極めし軽身功は空をも舞って

作者:なちゅい

●蝶のように舞い、蜂のように刺す
 高知県、太平洋を臨むとある海岸で。
 寒くなったというのに、海風が吹きつけてくるこの場所で1人の女性が修行に励んでいた。
「はあっ……!」
 彼女は岩壁を蹴って飛び上がり、より高く、より軽やかに跳躍する。
 着地する彼女だが、まだ納得がいかないのか小さく首を振った。
「まだよ、もっと、もっと高く……」
 この女性武術家、新谷・さやかが極めようとしていたのは、軽身功と呼ばれる武術だ。
 気の訓練によって身軽に跳躍し、素早く走る事ができるというものだが、一説によれば、垂直な壁すらも伝い昇り、極めし者は舞い落ちる木の葉を足がかりにして高く飛び上がるのだという。
 さすがに、空を飛ぶなどという話は夢物語なのだろうが……、新谷は高みを目指し、修行に打ち込む。
 そんな彼女の背後からゆらりと、小さな影が現れた。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
「……やっ!」
 その影……ポニーテールの少女の声によって、新谷は操られたかのように少女に対して跳躍し、蹴りを繰り出して行く。
 少女はしばらく、新谷の攻撃を軽く受け流していたのだが、程なくそいつはこう告げた。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれなりに素晴らしかったよ」
 一通り技を見極めた少女……ドリームイーター、幻武極(げんぶきわめ)はどこからか取り出した巨大な鍵で新谷の体を貫いた。
 新谷はどさりと岩場の上に崩れ落ちてしまう。彼女に外傷は一切なかったものの、そのそばには新谷とほぼ同じ体躯の女性が姿を現す。
 早速、幻武極はその女性に対して拳を突き出すと、女性は反撃として蹴撃で応戦する。
 交わる拳と蹴り。それらはモザイクに包まれていた。
 一通り戦い終えた幻武極はにやりと笑い、新たに生まれた女性に言い放つ。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
 幻武極の呼びかけにこくりと頷いた女性は、岩場から歩き去っていくのだった。

 ヘリポートにやってきたケルベロス達。
 その中で、守部・海晴(空我・e30383)がこんな話を持ちかけた。
「軽身功を修行中の拳法家が標的になってしまうのではないか……と思ってね」
 それを受け、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)はヘリオンで予知を目にする。
「うん、また幻武極が暗躍しているようだね」
 ドリームイーター、幻武極は武術を極めようと修行している武術家をターゲットとし、襲い続けている。
「幻武極は自らに欠損している『武術』を奪い、モザイクを晴らそうとしているようだよ」
 今回襲撃した武術家の武術ではモザイクは晴れないようだが、代わりに、武術家のドリームイーターを生み出して暴れさせようとするらしい。
 出現するドリームイーターは、襲われた武術家が目指す究極の武術家のような技を使いこなすようで、かなりの強敵となるだろう。
「幸い、夢喰いが人里に到着する前に迎撃できそうだから、周囲の被害を気にせず戦うことができそうだよ」
 現れる武術家ドリームイーターは、今回襲われる女性武術家とほぼ同じ姿をしている。
 身長も平均的な成人女性の大きさだが、人間離れした身体能力を持ち、軽やかに跳躍して襲ってくる。その全てのグラビティが蹴撃によって繰り出されるが、いずれもモザイクに包まれているようだ。
「現場は、高知県の海岸、岩場の上だね」
 近場の洞窟に修行に必要な物や生活物資を持ち込み、女性武術家は人知れず修行を行っていたようだ。
 彼女が武術を奪われたことで生まれたドリームイーターは、 己の技を他人に見せ付ける為に人里を目指して移動を始めている。
 とはいえ、人里まではかなり距離がある為、すぐに到着する状況ではない。海岸近くの道路上で迎撃すれば、戦後のヒールだけで人的被害を考慮せず戦えるはずだ。
「ドリームイーターを倒した後は、女性武術家の介抱とフォローをお願いしたいかな」
 岩場で倒れたままの女性武術家は、襲撃時の記憶がほとんどないらしい。
 寒さを凌げる洞穴内に彼女を輸送した上で介抱し、事情を話すなどして武術に対するフォローなどがあるとよいだろう。
 一通り説明をしたリーゼリットはさらに、主観を語る。
「ボクは戦えないから分からないけれど……、身軽なのって爽快なのかな」
 ヘリオンを操る彼女も、自分の身で軽やかに飛び回るのに憧れる部分があるようだ。
 それに対する考えをケルベロス達から一通り聞いた彼女は、にこりと微笑んで。
「ふふ、それでは行こうか。彼女を助けないとね」
 そうして、リーゼリットはケルベロス達をヘリオンへと迎え入れるのだった。


