那由多の彼方

作者:宮内ゆう

●喪失、叫び
 それは獣の咆哮だった。
「アアアアァァァァ!!!!!!!」
 怒りも悲しみも何もかもまじりあった男の雄たけび。ただただ絶望を表す。
 男の目の前には真っ二つになった携帯ゲーム機があった。
 これが男の咆哮の理由には違いない。だが、当然ゲーム機そのものが問題ではない。真なる原因はその中身。ささっているソフトはオンラインプレイの可能な人気シリーズのもので、男自身今しがたプレイしていたところのようだ。
「オレの10年がああああああ!!! 40000時間のプレイデータがああああ!!」
 のたうち回ったかと思えば床を叩き、あたりのものを蹴り散らかしたと思えば持ち上げて投げ捨てる。
 激しく頭を振り、発狂しているようにしか見えないその身体に2つの鍵が突き刺さった。
「私達のモザイクは晴れなかったねえ。けれどあなたの怒りと」
「オマエの悲しみ、悪くナカッタ!」
 鍵を刺したふたりの魔女がそれぞれいう。
 そして、男の身体から2体のドリームイーターが生み出されたのだった。

●騎士と僧侶
 パッチワークの魔女。
 今回動き出した2体は怒りの感情と悲しみの感情を奪うようだ。
「それで、相手の大事なものを壊すことで生まれた怒りと悲しみを奪うようですね……」
 そう説明するヘリオライダーの茶太の表情はどこか暗い。
「……それにしても、40000時間、10年のデータですか」
 計算すると1日12時間ほどプレイしてる計算になる。どれだけの時間と労力を費やしたのか。その人生そのものともいえるべきデータが消えたのであれば、その損失は計り知れないものだとわかる。分かるのだが。
「これだけの時間をゲームにだけ費やしていたと思うと、壊したことで彼のためになったのでは」
 それは言ってはいけない。
 なんにせよ、その怒りと悲しみからドリームイーターが生まれたのだ。
 このままでは一般人に被害が出てしまう。故に早急に対処する必要がある。
「このドリームイーターですが、ものを壊された悲しみを語るようです。その悲しみを理解できなければ、怒りでもって襲い掛かってきます」
 そう言って今度は頭を抱えた。
「けれど悲しみを理解しても、お前に何が分かる、といった感じで襲い掛かってくるみたいですね」
 選択肢などない。理不尽だ。
「まあ、どっちにせよ襲い掛かってくるなら、深く考えなくてもいいかもしれません」
 場所も住宅街ではあるが、夜なので人通りはない。
 ひとまず周囲のことは気にせず戦って大丈夫だ。
「それと……ドリームイーターの姿は壊れたものがモチーフになっているそうで」
 男そっくりの騎士とロリ巨乳美少女僧侶らしい。
「……ああはい、うん」
 それ以上は言うまい、茶太の顔は語っていた。
「これがゲームですか……私はじめてです!」
 説明そっちのけで、セティはずっと件のゲームをやっていたらしい。いや、勉強のために必要なことである。
「こんなにいろいろ顔や姿をいじれるなんで楽しいものなんですね!」
 どうやらまだキャラクターメイキングをしていて、ゲーム本編は始まっていないようだった。


参加者
結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)
アリス・ヒエラクス(未だ小さな羽ばたき・e00143)
ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)
珠弥・久繁(病葉・e00614)
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
芥河・りぼん(リサイクルエンジン・e01034)
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)
水限・千咲(斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る・e22183)

