須く秘めやかに咲き誇るべし

作者:小茄


「おはー」
「おっす。てかマジ今日の授業全体的にだるいんだけど」
「2限目沖野からの3限高橋っしょ? アイツら授業つまんねーくせに寝てるとブチギレるしさぁ」
「ほんとそれ」
「てかさー彩花、文化祭に来た東校の人と、あれから付き合ってるんだって」
「え、マジで!? やべー、あたしも彼氏欲しい」
 朝、校門前で合流した女子生徒達は、ペチャクチャとだべりながら敷地内を歩む。
 女子校なので生徒は女性に限られるが、それを差し引いてもごく有り触れた高校の風景と言った所だろう。
「許さん! 絶対に許さあぁーんっ!」
 そんな日常風景をぶち壊しにしたのは、身体を羽毛に覆われた鳥人の如き異形の出現。
「そうだ、我々は絶対に許さない!」「ナンセンス!」
 加えて、角材や棒状の武器を手にし、ヘルメットを被った男達がそれに付き従う。
「え、何あれ?」
「何か許さないって……?」
 ざわめきながら顔を見合わせる生徒達。
「女子校の生徒は清楚にして気品に満ち、装いも慎ましくあらねばならぬ! 朝の挨拶は『ご機嫌よう』。喋り方は基本的に敬語。ないし『ですわ口調』。学友の服装の乱れを目にしたならば、直ちに『リボンが曲がっていてよ?』と整えて上げなければならない!」
「まして男との恋愛など以ての外だ!」「異議なし!」
 要約すると彼らは、創作物の世界で描かれる様な、秘密の花園めいた「耽美な女子校」を求めているらしかった。
「この様な穢らわしい女子校もどきは浄化してくれる! 執行!」
「ウラーッ!!」
「きゃあぁっ!?」
 そして鳥人と男達の一団は、手当たり次第に破壊活動を開始したのだった。


「ビルシャナとその教義に従う一団が、とある女子校を襲撃するつもりの様です」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)いわく、今回のビルシャナは「女子校は漫画やアニメ、小説などで描かれる様に『秘密の花園』的でなければならない」と、大分こじらせた思想の持ち主らしい。
「10名程の一般人が彼に付き従っています。彼らもこのまま行くと信徒となり、やがては悟りを啓いてビルシャナになってしまう危険すら有りますが、今ならまだ説得によって正気に戻すことも可能だと考えられます」
 また、ビルシャナを倒す事によっても彼らを解放する事が可能だが、いかに戦力的に弱いと言っても数でビルシャナを援護されれば厄介に違いない。
 やはり説得によって少しでも数を減らす工作はした方が良いだろう。

「ビルシャナは校庭に出現しますので、説得や戦闘もそのまま校庭で行うのが良いでしょう」
 足場や視界の良さに加えて、学校や生徒達への被害を防ぐ事も容易だ。
「ご存じの通り、悟りを啓いたばかりのビルシャナは必ずしも戦闘力に長けたタイプではありません。皆さんの力をもってすれば、十分に撃破可能でしょう」
 説得に失敗した一般人は前述の通り、サーヴァントとなってビルシャナを護ろうとする。こちらも戦力としては低いが、倒すと死んでしまう。ある意味かなり厄介な敵となる。
「肝心の説得ですが、論理的な正しさ以上に、とにかくインパクトの強さが求められます。なにしろ現時点で、彼らはビルシャナの影響をかなり受けてしまっていますから」
 サーヴァント状態の一般人の生死は作戦の成否には影響しないが、場所も場所であるし、可能な限り被害は出さずに抑えたい所だ。
「既にビルシャナとなってしまった人物を救うことは出来ませんが、これ以上の被害やビルシャナの増加を防ぐ為にも、宜しくお願いします」


参加者
神楽火・皇士朗(破天快刀・e00777)
ショー・ドッコイ(穴掘り系いけじじい・e09556)
天司・桜子(桜花絢爛・e20368)
マナ・ティアーユ(エロトピア・e39327)
伊礼・慧子(臺・e41144)
エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)
中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329)