参加者
朝倉・ほのか(フォーリングレイン・e01107)
アラタ・ユージーン(一雫の愛・e11331)
暮葉・守人(墓守の銀妖犬・e12145)
藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)
守部・海晴(空我・e30383)
リチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)
簾森・夜江(残月・e37211)
雨野・狭霧(黒霧・e42380)

■リプレイ

●軽身功と幻武極
 高知県の南部。
 海岸沿いの道路を、ケルベロス達は西へと駆けていく。
「軽身功を極めようとする人がいたとは、驚いたね」
 左腕を大きな義骸装甲で覆う守部・海晴(空我・e30383)が仲間へと語りかける。
「グラビティに頼らない素早い足捌きや身のこなし……人間の可能性ってやっぱ凄い」
 先日、海晴は同じく武術家ドリームイーターと手合わせしている。多少不謹慎ではあると考えてはいるが、今回の戦いを前にしてまたも胸を躍らせていたようだ。
「軽身功か……。食事や訓練で、体内の気をコントロールする技だよな」
 青味がかったウェーブヘアを揺らす、アラタ・ユージーン(一雫の愛・e11331)が相槌を打つ。
 軽身功を極めることで身体も健康になって強化されて、長寿や身軽さを手に入れることが出来ると、彼女は把握していて。
「……どんな動きをするのか、ちょっと興味あるな!」
「俺もスピードには自信があるけどさ」
 そんな彼女の言葉に、軽身功に関心を抱いていたエルフの少年、暮葉・守人(墓守の銀妖犬・e12145)も同意を示して。
「軽身功かぁ、今以上に早く動けるなら極めたいな」
 己の理想とする武術を修めようとする若い女性武術家に、中性的な外見の簾森・夜江(残月・e37211)は感心していたようだ。
「私も昔は一人で刀の修行をしていたのですが、流派はありましたから」
 目指すべき指針があった夜江だからこそ、ほぼ一から自らの理想を目指そうとする大変さを理解していたのだ。
「んー、軽身功ですか」
 リチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)はやや訛りのある言葉で呟く。
 相手の頭上を取り、死角から襲い掛かる事ができるその武術。
 まさに、暗殺、不意打ち、盗術にもってこいの技術だと考える彼だが、そういうものではないんでしょうと軽く首を振る。
「一つのものを極めし者と言うのは良いものじゃが……、それは努力があってこそ」
 知識欲豊富な藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)が言っているのは、女性武術家のことではないらしい。
「他人から奪った武術は、ただの真似事でしかないぞい」
「武術を奪うドリームイーター、幻武極ですか」
 カノンの言っているのがこの事件の元凶である夢喰いのことを指していると、朝倉・ほのか(フォーリングレイン・e01107)は気づく。
「奪われる覚悟もなしに奪っていい筈がない。……いいえ、覚悟があろうとなかろうと、理由に正当性があったとしても、です」
 ただ、それを防ぎたいと考える自身に、ほのかは矛盾を感じていたようだ。
「武術を極める……。私にもそういう時期がありました」
 その気持ちが分かるからこそ、夢喰いを止めたいとロングコート姿、左腕に皮手袋を嵌めた雨野・狭霧(黒霧・e42380)が仲間達に語った。
「気持ちは分かりますし、だからこそ止めないといけませんね」
 頷くメンバー達。一行は幻武極によって生み出されたドリームイーターを探し、足早に移動していくのである。

