イケメンホストを大変身!

作者:なちゅい

●『炎彩使い』による選定の炎
 福岡県福岡市中洲。
 歓楽街としても知られるこの地にあるホストクラブに、とあるホストがいる。
 金髪、甘いマスクを持つ美青年、西之園・椋。
 そのスマイルは女性客の人気も高く、さらに、優れた接待テクニックを持っていて、勤めるホストクラブではかなりの指名率の高さを誇る。
 そんな彼だが……、仕事が終わればその下衆な本性を露わにして。
「しょっぱい客ばいね。もうちっと絞れるっち思ったとけ」
 同僚達には、西之園は毛嫌いすらされている。
 とにかく、性格が悪い。自分以外全てを見下す男で、裏では客の悪口をべらべらと喋る最低な男だ。
 そんな西之園だから、常日頃から1人で帰ることが多い。
 その日もタクシーで自宅マンションへ。建物入り口に入ったタイミングで、そっと彼に近寄ってきたのは、タールの翼を背に生やした踊り子のような姿の女性だった。
「いい男ね。ちょっとだけいいかも」
 くすりと笑ったその女性は暗い瞳を向けた西之園へと腕を突き出すと、燃え上がる青い炎が彼の体を包み込む。
「う、うあああああっ!」
 身の包む炎で苦しむ西之園の体が作り変えられて行く。長身な彼だったが、その体はさらに大きくなり、3mほどにまで膨れ上がった。
「なかなか、良い見た目のエインヘリアルにできたわね。やっぱり、エインヘリアルなら外見にこだわらないとよね」
「なんね、これ……。ばり乾くっちゃけど……!」
 事も無げに告げる女性はさらに笑って、苦しむ西之園へと言い放つ。
「でも、見掛け倒しはダメだから、とっととグラビティ・チェインを奪ってきてね。そしたら、迎えに来てあげる」
 そんな言葉を残し、女性……シャイターン『炎彩使い』の1人、青のホスフィンはこの場から姿を消していったのだった。

 シャイターンの『炎彩使い』の出現。それを受けてヘリポートに集まるケルベロス達へ、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が歩み寄る。
「皆、寒い中、お疲れ様」
 彼女は忙しなく日本各地を動くケルベロス達を労う為に、ホット缶を振舞う。
 お茶、コーヒーがほとんどだが、コーンスープにレモネード、しるこなんてものもある。
 ともあれ、温まりながらも、一行はリーゼリットの話に耳を傾けることにした。
「動き出したのは、有力なシャイターン『炎彩使い』だね」
 シャイターンの女性達は死者の泉の力を操り、その炎で燃やし尽くした男性をその場でエインヘリアルにすることができるようだ。
 出現したエインヘリアルはグラビティ・チェインが枯渇した状態のようで、人間を殺してグラビティ・チェインを奪おうと暴れ出すらしい。
「取り急ぎ現場に向かうから、皆には暴れるエインヘリアルの撃破をお願いしたいんだ」
 エインヘリアルの出現は深夜1時ごろ。福岡県福岡市中洲に現れる。
 歓楽街であり、夜は人通りも少なくない。この為、ある程度人払いなどの対策は必須と言えるだろう。
「相手は1体。元はホストらしく、その美貌を活かして攻撃することがあるよ」
 どこからか取り出したグラスの中身を飲み干して自らの力を高め、ナイフでの斬りかかりとフェロモンを含むウインクといった手段でグラビティを使ってくる。
 元となった人物はホストとしてはかなり優秀だったらしいが、非常にプライドが高く、かなり性格に難がある男のようだ。
「『自身は優れていて、全ての人間は自分の糧となるのは当然』なんて考えを持っている相手だね」
 エインヘリアルとなり、殺人すらも厭わぬ彼をそのままにしておくわけにはいかない。
 また、倒した後は周辺のヒール作業を行いたい。
 深夜ではあるが、ケルベロスや警察などの誘導で近隣住民とて避難することにはなる。歌声や演奏などで癒すことができれば、現地の人々を安心させることができるだろう。
 予断を許さぬ状況だが、リーゼリットは最後にこうケルベロス達へと告げる。
「キミ達ケルベロスがエインヘリアルに屈することはないと、ボクは信じているからね」
 にこりと笑う彼女はケルベロスに1人ずつ握手を交わし、空になったホット缶を回収してから自身のヘリオンの中に招き入れるのだった。