■リプレイ


「女子校もどきを浄化せよ!」
「何が『彼氏欲しい』だ、ふざけるな!」
 女子校の校庭で気勢を上げるビルシャナと信徒達。
「喝!」
「なっ……何だこのちっこい爺は? 先公かぁ?」
 破壊活動を開始しようとした彼らの前に、小柄な体躯で立ち塞がったのはショー・ドッコイ(穴掘り系いけじじい・e09556)。
「お嬢さん方にケチつける前にお前らも男を磨かんか!」
「な、何だと?」
 見るからに冴えない一般人男性らは、学生帽に長ラン、下駄と言った出で立ちの年長者に指摘されやや浮き足立つ。
「自分らの口調を『押忍』、『である口調』、衣服が曲がっていたら『襟が乱れてる! たるんどるぞ!』に直す!」
「……な、何だその時代錯誤な男らしさは」
「男気見せてみろ! 返事は!」
「お、押忍……?」
 しかしショーの気迫に圧され、戸惑いつつも先頭の数人がそう応える。
「よーし、貴様等はこの俺が一人前の男に教育してやる。腕立て100回!」
「え……?」
 すかさず軍服姿のエドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)が、普段とは全く異なる鋭い口調で命じる。
「さっさと腕立てだ! 『イエス、サー』『ノー、サー』『アイドントノー、サー』以外の言葉は喋るな? それともダンスが良いか?」
「じ、銃だ!」「い、いえすさー!」
 彼らがすぐに従わないで居ると、銃を取り出してその足元へ向ける。鬼教官そのものだ。
「いーち……にー……」
「ひ、100回も無理だ……」
 怯えた信徒達はその場で腕立てを始めるが、10回もいかないうちにへばる者も多い。
「お前らの男気はその程度か?」
「ぐふっ……も、もう無理でふ」
「もう女子校生がどうとか言わないから、許して下さい……」
「甘ったれるな! ここからが本番だ!」
「ひぃぃぃ!」
 余りの厳しい訓練に、女子校の事などどうでも良くなって逃げ出す信徒達。
「我が信徒に何をして居る!?」
 数人の信徒を失ったのに気付き、ビルシャナがこちらへ飛んでくる。
「貴様等、さては女子校生を悪の道に引き入れんとする邪教徒だな!」
 動揺する信徒達を鼓舞する様に、声を張り上げるビルシャナ。
「異端共だ!」
「女子校の有るべき姿は我々が守る!」
 これを聞いて信徒達も、再び勢いを取り戻す。
「でも、アニメや小説のような女子校が有るべき姿ってことは、あなたたちももちろんアニメや小説のような人達なんですよね?」
「……と、当然じゃないか」
 一見控えめなトーンで問い掛けるマナ・ティアーユ(エロトピア・e39327)に、男達はノリでそう答える。
「アニメや小説に出てくる男性って素敵ですよね。ドS系や王子様系、年下系や幼馴染系……。で、あなたは何系ですか? モブキャラにしか見えませんけど……」
「し、失礼な! 俺は……異世界に転生したら無双する系」
 再び自分達に矛先を向けられ、視線を泳がせる信徒達。
「点描めいたオーラが出せたり、すれ違いざまに髪の毛についた芋けんぴやバナナを見つけて下さったりするんじゃないんですか?」
 伊礼・慧子(臺・e41144)は、持参した資料(女子向け漫画や小説)を参照しつつ目の前の冴えない男達と見比べる。
「そんな漫画や小説の中に出てくるような男が現実に居てたま……ハッ!?」
 マナと慧子に言い返しかけた所で、何かに気付く信徒。
「俺達の求める女子校も……漫画や小説の中にしか……無い……?」
「えぇと、でも素敵な男性に『女子校生らしく居て欲しい』ってお願いされたら、聞いてくれるかも?」
「おじさん(※ただしイケメン)やダメンズ(※ただしイケメン)でもチャンスはあります」
「……」
 残酷な現実に気付き崩れ落ちた信徒に、慰めの言葉を掛けるマナと慧子。だが恐らく慰めにはなっていない……と言うか追い打ちに近い。
「落ち着け諸君、女子校生が女子校生らしくある事は宇宙の意思。男なんてどうでもいい。大宇宙の決定なのだ!」
「そ、その通りだ!」
「神は初めに女子校を作られた! 神は女子校と共に有った! 女子校は神であった!」
 ビルシャナに励まされ、またも自信を取り戻す信徒。
「高校だけでも女子校は400校弱ある、理想の女子校は必ずあるんだ!」
「安心なさい、諸兄。もしそのような女生徒らが学ぶ舎があったとしても、生涯おまえたちがそれを見られることはない」
「!?」
 復活しかけた彼らに、トドメめいた言葉を突き付けるのはメルカダンテ・ステンテレッロ(茨の王・e02283)。
「可哀想に……おまえたちはそれに触れることも、ましてや見ることも出来ないのだ。もしかしたら、彼女たちもおまえたちがいるからそうしたのやもしれませんね」
「なん……だと……?」
