速射は銃砲の術のみにあらず!

作者:秋津透

 栃木県那須郡那珂川町。
 鎌倉時代の弓の名人、那須与一ゆかりと言われるこの地で、人家も稀な山奥に籠って弓術の修行に励む武術家がいた。普通、弓術の修行というと、ひたすら遠い的に有効な一撃を当てようとする場合や、一射に念を籠め岩をも射貫く強烈な一撃を目指す場合が多いが、この人物の場合は少し変わっていて、短時間に多数の矢を射て、多くの的を続けざまに射貫く技術を磨いている。
「はーっ、やっ!」
 気合一閃、何本もの矢が弓から放たれ、並べられた的を射貫く。普通の目では、一回に多くの矢を放っているようにしか見えないが、優れた者には、彼が一矢につき一回、物凄い速度で弓の弦を引いて狙いを定め、続けざまに矢を放っていることがわかるだろう。
 すると、その時。
「お前の武術はそんなもんか? 最高の『武術』を見せてみな!」
「何っ!?」
 驚いて振り返った弓術家の目が虚ろになり、いつの間にか背後に立っていた大きな鍵を持つ少女に、凄い勢いで無数の矢を放つ。しかし、ほとんどの矢を当てられながら、少女はびくともしない。
「あはははは! 僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ!」
 言い放つと、少女……ドリームイーター『幻武極』は、手にした鍵で弓術家の心臓を貫く。
「ぐっ……」
 一撃で、彼は意識を失い崩れ倒れるが、貫かれたはずの胸に傷はない。そして倒れた彼の傍らに、彼とそっくりな風貌をしているが、より獣的で凶暴な光を瞳に宿し、手にした弓や身体の各所にモザイクを貼りつけた新たなドリームイーターが出現する。
 その姿を見やった『幻武極』は、にやりと笑って告げる。
「さあ、お前の武術を見せ付けてきなよ」
「はーっ、やっ!」
 ドリームイーターが気合を放ち、先刻弓術家が矢を当てた的へと無数の矢を放つ。命中した矢は、ことごとく爆発して的を粉砕する。
 既に、『幻武極』の姿はどこにもなかった。

「いやー、驚きました。早撃ちって、銃の技能だとばっかり思ってたんですけど、弓で銃に負けないぐらいの速射ができる人っているんですね」
 ドワーフにしては非力な都会派を自認する風戸・文香(エレクトリカ・e22917)が、素直に驚いた表情で言う。
 そしてヘリオライダーの高御倉・康が、緊張した口調で告げる。
「栃木県那須郡那珂川町の山奥で、弓術の修行をしていた男性が、武術家を襲うドリームイーター『幻武極』に襲われ、新たなドリームイーターが出現してしまう、という予知が得られました。彼は、短時間に多数の矢を射て多数の目標を射貫くという武術を修行していたようで、出現したドリームイーターは、矢に強力なグラビティを乗せて連続して多数放ち、命中した的を爆発させることができるようです。こんなものが一般人に遭遇したら一大事ですが、幸い、彼が修行していた自作の道場は人里離れた山奥にあり、急行すれば地元住民などに出会う前に捕捉することができるでしょう」
 そう言って、康はプロジェクターに地図と画像を出す。
「現場はここです。ドリームイーターは単体で、見た目は元になった弓術家と変わりませんが、動きや力は当然ながら人間離れしています。多数の相手を同時に射貫いて爆発させたり、無数の矢を一人の相手に集中させて大ダメージを与えたりするほか、自分の傷を癒し状態異常を解消するモザイクヒーリングも使えるようです。ポジションは、スナイパーと思われます」
 そして、康は一同を見回す。
「このドリームイーターは、誰かと遭遇すると相手かまわず攻撃を仕掛けてくるようです。地元住民などの一般人が巻き込まれる状況になる前に、きっちり倒していただければと思います。どうか、よろしくお願いします」
 そう言って、康は深々と頭を下げた。


参加者
ラハティエル・マッケンゼン(マドンナリリーの花婿・e01199)
エルネスタ・クロイツァー(下着屋の小さな夢魔・e02216)
風戸・文香(エレクトリカ・e22917)
浜咲・アルメリア(捧花・e27886)
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)
雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)
椚・暁人(吃驚仰天・e41542)

■リプレイ

●……おい貴様、何を射ている?