●武術家ドリームイーターを止めろ!
 海岸沿いの道路をゆくケルベロス達は、それに気づく。
 夜江は敵との遭遇を察し、殺界を展開してこの近辺に車などが通らないよう配慮する。
 正面からやってくるのは、すらりとした体躯をした1人の女性。だが、その全身からは人とは思えぬ威圧感を感じて。
「よし、それじゃぁ、軽身功の真髄見せて貰うぜ」
「…………」
 守人が敵の攻撃に備えて身構えると、相手は高く飛び上がってみせた。
「おぉ、飛んだ! 凄いな!」
 軽やかに舞う敵を目にし、アラタが叫ぶ。
「では、腕試しといきましょうか。貴方の腕、見せてもらいますよ」
「戦いを始めます」
 狭霧もまた臨戦態勢に入り、ほのかは気弱な態度から一転してクールに告げる。
 夢喰いが人里に至る前に。メンバー達は相手を止めるべく、攻撃を開始していく。
 すでに、飛び上がっていた女武術家ドリームイーターはケルベロス目掛けて落下し、後方のメンバーを狙ってモザイクで覆った蹴りを繰り出す。
 対処の遅れた夜江が敵の蹴りを貰ってしまうが、彼女は顔色一つ変えずに斬霊刀の柄に手をかける。その夜江のウイングキャットは翼を羽ばたかせて主の体を癒してくれていた。
 しばし、敵の動きに見とれていた守人が動く。
 敵のグラビティの多くは前線メンバーを狙ってくるもの。彼は地面にゾディアックソードを突き立て、守護星座を光り輝かせて仲間を包み込む。
 その守人と連携し、回復役として立ち回るアラタ。
 彼女は腕に巻きつけた攻性植物「Kielo」から光り輝く果実を取り出し、手前にいたリチャードから強化を施す。ウイングキャットの先生も大きく翼を羽ばたかせ、主のアラタや狙撃役メンバー達の邪気を振り払っていた。
「竜の吐息を」
 着地した夢喰いへとそう言い放ったほのかは、腕を突き出して短くそらんじる。すると、現れた竜の幻影が燃え盛る火炎を吐き、夢喰いの体を焦がす。
 海晴もまた地獄の炎を燃え上がらせ、拳で直接殴りかかっていく。
 多少怯もうが、デウスエクスとなった相手。ケルベロスの攻撃を多少喰らったところで怯む様子はない。
「軽功の要点は、3次元に動く空間戦闘」
 だが、リチャードが慇懃無礼な態度で、夢喰いに声をかける。
「ならば、その動ける空間を削っていけば、掴まえる事ができるんですよ」
 敵とまだ距離があると判断したリチャードはフェイントを織り交ぜながら、燐を塗ったコウモリ形の手裏剣を投げ飛ばす。
 ブーメランのように不規則な軌道を描くそれらは摩擦熱を伴って着火し、さらに夢喰いの体を焼き焦がした。
「もう少し遅い時間じゃったら、よかったのにのう」
 カノンは後方から素早く拳を振るい、オーラの弾丸で敵の脚を狙う。
 夜行性なカノンはいまいち調子が出ない様子だったが、それでも相手に痛打を与えていたようだ。
「ほれ、今じゃぞい」
「先ほどの返礼、させてもらおう。……我が刃、火の如く」
 カノンの言葉を受け、一撃を貰って本気モードになった夜江は抜いた刃に魔術で炎を灯す。
 夜江がそれで相手に斬りかかると、斬りつけた傷から炎が弾け、花びらのように火の粉が舞った。
 さらに、狭霧が古びた日本刀を手に夢喰いへと飛び込む。
「飛び込まれれば、対処できぬようですね」
 繰り出す緩やかな斬撃。その一閃は相手の腕や脚を斬りつけ、腱を断ち切らんとした。
「…………」
 やや表情をしかめる夢喰いは消えぬ体の炎に苦痛を感じながらも、高く飛び上がる。
 続いて、そいつはモザイクに包まれた流星の蹴りを繰り出してきたのだった。

