怒りと悲しみのハニー&ホイップ

作者:雷紋寺音弥

●誰も知らない秘密
 街外れにある、築30年は下らない古アパートの一室にて。
 その日、残業を終えて帰宅したサラリーマンの男は、軽い溜息を吐いて扉を閉めると、部屋の奥にあるクローゼットの戸を開けた。
 山田・野中(やまだ・のなか)、40歳、独身。万年平社員の彼にとって唯一の癒しは、趣味のコスプレに耽ること。
「うふふ……。今日は、どれを着てみようかな~♪ ネットで買うのもいいけど、やっぱり自分が作ったオリジナル衣装が最高だよね~♪」
 そう言って彼が取り出したのは、どこからどう見ても女物の、魔法少女の着ているような服だった。
 自分で考えたオリジナルキャラクターのコスプレ衣装に身を包み、しばし至高の世界へとダイブする。絶対に他人には言えない趣味だが、それはそれ。
「よし! 今日の衣装はこれに……って、誰かいるのか!?」
 背後に奇妙な気配を感じ、思わず後ろを振り向く野中。いつの間に侵入されていたのか、彼の前に立っていたのは、巨大な鍵を持った二人の魔女。
「お前達、ここは俺の家だぞ! いったい、何の用が……ぶべらっ!?」
 赤面する野中を払い除け、魔女たちはクローゼットの中にある衣装を引っ張り出すと、それらに手を掛けて次々と破り始めた。
「あぁっ!? な、何をする! それは全部、俺の手作り……世界にたった一つの、マイ・オリジナルキャラクターの衣装なんだぞぉぉぉっ!!」
 いい歳した中年のオッサンの台詞とは思えない言葉を叫びながら、野中は魔女たちに向かって行った。が、そんな彼の抵抗を見越していたかのように、繰り出された巨大な鍵が、野中の胸元を貫いた。
「私達のモザイクは晴れなかったねえ。けれどあなたの怒りと……」
「オマエの悲しみ、悪くナカッタ!」
 第八の魔女・ディオメデス。そして、第九の魔女・ヒッポリュテ。二人の笑い声が部屋の中に響き渡る中、いつしかオッサンの傍らには、その身を魔法少女っぽい衣装に包んだ、オッサン顔のドリームイーターが姿を現していた。

●甘々な二人!?
「パッチワークの魔女が、また悪さをしているみたいっすね。ただ……正直、これはマジでないっす……。あんまりっす……」
 その日、ケルベロス達の前に現れた黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は、いつにも増してゲッソリとやつれた様子で、自らの垣間見た予知について騙り出した。
「機理原・真理(フォートレスガール・e08508)さんの懸念していた通り、オリジナルのコスプレ衣装を大切にしていた人が、ドリームイーターに襲われる事件が起きるっす」
 襲撃犯は、第八の魔女・ディオメデスと第九の魔女・ヒッポリュテの二人。それぞれ、『怒り』と『悲しみ』の心を奪うドリームイーターで、大切な物を持っている人間を襲い、その大切な物を破壊することで生じた『怒り』と『悲しみ』から、新たなドリームイーターを生み出している。
 ちなみに、生み出されたドリームイーターは連携行動を得意とし、『怒り』のドリームイーターが前衛を、『悲しみ』のドリームイーターが後衛を務めている。一般人を見つけると、悲しみのドリームイーターが『物品を壊された悲しみ』を語り、その悲しみを理解できなければ、『怒り』でもって殺害してしまう。
「今回の事件で襲われるのは、山田・野中さんっていう中年のサラリーマンっす。なんでも、自分で考えたオリジナルキャラクターのコスプレを自作して、そのキャラクターに扮するのをストレス解消にしていたみたいっすけど……」
 問題なのは、コスプレの種類。アラフォーのオッサンでありながら、持っている衣装は全てキラキラでフリフリな魔法少女風のものなのだとか。
「そういうわけで、敵のドリームイーターも、魔法少女風の衣装を着たオッサンの姿をしてるっすよ……。『怒りのブラック・ハニー』と『悲しみのホワイト・ホイップ』とか名乗って……それぞれ、手に持っているステッキみたいな鍵を武器に使うっす」
 また、それ以外にも鍵の先端からモザイクを飛ばす、衣装の一部を肥大化させて相手を飲み込むといった攻撃も使って来るので、要注意。前衛を担当する方は黒い衣装を着てディフェンダーの、後衛を担当する方は白い衣装を着てメディックのポジションについており、無駄にしぶといのが特徴である。
「人の趣味はそれぞれっすから、あまり突っ込みたくはないっすけど……正直、あんな格好のドリームイーターが街中を徘徊しているだけで、色々と危なすぎるっす……」
 今から行けば、敵が野中の住んでいるアパートの辺りを徘徊しているところに遭遇できる。時間も夜で、周囲に人通りもないので、戦いに集中できることだけが救いだ。
 人目に付く前に、あんな敵はさっさと始末するに限る。そう言って、ダンテは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
東雲・苺(ドワーフの自宅警備員・e03771)
土竜・岳(ジュエルファインダー・e04093)
テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)
曽我・小町(大空魔少女・e35148)
天喰・雨生(雨渡り・e36450)