 哀れみすら感じるトーンで静かに告げるメルカダンテ。小柄な少女でありながら、否応無く漂う高貴なオーラが説得力を帯びる。
「真の女子校は触れられざる秘密の花園……男の目に触れるだけでも穢れてしまうと言うのか」
 男泣きしながらヘルメットを脱ぎ、武器をうち捨てる男達。
「武器を取れ! 立ち上がれ! 現に女子校の名を騙る魔女達の巣はあるのだ! これを看過して何が聖戦士か!?」
「そ、そうだ! 眼前の悪を正せ! もはや考える時は終わった、今や行動の時だ!」
 半減した信徒に檄を飛ばし、抵抗を呼びかけるビルシャナ。あちらも必死だ。
「真作と贋作の区別もつかない愚者が、喚くな」
「な、何ぃ?」
 再び彼らに水を差すのは、神楽火・皇士朗(破天快刀・e00777)の低く通る声。
「お前達の語る清楚さや気品など、所詮は創作物の模倣。偽物に過ぎん。表面だけをお淑やかに取り繕った女性がお前達の理想なのか? だとすればとんだお笑い種だな」
「我々の理想とする女子校生は、その立ち居振る舞いから心の奥底まで、美しく可憐な女子校生だ! 紛い物と一緒にするな!」
 皇士朗の言葉に、目を血走らせて反論する男達。
「三つ子の魂百までと言われるように、生まれ持った性質というのは変え難いものだ。高校生になってからどれだけ令嬢ぶっても、それは言わば借り物の衣装を着ているだけでしかない」
「……何が言いたい」
 いつしか語られる彼の言葉に聞き入り始める信徒ら。
「年月を積み重ねて血肉となった気品こそが本物。お前達が真に愛でるべきはここにいる彼女達ではなく、本物の気品を身につける可能性を持つ女性……すなわち、小学生だ」
「な、なんだってーっ!?」
 理想の女性が欲しいなら女児を育成すれば良いじゃ無いと言う光源氏的発想に、さしもの信徒達も度肝を抜かれる。
「いや、確かに我々の求める女子校生は、小中高一貫か、それくらい純粋培養である必要があるな」
「それもそうだ。よし一貫校を作ろう」
 数人の男達は見果てぬ夢を追い求めてその場を去って行く。
「眼を醒ませ、貴様等ぁっ! 理想とする女子校を追い求め、その名を穢す悪を討ち滅ぼす高邁な意思をどこへやったぁ!?」
「そうだ、女子校に殉じれば、来世は理想的女子校に入学する明るく前向きだけどちょっとおっちょこちょいな新入生として生まれ変われるのだ!」
 殆どの信徒はビルシャナの洗脳を脱したが、未だに残って居るのはさすがに精鋭中の精鋭。ファイティングポーズを崩していない。
「女子校と言えども、人には個性が必要だから、誰もがアニメのテンプレの様な女子校生徒になる必要はないよ」
「な、何だと! 異端め!」
 小首を傾げつつ告げるのは、天司・桜子(桜花絢爛・e20368)。
「お淑やかなのも一つの個性だけど、皆がそれを真似する必要はないと思う」
「むむっ……まぁ、確かに女子校にも、多少やんちゃだったりボーイッシュだったりする生徒が居ても良いな」
「なんなら男装の麗人キャラとかも有りだな」
 桜子の説得を曲解している可能性もあるが、何やら女子校生の多様性について盛り上がり始める信徒達。
「だったら、色んな女子がいてもいいし、色んな女子校が有っても良いでしょ?」
「うぅむ……いや、しかし」
 すっかりトーンダウンして、桜子の問い掛けに考え込む信徒達。
「あんたらの妄想に近い女子校も世の中にはあるかも知れないっすけど、普通の女の子は遊びたいし恋もしたいっすよ」
「こ、この様な爛れて穢れきった女子校が普通であって良い筈がない!!」
「その通りだ! こんな学校が異端である事に変わりは無い!」
 中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329)のド正論に、精鋭信徒らは再びエキサイト。
 しかしここまでは彼の思惑通りだ。
「自分達がその相手になりたいとか思わないっすか?」
「えっ」
 なんたる悪魔的誘惑。
 物陰に隠れて恐る恐るこちらを覗っている生徒達に視線を向ける信徒。
「いやでも、どうせ俺達なんて相手にされないし……」
「そうだ、イケメンにしか興味無いだろ?」
「そうとも限らないっすよ。今は12月、クリスマスに備えて彼氏急募って子も多いはずだし」
「マ、マジか……」
 憐の言葉に、考え込む信徒。
「うむ、女子校生も色々! 青春は有限、どんどん恋せよ乙女達!」
 そしてあっさり掌を返した。
「愚かな!」
 気付けば、独りぼっちになったビルシャナ。
「所詮は愚民……我が高邁なる教義についてこられなかったか! 良いだろう、ならばまとめて裁きの炎で焼き尽くしてくれるわぁっ!」
 だが、ビルシャナにしてみれば邪魔者を排除した後で再び信徒を獲得すれば良いと言う判断だろう。ケルベロスに対し実力行使に打って出る。