●その鮮やかなる身のこなしは
 女武術家ドリームイーターの跳躍は、まるで空を舞うが如く。
 軽身功で軽やかに戦場を駆け回るその動きは、歴戦のケルベロスですら舌を巻く。
「モザイクで、地味に間合いが計り辛いなっと!」
 夢喰いの攻撃をその身で受け止めた守人は、詠唱を始めて。
「心影より現世へ……、その身に纏うはまやかし! 姿を隠す神風也!!」
 呼び出すは、幻惑の加護を宿す風。彼はその風を自分達に纏わせてステルス効果を与えて行く。
 直後に海晴が相手の腹へと拳を叩きこみ、精神を集中させたリチャードが夢喰いの身体に爆発を起こす。
「こっちじゃぞい」
 カノンがドラゴニックハンマーから砲弾を発射し、相手が自在に動けないよう脚を止めようとする。
 この間も、武術を奪われてしまった女性は岩場で海風に煽られているはず。できるだけ手早く片付けたいとカノンは考えるのだが……。
 夜江がファミリアロッドを杖から動物に戻す。すると、イヌワシにも似た鳥が飛んでいき、夢喰いの身体をさらに押さえつけ、翼を大きく羽ばたかせて燃える炎を大きくして行く。
 狭霧も戦いが楽しいのか、相手と張り合うように2段ジャンプして飛び上がり、日本刀を握りしめて。
「甘く見ましたね」
 刃を振るう狭霧の斬撃は、何気ない一太刀。されど、それは恐ろしく研ぎ澄まされており、夢喰いの体を深く裂いた。
 相手の傷口から零れ落ちるモザイク。狭霧は確かな手ごたえを感じる。
 だが、夢喰いも己の技を示そうと倒れない。風を纏った鮮烈なる回し蹴り。それに、ウイングキャット2体が大きく煽られてしまう。
「受け流して……突く!!」
 軽やかな動きの敵に、守人は笑みすら浮かべてそれを手甲で受け流そうとする。
 全ての衝撃を逸らすとはいかなかったが、彼は緑色の風を纏った掌底を相手に叩きつけていく。
「回復するよ、がんばれ!」
 そんな仲間達を、アラタは巻き起こるカラフルな爆発を巻き起こす。
 それに力を得たほのかも、戦場を舞い踊る敵に見惚れてしまっていて。
(「スキルではなく、アートと呼べるものかもしれませんね」)
 ただ、その技がモザイクに包まれており、よく見えないのが非常に残念だ。
 ほのかは我を取り戻し、攻撃の為にナイフ「影姫」を手にして相手に切りかかっていく。
「その力を奪います」
 刃で切り裂いた傷口からはモザイクが零れ落ち、それを浴びてほのかは自らのダメージを塞ぐ。
 度重なるケルベロスの攻撃によって、ドリームイーターは動きを鈍らせて来ている。その存在は所々、モザイクでかすれ出してきていた。
「軽功が飛んだり跳ねたりだけと思うなら、それはまだ未熟」
 相手を諭すようにリチャードは告げ、相手ほどではないが戦場を飛び回って。
「どれだけ狭い空間であっても、有効活用するのがその真髄!」
 すでに周囲の道路は戦いによって荒れてきており、その上で仲間達が相手を牽制してくれている。
 動く為の足場を乱されているはずの相手をリチャードは捉え、刃を煌かして降魔の一撃を浴びせかける。
 それでも、ドリームイーターは跳躍して。
(「身軽さでは遅れを取ってしまう。相手に合わせることはない……。足場が悪ければ、地ならしをすればいいさ」)
 海晴は考えながら、グラビティ・チェインを練り上げて行く。
 自身のバトルオーラ「無明透殺」とマインドリングの力を合わせ、彼は大地より岩塊の大剣を具現化する。
「一度討つと決したなら、例え石くれでも必殺の武具と成る……。この一撃、見事凌ぎ切れるかな?」
 対峙した相手目掛け、海晴は身の丈を遥かに超えた重厚なる刃を叩き込んでいく。
「…………!」
 さすがのドリームイーターもそれを防ぐことはかなわず、全身をモザイクに包んで消え去っていったのだった。