「はーっ、やっ!」
 弓術家ドリームイーターが出現したという、栃木県那須郡那珂川町。
 その現場に急行し、ヘリオンから降下したケルベロスたちの耳に、常人離れした強烈な気合と、それに続く多数の爆発音が聞こえてきた。
「これは……ドリームイーターが、何かを射ているのか?」
 まさか、たまたま一般人が近くに来てしまって、虐殺されてるんじゃあるまいな、と、男性ヴァルキュリアの瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)が眉を寄せて唸る。
「それにしては、俺の翼に何も感じないが……」
「いずれにしても、急いだ方が良さそうだ」
 厳しい表情で、ラハティエル・マッケンゼン(マドンナリリーの花婿・e01199)が一同を促す。幸いと言っていいのか現時点ではわからないが、気合を発している敵の居場所は、容易にわかる。
 そして、ケルベロスたちが急ぎ進む間にも、強烈な気合が放たれ、爆発音が続く。
「はーっ、やっ!」
「あ……わかった」
 不意にリフィルディード・ラクシュエル(集弾刀攻・e25284)が、天を仰いで呟いた。
「鳥だ……鳥を射てるんだ」
「……は?」
 期せずして、全員が足を止め、一斉に天を仰ぐ。
 確かに、一見すると気合の主は無数の矢を何もない空に向けて射ているようだが、よく見ると大小さまざまな鳥が逃げ惑っており、矢が鳥に当たると爆発を起こしている。
「えーと……そりゃまあ、普通の弓技を見せるなら、鳥を射てみせるってのもアリだろうけど」
 複雑な表情で、浜咲・アルメリア(捧花・e27886)が唸る。
「仮にもデウスエクスが、爆発する矢を使って……なんとも微妙ね」
「ううむ、まあ、人を射るより鳥を射る方が、難しい標的だと言えないこともないが」
 もちろん、まぐれ当たりを狙うのではなく、個々の鳥を狙って射ているならの話だがな、と、弓術に造詣の深い雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)が、こちらも微妙な表情で応じる。
 するとエルネスタ・クロイツァー(下着屋の小さな夢魔・e02216)が、憤然とした口調で言い放つ。
「どっちにしたって、ムエキなセッショーだよ! カッコ悪いよ! やめさせなくちゃ!」(注:エルネスタちゃんは、悪という漢字を覚えたようです)
「そ、そうですね! 鳥なら的にして殺していいってもんじゃありません!」
 猟師さんが生活のため鳥を射て獲るならアリでしょうけど、デウスエクスがグラビティで粉々にして爆死させるなんてあんまりです、と、風戸・文香(エレクトリカ・e22917)が同調する。
 すると椚・暁人(吃驚仰天・e41542)が、ぼそりと呟く。
「どうせ鳥を撃つなら、いっそビルシャナでも撃ってくれれば、デウスエクス同士相打ちで手間がはぶけるんだけどなぁ」
「……その通りだが、残念ながらここにビルシャナはいない」
 いたらいたで厄介ではあるが、と、大真面目に応じ、ラハティエルが再び一同を促す。
「急ぐぞ」

●弓術一路……って厄介な
「はーっ、やっ!」
 ケルベロスたちが、ヘリオライダーが予知した現場に急行してみると、結局、弓術家ドリームイーターは生み出された場所からほとんど動いておらず、その傍らには、元になった弓術家が倒れている状態だった。
「……つまりこいつは、俺たちが来るまで、ずっと飽きもせず鳥を射ていたわけか」
 まあ、人里へ飛びだしていって一般人を虐殺されるよりはよほどマシだが、と呟くと、右院はドリームイーターが鳥を射た直後を狙って間合を詰める。
