ミッション破壊作戦~剣が君にもっと輝けと言っている

作者:ほむらもやし

●ブラック依頼
「12月だね。それで、またグラディウスが使えるようになっていたから、ミッション破壊作戦を進めよう」
 ケンジ・サルヴァトーレ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0076)は、爽やかに言って、頭を下げた。
「初めての方でも大歓迎だ。シンプルな作戦だからすぐに分かると思うよ。まず、これがグラディウス。これは通常の武器としては使えないけれど、『強襲型魔空回廊』を攻撃できる兵器だ。具体的にはヘリオンから降下して、バリアに刃を接触させれば良い。その後は撤退。立ちはだかる敵を倒し、時間内に敵勢力圏から脱出するだけだ」
 ケンジは、実際の身振りを交えて概要を告げると満面の笑み浮かべる。
「本当に?」
「本当だとも。それから、刃を接触させる時に気持ちを高めて叫ぶと威力が上がる。すなわち君の熱い叫びがミッション地域を人類の手に取り戻す力になるんだ」
 不安そうな顔をする、ケルベロスのひとりに、やり甲斐のある作戦であることを、ケンジは強調した。
「さらに上空からのグラディウス攻撃は奇襲になり、敵防衛部隊は対抗する術を持たない。しかも攻撃の余波は一方的に敵を傷つけて、しばらくの間、敵全体を機能不全に陥らせる。さらに余波から生み出させる爆煙、僕らはスモークと呼んでいるけれど、これが撤退する皆の動きを隠してくれる」
 それでも1回は遭遇戦が発生してしまうけれど、スモークが消えてしまうまでに倒せれば問題は起こらない。
「今回、僕らが向かうのは、攻性植物のミッション地域のいずれか。行き先は皆で相談して決めてね」

 目指すのは各ミッション地域の中枢にある、強襲型魔空回廊である。
 徒歩など通常の手段で目指せば、遭遇戦の連続となり消耗による撤退が不可避となる。
 また敵にとっても重要なグラディウスを奪われる危険を考えれば、行うべきで無い。
「叫びはグラビティを高める為の手段だけど、何をもって強い叫びとされるかは解明されていない。だから噂には惑わされずに、自分の気持ちに正直に行こう」
 あなたの中に真に熱い思いがあるならば、それは自然と言葉や行動に滲み出る。
 気持ちを高める工夫は尊いが、戦果の求める理由でありもしない思いをねつ造しても、冗長となるだけだ。
 基本的に強襲型魔空回廊は攻撃作戦を何度も繰り返して、ダメージの蓄積による破壊を目指している。
 確かに、全員がグラビティを限界に達するほどにグラビティを高め、攻撃を集中させられれば、単独のチームであっても、破壊に至る可能性はあるが、極めて希なケースだ。
 だから1回の攻撃で過大な戦果は要求されていないし、そんなことよりも無事の帰還を願っている。
 ミッション地域は、日本の中にあっても、人類の手が及ばない敵の占領地。
 日々ミッション地域へ攻撃を掛ける有志旅団の力を持ってしても、防備の固い中枢近くにまでは手は届かない。
 だから、速やかに撤退できるようプランを描き、実行しよう。

 但し、敵地のど真ん中に、叫びながら降下攻撃を仕掛けておきながら、誰にも見つからずに逃げおおせるなんて虫の良い話は無い。1回は発生する遭遇戦を、スモークが消える前に勝ち抜ける必要がある。
「敵の傾向は、既に明らかになっている情報を参考に。それから、スモークが効いている時間は場所や状況で様々違うようだけど、短くて十数分、長くても何十分とまではならないようだから気をつけて」

 デウスエクスは今もミッション地域を拡大し続けている。今、こうしている間にも、新たな強敵が攻め込んで来て、どこかの街を制圧するかも知れない。
 その街は見知らぬ街かも知れないし、あなたの知っている土地かも知れない。
 目に見える世界が、平和に見えたとしても、侵略を受けている日常は、本物の危機だ。
 そして、この危機を救い得る力を持つのは、あなた方ケルベロスだけだ。


