病魔根絶計画~白き死の病

作者:雷紋寺音弥

●忍び寄る死の手
 ――結核。
 世界人口の3分の1が感染しているとも言われる、結核菌によって引き起こされる感染症。
 抗結核薬の開発により、現代においては必ずしも死に至る病というわけではない。しかし、その絶大な感染力から今もなお全世界で猛威を振るい、日本でも感染する者が後を絶たない恐るべき病。
 そんな結核の患者が集められた病棟で、窓の外を眺める少女が一人。
「紗枝ちゃん、りんご剥いてあげようか? それとも……」
「要らないわ……。どうせ私……長くないもの……」
 青白い顔をした少女は、それだけ言って看病をする母から顔を背けた。病室の窓を冬の風が叩いたところで軽く咳込むと、少女の口から赤い鮮血が飛散した。
「あぁ、紗枝ちゃん! ……どうして……どうして、こんなことに……」
 涙を浮かべながら少女の口元を拭う母親の瞳に涙が浮かんだ。
 何故、自分の娘がこんなことに。しかし、そうして泣いている間にも、徐々にだが確実に、白き悪魔は少女の身体を蝕んでいた。

●無情なる病
「召集に応じてくれ、感謝する。今回もお前達に、病魔を退治を依頼したい」
 その日、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)よりケルベロス達に告げられたのは、病院の医師やウィッチドクターの努力で、『結核』を根絶する準備が整ったという話だった。
 大戦期よりも以前は不治の病として恐れられた結核も、今ではワクチンや抗結核薬の開発により、必ずしも死に至る病ではなくなった。
 だが、爆発的な感染力も然ることながら、体質的な副作用から抗結核薬を使用できず、重症になってしまう者もいる。また、免疫細胞内でも繁殖できるという特性から、身体が弱く免疫力の低い者にとっては、今もなお恐るべき大病として知られている。
「現在、結核の患者達が大病院に集められ、病魔との戦闘準備が進められているはずだ。お前達に倒してもらいたいのは、この中でも特に強力な『重病患者の病魔』だな。患者の名前は北川・紗枝(きたがわ・さえ)。昔から身体が弱く、病気がちな少女だったらしい」
 この機会に重病患者の病魔を一体残らず倒す事ができれば、この病気は根絶され、新たな患者も二度と再び現れることはない。無論、敗北すれば病気は根絶されず、今後も新たな患者が現れてしまう。
「戦闘になると、この病魔は空気中に猛毒を散布したり、血の涙や体液のようなものを飛散させて攻撃してくるぞ。他にも、自らの身体を活性化させつつ、攻撃力を高めてくるから気をつけてくれ」
 発熱や喀血といった結核菌特有の症状を、そのまま再現したかのような攻撃手段。長期戦になれば、こちらも毒で徐々に体力を奪われる厄介な相手だが……どんな病気にも特効薬が存在するように、病魔に対しても対抗策は存在する。
「この病気の患者の看病をしたり、話し相手になってやったり、慰問などで元気づける事ができれば、一時的に病魔の攻撃に対する『個別耐性』を得ることが可能だぞ。耐性を得れば、病魔の攻撃で受けるダメージも減少するから、戦い易くはなるだろうな」
 結核に苦しむ紗枝は、どこか自分の未来に対して悲観的になっており、半ば完治することを諦めかけている。そんな彼女に、ケルベロスの頼もしさや優しさを見せて安心させてやれば、少しは前を向いて生きようとしてくれるかもしれない。
「結核……かつては黒死病ならぬ『白死病』とも言われた、死の病か……。ワクチンや、抗結核薬の開発に携わってきた先人達の想い……今こそお前達が継いで、病魔を完全に根絶するんだ!」
 これ以上は、結核に苦しめられる人々の涙など要らない。そう言って、クロートは改めて、ケルベロス達に依頼した。