■リプレイ

●ゲームの中の写し身
 辺りも暗くなってきたところで、結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)はケミカルライトを取り出した。コマンド選択、どうぐ。
「光魔法!」
 ライトのスイッチを入れると光が溢れ出した。
 どうぐを選択したのに魔法とか言ってるというなぞ。だがそもそも誰もつっこんでくれない。
「い、いや。RPGぽくした方がいいかと……雑? すいません」
 ライオンさん、謝る。その際にふとラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)と目が合った。そしてほんの少しだけ目線が上がる。
「……?」
「ぅぇからくるぞ、気をつけ、ろー」
「わーい!」
「のわああああああ!」
 どこか塀の上にでもいたのか、リリウムがレオナルド目掛けて飛び降りてきた。
「もふもふー」
 たてがみぐいぐいぐいぐいみちみし。
「ああああやめてえええ」
「はいやめますですー」
 そしてすぐさま離れ、頭にルシエドをのっけた状態で今度はミミックのリリさんに飛び乗った。
「りりりりりうむですー」
「なんてことでしょう……! すでにこんなにも可愛らしいマスコット候補が!?」
 驚いたようにエルトベーレが目を見開いた。
「今回はRPG風ということで、マスコットキャラになるために着ぐるみまで着てきたのに!」
 キャバリア犬の着ぐるみ。そもそもお前キャバリアだろというツッコミは無粋だ。
 もっとも、根本的な話としてドリームイーターがRPGなだけでそれに合わせる必要など今回はない。
「だぃまぉー」
 なんかファーの付いたコート着てごろ寝してるラトゥーニとかいるけど。
「ひどく自由なんだけど、どういうことかなこれ」
「……いや、今日はまだ静かな方じゃないか」
「これで!?」
 日柳・蒼眞(落ちる男・e00793) の回答に珠弥・久繁(病葉・e00614)は驚きが隠せない。現場ではいったい何が起きているのか。
 確かに無駄に騒いでいるのはサポート勢ばかりで、メインのメンバーがさっきから全く喋っていない。
「いったい何を……」
 後ろを見遣ると、みんななんかゲームしてた。
「うーん、僕は魔法使い系……だと馴染みすぎてて面白みがないですかね。機工士とか占星術師とか?」
 すっかりキャラメイクで悩んでしまってるカルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)は隣のセティ・フォルネウス(オラトリオの鹵獲術士・en0111)にも聞いてみた。なんかドーナツ食べてるけど、たぶんどこかから鹵獲したのだろう。
「セティさんはどうしました?」
「ヘビーアーマーにしました!」
「重量系!?」
 そこへひょこりと水限・千咲(斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る・e22183)が顔を出す。
「あ、私は剣士にしました。侍もよかったんですけど、目指すはソードマスターです!」
「え、っていうかあなたゲームするんですか」
「しますよー。楽しいじゃないですか。ゲームによって斬るときの演出や効果音もちがうんですよね!」
「いやその楽しみ方間違ってると思います」
 人それぞれと斬り捨てることはたやすいが、それでもカルナはそう言った。まがおで。
「4人揃ったらクエストよ。あ、そろそろ高難度クエスト終わるからもう少し待って……」
 なんかひとりだけガチプレイしてるアリス・ヒエラクス(未だ小さな羽ばたき・e00143)
「……」
 ぽちぽち。
「……」
 ぽちぽち。たんたんたん、たたたたたた、だんっ。ガゴッ!
「……おまたせ」
「なんかクエスト失敗って出てますよ」
「……きのせい」
「斬って良いですか?」
「だめ」
 アリスと千咲のよくわかんないやりとり。
 何はともあれもどってきたので、4人でようやく新たなクエストに出発し……。
「って、そうじゃないでしょう!」
 芥河・りぼん(リサイクルエンジン・e01034)が大声を上げた。
「今そんな遊んでる場合じゃありません! 状況を考えて下さい!」
 至極もっともなことである。
「せっかく外にいるのにゲームばかりしてどうするんですか! 身体動かしましょう!」
「いやそういうことじゃない」
 即座にりぼんの言葉を修正する蒼眞。きわめて正しい。
「やれやれ、いつ敵が現われるかも分からないのに暢気なものだな」
「まあ、楽しいものなんだろうね。だとするとその財産ともいうべき時間が無に帰した痛みは察してあまりあるよ」
 そこまで言って、久繁は顔を上げた。
「……あぁ、こういうと襲ってくるんだっけ?」
「貴様に何が分かるうううう!!!」
「そう、そんな感じで。どうしようも……な」
 振り返ってみた。ドリームイーターがそこにいた。