参加者
シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)
クリームヒルデ・ビスマルク(自宅警備ヒーラー天使系・e01397)
ミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584)
ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)
ステイン・カツオ(剛拳・e04948)
神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)
狐田・ジェイミー(喉潰しのジェイミー・e41401)

■リプレイ

●降下攻撃
「Deception(しょんぼり)、疑ってしまった自身が恥ずかしいですの……」
 シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)は、ぽつりと呟いた。
 屋久島でのミッション破壊作戦に参加するのは、彼女にとって二回目。再びやって来たのは、愛ゆえ、攻性植物という存在に対する狂おしいほどまでの愛ゆえであった。
 その愛はケルベロスにあっては凄絶比類なきものと言える。
「今度こそ魔空回廊を破壊し……此処を開放致さねば……島の方々や、息づく命の為にも……」
 ミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584)に取っても、この破壊作戦は、三回目。流石に、この回数となれば、行動も手慣れてくる。
 撤退にかかる時間や、目指すべき谷や峠ぐらいは、把握できている。懸念と言えば、会敵時に不意打ちを喰らう恐れぐらいか。
 1年にわたるミッション地域の解放戦で多くの地域が解放されたが、解放を上回るペースで占領地域が増えているのも事実。看過できない懸念を小さな胸に抱きつつ、今回が、九回目の破壊作戦となるのは、ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)であった。
「私たちにとっては分が悪い戦いですけれど、ひとつひとつ、取り戻すしかありません」
 グラディウスという未知を孕んだ武器を使い、それでも戦果を上げてきたが、時に混沌とした状況に陥り、仲間の暴走やグラディウスの喪失の報が届く度、寂しい気持ちになった。
 自分のことや、自分の置かれている環境や立場に応じた行動はできても、その範囲を離れれば手を差し伸べることは出来ない。
(「どんな存在でも危険なデウスエクス。そいつらが何をやるかなんて関係なかったんだ……前回しくじった自分自身の汚名返上、その分を取り戻さねぇと、あの日の自分をぶん殴りでもしねぇと気が済まねえ」)
 ステイン・カツオ(剛拳・e04948)も、実は2度目の攻撃、産卵管を突き刺された時の身体の火照りは、目をつむれば、今でも鮮烈に思い出せるほど。だから再び彼の地に行けるかも知れないと分かった時、彼女の足は無意識にヘリポートに向いていた。
「ここに来んのは、これが2度目か、今度こそぜってぇ破壊してやるぜ」
 さらに、神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)も経験者だった。
 強さはポジションなど、変動要因があるにしても、他の種族のように増援の合流まで時間を稼ごうとしたり、予想される退路に待ち伏せて不意打ちを狙うような嫌らしさ――知性のようなものはあまり感じないから、強敵ではあっても、やりにくい相手では無い。
 さらに言えば、頼るつもりは無いけれど、いざとなれば、ラクシュミが助けてくれるかも、などという安心感もあるから、また会えたら、聞きたいこと、話したいことが、次々と頭の中に浮かんで来る。
「そういえば、屋久島って面白いですよね。普通はえのき茸みたいにひょろひょろ密集してる杉の木が、ぐねぐね曲がってでっかく聳え立つんですよ……まあ、おねーさんか弱いから、ネットで見ただけだけど」
 魔改造スマートフォンの画面を示しながら、クリームヒルデ・ビスマルク(自宅警備ヒーラー天使系・e01397)が笑顔を見せる。やはり先達がいると言うのは心強いのだろう。
 心なしか、ノリが修学旅行の学生のようになりかけたが、すぐに表情を引き締める。
 そんな様子に、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)、そして、今回がミッション破壊作戦の初陣である、狐田・ジェイミー(喉潰しのジェイミー・e41401)の緊張もほぐれた。
 間も無く、魔空回廊直上への到着を示すように、ヘリオンはホバリングに移行し、降下を促すように、扉のロックが外れた。
 高高度の空気は薄く、ヘリオンと言えども低空と全く同じと言うわけにはゆかないところもある。出来れば早く撤収したいのがヘリオライダーの本音かも知れない。だが、任務に赴くケルベロスたちが、少しでも気持ちを高め、満足の行く結果が出す為ならば、多少の無理は厭わない。
 そんな気持ちを知ってか知らずか、ただ、シエナはそうするのが当然であるかのように、蔦を絡めた小剣を手に、早々に、外へと飛び出して行った。