■リプレイ

●二人の夢食い
 真冬の寒空の下、深夜の路地裏を歩くケルベロス達。ドリームイーター出現の報を受け、彼らは被害者であるオッサンのアパート近くへと急行した。
「またドリームイーターが悪さしてるんだねー。今度は二人だから現れる敵も二人なんだね」
 敵は黒と白の衣装を着た二人組。そういえば、そんなアニメがあったような、なかったような……。どこか懐かしい想いに駆られる東雲・苺(ドワーフの自宅警備員・e03771)だったが、果たして彼女のように割り切れている者が全てではなく。
「ドリームイーターを生み出すために大切なものを壊すなんて、ほんとパッチワークの魔女もはた迷惑だよね……」
 出現する敵の姿を想像し、早くも天喰・雨生(雨渡り・e36450)などは気力の削がれた顔をしていた。
 まあ、それでも今は、ドリームイーターを退治することに専念しよう。気を取り直して歩を進めると、果たして彼らの前に現れたのは、月を背景に家の屋根の上に立っている、フリフリの衣装を着た二つの影だった。
「私は怒りの使者、ブラック・ハニー!」
「私は悲しみの使者、ホワイト・ホイップ!」
 魔法少女風の衣装と武器を装備した、中年オヤジ顔のドリームイーターが二体。名乗りの口上もそれっぽい感じだが、いかんせんオッサン顔と野太い声が、頭から爪先まで全てを台無しにしていた。
「大切にしていた衣装を破かれた怒りと悲しみ……あなた達は、理解できる?」
「理解できるというのなら、あなた達の夢とグラビティ・チェインを置いて去りなさい! 理解できないというのなら、この場で私達に倒されなさい!」
 杖の形をした鍵をビシッと掲げて叫ぶハニー&ホイップだが、正直なところ、その主張は支離滅裂で無茶苦茶なものだった。いったい、何をどう間違えたら、理解してもしなくても命を奪われるような展開になってしまうのか。
「貴方方の怒りや悲しみ、よく判ります。その怒や哀の原因を生んだ魔女たちの手駒として、只々怒り悲しむだけとは哀れです」
 それでも、少しは理解を示そうとする土竜・岳(ジュエルファインダー・e04093)だったが、コスプレ親父どもは「哀れみなど不要!」と叫ぶだけ。ともすれば、格好からして哀れみの対象になり兼ねない姿で、逆ギレとは痛々しい限りである。
 こうなったら、もはや余計な問答は無用だろう。予め準備していた重厚な音楽を鳴らし、フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)は変態……もとい、ドリームイーター達の前に歩み出た。
「古今東西変身というのはー、殻を破る恍惚が伴うらしくー、自身から離れれば離れる程にー、楽しいとお聞きしますがー」
 ただ、奪って見た目ばかりを真似た者達に、そんな感慨は存在しない。そう言ってのけた彼女の言葉に、ドリームイーター達が激しく反応したときだった。
「そこまでよ! 喜びのグリーン・ミント、只今参上!」
「楽しみのレッド・ストロベリー! 悪を倒しにやってきたですよ!」
 緑と赤の魔法少女風な衣装に身を包んだマルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)と機理原・真理(フォートレスガール・e08508)の二人が、ドリームイーター達の前に颯爽と現れる。その格好といい、名前といい、対抗心剥き出しな格好であり。
「黒くて白い、ホンモノの戦うヒロイン参上よ……って、聞いてたけど、実物見ちゃうと、ねぇ……?」
 同じく、敵の前に現れた曽我・小町(大空魔少女・e35148)であったが、あまりに酷い相手の格好に、思わずウイングキャットのグリの方へと目を逸らした。
 敵は勝手に怒ったり悲しんだりしているようだが、正直なところ、あれはない。おまけに、こちらと色が微妙被っているというのが、なんとも神経を逆撫でさせる。
「まあ、どんな相手であっても、いつも通りにお仕事をするだけです」
 こういう場合、相手のペースに飲まれた方が負けだ。ジャイロフラフープを片手にテレサ・コール(黒白の双輪・e04242)が呟いたところで、世にも見たくない魔法少女大戦の幕が明けた。