参加者
ユーリエル・レイマトゥス(知識求める無垢なるゼロ・e02403)
イルリカ・アイアリス(七色アーチ・e08690)
マサヨシ・ストフム(蒼炎拳闘竜・e08872)
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)
フィオ・エリアルド(ランビットガール・e21930)
バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
クラリス・レミントン(奇々快々・e35454)

■リプレイ

●慰問
 白塗りの壁が続く廊下を抜けて扉を開けると、そこが患者の隔離されている病室だった。
「こんにちは、『北川・紗枝』さん。ケルベロスの慰問です」
 そっと扉を開けて、ユーリエル・レイマトゥス(知識求める無垢なるゼロ・e02403)は中の様子を窺うようにして覗き込んだ。
 病室の隅に置かれた大きめのベッド。部屋の広さは複数の患者を収容できる程のものだが、今は紗枝の寝かされているベッドだけが置かれているようだ。
「ケルベロスの慰問……。悪いけど……無駄なこと……辞めてもらえないかしら?」
 どうせ、自分は長くない。小さな咳を繰り返しつつ、紗枝はそれだけ言ってユーリエルから顔を背けた。
 自分の死期を悟っているが故の態度なのだろう。だが、このまま彼女を放っておけば、救える命も救えなくなる。
「結論から言います。北川・紗枝さん、貴女の病気は今日、治ります。……いえ、我々ケルベロスが『治します』」
 なぜなら、ケルベロスは病気の原因として呼び出された病魔を退治することで、病を治すこともできるのだから。そう言って、ユーリエルは改めて、紗枝が今まで病に屈せず耐え抜いてきたことを称賛した。
「あなたの努力が、報われるときが来たのです。我々が、必ず治すことを誓いましょう」
「……ありがとう。でも、もういいの……。それに……私は別に、何も頑張ってなんか……」
 一瞬、穏やかな表情を見せた紗枝だったが、その言葉は憂いを帯びた表情によって掻き消される。
 自分は別に、何かを頑張って来たわけではない。死なずに耐えて来たのではなく、死ぬのが恐くて死に切れなかっただけだ。そんなことを軽々しく言ってのけてしまう辺り、紗枝は身体だけでなく、心までも相当に病んでいた。
「なるほど……。だが、病は気から、と言う言葉を知っているだろうか? その病は辛い上に、死んでしまうと思っているようだが……」
 本当に死期が迫っているかどうか、少しばかり試してみよう。その言葉を言い終わらない内に、エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)は光の翼を広げて見せた。
「私はヴァルキュリアだ。私達の能力は知っているだろうか? 私達は本能的に、死に瀕した人が分かるのだが……」
 今のところ、その兆候は感じられない。本当は、瀕死の重傷に至る程の者でないと反応しないのだろうが、この場合は嘘も方便と言ったところか。
 これまでも、ケルベロス達は多くの病魔を倒して来た。憑魔病にハゲロフォビア。それらの根絶に成功し、そして今度は紗枝の身体を蝕む結核が、根絶の対象になっているのだとも。
「不治の病と言われた結核も治療薬ができて、それでもダメだった場合にも病魔召喚で退治、さらに一斉討伐による根絶の方法の確立と、医療の技術は日々進歩してるの」
 病気に対する最終最後の特効薬。それは即ちケルベロスなのだと、バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)は紗枝に告げた。
 人が諦めない限り、不治の病など存在しない。先人達の積み重ねてきた努力。様々な試行錯誤の果てに、きっと希望の未来は控えていると。
「そうなんだ……。ところで……その人、なんで冬なのに、そんな寒そうな格好をしているの……?」
「え、あ……変だろうか? 一応、私なりの正装として来ている、愛着のある鎧なのだが……」
 もっとも、困惑した表情で尋ねる紗枝の問いに、エメラルドが言葉に詰まるような場面もあったが、それはそれ。
 ここは狭い。少し、広い場所にて話をしよう。そう言って励ますケルベロス達だったが、しかし紗枝は難色を見せた。
「無理よ……そんなの……。今じゃ、歩くのだって辛いし……」
 軽度の患者達とは違い、紗枝の病状は重いものだ。歩くことも難しく、正直なところ、こうして話をするのも苦しいのだ。
 強引に外へ連れ出したところで、却って病気が重たくなるだけだろう。感染初期であればともかく、今の紗枝にとっては迂闊に院内を移動することさえも、病状を急変させる恐れがあった。