●叫び
 ひゅるひゅると空気を裂く抵抗を感じながら、この島で攻性植物が相克する状況に終止符を打ちたいと、シエナは願う。既にケルベロスである彼女は、ケルベロスとしての当たり前を取り繕いながら生きて行かなければいけない。そうしなければ、共に生きている攻性植物を食べさせることはおろか、保護することもままならなくなってしまう。
 Pourquoi(どうして)?
 しかし攻性植物と共にあることは、生を受けた昔からのこと。愛情を持って接することは、彼女にとって当然のこと。なのに、それと戦わなければならない矛盾に、小さく平坦な胸は張り裂けんばかりであった。
 だから、改めて、ここにいる子達が殴り飛ばされる日々から救う為に思いを込めて叫ばせてもらいますの。
「Ecraser et Liberation(潰れなさい、そして、自由を)!」
 間近に迫った魔空回廊を守るバリアを目がけて、シエラは万感を込めて、蔦を絡ませたグラディウスを突き出した。瞬間、閃光に風景が白くなり、続けて放射状に広がる衝撃波が波紋の如くに大気を歪め、遅れて広がる熱線があらゆる物を焼き尽くす爆炎を生み出しながら広がって行く。
「今のは、なんですか?」
 そつのない動きから次の攻撃を掛けようとしていた、ウィッカは想定を越える凄まじい破壊力にを目の当たりにして、戦慄した。
 魂の叫びの強さは、ケルベロスがグラビティを高められるかどうかにかかっている。
 場所への拘りや、被害者への思い、個人的な使命感、今である理由、加えて人類の持つ普遍的な意識に働きかける。と、言うのが、思いを強める常套手段と考えられており、まるで自分の人生そのものをぶつけたようなシエラの叫びは異質であった。
「この星は貴方達の苗床ではありません! この地球の生命を餌に増殖しさらに危害を加える、その災厄の連鎖を断ち切り、ここで殲滅します!」
 地球はこの大地を海を大気を愛し、生きとし生けるものと生きようとする者、と共にある。突入まで数秒と言ったところか、急速に大きさを増すバリアを睨み据え、ウィッカは吠えると、刃を振り上げた。
「女神に任せるつもりはありません。この星に住む我らケルベロスのこの私の手でこの地を奪還します!!」
 直後、間近に迫れば、もはや巨大な壁にしか見えないバリアを目がけて刃を振り下ろした。
「魔空回廊よ! 我が全身全霊の一撃により砕け散りなさい!!」
 弾ける閃光、樹枝の如くに伸びる稲妻が青空に広がる。それらは瞬く間に雷撃のシャワーの如くに降り注ぎ、スモークに覆われ始めた山肌に無数の爆発をもたらした。
 浮遊するバリアが鳴動し、その表面を流れるスモークによる目の錯覚かも知れないが、巨大なプリンのように揺れているようにも見える。
(「女神に頼らず……か、前回も話してぇと思っただけで、頼ったつもりはなかったが、なかなかカッケェこと言うじゃねぇかウィッカの奴」)
 今度こそバリアを破れるかも知れない、漠然とした戦果への期待に煉の胸は躍る。
(「ああ、攻性植物、ピルグリム……奴らのやり口は気に入らねぇ、侵略寄生……意思を奪われ体のいい操り人形にされるなんざ、死んでもごめんだ。幼い少女の身体を弄び、姉ちゃんを悲しませた怒りの炎も消えちゃいねぇ」)
 グラディウス攻撃の余波に蹂躙される地表、爆炎と雷光、その煌めきの下でピルグリムが焼かれていると思うと胸がすく思いがする。煉にとって、この敵は恐れと憎悪の対象でしかない。
「俺らの星の生命を、青き星の仲間をこれ以上汚させはしねぇ、命を歪め、意思を冒涜する緑の悪魔どもっ! 俺の獄炎で一片残らず燃え尽きろっ!!」