●怒りのハニー
 コスプレ趣味なオッサンの、怒りと悲しみが具現化したドリームイーター。その姿は変態そのものだが、それでも紛うことなきデウスエクス。
 こんなやつに、まかり間違って倒されたら末代の恥。というか、絶対に直視したくない他人の趣味を、無暗に赤裸々大公開しないでもらいたい。
「……ていうか、顔くらい元のオリキャラのにしなさいよ!」
 あまりにキモ過ぎるオッサン顔に、小町はのっけからブチ切れていた。
 オッサンの妄想から現れたのであれば、せめて顔も妄想の美少女キャラであるべきではないのか。そんなことを叫びながら竜砲弾を発射するが、敵は何ら怯むことなく怒りを爆発させて来た。
「うるっさいわねぇっ! アタシ達は、元からこういう顔! こういうキャラなのよ!」
 辺りに響く野太い声。いつの間にかオネェ口調になっていることも相俟って、見ているだけで気が滅入る。
「貴方達には、お仕置きが必要だわ! 受けなさい! ハニィィィ、モザイクゥゥゥ、スクリュゥゥゥッ」
「こうなったら、秘密の技を使ってあげるわ! ホイップゥゥゥ……スカァァァト、アタァァァック!!」
 顔面を歪めながら、それぞれの得意技を放つハニーとホイップ。身体を妙にくねらせながら迫って来るのが、とにかくキモい! キモ過ぎる!!
「くっ……! な、なんですか、これは!? 周りの人の顔が、全て敵に!?」
 モザイクの直撃を食らい、真理が困惑した様子で叫ぶ。どうやら、催眠の効果によって、周りにいる全ての人間の顔がオッサンに見えているようで。
「ちょ、ちょっと! 汚い物、見せるんじゃないわよ……って、きゃぁぁぁっ!!」
 響き渡る小町の悲鳴。ホイップの広げたスカートの中に飲み込まれ、脛毛丸出しの汚い太腿が目の前に!
 このままでは、彼女の心に凄まじい傷が刻み込まれてしまう。慌ててグリが清浄なる風を送り、スカートの中から小町を解放したが……どうやら、見たくない物を散々に見せられたようで、早くも彼女の身体から戦う意欲が減退していた。
「これ以上は、好きにさせない! あなた達の怒りも悲しみも、纏めて喜びで吹き飛ばしてあげます」
 鎖を広げ、仲間達を守るマルレーネ。こんなやつらの攻撃に晒されることを考えたら、せめて肉体的なダメ―ジだけでも軽減しておかねばやってられない。
「破剣ヲ装着シ、野干吼駆動……。鉄塊振ルイテ行ウ斬ル、焼ク、潰ス……。ソノ業ノ悉クニ八裂キノ意ヲ灯ス……」
 同じく、フラッタリーも自らの鉄塊剣に地獄を注ぎ込み、戦うための力へと変えた。
 敵が持久戦を仕掛けてくるのであれば、こちらはそれを真っ向から叩き潰す。正に一触即発の空気だったが……そんな中、岳だけは他の者達とは違い、懸命にハニーとホイップに言葉を投げ掛けていた。
「貴方方の怒りや悲しみが深いのは、それだけ被害者さんの思いが深いからです。大切なものと共にある時の、持ち主さんの安らぎの気持ちを……怒りや悲しみだけではないお心を、どうか思い出して下さい!」
 もっとも、敵は被害者の怒りと悲しみから生まれた存在。故に、その本質は、奪われた怒りと悲しみそのものだ。
「思い? 安らぎ? 寝言は寝てから言いなさい!」
「次は、あなたをお仕置きしてあげるわ!」
 案の定、勝手に怒り、勝手に悲しみ、頭の上から湯気を立ち昇らせて来るだけだった。敵は人の形こそしているが、どうやら意思疎通できる相手ではないようで。
「おじさんの衣装を破られた怒りと悲しみ、わかるけど……それで敵に利用されちゃうのはダメなんだよっ!」
 もう、これ以上は問答をしても無駄だろう。味方のフォローをボクスドラゴンのマカロンに任せつつ、苺が燃え盛る火炎を蹴り出せば、真理もまたオッサン顔の幻影を振り切って、星形のオーラを蹴り込んで行く。そんな彼女達の姿を眺めつつ、テレサが何かを思い出したように顔を上げ。
「物を壊される悲しみ……。そういえば、以前に眼鏡を潰されたことがあったような……」
 そこまで言って、相棒のライドキャリバーであるテレーゼに視線を向けたが、既にテレーゼは真理のライドキャリバーである、プライド・ワンと共に走り出した後だった。
「「……!?」」
「ふんごぉぉぉっ! 負けるものかぁぁぁっ!!」
 突進してくる2台のライドキャリバーを、正面から受けとめる怒りのハニー。両目は血走り、鼻息は荒く、おまけにガニ股で血管も浮き出している。
「うわ……さすがに、これはちょっと……」
 凄まじ過ぎる光景に、雨生はドン引きしながら御業から炎弾を発射した。
 目の前の敵は、雌ゴリラならぬボスゴリラが魔法少女の服を身に纏っただけの存在。できることなら、あまり直に触れたくない。
「きゃぁっ! ちょっと、熱いじゃないの! 服が燃えたらどうしてくれるのよ!」
 杖型の鍵を振り上げ、激高するハニー。しかし、そんなことなどお構いなしに、今度はテレサが容赦なくアームドフォートの一斉射撃を叩き込んだ。
「いやぁぁぁんっ!!」
 両手でスカートの前を隠し、吹っ飛んで行く魔法少女……ではなく、魔法中年親父。スカートの中から覗く脛毛だらけの足に、思わず何人かが顔を背けた。