●勇気
「そうだなぁ……。それじゃ、話を変えようか? 嫌なことよりも、治った後何がしたいとか、何になりたいとかそういう話しようぜ」
 部屋の中を重たい空気が支配する中、先の者達と入れ替わりに現れたマサヨシ・ストフム(蒼炎拳闘竜・e08872)は、改めて紗枝に話を振った。
「ちなみに俺はヒーローになりたかったんだ。まぁ、概ね夢は叶ったぜ? こんな小学生の考えるような夢も叶うんだ。たかが病気一つで諦めることはねぇ」
「でも……それって、身体の強い人の話……でしょ? 私の身体じゃ……そんなこと……」
 体質的に薬さえ飲めない。他の患者が院内であれば出歩ける中、自分は他の病気への二次感染を恐れて外の空気さえ吸えない。そんな自分が持てる夢などないと、紗枝は身体を丸めて目を逸らした。
「……私、走るのが好きでね。本でしか見たことのないような、大きな山とか綺麗な森とか……他にはヨーロッパの古い町並みとか……そんなところをいつか思いっきり駆け回ってみたいんだよね」
 だから、紗枝にも何かやりたいことや、行ってみたい場所などはないか。病気が治れば、外に出られる。外に出られれば、どんなに難しいと思っていた夢でも、実現する機会を掴むことができると、フィオ・エリアルド(ランビットガール・e21930)は言って聞かせた。
「私達も、そのために……絶対、治してみせるから」
「ありがとう……。でも……もしも、また病気になったら……そう思うと……怖いよ……」
 一度は回復しても、身体の弱い自分では、すぐに再び病に伏せってしまうのではないか。その不安こそが、紗枝の本音。今までの投げやりな態度は全て、二度も三度も感染することに対する恐れから来るものだった。
「私も昔、よく病気になっていました。拾ってくれたおばあちゃんが看病してくれて、貴女のお母さんのように林檎を剥いてくれました」
 機械の身体を持つ自分でさえ、病に伏せることはある。そう言いながら、フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)は林檎を剥くと、小さなウサギ型に切って渡した。
 看病されたときの暖かさ。今は、おばあちゃんもいなくなってしまったが、それでも暖かさは決して忘れない。そして、今は大切な人が、代わりに林檎を剥いてくれているのだとも。
「……病魔は、必ず倒します。貴女も、お母さんも、もう泣かせたりしません。だからどうか、ココロを強く持って」
 それこそが、生きている人間の持つ最大の武器であり、強さの証。どれだけ身体が弱くとも、心が死んでいなければ、それは本当に死んだことにはならないのだと。
「私も昔は病弱で、なかなか故郷の森から出られなかった。日の光も、街の空気も、私にとっては刺激が強過ぎてね……」
 だが、そんな自分も今では病を克服したと、続けてクラリス・レミントン(奇々快々・e35454)が語り掛けた。
 こんな自分でも、ケルベロスとして誰かを救うために戦っている。そして、そんな自分が力を得たのは、独学で医学を学んだからこそ。『死にたくない』という一心が、ウィッチドクターとして病と物理的にも戦う力を授けてくれた。
 正直、今も怖いと思うことはある。それでも、負けるわけにはいかないし、戦いを止めようとも思わない。病気も怖いが、それ以上に死ぬことが嫌だから。そして、死への恐怖は弱さではなく、逃れられない宿命に立ち向かう強さなのだから。
「うん……私……本当は死にたくない……! 何もできないまま……夢もないまま……独りぼっちで死にたくないよ……」
 だが、そのために何をすれば良いかさえ、今の自分には解らない。そう言って泣き崩れる紗枝の手を、イルリカ・アイアリス(七色アーチ・e08690)は優しく包んだ。
「負けないってことは、勝つよりずっと難しいことなんです。勝利するより地味で、辛くて、終わりも見えない……だけどあなたは、負けずにこうやって生きてる。それって、すごいことなんです!」
 諦めるのは簡単だ。しかし、如何なる理由があろうとも、生き続けている以上、負けはない。
「だから、自信を持ってください。自分のことを、信じてください!」
 たった一人の孤独な戦い。それはもう、今日限りで終わりにしよう。そんなイルリカの言葉に、とうとう紗枝は涙を拭いつつ頷いた。
「分かった……! 私……諦めない……。自分を……皆のことを……信じてみる!」
 もし、本当にこの病が治り、二度と再び蝕まれることもないというのであれば、その望みに賭けてみようと思う。イルリカの手を握る紗枝の力は未だ弱々しかったが、ケルベロス達としては、その言葉を聞けただけで十分だった。

