●神聖なる植物
「ねぇ、知ってる? 楢の木にできた宿木はとても神聖なんだよ」
古代ケルト族のドルイド曰く、宿木は神聖な植物でありとのこと。ドルイド達がもっとも神聖視するオーク――楢の木に宿る物は何よりも珍重されたという。
恋人の孝とともに裏山の遊歩道を歩いていた唯は、楢の木にできた宿木を見つけ嬉しそうにそう語った。
クリスマスも近い。聖なる夜に、この神聖な木の下で恋人と寄り添うことができたら――唯はそんなロマンスを想像しウットリとしていた。
そんな仲睦まじい二人の上空に、斧をもった攻性植物――鬼百合の陽ちゃんが現れた。
「仲よさそうね。それじゃパパッと二人には生贄になってもらいましょ」
鬼百合の陽ちゃんが謎の花粉を宿木に振りかける。孝と唯は気づかない。
「そろそろ行こうか」
「うん」
宿木から目を離し、先へ進もうとする二人。
その瞬間、宿木が肥大化し動き出す。楢の木ごと取り込み巨大化するその様、まさに攻性植物。さらなる力を求め、二人に襲いかかる。
「この先には大きなモミの木もあるらしいよ」
そう唯が言って孝の方を振り向くと同時、伸びた宿木の枝が孝を捕縛し取り込んだ。
「た、孝! いや! 誰か――ッ!」
突然の出来事に狂乱しながら、生命の危機を感じた唯は一人助けを求めながら逃げ出した。
「あらら、一人逃げちゃった。まぁいっか」
鬼百合の陽ちゃんは気にした様子もなくそう言うと、攻性植物に指示をだす。
「それじゃ、景気よくいっちゃおー。山を降りたら自然を破壊してきた文明とか、ドッカーンって破壊しちゃってね!」
それだけ言うと、鬼百合の陽ちゃんはその場から立ち去った。
後に残された宿木の攻性植物は、孝をその果実の中の粘着質なにかわ状の繊維に包み込むと、遊歩道を歩き出す。
その先には、市街地が見えていた――。
●
「神聖な宿木の反乱。クリスマスを前にカップルを襲うなんて、嫌な予感が当たってしまったわね」
リリア・カサブランカ(グロリオサの花嫁・e00241)が集まった番犬達にそう告げると事態の説明を始める。
「宮城県の市街地そばの裏山で、宿木の攻性植物が発生したわ。最近よく耳にする、謎の胞子をばらまく、人型の攻性植物が現れた影響でしょうね」
リリアの言葉に続くように資料を配付し終えたクーリャ・リリルノア(銀曜のヘリオライダー・en0262)が口を開く。
「はいなのです。人型の攻性植物が撒いた胞子を受けた宿木が攻性植物に変化し、その場に居たカップルの内、男性の方を襲って、宿主にしてしまったのです。
皆さんには急ぎ現場に向かって、男性を宿主にした攻性植物を倒して欲しいのです」
クーリャは資料を読み進めながら敵についての情報を伝える。
「攻性植物は一体のみなのです。配下や、人型の攻性植物は現場にいないのです」
攻性植物は、戦場を侵食する攻撃に、捕食し毒を注入する攻撃、花弁から熱線を放つ攻撃をしてくるようだ。
そして取り込まれた人は攻性植物と一体化してしまっている。
例によって、普通に攻性植物を倒すと一緒に死んでしまうだろう。
「攻性植物にヒールを掛けながら戦い、回復不能ダメージを限界まで蓄積させることで、戦闘終了後に取り込まれていた人を救出できる可能性が生まれるのです」
粘り強く、諦めずに戦い続ける必要があるだろう。攻性植物へのヒールが足らないという状況にならないように注意したい。
「攻性植物に寄生されてしまった人を救うのは非常に難しいと思うのです。ですけど、もし可能ならば救出してあげて欲しいのです。どうか、皆さんのお力を貸してくださいっ!」
「ええ、必ず救出してクリスマスを迎えられるようにしてあげましょう」
一礼するクーリャにリリアと番犬達は頷きあうのだった。
参加者 | |
---|---|
御門・心(オリエンタリス・e00849) |