●悲しみのホイップ
 守りに特化した怒りのハニーと、回復に特化した悲しみのホイップ。確かに、二人の連携は巧みであり、持久戦に特化した厄介な相手ではあった。
 だが、それはあくまで、手数が拮抗していればの話。度重なるケルベロス達の猛攻の前に、いつしかハニーの服はボロボロになり、その体力もゴッソリと奪われていた。
「も、もぅ! どこ見てるのよ、エッチ!!」
 服の破れた場所を抑え、ハニーが身体をクネクネさせながら、何か言っている。
 うん、これは酷い。というか、純粋にキモい。服の中身が美少女なら役得だったが、中年親父では別の意味で目に毒だ。
「こうなったら、アンタ達にも怒りを分けてあげるわ! 食らいなさい……ハニィィィ、モザイクゥゥゥ、シュゥゥゥト!!」
 杖型の鍵を振り回し、ハニーが怒りのままに技を発動! 迫り来るモザイクの塊は、射線上にいたフラッタリーを直撃した。
「笑止……。顔面、頭髪、筋張リ、身ノ丈。ソレラ削ヰデ、衣服ヶ為ノ木偶二成レ……」
 もっとも、モザイクの爆発が晴れた瞬間、その中から現れたのは、鬼気迫る表情のフラッタリーだった。
「遍クヲ包mU静穏之如ク、終Enヨリ来タレRi颶風之滅ビヲ告ゲ真セウ。流転輪廻ガ囁クヤフニ……」
 内なる煉獄を狂気によって研ぎ澄まし、狂える言葉を紡ぐフラッタリー。それにより得るのは姿なき刃。横薙ぎに振るって太刀風を浴びせれば、それは見えぬ滅びを想起させる業となり。
「させないわ! ホイップゥゥゥ、モザイクゥゥゥ、シィィィルド……って、なんで効かないのぉっ!?」
 回復技を使うホイップだったが、滅びの業を受けたハニーには効果が薄い。両手で頬を潰して叫ぶホイップの顔が、死にかけの魚類のようになっていたが、それはそれ。
「破られた悲しみは、人に暴力振るってぶつけるのはだめ! 新しいものを作る力にしなきゃ」
「それでも解っていただけないのであれば……せめて倒すことで、その軛から解放して差し上げましょう」
 苺が槍の一撃で敵を牽制する中、岳は味方の力を活性させる電撃を飛ばす。それを受け取った小町がにやりと笑い、胸の前で両腕を交差させた。
「服を破られた怒りと悲しみ、黒と白……そんな貴方達にはこの技よ!」
 これは先程の返礼だ。女装親父と半裸親父、どちらがマシか自らの身を持って味わえと。
「闇に輝く気高き魂が、全てを貫き、打ち砕く! ……マーブル・ガイザァァァッ!」
「きゃぁぁぁっ! ア、アタシの服がぁぁぁっ!!」
 絡み合い渦巻く、白と黒の眩い光。それは凄まじい力の奔流となって、ハニーの衣装を破り捨て。
「終わりをあげるよ……さよならだ」
 血族に伝わる呪の力。周囲の水気に自身の波動を同調させて、雨生は指先から刃の如く射出する。今度は衣装だけでなく、その身体も纏めて真っ二つ! 終わりの言葉さえ紡ぐこともできず、怒りのハニーは消滅した。
「あぁっ、ハニーが! 許さない……絶対に許さないんだからぁっ!!」
 仲間を殺られ、悲しみに震えるホイップだったが、こうなってしまっては勝機などなかった。元より回復特化の彼女だけでは、万に一つも勝ち目はない。
「一斉攻撃……行きますよ」
 テレサのミサイル攻撃を皮切りに、サーヴァント達の猛攻が残されたホイップに降り注ぐ。ライドキャリバー達のガトリング砲に続き、ブレスやらリングやらが殺到し、瞬く間にホイップは追い詰められ。
「大切な物を壊された悲しみはわかる。だけど、その怒りを無関係な人に向けるなど言語道断。ここで退場していただきます」
 そう、マルレーネが告げたところで、真理も頷き同時に仕掛けた。
「霧に焼かれて踊れ」
「私の、全力……受けてみるですよ!」
 桃色の霧に包まれ、衣服を蝕まれて行くホイップへ、真理の胸元から凄まじい真紅のエネルギー光線が発射される。その身から溢れ出す紅い燐光。全身全霊の一撃を受け、残る魔法中年親父も木端微塵に吹き飛んだ。
「終わりましたね、マリー」
「ええ、なんとか……って、あぁっ!?」
 戦いが終わって我に返ったことで、思わず赤面する真理とマルレーネ。ノリノリで戦っていたが、冷静になって思い返すと、意外と恥ずかしかったようである。

