消えた後、膝をつく怒りのドリームイーターが現れた。
「結構しつこいねぇ」
 ぼろきれになった服を押さえ、ベルベットが呟く。
「では、氷付けになってもらおう」
 そう呟き、メルカダンテはドリームイーターへと手を伸ばす。喚び出した氷の騎士は、怒りのドリームイーターに氷の一撃を食らわせた。
「そろそろ、お別れの、時間よ」
 氷の騎士の横を駆け抜けるエヴァンジェリンは、銀の矛に稲妻を纏わせ、怒りのドリームイーターを貫く。
「がっ」
 神経回路が麻痺した怒りのドリームイーターは、ぐらりと身体を傾ける。
「行って、智十瀬」
「失うのも悲しいけど無いのも同じなんだ。エヴァ……最後は任せろ!」
 床を滑るように駆ける智十瀬の声に、エヴァンジェリンは身体を横へずらす。そこへ駆け込む智十瀬は腰の鞘から白刃を抜き放った。
「こいつは簡単に避けられねぇぜ?」
「あぁ!!」
 鞘を滑るように抜き放たれた白刃の残撃は蛇と化し、怒りのドリームイーターの身体を喰らい尽くした。
 カチリと鞘に刀を納める智十瀬、目を細めるエヴァンジェリン。そして、彼女は呟く。
「オルヴォワール、ノエルのドリームイーター」


「ハリウッドではクリスマスは爆発するものだから! よくある!」
 戦闘直後の惨状を見つめながら言ったベルベットだが、修復作業はしっかりと行っていた。
「こんなところでいいんじゃないかしら、ねぇ?」
 頷くテレビウムは、そわそわしていて落ち着きがなかった。
「じゃあいこっかねー!」
 エントランスの前に置いてあった巨大な包みを持ってくるヴォイドを先頭に、ケルベロス達は階段を上って二階の秋村家の玄関扉を直し、室内へ。リビングに足を踏み入れれば、倒れたままの蘭と壊れたクリスマスツリーが目に入る。
「大丈夫ですか?」
 ウエンが蘭を助け起こし声を掛けると、瞼が震え、その奥からぼんやりとした瞳が覗く。
「私……、あっ! ツリー……」
 がばっと起き上がった瞬間、蘭はクリスマスツリーの惨状を目の当たりにし、へたりこむ。
「私たちはケルベロス、ドリームイーターは撃破した。クリスマスツリーも、治す事はできる」
 そう言うデニスを見上げ、蘭は瞳に涙をためた。
「元通りにはならなくて、アレンジされちまう。でも、また飾ることは出来る。どうする?」
 尋ねる智十瀬に、蘭は数回瞬きをする。
「ヒール、しない方が良いかしら?」
 ベアの言葉を、蘭は床を見つめたまま静かに聞いている。
「でも、もしヒールをしないとしても、手作業で直させて欲しい……。あなたの大切な、ツリーだから」
 そう語りかけるエヴァンジェリンに、蘭は拳を握りしめる。少女がその意思を決めるのを、メルカダンテは壁に凭れ掛かって見守る。
「あの……ヒール、お願いします。少し形が変わってしまっても、お父さんがくれた事に変わりは無いと思うんです」
 その言葉に、ケルベロス達は壊れたクリスマスツリーにヒールを施す。幻想の混じったクリスマスツリーは、少し見た目は変わったけれど、確かに彼女の父親がくれた物。
「折角だから、クリスマスツリーの飾り付けを手伝わせてくれないか?」
 そう提案するデニスに、蘭は驚いて目を瞬く。
「良いんですか?」
 デニスは頷き、ケルベロスはそれを合図にそれぞれ準備をし始める。
「良かったら、飾ってくれないか」
 智十瀬が手渡したのは、小さなツリーや星、トナカイなどのオーナメント。
「かわいい……」
「俺は産まれた時から一人だったから家族は居ないんだ。そういうの、羨ましいって思う。だからさ、家族からのものを、残すって決めてくれて、良かった」
 そう言う智十瀬の横にウエンが並び、頷く。
「秋村さん、物はいつか壊れてしまいます。ですが、失くすのではないと……僕は思っています」
 そして、蘭の掌にのせたのは小さなベル。
「代わりになれないでしょうが……贈らせて下さい」