●白死
 病室に響く不気味な声。紗枝の身体より召喚された病魔の姿は、白き死の使いの名の通り、遺伝子レベルで人間の中にある生理的不快感を刺激するものだった。
 穴だけの目から多量の血涙を流し、その一滴、一滴が恐るべき猛毒を持った飛沫としてケルベロス達に襲い掛かってくる。敵の身体は幽霊か骸骨を思わせるようなもので、口から吐き出される吐息もまた、凄まじい毒素を含んでいた。
「病魔の毒……興味深いわね。でも、今は戦いに集中することが先決かしら?」
 一瞬にして間合いを詰めつつ長剣を引き抜き、バジルは病魔の身体を複雑な軌道を描いて斬り刻んだ。血涙のサンプルでも欲しいところだったが、下手に欲張って悪手を踏むわけにはいかない。
「ォォォオオオ!!」
 悲鳴にも似た病魔の叫びが病室に響き渡る中、その返り血は猛毒を含んだ飛沫となってケルベロス達へと降り注ぐ。だが、それがバジルの身体へ飛散するよりも先に、マサヨシが強引に割って入った。
「どうした、そんなもんか! この程度、あの子の痛み苦しみに比べりゃあ屁でもねぇぞ!」
 飛沫を腕の一振りで払い飛ばし、マサヨシは自らの腕を蒼炎で包んだ。身体を毒に蝕まれる感触に苛立ちを覚えたが、その不快感に反して敵の攻撃は大した威力を持っていなかった。
 それは偏に、紗枝がこちらを信頼してくれているからこそ。慰問を通して結んだ彼女との絆。それが今のケルベロス達に、病魔の攻撃へ抗う力を与えてくれている。
「猛毒はこちらで除去します。マサヨシさんは、敵の抑えを!」
「ああ、任せときな。……行くぞ、有害菌。焼却して滅菌してやるよ」
 フローネの言葉に頷いて、マサヨシは一気に間合いを詰める。これ以上は、好き勝手に毒など撒き散らさせない。後ろで見守る紗枝のためにも、負けるつもりは毛頭ない。
 光の盾や光子のバリアを備えたドローンと連携し、フローネが仲間達を猛毒から守る障壁を展開して行く。その一方で、マサヨシは拳に宿した蒼き炎を、想いのままに敵の身体へと叩き付けた。
「ここは防ぎ切ります! アメジスト、ルビー、両ドローン! 防壁陣展開!」
「我が炎に焼き尽くせぬもの無し――我が拳に砕けぬもの無し――我が信念、決して消えること無し――故にこの一撃は極致に至り!」
 紅紫の色彩が飛び交う中、蒼炎が病魔の身体を焼き尽くす。その身を焼かれる痛み、苦しみ、少しでも味わってから逝くがいい。それは長きに渡って病に侵され続けてきた、紗枝を始めとする結核患者達への手向けでもあり。
「逃すわけにはいかないな。……確実に仕留める」
 病室の壁を利用して、クラリスは銃弾を敢えて跳弾させ敵の身体に叩き込む。開けた場所に紗枝を連れ出せなかったのは致し方なし。だが、敵の逃走を許さないという点では、密室はむしろ都合が良い。
「理屈抜きに心を震わす「コトバ」――体が勝手に動き出すような「メロディ」――鳴りやまない歌とリズムに乗せて――」
 イルリカの取り出した一枚のカード。節制(テンペレンス)のタロットを模した札と共に歌うことで繰り出される魔法攻撃が幾度となく病魔へ襲い掛かる中、身体能力を極限まで高めたフィオが、猛獣の如く病魔へ襲い掛かった。
「喰い千切る……!」
 その凄まじい速度は、さながら夜影。赤く染まった眼光が尾を引いた先にあるのは、一瞬にして奪われ肉片と化した、哀れな敵の身体の一部。
「必用なデータは取れました……。そろそろ、仕上げと行きましょう」
「念には念を、だ。私の力も持って行け!」
 片腕を高速で回転させて迫るユーリエルへ、エメラルドは杖先から電撃を飛ばす。迸る雷光はユーリエルの肉体へ更なる力を与え、その攻撃力を加速度的に高めて行き。
「あなたの因子……回収させていただきます!」
「ォォォ……ァァァアアアア!!」
 凄まじい回転力を誇る腕が突き刺さり、白き死の使いが断末魔の雄叫びを上げる。その光景は、さながら悪性の病巣を患者の肉体から抉り出すが如く。数多の血涙と共に肉体までも飛散させ、紗枝の身体を蝕んでいた病魔は、今度こそ完全に消滅した。
「病魔:結核の因子……回収完了」
 腕を引き抜き、ユーリエルは改めて紗枝の方へと向き直った。病魔を完全に退治した今、紗枝の顔は先程と比べて、うっすらと赤みが差していた。