上月・紫緒(テンプティマイソロジー・e01167) |
上里・もも(遍く照らせ・e08616) |
比良坂・陸也(化け狸・e28489) |
如月・環(プライドバウト・e29408) |
ユリス・ミルククォーツ(蛍狩りの魄・e37164) |
簾森・夜江(残月・e37211) |
カレン・フェブラリー(七色の妖精・e40065) |
●綻び
攻性植物に取り込まれてしまった被害者を救出するために、番犬達は現場となった遊歩道へと足を踏み入れる。
遊歩道を駆けながら比良坂・陸也(化け狸・e28489)は念のためと、キープアウトテープを張り巡らせていった。
「愛し合ってる二人の幸せな時間を引き裂くなんて、許せないよ」
「紫緒にも大切な恋人が居るんです。彼が居なくなった時、とても怖くて不安でした」
カレン・フェブラリー(七色の妖精・e40065)の憤りに上月・紫緒(テンプティマイソロジー・e01167)が答える。
「だから絶対に救い出さなきゃ。恋人同士は幸せにならなきゃダメなんです」
「うんうん」
「せっかくもうすぐクリスマスなんだ。仲良く楽しく過ごさせたいもんな!」
二人の会話に上里・もも(遍く照らせ・e08616)も加わり、ほどよく緊張がほぐれていった。
「ッ! 居たッスよ!」
如月・環(プライドバウト・e29408)が指を差し、仲間達に伝える。その先に目標の攻性植物。その姿はまるで巨大な鳥の巣のよう。枝葉が球体に丸まりモゾモゾと動いている。
その中心。果実のような種子の中に、取り込まれた男性――孝の顔が見えた。
「意識はなさそうだな。さっさと助けてやろうぜ」
「そうですね。この手の依頼は何度か経験してきましたし、やり方はだいたいわかってきてるです」
陸也に同意するように、ユリス・ミルククォーツ(蛍狩りの魄・e37164)が頷いた。
「心さん準備はいい?」
「はい、頑張りましょう」
ももと御門・心(オリエンタリス・e00849)が互いに声を掛ける。
「では、参りましょう」
簾森・夜江(残月・e37211)が武器を構えると、仲間達もそれに続く。
その気配に攻性植物が反応する。枝葉を伸ばし、殺気を纏わせる。
「あっちも気づいたな。くるぞ!」
鞭のように撓る枝葉が襲い来る。番犬達は一斉に散会するとそれを回避し反撃の体勢を整える。
「支援いくッスよ! ブレイブマインッ! ボンバーッ!」
環の士気を高めるカラフルな爆風を合図に戦闘が始まった。
――作戦はこの手の依頼では基本となる、ヒール不能ダメージの蓄積による撃破だ。
その為に、あえて敵である攻性植物にヒールグラビティを与え、回復しながら徐々に回復不能のダメージを蓄積させていくという戦い方を行う。
今回集まった全員が、過去攻性植物との戦いを経て、その基本方針の戦闘経験を得ている。
その経験が、本戦闘においても有効であったと言って良いだろう。
番犬達は慣れたように、効率的な戦いを仕掛けていく。
――だが、そこに小さな綻びが生まれる。
「――ッ! ポジションが乱れてる?」
「前衛がサーヴァント含めて七名だけど、大丈夫ですか?」
攻撃が続けられる中、味方との連携を密にしていたカレンとユリスが声を上げる。
紫緒、カレン、夜江のクラッシャー三名にディフェンダー二名と二体という前衛過多とも思われる陣形だ。
「いけません。攻撃が多すぎます」
仲間を治癒する心が攻性植物へのダメージを見て危険であると口にする。
事前に状況を想定しているのであれば、ポジションの変更も可能であったかもしれない。だが、咄嗟の出来事に対してポジションの変更は余計に状況を悪くするだけだ。
番犬達は、今の陣形のまま戦いを進めなくてはならない。
綻びはそれだけではない。
「うおおー!? マインドシールドのはずが、マインドソードに!?」