 叫びと共に叩きつけた瞬間、思いの通りに噴き上がる炎が火球と変わり、雪崩の如くにバリアを流れ落ちる炎が山肌を嘗めて行く。
(「あとはケツに火をつけてやるだけだ」)
 果たしていままでに、本気で何かをつかみ取ろうとしてきたか? ステインの胸の内に微かな曇りが生じた。
 その時その場面で見れば、本気の気持ちに疑いを挟む余地は無いはずだが、時を重ねてみると、どこかで選択を間違え、あるいは目の前の困難を避ける判断をしていなかっただろうか、振り返って見れば間違いが無かったとは言い切れない。
「クソ、なんで今こんな気持ちになるんだ。望むこと、やることは決まってる。今そこにいるてめぇらを排除することだ。この島と、この島の人々の生活を取り戻すことだ!」
 間近に迫るバリアを前にして、過去を振り払うように叫ぶと、ステインは満身の力を込めてグラディウスを握りしめて、万感を込めて突き出した。
「あんたらが、いったいなんのために出張ってきたか知らねえが、殖える前に全部、回廊諸共間引かせてもらう! ブッ潰れろ魔空回廊! てめぇらの出る幕は、もう、どこにもねえんだよ!!」
 爆ぜる雷光、弾き跳ぶ身体、それで見上げた空はとても青く、ここが戦場だと言うことを忘れさせるほどに澄んでいる。空気は冷たいが頬に当たる陽光は暖かくて、頬に当てられた母の掌を思い起こさせる。
 そんなステインと入れ替わるようにウタが突っ込んで来る。
 俺達は未来を拓く!
 希望を胸に突っ走る!
 俺達の夢を! 未来を! 絶対叶えるぜ!
 手始めに!
 俺達地獄の番犬の牙で切り裂く!
 地球の生命の輝きを!
 その身に刻みやがれ!
 他者を食らい続け、無限に増殖できる生などあり得ない、食い尽くした先は無なのだから。
 限りある生だから命は輝く。希望に向かってがむしゃらだから未来を手に出来る。
 思いを込めたウタのグラディウスが唸りを上げて、橙色の光が爆ぜる。その光を破るように降下してくるのはクリームヒルデ。噴き上がる炎を両翼に受けながらもゆるりと降下を続け、頭上に刃を振り上げる。
「閃かせ、征伐の刃を! 滅びもたらす巡礼者に死の終止符を!」
 凜とした声を響かせて、振り上げた刃を振り下ろすと同時、銀色の髪は噴き上がる光に逆立って金色のうねりと化し、次の瞬間、輝く衝撃を吸収したバリアは激しく震動して奇妙な音を立てる。
「早く早く、壊さなければなりませんわ。こうしている間にも……あのおぞましい『星の巡礼者』はこの島の生命を食い物にしているのですわ」
 緑の谷間は煙に埋め尽くされていたが、時折爆炎と稲妻に切り取られた奈落の光景が顔を覗かせる。それは自分たちがしでかしたこと。ミルフィの目に映る事実を受け止めつつも、これ以上被害を広げない為に今やらなければならないと突き出す刃に思いを込める。
「今度こそ、……護り抜いてみせますわ! その為にも……グラディウス……力をお貸し下さいまし…! 地球を……これ以上、おぞましき者の勝手にはさせませんわ!!」
 軋みを上げるバリア、だが足りない。後に続く、ジェイミーに残りを託してミルフィは仲間との合流を目指す。
「俺が最後か、ならば恥ずかしくないよう、気合いを入れて行くか!」
 グラディウスをバリアに触れさせれば良い。感情の昂ぶりはグラビティを高めるらしいから、叫びながら叩きつければ、なお良い。知り得た基本の通りに、ジェイミーは巨大なバリアを目がけてグラディウスを突き出した。
「お前らにやる栄養分はひとかけらもねえ。大人しくそのまま立ち枯れやがれ!」