●守るもの
 エルトベーレがなんか歌い始めた。BGMのつもりらしい。うるさい。
 ファミリアたちにボコボコにされて退場した。
 さて、ケルベロスたちが振り返ったところにいたのは2体のドリームイーター。怒りの形相で睨め付けてくる何とも冴えない騎士風の男と、ロリで巨乳で美少女な僧侶。少女は語る、訴えかけるように、その悲しみを。
「重ねて重ねた私たちの時間を、絆を、永遠に失ってしまったの……!」
「……良い」
 ぐぐっと全力サムズアップの蒼眞。たぶん話は聞いていない。
「貴様に何が分かるうううううう!!!」
「……そんなことより、その子の名前は……それとその胸にダイブをだな……」
 飛び出してきた騎士型と蒼眞が切り結ぶ。まさに男同士の意地のぶつかり合い、と見せかけて互いに話し聞いてないだけ。もっとも、そもそもドリームイーターに会話は不可能だが。
 互いに攻撃を弾いたところで、先に態勢を立て直した騎士型がさらに踏みこんだ。だが千咲が上手い具合に割り込んで騎士型の腕を斬りつけて攻撃をいなす。
「40000時間でしたっけ。それだけ続けられるのは本当にすごいと思います! ちょっと尊敬は出来ませんが」
 辛辣な一言。
「尊敬は出来ませんが!」
 二度言った。
「積み重ねられた研鑽、繰り返した試行錯誤、あらゆる経験の総和が其の人が生きた証となるのだわ。それを全て失う痛みは容易に想像出来るものでは……」
 騎士型が他の仲間の相手をしている隙を狙ってアリスが後衛の僧侶型を狙う。それにカルナも合わせたが、一言。
「でも、ゲームのセーブデータの話ですよ?」
「え、ゲーム? あ、そう……」
 呆れるのが遅すぎる、いままでゲームさえしてたのに何を聞いていたのか。
 しかしそのせいで若干攻撃のタイミングがずれた。その僅かなタイミングに守りを固めた騎士型が庇い、その後ろから僧侶型が火球を放ってきた。
「うわっ!」
 かわしきれずに火球に辺り、カルナは炎を受けてしまった。だが幸いに直撃という程じゃない、すぐにりぼんが癒やしに来てくれた。
「ひっさーつ!! 気力……溜めえええええ!!!」
「ごぶぉ!?」
 遠距離で使えるけど、そこは気分。至近距離から腹に拳をぶち込んで気力を注ぎ込む。カルナはもんどりうって回復した。
「必ず殺す回復とは……」
 アリスはしっかり避難してた。
 だが、これで相手の手の内はだいたい分かった。
 メディックがいれば優先的に狙う。そう考えていたが生憎メディックはいないようだ。
「攻め手としてはなんとか攻撃を当てたいところだけど……」
 久繁が呟く。
 そうは言っても僧侶型を狙ったところでそうそう当たらなそうだ。どうやら、サポート役は騎士型の方らしい。守りを固めて、後衛が火力で攻撃。僧侶の見た目でも攻撃はするということか。
「つまり、モンスタートレインで一網打尽して稼ぐ狩りスタイルということですか!」
「よくわからないけど、このままだと攻撃が分散してよくないね」
 レオナルドが何か難しいこといってるのはスルーして、考えを進めることにした。
「騎士に攻撃を集中して、先に撃破しよう。その間は僧侶の攻撃を抑えてほしいね。フォルネウスさんはフォローを」
「はーい」
 久繁の指示に従い、セティは仲間たちに祝福された矢を撃っていく。
 一方、レオナルドも任された大役を果たすべく前に出る。そして放たれる敵の魔力の矢。
「まもりならまかせろー」
 なんかうろうろしてたラトゥーニが突然動いた。そして、魔力の矢の前にリリさんがぶっ飛んできて直撃した。
「きょぅは2体も、いてたいへん……でもリリなら、小さぃし動き、回ってれば多分持つ、はず」
 動き回るどころか直線でつっこんでた。いやラトゥーニに投げられたんだけど。
「当たらなければどーとぃぅ事はなぃ」
 直撃してるけど。
 だが、結局戦術としては正しい。敵の攻撃を極力抑えつつ、相手の守りを破り、確実に攻撃の当たる方から仕留めていく。
 懸念すべきは僧侶型がスナイパーのようなので、ダメージは大きくなくとも確実に蓄積させられる(主にリリさんが)点である。
 しかし、ケルベロスたちの連携は、こちらの前線が崩されるよりも早く、騎士型を追い詰めていった。