ももが突然叫びだし、生み出された光の剣に驚愕していた。
それは痛恨のグラビティ活性化ミス。
本来であればマインドシールドで攻性植物の回復を担当するはずだったももは、回復手段をなくし、呆然とする。
「ッ! 皆落ち着け!」
「とにかく、体勢を立て直すッス!」
混乱する場を鎮めようと陸也と環が声を上げる。
「いけない、攻性植物への回復が追いつきません」
「誰か、回復のフォローを!」
心とユリスが回復の少なさに言及し、仲間へと助けを呼ぶ。
それは、油断か慢心か。
個の小さなミスは、全体へと波及し、綻びを生み出していく。
焦り戸惑う番犬達に、攻性植物は容赦なくその力を奮うのだった――。
●挽回
攻性植物が埋葬形態へと変貌し、戦場を侵食し飲み込む。
催眠に似た効果を受けふらつく番犬達に、光花形態から放たれる光の柱。
焼け付く肌の傷みを感じながら、それでも番犬達は諦めるわけにはいかなかった。
「とにかく状況確認優先でいきましょう! 攻撃は気をつけて!」
ユリスが全体に聞こえるように発声しながら、光の盾を攻性植物へと付与していく。
伸びる枝葉を搔い潜りながら光の刃を振るう夜江。割れた硝子のように蒼々と散る瞬きが攻性植物の神経を痺れさせる。
「必ず救出してみせます。今しばらくの辛抱です」
夜江の言葉に孝の眉根がピクリと動く。
「少し攻撃当てるね!」
カレンも仲間達に積極的に声をかけ、連携を強化していく。
一時の混乱からすぐさま立ち直れたのは、ユリスとカレンの声かけの影響が大きい。
二人が仲間との連携を常に意識し、伝えることで、体勢を整える足がかりとなっていた。
カレンは拾った小石を礫とし、目にも止まらぬ早さで打ち出すと、攻撃の為に伸びる枝葉を次々粉砕していく。
「上里さんのフォローを!」
「任せろ!」
周囲を確認したカレンの言葉に陸也が答える。
仲間を庇い光花より放たれる光にももが焼かれているのを見るや否や、陸也は半透明の御業を生み出し、鎧としてももを守護させる。
守護を受けたももはすぐさま大地を蹴り間合いを取ると、裂帛の気合いを込め叫び、肌を焼く炎を消し去っていく。
ももは自身のミスを悔やむ。だが、今は戦いに集中することが重要だと理解していた。
ただ謝るのではなく、行動し、結果を見せる。それが必要なのだと思った。
そしてそれは、仲間達に確かに伝わっていた。
今回の依頼、ポジションのこともそうだが、番犬達は慣れた依頼ということもあり、どこか万全であると油断していた面があったかもしれない。
その油断が仲間全体を、そして被害者を危険に晒してしまった。
――ミスはどんな時にも起こりうる。
で、あれば。ミスを攻めるのではなく、臨機応変に、ミスをフォローし合うのが仲間だ。
故に、もものミスを攻めることはなく、ポジションも現状のままで対応していく。
効率的な戦いをすることができず、長期戦を予感させる戦いであったが、番犬達は覚悟を決めていた。
最後まで諦めず、被害者を救出してみせる、と。
特にその想いが強いのは紫緒だ。
「私は絶対に恋人同士の幸せを取り戻してみせます――!」
恋人に貰ったマインドリングから光の剣を生み出すと攻性植物を斬りつける。
――以前は愛と憎しみに狂っていた。
けれどそんな紫緒を恋人であるオラトリオが救い出した。だからこそ今、しっかりと前を向いて戦えるのだ。
斬りつけた傍から今度は光の盾を生み出し、攻性植物を癒やし守護する紫緒。
ダメージをできるかぎり軽減し、被害者救出の足がかりとしていく。
「貴方達も今きっととても苦しくて辛くて寂しいでしょう」
恋人と連絡が取れなくなったあの時を思い出す。
そんな悲しい思いは決してさせない。マインドリングを強く握る。
「待っていて下さい、必ず助け出します」
意識を失う孝にその声はきっと届いたはずだ。