●より高みを目指して
 戦場となった道路は、かなり荒れていた。
 分身の幻影を生み出した守人はひび割れた地面に回復の力として転化し、狭霧は気力を撃ち出すことで細かい部分を塞ぐ。
 自分向けのヒールのみ、あるいはヒールグラビティを持たないメンバーはその補佐を行い、修復作業を済ませて行く。
 メンバー達はそのまま海岸へと急ぎ、岩場に倒れている女性武術家、新谷・さやかを介抱する。
「大丈夫?」
「大丈夫ですか?」
 海晴が新谷の体が冷えている事に気づき、ほのかが彼女の体をタオルケットで包む。そして一行はそのまま、新谷を近場の洞穴内へと搬送した。
 リチャードが火を起こし、カノンは新谷の体に傷が残らないようにと気遣いつつ桃色の霧を展開する。
 程なく、目覚めた新谷。改めて、海晴、ほのかが問いかける。
「どこか、調子が悪いとこはない?」
「どこか、痛むところはありませんか?」
 それらの問いに新谷が大丈夫と答えると、狭霧がお茶を差し出す。寒そうだと感じたからか、彼女はさらに毛布を差し出していたようだ。
「ところで、何か鍛練してるの?」
 海晴が新谷に使い捨てカイロとモッズコートを差し出しつつ問いかけると、彼女は軽身功の修行をしていたことを告げる。
 彼はそれに、凄いと素直な感想を口にして。
「あ、身軽にする為に、無理なダイエットとかしてたりしない?」
「頑張るのも良いのですが、体はお大事にしてくださいね」
 夜江も優しく声をかけ、彼女の体調を気遣う。
 その間に、アラタはこの場で話すには問題ないと判断し、水筒に用意していた根菜と胡麻のスープを差し出した。
「身体を温め、気にもいいのを選んだよ」
 料理を得意とするアラタは薬膳に興味があり、少しかじっているのだという。
 それを口に含む新谷は程なく、体の中にぽかぽかと温かさを感じ始めていたようだ。
 そして、暖を取りながら、守人、狭霧がこの場で倒れていた経緯を説明する。話を聞き、新谷は「そうなの……」と小さくうな垂れていた。
「美しい動きでした。私もそこに至れたらと……」
 ほのかは、戦った新谷の理想の姿を絶賛する。
 なかなか面白い武術だと狭霧も言いつつ、紛い物ではなく貴方自身の技を見てみたいと本音を漏らす。
「いつかきっと、楽しみにしていますよ」
 ただ、リチャードは別の切り口で持論を展開する。
「軽身功は素晴らしいですが、肉体だけではどうしてもバリエーションが出ませんね」
 どの国においても、先人たちは肉体だけでなく、武具を組み合わせて道を極めていたと語った。
「貴方もそれに習ってみては?」
 武芸十八般で言えば槍。暗器系で言えば例えば飛刀。武器を持つのが嫌なら投石など、リチャードは幅広く提案して見せた。
「一つのことに向き合う為に頑張る真摯なとこが、ドリームイーターの眼に留まったのかもな」
 好評だったスープをもう一杯差し出し、アラタは人と離れて鍛錬していた新谷の姿勢を評価して。
「でも、利用されたからって、自分を責めたりするなよ?」
 ――何かをする時、一番の敵は自分だ。他は敵も友も二番手。
 小さく見えるが、様々な経験を積んでいるからこそアラタの言葉は深い。
「さやかが納得いくまで、向き合えばいい」
 実際に戦地で戦うケルベロスの言葉へと、耳を傾けていた新谷。
「そうね、ありがとう」
 何か掴んだのか、彼女はメンバー達へと一言、明るい口調で礼を述べたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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