「どうぞ、ショー。無理をなさらず」
「なぁに、じじいも男気を見せてやるとしよう。行くぞ、ヨッコイ」
 メルカダンテに軽く応えたショーは、相棒のヨッコイと共にビルシャナとの間合いを詰める。
「畏れよ! 崇めよ! 我は理想の女子校へと誘う者!」
 ビルシャナは両翼を広げ、目も眩む様な閃光を放つ。
「浄罪の光で貴様等の穢れた魂を焼き払ってくれようぞ!」
「……ごきげんようっちゅう令嬢感もええもんじゃがの……女の子をいじめちゃいかんのじゃよ!」
 閃光を浴びつつも肉薄したショーは、ビルシャナの鳩尾に拳を叩き込む。
「ごふっ!?」
 グラリと上半身を揺らして閃光を途切れさせるビルシャナ。
「ビルシャナさん、性格が曲がっていてよ。……奇跡を殺せ、ルクスリア」
「……な、何をこの小娘ぐあぁぁっ!?」
 指先で触れ、撫でる様なメルカダンテの所作に、絶叫を響かせるビルシャナ。
 触れた部分には鋭利な槍で貫かれたような穴が空き、血が零れ落ちる。
「私達も行きましょう」
 相棒と言うより恋人と言う方が近いだろうか、ビハインドの真夜に呼びかけつつ、古代語の詠唱を始めるマナ。
「邪教徒どもめがぁっ……わ、我が聖戦に、撤退は無いぃ……!」
 彼女の放つ石化魔法と、真夜の金縛りが更にビルシャナの動きを鈍らせる。
「我こそ正義……正義は勝つのだぁっ!」
「資料でも変な見た目の怪物は、主役にやられるのがオチです」
「んぐぁっ!?」
 死角に回り込んだ慧子は、世迷い言を叫び続けるビルシャナの気脈を指で断ち切る。
「一刻も早く女子校生と戯れなきゃ……男? 魚の餌ですぞ」
「ごぶあぁっ……じ、女子校の理想を解さぬ者どもに、負ける訳など」
 教官モードはどこへやら、いそいそと持てる破壊工作の技術を余すところなくビルシャナへ見舞うエドワード。仕掛けられた無数の爆薬が次々に炸裂する。
「ぐぬうぅ……なぜこれ程の力を持っていながら、女子校の尊さを理解せぬ!」
「妄想は妄想、個人で楽しむのはいいっすけど、現実の人間に押しつけるのはNGっすよ!」
 憐のエクスカリバールが、ビルシャナのクチバシを叩き割る。
「グギェェッ!」
「神楽火くん、そろそろ決めちゃおう!」
「あぁ。……我が魂は炎にして、神を弑する灼熱の耀きとならん!」
 桜子の声に頷き、選定者のハルバードを天に掲げる皇士朗。放出されたグラビティ・チェインが、巨大な重力の刃を形成してゆく。
「桜の花々よ、紅き炎となりて、かの者を焼き尽くせ」
 桜子を中心に巻き起こるのは、季節外れの桜吹雪。エナジーを花弁状に形成したそれは、やがて紅蓮の炎となってビルシャナを呑み込んで行く。
「馬鹿な……我が理想の女子校よ……永遠なれ……!」
「この星から消え去れ、デウスエクス・ガンダーラ!」
 超重滅衝斬によって砕かれたビルシャナは、炎に呑まれ、やがて跡形も無く消え去った。