救出への誓いを邪魔するように攻性植物が枝葉を撓らせる。
「させねッスよ!」
飛び出した環とサーヴァントのシハンがその身を盾に攻撃を受け止める。
「回復、ちょっと足りてないッスね、ほら!」
環もまた守護の盾を攻性植物に付与し、その傷を癒やしていく。
「治癒しますね」
紫がかった白髪に咲いたレンテンローズの花が揺れ、白羽と黒炎、対になった翼が広がる。攻性植物の攻撃により傷つく仲間を癒やすのは心だ。
状態異常を多く付与される今回の相手に対し、災い取り除く癒やしの力を全開に発揮していく。
減衰が発生する前衛の治癒は仲間のフォローも入っていたが、それでも一人回復役として仲間を癒やす心の役目を重大だった。
大人しく控えめな心だが、的確に回復の優先度をつけ、仲間達を支えていく。
「まだまだ、がんばってください」
また、癒やしの力を譲渡し、仲間の癒やしの力を補うグラビティが、長期戦に向かうにつれその効果を大きく発揮しだしていた。
序盤こそ回復の手が足らない状況だったが、徐々にヒールワークが安定してきたと言える。
――番犬達は、細いロープの上を渡るような極度の緊張の中、行動を選択し戦いを続けていた。
一度瓦解しかけた戦況を立て直すのは困難であったが、声を掛け合い、互いをフォローし合う個々の働きにより、ようやく体勢を整えることができた。
頬を汗が流れ落ちる。
疲労困憊なれど、敵は今だ健在。
だが決して折れぬ意思を牙へと変えて、番犬達は挑み続ける――。
●戦いの果て
果ての見えない攻性植物との長期戦。しかし、番犬達は次第に余裕を取り戻してきていた。
洗練されていく動き、以心伝心の連携。番犬として戦ってきた戦闘経験が遺憾なく発揮されていく。
灼熱の光線が肌を焼き血を焦がす。疲弊してはいるものの、膝を付く者は誰一人いなかった。
「カードオープンッ、俺が選ぶは炎の符ッ! 命の炎よ、冷たき傷を溶かし癒せッ!」
環が燃え盛る炎のカードを手に叫ぶ。
烈火の炎が味方を包み、攻性植物が撒く災厄の炎を浄化し消していく。
「女の子の悲しんでる顔をいつまでも続けさせるのは、男として許せねッスからね!」
大地を蹴り攻性植物に肉薄するとその枝葉を鋼の鬼と化した拳で殴りつける。
「絶対助け出して彼女ん元連れて帰ってやるッスよ!」
「ええ、絶対に諦めませんです!」
見出した陣形に破魔力を与え、自らも電光石火の蹴りを見舞うユリス。
反撃の光花光線を素早い身のこなしで回避すると、守護の盾を生み出し、攻性植物へ与えていく。
「参ります」
そこへ夜江とサーヴァントのウイングキャットが疾駆する。
ウイングキャットの尻尾のリングが打ち出され攻性植物の気を逸らすと、伸びる枝葉を躱しながら肉薄し、生み出した光の剣で攻性植物についた傷口を正確に切り広げる。さらにイヌワシのファミリアを打ち出し、より傷口が開くように抉っていった。
攻性植物が反撃の一打を繰り出すが、夜江は表情を変えることなくその一打を受けきる。
それは、他人の命の為ならば己の命も顧みないという強い意志の現れだ。
夜江と入れ替わるようにカレンが接近する。
フェイントに無数の斬撃を放ち、攻性植物が体勢を崩したところで弧を描く斬撃を一閃する。さらに流れるように動くと妖刀『Lunatic Light』に新月の魔法の力で透明の刃を纏わせ、視認困難な斬撃により急所を切り開いていく。
もがき苦しむ攻性植物の枝葉が襲い来る。
「――絶対にあきらめるもんか」
決意を口にし、その悉くをその身に受けながら、カレンは飛び上がり攻性植物の頭上を取ると影の魔力を籠めた斬撃を放った。
「カミサマカミサマオイノリモウシアゲマス オレラノメセンマデオリテクレ」
陸也の祈祷により具現化された霧が攻性植物を侵蝕する。そうして攻性植物の武器たる枝葉を奪い取ると、錫杖を手に攻性植物に殴りかかる。