 鳴らせば行くべき道に導き魔を除けるよう、彼女と家族の平穏と暖かい未来の道標になるように、と願いを込めて。蜜色の瞳には、真摯な想いが映る。
「ありがとう」
 ぎゅ、と両手でベルを抱き締める蘭の服の裾をきゅ、と引かれ、蘭は地面を見下ろす。そこにいたのはテレビウム。
「どうしたの?」
 蘭が尋ねれば、何かを差し出してくる。しゃがんで手を出せば、手渡されたオーナメントに、蘭は驚いて目を見開いた。
「これ……」
「この子がどうしても自分に似せたがって。きっと蘭とお友達になりたいのね。貰ってくれるかしら?」
「ありがとう! 大事にするね」
 思わず蘭が笑えば、ベアはそれを見て優しく微笑む。
「アタシからはこれだ! 特性ベルちゃんフェイスキャンドル!」
 ベルベットが渡したのは、ベルベットを模したキャンドル。それを見て笑いながら、ベアは言う。
「ツリーは壊れてしまったけれど、想い出は壊れないし、こうしてまた新しい想い出もつくれるのよ」
「はい……みなさん、有難うございます……」
 思わず泣きそうになる蘭に、エヴァンジェリンは小さな天使のオーナメントを手渡した。
「これ、良かったら。アナタの、守護になるように……」
 ふわりと掌にのせた天使のオーナメントを見て、蘭は目を細める。
「大切に、しますね」
 ぺこりと頭を下げ、蘭はクリスマスツリーの方へと駆けていく。一つの枝には天使のオーナメントを、その横にはベルを。テレビウムのオーナメントは大切そうにポケットに入れ、智十瀬に貰ったオーナメントを一つずつ並べていく。
「所で、君の名は、誰がつけたんだい?」
 蘭の横でクリスマスツリーの飾りつけを手伝いながら、デニスが尋ねる。
「お父さんが、決めてくれたって」
「そうか……良い名前だね」
 そう返せば、蘭は嬉しそうに笑う。その時、鍵の開く音がして、賑やかな声が部屋に響く。
「ただいま、お姉ちゃん!」
「ねぇ蘭、どうしたの? 玄関に大きなツリーが……お客さん?」
 蘭の弟と母親が荷物を持って現れる。
「あー、ソレ俺様のプレゼント……と、思ったんだけどナァ」
 二個はいらないかと、と続けようとしたヴォイドの言葉を遮ったのは蘭の弟。
「おっきいクリスマスツリーだね! ありがとうねっ!」
 その間に母親に状況を説明していた蘭が振り返ると、壁に凭れていたメルカダンテと目があった。
「その、自分でやったことなくて。準備」
 そう溢すメルカダンテに、蘭は首を横に降る。
「助けてくれたの、わかってます」
 そう言って頭を下げる蘭に、メルカダンテは小さく微笑む。
「きっと、家族でクリスマスをしたいという思いはサンタ・クロースに届いていることでしょう。よい日を過ごせますよう、祈っています」
「ありがとう、ございます!」
 サンタのようにはいかないけれど、彼女たちがクリスマスに楽しく過ごせるよう、メルカダンテはプレゼントを手配していた。それをいつ言うか思案している内に、蘭はツリーの方へと戻っていってしまった。
「私は君の父親の代わりにはなれないが、友であることは出来る。こんなおじさんは嫌かい?」
 そう言うデニスに、蘭は目を見開いて首を横に降った。
「いいん、ですか?」
「困った時は思い出し呼ぶといい。力になるから」
 ツリーを飾ったり、クリスマスの幸せを祈る仲間達を見ながら、ウエンは優しく目を細める。
「どうした?」
 尋ねる智十瀬に、ウエンは一度目を伏せ、呟く。
「皆さんとご一緒できた事……良かったです」
 外は寒くなってきたけれど、ある家族の幸せを祈るこの場所は、柔らかく、暖かい空気で満ちていた。

作者:あかつき 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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