参加者
シルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)
因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)
四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)
立花・吹雪(一姫刀閃・e13677)
シリル・オランド(パッサージュ・e17815)
グレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932)
ウエン・ローレンス(日向に咲く・e32716)

■リプレイ

●歓楽街に出現した人外ホスト
 福岡県福岡市中洲。
 夜中にこの地を訪れたケルベロス達は、即座に作戦を開始する。
 青い薔薇を金髪ストレートの髪に咲かせたローザマリア・クライツァール(双裁劒姫・e02948)は現場に向かう途中で歓楽街の交番へと立ち寄り、警察に協力を要請していた。
 他のメンバーは直接、街に現われたデウスエクスの元を目指す。
「ぬしらは、おいの力になるったい!」
 叫ぶ人間離れした長身の男。白いスーツを纏ったそいつは、エインヘリアルと成り果てたホスト、西之園・椋だ。
 突然のデウスエクス出現に歓楽街はパニックになってしまうが、すぐにケルベロス達が飛び込んでくる。
 全身をフィルムスーツで覆い隠すシルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)、妖刀を構える白い肌の少女、四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)が敵を挟み込むように気を引く。
「何故、こんなエインヘリアルばかり増やしてるのか知りませんが……。デウスエクスであるなら、ぶっ殺すだけですよ……!」
 フルフェイスの下から、シルフィディアは憎々しげに相手を睨みつける。
「ホストとしての能力は、なかなかだったみたいだけれど……」
 やってきた千里も、自分の能力に自信と自惚れを持つ相手を注視し、茶色の瞳を緋色に染めていた。
 他のメンバー達は、その近辺で人々に避難を促す。
「皆さん! 僕達はケルベロスです。ここは危険ですので、出来るだけ遠くに避難して下さい!」
 柔らかな笑みを浮かべたウエン・ローレンス(日向に咲く・e32716)は、拡声器を持って叫んでいた。
「デウスエクスだよ! みんなでっかい白いのから離れて!」
 割り込みヴォイスで呼びかける因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)。ケルベロスの指示を受け、人々はこの場から離れるように逃げて行く。
 面倒くさがり屋のグレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932)も、この場は人々の救出にと動いていた。
「殺界、お願いするねぇ」
 逃げ遅れた人の救出に向かうグレイシアの声に応じ、シリル・オランド(パッサージュ・e17815)が周囲に殺界を展開する。
 さらに人々の避難が加速する中、緩やかな笑みを浮かるシリル自身も敵の囲いに加わっていく。
 黒髪長髪の剣士、立花・吹雪(一姫刀閃・e13677)も隣人力を駆使して呼びかける。ホストに礼を言われた彼女は思わず、照れてしまっていた様子だ。
 その時、デウスエクス登場の影響か、建物の一角が崩れる。一般人に瓦礫が落下しているのを見て、ウエンがすかさず飛び込んでいく。
「……っ、大丈夫ですか?」
 庇われた若い女性は、瓦礫が背中を強打した彼を気遣って。
「僕は平気です」
 微笑むウエン。女性は頑張ってと小さく彼を励まし、この場を去っていく。
 さて、人々の離れ行く場所に立つエインヘリアルの付近に、続々とケルベロスが集まってくる。
「高身長ってモテる条件の一つらしいけど、あそこまでデカイのもどうなんだろうね?」
 自身の倍近い体躯の相手を見上げ、白兎が首を傾げる。
「なんば言いよっとね……!」
 牽制するケルベロスに、敵も苛立ちを隠さない。
「幾らカッコ良くてもこれじゃあ……。なんかいたたまれないねぇ……」
 確かに甘いマスクを持つ相手だが、こういう変身の仕方はちょっと遠慮したいとグレイシアは大きく首を振る。
「うざったかね……、俺が接待してあげるよ!」
 ホスト口調に切り替えて声を荒げるエインヘリアルは、ケルベロスに向かって刃を向けてくるのだった。