●今度は5人組だ!
 戦いを終えたケルベロス達は、改めて被害者である山田・野中の家を訪れていた。
「この度は突然のご不幸に見舞われましてー、お悔やみ申し上げますのー」
 フラッタリーがケルベロスカードを渡す中、苺やテレサは衣装を作り直させるべく、布地を渡したり奮起させたりしている。
「ほら、手伝うからまた2着作るよっ!」
「採点は、私にお任せください。言っておきますが、辛口ですよ……」
 破れた衣服は、また作ればいい。そんな励ましを受け、野中は俄然やる気になっているようで。
「今回は災難でしたね。どんなに嫌な辛いことがあっても、癒しや喜びが持てる趣味というのは、とっても素敵だと思います」
 ついでに破れた方の衣装も、岳がヒールしておいた。元の形とは違ってしまったが、少しばかりファンタジックな要素が加わった方が、なんだかパワーアップしているように見えなくもない。
「よ、よ~し! 今度は2着とはいわず、5着ぐらい作ろう! 前から考えていた、5人組の魔法少女の衣装を作るんだ!」
 なんというか、切り替えの早い男で助かった。これなら、もう大丈夫だろうと、小町はなんとも微妙な想いに駆られつつ苦笑した。
「衣装作っちゃうその情熱があれば! きっと立ち直れるわよね!」

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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