●戦うもの
 ダメージを受けすぎたリリさんから魂のようなエクトプラズムが抜け始めた頃、ルシエドはラトゥーニに指示を受けて、もふもふされてた。ラスボス、わんこを愛でる。
「リリ……かたきはとる……ほかのみんなが……」
 また、騎士型も限界を迎えたようで膝をつき、そこに僧侶型が寄り添った。
「ぐっ、ここまでか……お前過ごした時……長いようで短かったが……楽しかった」
「ううっ、そんなこといわないで……私たち、ずっと一緒よ」
「……ふっ……」
 それだけいって、おもむろにドリームイーターたちに近寄った蒼眞は問答無用で騎士型の顔面に拳を叩きつけた。
 それは思いを乗せた拳。多くの、様々な人々の心に囲まれ、その中にあってなお、孤高の魂を貫く、涙を血に変え、心を鉄に変え、まさにすべてを穿つ鉄血たる一撃――。
 ドゴンッ!
 何か爆発でも起きたかのような音を立てて、騎士型は地面をへこませつつめり込んで動かなくなった。
「悪は死すべし、だ……」
 たなびく赤いバンダナ、その後ろ姿に紋章がすすけて見えた気がした。
「思ったんですが、同じ人から出てきたドリームイーターっていうことはアレ背後は同むぐっ」
 いっちゃいけないとばかりにルシエドが千咲の口を塞いだ。
「ああああ、ダーリン!」
 僧侶型が悲しみに叫ぶ。
「努力の結晶を壊された悲しみ、怒り……きっと私には理解できないくらい、重くて、深くて、大きくて……」
 そして千咲はとても幸せそうな笑顔で笑った。
「斬り応えもすごくありそうですね!」
 斬撃。
 斬撃、斬撃、斬撃斬撃斬撃斬撃。
「ああ、千咲さんの優しさが身にしみます!」
 なんかりぼんが勘違いした。
「失う悲しみ、辛いものですっ。でもだからこそ、すべてリセットして、何もかもなくしてから生きろ、そう言いたいんですね!」
 ぜんぜんちがう。
「ならばわたしもあやかりましょう! この水平0度の一撃は、すべてを虚無へと誘います、つまり……!」
 回転するほどの勢いを乗せてりぼんが腕を伸ばし、真横に手刀を薙ぐ。
「セーブデータすらも、消し去るのです!!」
 ごいんっと僧侶型のこめかみに直撃、脳揺れた。
「脳を揺らすというなら、僕にも覚えがありますよ!」
 たたみかけに乗っかるつもりで構えを取るカルナ。それにおもむろにセティが言う。
「なんか、最近いつも物理で殴ってません」
「うっ……! あっ、いやいや! 殴り魔法使いだと思いました? 残念、今日は機工士モードなのです!」
 後付けっぽく聞こえたのは気のせい。
「いきますよ、かがくのちからってやつを受けるといいです!」
 自信満々に言い放ち炸裂する破鎧衝。その効果で、僧侶型の服がもちろんやぶける。
「……うわー、嬉々として女の子の服破ってる……」
「言い方! セティさん言い方!!」
「なん……だと……!!」
 光より早く蒼眞が反応した。
「いい……」
 全身全霊のサムズアップ。
「なんというか対応に困りますが、これだけは言っておきます。俺は今の男ふたりとは違います!」
 あられもない姿になっていると言うほどではないが、多少なりとも服を破かれた女性に近づく勇気のなかったレオナルドはその場でガトリングを構えた。
 けものがけだもの扱い。
「それともうひとつ。10年……その時間は決して無駄ではありません。経験も思い出もきっと貴方の力になっています。その力、きっと新しいことでも活かせるはずです!!」
 連射される銃弾の嵐に紛れるように、アリスも駆ける。
 死角に回る必要などない。弾に紛れるだけでそこに死角が生まれるのだから。
「……失ったものは戻らない。けれど私たちは生きている。その失った世界でも」
 無数の弾が削るように僧侶型の身体を穿つ中、突き出されたナイフの刃がその胸を貫いた。
「あ」
「もう、終わりにして……新しく始めなくてはならないのだわ」
 どさりと、力なく僧侶型も崩れ落ちていく。
「俺からかけられる言葉はほとんどないんだけれども……何しろ命を失わなかったのは良かったんじゃない?」
 死んでしまえばゲームも出来ない。生きてさえいればやり直せる。同じことでも、違うことでも。何よりも命が大事だと、久繁は言った。
「たとえば、目の前で恋人が死んだ人も居たんだ。それに比べたらなんて楽なことだろう」
「恋……人……」
 今まさに倒れようとしていた僧侶型がなんか持ち直した。
「ね? それでいいでしょ?」
「このリア充がああああああ!!!!」
「ええ……」
 変なところで反応して攻撃してきたので、思わずギロチンフィニッシュで切り返してしまった。
 今度こそ、僧侶型は動かなくなった。