●人を辞めたホストの接待
 敵の襲撃に先んじて飛び上がったシルフィディアは、長身のエインヘリアル、西之園に襲い掛かる。
「心の醜いゴミ野郎が……、顔ももっと醜く整形してやりますよ……!」
 シルフィディアはその顔面目掛け、流星の蹴りを叩き込んでいく。例え、元人間であろうと、彼女に容赦はない。
 その後方からは、シリルが構えたバスターライフルからエネルギー光弾を発射した。
「いやあ、もっとイケメンにしてやろうかなって」
 続けてヒットした一撃に顔を傷つけられ、相手はシリルへと視線を走らせる。
「でも、まだ『なってない』。なんてね」
 微笑を浮かべたシリルが一旦下がり、グレイシアが凛々しい態度で前に出た。
「こう言う変身の仕方はちょっと遠慮したいねぇ……」
 間延びした口調で相手に呼びかけたグレイシアは、前方へと手を伸ばして。
「動けなくしてあげるねぇ」
 掌から発せられる全てを凍りつかせる冷気。それを浴びてなお、エインヘリアルはケルベロスへと飛び込んできた。
「お相手いたします」
 敵は一言断わり、手にするナイフで切りかかってくる。
「僕にもお相手願いたいですねぇ、退屈してしまいますから」
 それを、周辺の避難を終えて駆けつけてきたウエンがしっかりと受け止める。体力が吸われる感触に彼は僅かに寒気を覚えたが、すぐに攻撃へと転じた。
「あなた方の勝手には致しませんので」
 ウエンも惨殺ナイフを握り、仲間の与えた傷を斬り広げるようにして斬撃を見舞っていく。
(「勝つために戦うのではなく、守るために戦う事。それが僕の戦い方です」)
 いきなり仲間の体力を奪おうとしてきた相手を見て、白兎はカラフルな爆発を巻き起こし、前線メンバーの士気を高める。
 先ほど、敵のうすらでかさを皮肉った白兎だが、本音では低身長なのを気にする彼のこと。
 エインヘリアルになる前から高身長だったらしい相手を、内心では羨みつつ立ち回る。
「エインへリアルとしてはどうだろうね……」
 獄炎『阿傍羅刹』を手に、刻まれたルーンを輝かせて自身に破壊の力を宿していた千里。支援を受けてさらに力を高めた彼女は、妖刀『千鬼』を抜いて敵に接していく。
「一つ私が評価してあげよう……」
 そして、『千鬼』の刀身に雷の霊力を纏わせ、千里は鋭い突きを繰り出した。
 その親友である吹雪。ウインクした敵がケルベロス達を惑わせようとしてくるのを、毅然とした態度で見つめる。
(「ジャマーによる催眠と、溜めた力の重ねがけは侮れません」)
 剣術を得意とする吹雪だが、今回、回復役として立ち回ることを選んだ。
「剣術だけではない事を見せましょう」
 仲間が倒れることを是とはしない吹雪は、愛刀ではない武器……九尾扇を持ってケルベロスの布陣を見定め、仲間達へと破魔の力を与えて行く。
 そして、人々の避難を警察に任せ、ローザマリアが最後に参戦する。
「むく、という名前の割に、無垢からは最も縁遠そうな相手ね」
 敵の名前を思い返しながら、ローザマリアは因果之劒【Answerer】を手にし、心と刃を一体として自身に破邪の力を宿す。
 仲間の攻撃の合間にローザマリアは刃に雷を帯びさせ、まさに雷の如き速さで敵の体を貫く。
「ぐぅぅっ……」
 呻くエインヘリアル。それにも耐え切ってみせたそいつはさらに刃を振るい、ケルベロスを攻め立ててくるのである。