「悪いが邪魔をする。ケルベロスだ」
「ぐっ!」
 右院の重力蹴りを受け、ドリームイーターはよろめいて数歩さがる。
 そこへすかさずラハティエルが飛び込み、刃のような回し蹴りを放つ。
「間合は取らせん!」
「くっ、近づいて蹴るとは卑怯なり!」
 更に後退しながら、ドリームイーターは叫ぶ。飛び道具とは卑怯なり、というのは聞いたことがあるが、近づいて攻撃するのが卑怯というのは初めて聞くな、と、ラハティエルは大真面目に反応する。
 そしてリフィルディードが、愛銃『桜蘭』を早撃ち連射する。
「ならばお望み通り、間合を取って闘いましょう」
「うわっ! 銃とは卑怯なり!」
 バシバシと弾丸を受け、ドリームイーターは更に下がる。
(「……もう少し、離れてもらわないと」)
 万が一にも、被害者の弓術家さんを巻き添えにするわけにはいかない、と呟き、アルメリアは味方前衛の命中力を上昇させる。同時に彼女のサーヴァント、ウイングキャットの『すあま』が、前衛に状態異常耐性を付与する。
 そして真也は、ドリームイーターの正面に立ち、愛用の特殊な弓を異空間から召喚しながら呼びかける。
「弓による速射か。確かに素晴らしい技術だが、罪もない者を殺すために使われるのは良くないことだな」
 言い放つと、真也は氷属性の矢を放つ。左腕を射貫かれ、凍りつかされながらも、ドリームイーターは表情に喜色を浮かべて叫ぶ。
「やっと、まともに射術を競える者が来たか! いざ、尋常に勝負だ!」
(「うーむ、これはドリームイーター、しんやさんを強敵(とも)としてねらってくるかしら?」)
 物陰に身を隠したエルネスタが声には出さずに呟き、真也にオリジナルグラビティ『プライバシーミスト』を送る。(注:エルネスタちゃんは、強敵という漢字を覚えたようです。ただし、読みは「とも」だと思い込んでいます)
「みせられないよ!」
 説明しよう。『プライバシーミスト』とは、サキュバスミストを守りたい感情で透明化して対象を包み込み、磨りガラス越しのようにぼかすグラビティである。急所に当たりにくくなるが、効果中は対象の声がヘリウムガス吸引時のように甲高くなる。
 ……真也氏の渋くカッコいいセリフが台無しにならんか? 本人は気にしないかもしれんが。
 そして文香は念のため、自分たちが来た道にキープアウトテープを張る。ちなみに、騒ぎが起きているがデウスエクス事件なので現場に近づかないように、という警告は、ヘリオライダーから地元警察、自治体、報道へ送られている。
 一方、暁人は飛び込んで行って重力蹴りを打ち込み、彼のサーヴァント、ミミックの『はたろう』がドリームイーターの足にがぶりと噛みつく。
「うわっ、おのれ、邪魔をするな! 私は、あの弓使いと、弓術を競うのだ!」
「本物の弓術家さんがそう言うなら聞いてもいいけど、お前は偽者だから。俺たちが総掛かりで、ちゃんと倒すよ」
 飄々とした口調で、暁人は言い放つ。その言葉に、ドリームイーターの表情が歪む。
「偽者だと? 私のどこが、誰の偽者だというのだ! ぐおおおおおおおお!」
 絶叫すると、ドリームイーターは手にした弓……通常のものよりやや小ぶりな和弓に、文字通り矢継ぎ早に矢をつがえ、凄まじい勢いで次々と射放つ。
「邪魔者ども、失せろーっ! はーっ、やっ!」
(「わっ! きたっ!」)
 エルネスタが物陰で頭を抱え、身を縮める。ドリームイーターはケルベロスの後衛、真也、暁人、エルネスタに向け、列攻撃の矢を放ってきた。あわや、という瞬間、ディフェンダーの右院が真也、アルメリアが暁人、『すあま』がエルネスタを庇い、それぞれ攻撃を肩代わりして受ける。