「もうちょっとだ。辛抱してくれよ」
錫杖に込められた呪が攻性植物の力をさらに封じ込めていった。
しかし攻性植物もまた最後の力を振り絞り、一際大きな光花を咲かせる。
直撃を覚悟する陸也。だがそのまえに陸也を庇うようにももが割って入った。
放たれる一撃を全身全霊を持って受け止める。
「負けるかぁ――ッ!」
裂帛の気合い一閃。炎を消し飛ばし、サーヴァントのスサノオと共に、傷つきながら生み出した光の剣でその光花を斬り落とす。
「ももさんっ」
すぐに心がももへと癒やしのオーラを与え、傷を癒やす。
そして攻性植物の状態を確認すると、「これが最後ですね」と癒やしの力を集めたオーラを攻性植物へと譲渡した。
最後の回復を受けた攻性植物に向け、紫緒が走る。
「恋人達はクリスマスに幸せに過ごすことが、絶対に必要なんです」
囚われた恋人を救うことはこの場にいる番犬達の想いだ。
決して諦めることなく、最後まで救出を望み戦い続けた番犬達の強い意志が、ここに結実する。
紫緒は浸食される大地を躱しながら攻性植物へと肉薄すると、その背に生える一対の黒翼に魔力を籠め大きく広げる。
「――恋する人には幸せを」
自らの信じる信念を呟き、右足を軸に舞うように翼を振り抜く。
強大な黒の奔流が、逃げようとその身体を動かす攻性植物を飲み込んだ。
紫緒が奏でる夜の舞踏が終わる時、ついに攻性植物はその動きを止めた。
長き戦いは、こうして決着の時を迎えるのだった――。
「ヤドリギは木の葉が落ちた後もそこに寄生し葉を茂らせるので生命の象徴なのだとか。……遠くから見たら鳥の巣みたいでちょっとひょうきんな感じがしますよね」
ユリスが遊歩道に並んだ楢の木にある宿木を見ながら、くすりと笑った。
話を聞いていた心も、微笑みを浮かべる。
「それにしても、攻性植物は――あんまり賢くは無いようですね。この星の植物は『戦わない』事で『生きる』事に注力し、棘も毒もない植物さえ今日まで滅びず生き続けてきた。武器を持ち争う者は討ち斃される。ただただ、辛抱強く美しく生きるという選択をした、この星の植物こそ最強だというのに」
枯れ木となりその活動を止めた攻性植物に目をやりユリスは人知れず呟く。
「そう、かもしれないですね」
討ち斃された攻性植物を眺めながら、心もまた小さく頷くのだった。
「うーん」
「あっ、気がついた」
孝を救助して、真っ先に介抱しヒールしていたカレンが、意識を取り戻した孝に状況の確認を促す。
「俺は……――そうだ唯は!?」
「あの子、待ってるよ」
カレンの視線の先、連絡を受け警察と共に駆けつけた唯の姿があった。
「あぁ――孝! よかった!」
「ごめん、心配かけたね」
抱き合い、安堵に涙する二人を見ながら陸也が言葉を紡ぐ。
「不幸ではあったが、だからこそお互いの大事さを認識できたって考えるべきか」
世の中何があるかわからない。だからこそ大事な相手には時間を惜しんではならないと、陸也は思った。
いつまでも抱き合い続ける二人を見てももが笑いながら声を掛ける。
「カップルだ、リア充だ!! お幸せにな、良いクリスマスを過ごせよ!」
「はいこれ、宿木の装飾。安全だからよかったらもらっていってね」
カレンが記念品でも送るように渡すと孝は笑いながら受け取った。
紫緒はそんな幸せそうな二人を見て、満足げに頷く。
透き通った一陣の風が吹き抜ける。
あぁ、救えてよかった。疲労する身体を支える番犬達に笑顔が浮かんだ。
作者:澤見夜行 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
|
種類:
公開:2017年12月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|