 眠らぬ街にて、醜悪な本性を甘いマスクで覆い隠すエインヘリアルと、ケルベロス達は交戦を続けて。
「いただいてもよろしいですか?」
 小さく笑った西之園はグラスに液体を注ぎ、それを飲み干して自らの力を高める。できる限り最良の状態でケルベロスを接待しようというのだ。
 その上で、ジャマーとしてドレインを使う相手は、実に面倒な敵である。
「それって、ねちっこいってことかなあ? しぶといのはめんどいよ!」
 仲間がエインヘリアルのウインクに魅了されていないか気にかけつつ、白兎は攻撃を仕掛ける。
「そぉら、乾☆杯♪」
 街頭を使って敵の頭上に飛び上がった彼は、相手に酒を浴びせかけるが如く秘薬を注いでいく。
「この薬は傷にとっても効くんだ。とってもね」
 先祖代々受け継がれて改良されてきたその薬は確かに効くが、悪いほうに大きく作用する。
「ぐああぁっ!!」
 まるで傷口に海水を浴びせられ、太陽や風に晒されたような激痛がエインヘリアルの体を駆け巡る。
 相手の攻撃を抑えるように動くグレイシアも、電光石火の蹴りを繰り出していく。
 ただ、敵も大柄な体躯にもかかわらず、素早い身のこなしで彼の一蹴を避けて見せた。
「へぇ、よく動くねぇ」
 軽やかに動くホストにぬるっと対処しつつも、グレイシアはできる限り相手に痺れを与えようとする。
「生憎、楽しい気分にはなりませんねぇ」
 ホストの接待を受け、ウエンは本音で語った。正直、デウスエクスによるもてなしで気分がよくなるはずもないのだが。
 そのお返しにと、ウエンは解きづらいパズルのような光の箱で、エインヘリアルの体を包み込む。
「遊ぶつもりはありませんので!」
 彼はその内部に強力な電磁波を発生させ、西之園に痺れを与えた。
 苦しげな顔を見せていたエインヘリアルは、作り笑顔を浮かべてウインクしてくる。
「ご指名ありがとうございます」
 グラビティの込められた目配せは女性だけでなく、男性すら心を惑わす。
 すると、前線メンバーの頭の中に浮かぶ、エインヘリアルの糧とならんという邪念がメンバー達の思考を乱す。
 それを植え付けられた仲間を正気に戻すべく、吹雪はすっと息を吸い込んで。
「駆ける風の様に速く! 雷鳴の様に激しく! 疾風迅雷の勢いで駆け抜ける!」
 刀剣士である彼女は、操る霊力を歌声に乗せて魂の赴くままに歌い上げる。
 悲しいかな吹雪は音痴ではあるが、その歌に込められた想いと気迫は本物だ。
 ローザマリアも翼を広げてそのアシストに動き、仲間をオーロラの光で包む。光から漏れたメンバーには、白兎も仲間に分身の術を纏わせていた。
 それらによって仲間達は自我を取り戻し、相手に対する。
 シルフィディアは再度、相手に憎悪を抱き、「断骸剣・壊」で四肢を狙って断ち切らんと刃を振るう。
 エインヘリアルの立ち回りを見ていたシリルは、敵の体勢が気になったようで。
「背筋、伸ばそうとしすぎて逆に反り気味だ」
 その背中目掛け、軽やかに躍りかかった彼は光の剣で切りかかっていく。
 ケルベロスに威圧感を覚える敵へ、シルフィディアが露出させた地獄の炎を突きつけた。
「デウスエクスに堕ちた以上、貴様に更生の余地は無い……。死ね……!」
 大型の杭打ち機のように形を変えた地獄から、彼女は地獄の血液を濃縮させた灼熱の鉄杭をゼロ距離で射出する。
「くっ……」
 その身を駆け巡る激痛から逃れようとグラスに注いだ液体を飲み干すが、痛みを全てなくすには至らない。
 そこで、回復の手を止めた吹雪がマインドリングより出現させた剣を握っていた。
 同時に、息の合った動きで千里も妖刀を握って。
「お前のエインへリアルとしての能力は……、残念ながら並以下だったね……。――それじゃ、さよなら……」
 彼女は弓を引き絞るような所作で、弾いた刀から鋭く突きを繰り出す。
 光の剣と妖刀が時を同じくして、エインヘリアルの体を穿つ。
 ……だが、エインヘリアルは白いスーツを赤く染めながらも、倒れることを拒絶して堪えてみせる。
 敵が倒れていないと察したローザマリアは、応報之劒【Fragarach】を握る腕を重力から解き放って。
「その魂を、解放するわ――この花吹雪は、せめてもの餞よ」
 超高速で放たれた不可視の多段攻撃は真空破を伴い、エインヘリアルの体を切り刻む。
 ローザマリアが刃を納めると、周辺にはネオンに反射する刃がまるで花吹雪のように散っていた。
「――アンタがどんなにか悪人であったとしても、1人の人間の魂を救い得なかった事実を含めて忘れることはない」
 その言葉は、エインヘリアルには届かない。なぜなら、事切れた彼は、ゆっくりと地に向けて倒れこんでいたからだ。
「その魂は、アタシが記憶しておくわ」
 大きな音を立てて倒れたエインヘリアル。戦いの終わりと共に、千里の瞳も茶色に戻る。
「な、なんとか勝てましたね……。良かったです……!」
 元の臆病な性格に戻ったシルフィディアは、仲間に向けて喜びを露わにしていたのだった。