「生徒と学校を守って下さって、有り難うございました」
「怪我人もなくて何よりじゃ。お前達、片付けは終わったかのう?」
 礼を述べる教職員に応えつつ、尋ねるショー。
「押忍!」
 そこには、多少男らしくなった元信徒達。校庭にローラーを掛けて荒れた部分をならしている。
「キミ、もう一度、蔑むようなトーンでモブキャラ呼ばわりしてくれないか!」
「二度と話しかけないで下さい」
 一方慧子に謎の要請をする男達。別の何かに目覚めてしまったのだろうか。
「キミ、憐れむような眼差しで」
「漫画やアニメで我慢なさい。……迷惑な鳥でしたね、本当に」
 感情は抑えつつも、呆れた様子で男性達をいなすメルカダンテ。
 一般人を救う事は出来たが、説得の後遺症は微妙に残りそうだ。
「桜子も、女子校に通ってみたいなぁ、転校したり出来ないかな?」
 改めて校庭や校舎内を覗き込んで呟く桜子。
 創作物の様な世界ではなかったとしても、女子校には女子校の楽しさがあるに違いない。
「学生恋愛か、制服デートとかしてみたかったかも……今度、制服着てなんちゃって制服デートしてみる?」
 青春まっただ中の女子達を見つつ、隣の真夜に尋ねるマナ。
 学生恋愛は学生の頃にしか出来ないが、人はその気になればいつでも学生の頃の気分に戻れるのだから。
「おじさん外国の人? どこから来たの?」
「ヤバイ格好いいんだけどー」
「いやー、お嬢さんたちに怪我が無くて何よりですぞ。デュフフフ……!」
 隣人力の効果か否か、女子達に人気のエドワード。
「我々も教官の様にモテたいであります、サー!」
 腕立てしながらその光景を羨ましげに見守る元信徒。
「おい、全然OKして貰えないじゃないか、どうなってるんだ!」
 先ほど憐に説得された男達。どうやら生徒達に声を掛けたが、順当に惨敗した様子。
「数人に断られたくらいで何言ってるんすか。女の子は星の数っすよ」
「それもそうか……よし、繁華街に繰り出すぞ!」
 と、またも憐の口車に乗ってその場を去って行った。
「良いのか? 無責任に焚き付けて」
 そんな男性達を見送りつつ皇士朗。
「そう言う皇士朗さんに説得された連中も、学校作りに行ってたっすよ?」
「……本当に作りに行ったのか」
 夢を叶える為に努力する事は大事だ。どんな夢であっても……多分。

 かくして女子校を襲撃したビルシャナを討伐し、信徒らの目を覚ませる事に成功したケルベロス。平穏を取り戻した学校を後に、帰途へと就いたのだった。

作者:小茄 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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