「うわっ、いてっ、火ぃついた!」
 殺されたら死んじゃうとか怖すぎでしょ、と、定命化以来のヘタレ本性を垣間見せ、右院はオリジナルのヒールグラビティ『七色に輝く花(ナナイロニカガヤクハナ)』を発動する。
「セスルームニルで一輪摘んで、枯れる頃にはつぼみが七十七」
 在りし日のアスガルドを溢れんばかりに覆ったといわれるヴァナディースの花々の幻影が召喚され、右院自身を含む前衛を癒し、炎を消す。
 そしてラハティエルが、愛用のカタナソード『滅魔刀レガリア・サクラメントゥム』に地獄の炎をまとわりつかせ、猛然と斬りこむ。
「炎をつけるというのは……こうやるのだ!」
 なんせラハティエルは、オラトリオ定命化の際、闘って世界を救うため自ら地獄へ墜ち、炎と拳の力を得たというツワモノであり、その闘志と気合は半端ない。彼が、その苛烈さを緩めるのは、愛する婚約者の前だけだという。
「ぐわっ!」
 痛烈な炎の一撃がドリームイーターの左腕を斬り飛ばすが、そこは相手も超常生命体デウスエクス。傷口からモザイクを溢れさせ、斬られた腕を繋ぎ止める。
「弓手を……失うわけにはいかん……弓術こそが……我がすべてなのだ」
「なるほど。ならば、これで」
 リフィルディードが愛銃『桜蘭』を撃ち放ち、躱したところへ斬霊刀『青桜嵐』でカウンター気味に斬りつける。
「基本……てね」
「ぐふうっ!」
 刀と銃を使った基本の攻撃『撃刃の型(ゲキジンノカタ)』を、リフィルディードは研鑽に研鑽を重ね、オリジナルグラビティの域まで磨き上げた。右袈裟に深々と肩から胴へと斬り下げられたドリームイーターは、再び傷口からモザイクを溢れさせ両断は防ぐが、目に見えて激しく消耗する。
 そしてアルメリアは、ドリームイーターが充分に被害者から離れたと判断。あらためて声掛けをする。
「僭越ながら、お手合わせを願いたく。叢雲流霊華術、皆伝、浜咲・アルメリア。推して参るわ」
「くっ……弓使い以外、用はない……と、言っても無駄か……」
 呻くドリームイーターを注意深く見据え、アルメリアは自分を含む前衛に治癒を重ね掛けする。一方『すあま』は、果敢に飛び込んでドリームイーターの顔を引っ掻く。
「ぐっ……おのれ、猫の分歳で……」
「……お前の速射、想像以上のものだ。あれだけの技を得るまでには、相当な努力と鍛錬を積んできたのだろう」
 真也が語り掛け、ドリームイーターはよろめきつつも身を起こす。不自然に甲高い声なのが残念だが、言う方も聞く方も特に気にしてはいないようだ。
「わかるか! 私の努力と鍛錬が、お前にはわかるか!」
「ああ。だが、それを悪用される前に、ここで止めねばな」
 努力鍛錬したのは、お前ではない。お前の元になった被害者だ、と、真也は声には出さずに続ける。生まれたばかりのドリームイーターの自我とか記憶とかがどうなっているのかは定かではないが、一部でも被害者から引き継いでいるとしたら、それは悲劇であると同時に冒涜でもある、と真也は思う。
「ゆくぞ」
 愛刀『誠義兼定(せいぎかねさだ)』で斬りつけようか、と、一瞬思ったが、真也は敢えてオリジナルグラビティ『黒光の暗黒螺旋剣(フラガラッハ)』を発動させる。
「確かに素晴らしい技術だ。だが、速射さえできればいいというものではない」
 宣告すると、真也はいきなり間合を開ける。その距離、およそ3000メートル。しかし、戦場から離れてはいないのだから、何か空間を歪めてでもいるのだろうか。
「黒光の暗黒螺旋剣よ。その力をもって、敵を亡き者にせよ」