●ゲームイズオーバー
 今頃、被害に遭った男性は目を覚ましている頃だろう。ここにはいないのでケルベロスたちに出来ることはないのだが、ドリームイーターを倒したことで想いが伝わっていれば幸いである。
「さあ、ルシエドさん、勝負です!」
 なのでエルトベーレみたく、サーヴァント相手にマスコット決定戦を競ってる場合じゃない。そこになんかあほ毛まで乱入。
「なんだかよくわからないですけどまけません!」
「リリウムちゃん! これは強敵ですね……!」
 ルシエドはもう好きにしてくれって感じでため息ついた。
「しかし私には、私より優れた三匹のファミリアが……!」
 リヒトさんは余ったドーナツ食べてるし、カイさんは毛繕いしてるし、ハイルさんは帰った。勝てそうにない。
「あの人たちはいったい何をしに来たんだろーか」
「まあ、風物詩みたいなもんです」
 困惑する久繁に頷いてみせるレオナルド。
「たぶん、ドリームイーターにかこつけて好き放題しに来てるのでしょう」
「どうしようもない敵にどうしようもない味方が……」
 さらに困惑。
 いちおう都合上カットされてるだけで、リリウムなんかはちゃんと攻撃してる。あしからず。
「で、こっちはこっちでゲーム始めているけども」
「ドリームイーターをネタにゲームをするのが趣旨とみな考えていますからね。あ、俺も持ってきてます。いまならSSR確定チケット貰えるそうですよ」
「ちょっと考えさせてよ。いろいろと、うん」
 いろいろと。
 なお、ラトゥーニはリセマラの時点で投げた。
 ゲーム面々はようやくクエストに出発できたようだ。
「ぎゃー! カルナさん、なんでパンツ一丁で出撃してるんですか!」
「装備とかよくわからな……じゃなくて僕は思うんですよ。ゲームの中でくらい、己を解き放つべきと!」
 言い繕おうとして、セリフが変態になってる。
「ちょ、千咲さん! すべてのオブジェクト斬り裂きながら進もうとしないで下さい!」
「うふ、ふふふふ、あはははは」
 聞いてない。斬ることしか考えてないから当然すぎる。
「って、アリスさんに至ってはもう死んでるじゃないですかー!!」
「うっかり爆弾をその場でつかってしまったわ……」
 まさかの開幕自滅。
 セティのツッコミが追いつかない。
 収拾がつかないこの状況に、鶴の一声が響くことになった。
「よーし、みなさん、ゲーセン行きましょう!!」
 なんでそうなったのか分からない。でもクリアできない協力ゲームをやってるよりは建設的かもしれない。
 なんやかんやでみんなで行くことにした。それが決まると、なんでか蒼眞が強く強く頷きながら言った。
「……せっかくのゲーセンだ……やはり体感型のゲームをするべきだろう。主に身体を動かすもの……特に女子。そう、女子だ……」
 やたらと気鋭を入れて語る。その頭に、りぼんから脳症揺らす水平チョップがすっ飛んできたのは言うまでもない。
「ゆーしゃのくせになまぃきだー」
 そして地面に顔面からめり込んでぴくぴくする羽目になった蒼眞は、ラトゥーニに棒でつつかれることになったのだった。

作者:宮内ゆう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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