●光明
 戦いは終わった。ケルベロス達にとっては一瞬にも等しいものだったが、しかし紗枝にとっては、長い長い戦いが。
「今回の戦いのデータ……病院にでも寄贈しましょうか?」
「まあ、できればそのデータとやらが、二度と再び役に立つことがないのを願うがな」
 ユーリエルの言葉に、マサヨシが肩を竦めながら答えた。今回の病魔根絶計画が成功すれば、この地球上で結核に感染する者はいなくなるのだから。
「よく、頑張ったな。これでもう、病魔に怯える心配もないだろう」
「今回の勝利は、他でもない……紗枝、君自身が勝ち取ったものだ」
 これからは、それを自信に生きて行けば良いと告げるエメラルドとクラリスの二人。その上で、フローネもまた紗枝の手を取って、改めて安堵の溜息を吐いた。
「元気になって、良かった……。いつか、誰かに林檎を剥いてあげてくださいね」
「うん……。もし、私に何かできることがあれば、今度は私が誰かを助けてあげたいな……」
 それが、どれだけ些細なことであっても、誰かの力になれるのであれば。そう言って微笑む紗枝の顔に、既に先程までの憂いは見られなかった。
「経過観察とかあるだろうけど、ちょっとだけ外出とかしてみない?」
 どうせなら、どこか行ってみたい場所はないだろうか。そんなバジルの問いに紗枝が返したのは、決して特別ではない答え。
 公園を散歩したり、街で甘い物を食べ歩いたり。ほんの小さな幸せでさえも、紗枝にとっては貴重なもの。
「それじゃ、良かったら一緒に行かない?」
「よろしければ、私も街を案内しましょうか?」
 フィオとイルリカの誘いに、満面の笑みで答える紗枝。止まってしまった少女の時間。それを取り戻す時間は、今の彼女には十分過ぎる程にあるのだから。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月14日
難度:やや易
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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