●撤退戦
 果たして、突入したジェイミーの一撃にバリア及び魔空回廊は揺さぶられた。しかし遂に崩れることは無かった。
「ダメでしたか——ならば、長居は無用ですわ」
 その姿を確認し合流を果たした一行は、ミルフィの導きで撤退を開始。以前よりも範囲が広がったように思える焼け野原を一気に駆け抜けると、続けて、非戦闘グラビティ、隠された森の小路を発動した、ステインを前に速度を緩めること無く森の中へと進んだ。
「くそ、嫌な予感しかしやがらねえ」
 ディフェンダーであるウタもジェイミーも、先を行くステインのことまでは気に止めてくれない。せめてドワーフの夜目が有利に働いてくれたならば、ありがたかったが、そんな都合の良いことは無い。
 果たして、遭遇してしまったピルグリムの鋏の一撃に、ステインは盛大にぶっ飛ばされた。
「出ましたね。ですが、押し通ります!」
 言葉よりも早く、ウィッカの流星の煌めきを帯びた蹴りが敵を打ち据える。付与される足止めの効果、機を逃さずに煉とミルフィの撃ち放った竜砲弾が痛烈なダメージを刻みつけた。
「畜生、たまには良い目もみせろよ!」
 クリームヒルデに救護に力を取り戻したステインの繰り出す地裂撃が地面ごとピルグリムの身を裂く。
 強火力の連続攻撃より、ピルグリムは一挙に劣勢に追い込まれる。
「Demander(お願い)! 良い子だからここを通して!」
 シエナは呼びかけた。
 目的は撤退だから、黙って通して貰えるなら、不都合は無いはず。だがピルグリムは何も応えずに、ただ奇妙な唸り声を上げ、産卵管を伸ばして来る。
 次の瞬間、それはシエナの前に飛び込んできた、ジェイミーに突き刺さる。全身に星のような痣を浮かべ、壮絶な苦痛に膝を着く、防具の耐性だけでも合わせていれば、まだ低減も出来たのだが。
 それと前後して、シエナの振り下ろす蒲公英型の回転刃がピルグリムを捉える。刻まれたバッドステータスを一挙に花開かせ、ピルグリムは急速に追い詰められて行く。
 ウィッカ召喚した悪魔の力を宿した刃がピルグリムに消えない傷を刻み、蒼き狼と化した烈火の闘気で右手全体を包み込んだ煉の一撃が追い打ちを掛ける。
「これが親父から受け継いだ、俺の牙だっ!」
 叫びに応えるようなウタのエクスカリバールのフルスイングがその頭部を捉えてあり得ない方向へと押し曲げ、再び大量のバッドステータスを花開かせる。
 天を仰ぎ、手足を巨大な口のように広げるピルグリム。
 だが幾重にも重ねられたアンチヒールが発動した癒術を封じ込める。
「あと少しです!」
「はい、今度こそ、これで終わらせますわ……!」
 攻勢に転じた、クリームヒルデの蹴りが今にも千切れ落ちそうなピルグリムの頭部を打ち据え、幼き声の響きと共に繰り出されるフロストレーザーが瀕死のピルグリムの身体を貫き、その命を終わらせる。
「身体におかしなところは無いか?」
「いや、別に無いが……」
 ジェイミーの返事に安堵したように頷きを返すと、ステインは再び森の小路を発動する。
 スモークはまだ充分に残っている。
 かくして一行は、人類の勢力圏を目指して、屋久島の深い森を駆け続ける。

作者:ほむらもやし 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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