●ケルベロスによる演奏会
 歓楽街に残された戦闘による爪跡。
 ケルベロス達はその修復の為に動き始め、千里は『阿傍羅刹』に刻まれたルーンを輝かせる。
 一方で、グレイシアは手作業での修復に当たっていた。できるだけヒールで形を変えないようにと彼は配慮していたのである。
 また、白兎はカラフルな爆発を巻き起こす。
「派手にやれば、人も集まりやすいしね」
「皆さん、もう大丈夫です!」
 集まる人々は、ウエンが笑顔を浮かべてもてなす。
 というのは、ヒールを兼ねた演奏会を、一行はここで開催しようというのだ。
「歌はちょっと不得手ですが、演奏は任せてください」
 演奏用のギターを用意した吹雪は、何から始めましょうかと仲間達へと促す。
 そこで、スタイリッシュモードでシリルが登場した。
「やあどうも、良い子の皆。あわてんぼうのサンタクロースだよ、なんてね」
 皆が窓や戸から顔を出すようにと、彼はそのまま声を張り上げて舞い踊り始める。
 同じく、ウエンもまた美しく舞い踊って、花びらのオーラを降らせて行く。
 2人の踊りで舞い落ちる白い花びらは、まるで雪のよう。少し早いクリスマスプレゼントだ。
「出ておいで。さぁ、出ておいで? 楽しい宴の始まりだ――♪」
 オペラの一節を歌い上げたシリルに合わせ、メンバー達の演奏が始まる。
 こちらも、時期に合わせてとメンバー達の意見が合ったことで、クリスマスにちなんだナンバーを披露しようということになっていた。
 ピアノを借りて演奏を望んでいたローザマリアだったが、店側に配慮した形で、自前でキーター……ショルダーキーボードを用意して伴奏を始める。
 千里もキーボードを弾いていた。親友の吹雪のギターと一緒ということもあり、彼女達は息の合った演奏を行う。
 演奏しつつも得意のダンスを見せる吹雪は時に千里の周りで舞い、仲の良さを見せていたようだ。
 グレイシアも、少しでも皆を安心させたいと嗜んだ事のあるギターを選択して仲間に合わせて弾き語る。
 翼を広げたシルフィディアはオーロラの光を発し、街のヒールと同時に歌を歌って見せた。
「……あ、あまり上手ではないですけれど、精一杯頑張ります……!」
 その可愛らしい歌声に、街の人々は可愛らしいと絶賛する。踊るウエンもコーラス程度にと歌い、場を盛り上げていた。
 観客として集まる人々に、シルフィディアはケルベロスカードも配布していたようだ。
 演奏を聴く人々へ、寒さで凍えてしまわぬようにと白兎は温かい飲み物を配っていく。
 夜遅く、繁華街に響く演奏と降る白い花びら。
 人々はほっこりと温まりながら、ケルベロス達の奏でる曲と歌声に癒されるのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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