 真也は異空間から黒く光る螺旋剣を召喚し、左手に持つ。そして、右手に持った弓につがえ、弦を引き絞ると剣は矢のように細長く伸びる。
「受けよ、黒光の暗黒螺旋剣(フラガラッハ)!」
 気合とともに放たれた剣は、3000メートルの間合を一瞬にして飛び抜ける。その速度、およそマッハ10。魔力のオーラを伴い、自ら標的を追う黒光の暗黒螺旋剣(フラガラッハ)を躱すことは、何者にもできない。
「……み……見事!」
 黒い螺旋剣をまともに受け、喉元を射貫かれたドリームイーターは、賞賛の言葉とともにどす黒い血を口から勢いよく大量に吐く。
 これで終わったと誰もが思ったが、射た当人の真也だけは首を横に振る。
「まだだ。蛇はしぶとい。まがりなりにも竜であれば、なおのことだ」
 いや、この敵ドラゴンじゃないですし、ドラゴン配下デウスエクスでもないですが、と文香が言いかかったが、それより先に、ドリームイーターは喉元を貫いた剣を強引に引き抜く。
「我が術……遥かに及ばず……弓術の道……深遠なり……だが、だからこそ……死ぬわけにはいかない。生きて……どこまでも……術を磨かねば……」
「見上げた根性だけど、生きのびて技を磨く資格があるのは本物さんの方だから」
 言い放って、暁人がオリジナルグラビティ『暗流縛破(アンリュウバクハ)』を放つ。一見、ケルベロスチェインのように見えるが、実は体内のグラビティ・チェインを鎖のように編み込み、手から放出したものが、瀕死のドリームイーターに襲い掛かる。
「影を縫い、喰らい付け! 暗流縛破!」
 暁人の掛け声に合わせ、グラビティ・チェインの鎖は空中で飛翔する方向と角度を変え、相手の死角を突く。背中から胸を貫かれ、ドリームイーターは再びどす黒い血を吐く。
「ま……まだだ……まだ……」
「おのれしぶとい! 回復されると厄介ですね! ここは頑張ってとどめ刺します!」
 飛び道具も接近戦も得意じゃないですけど、そんなこと言ってられないですね、と、文香が腰ベルトから引き抜いた愛用のハンダゴテを構える。
「良い感じに温まってきたわ!」
 一部、まともな武術志向の者の表情が微妙になったような気もするが、文香としては、なりふり構っちゃいられない。最も手に慣れた道具に、ありったけのグラビティを籠めて攻撃するオリジナルグラビティ『ソルダリンアイロン』を発動させ、彼女はドリームイーターへと突撃する。
「いっけえっ!」
「ぐ……ぐわあっ!」
 もう、ノリはほとんど短刀(ドス)構えて突っ込んでくヤクザ屋さんの鉄砲玉。グラビティが籠って高熱を帯びたハンダゴテの先端が。ドリームイーターの腹部を突き破り、炎をあげる。
「おのれぇ……!」
 ドリームイーターはほぼ反射的に文香を突き飛ばしたが、次の瞬間、腹部から噴き上がった炎がその全身を焼き焦がす。突き飛ばされて尻餅をついたものの、結果的に無駄なやけどをしないで済んだ文香は、半ば呆然として燃え上がるドリームイーターを見やる。
「やった……当たった……今度こそ……」
 呟きながらも、文香本人は知っている。『ソルダリンアイロン』を仕掛ける時に出た命中率は50%。当たるか外れるかは、半々だったのだ。
(「もうちょっと鍛えないと、いけませんね」)
 言葉にはせず呟いて、文香は立ち上がり、握りしめていたハンダゴテのスイッチを切って腰ベルトに収めた。

作者:秋津透 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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