失伝攻防戦~道化師乱舞

作者:紫村雪乃


 ワイルドスペースのモザイクが消え去った。現れたのは森の中の小さな小屋である。
 その小屋の中。異様なものがあった。
 水晶でできたような箱。それは柩を思わせた。中には一人の少女が横たわっている。
 少女は死体のように見えた。が、死んでいるのではない。凍結されているのであった。
 かつて少女は両親により虐待されていた。その小屋が少女の唯一の逃げ場所であったのだ。と――。
 空間が引き裂かれた。現れたのは暗黒の深淵である。
 次の瞬間、空間から何かが滲みだした。
 影。それはすぐに人の姿をとった。道化師の姿を。
 ニンマリと魔的な笑みをうかべると、道化師は小屋に歩み寄っていった。


「緊急事態です」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が口を開いた。かなり慌てているようだ。
「ジグラットゼクスの『王子様』を撃破と時を同じくして、東京上空5000mの地点にジュエルジグラットの『ゲート』が姿を現しました。そして、そのゲートから『巨大な腕』が地上へと伸び始めたのです」
 この『巨大な腕』こそ、『王子様』が最後に言い残した『この世界を覆い尽くすジュエルジグラットの抱擁』である可能性が高かった。本来であれば、この『ジュエルジグラットの抱擁』は、創世濁流によってワイルドスペース化した日本全土を完全に支配する止めの一撃だったはず。しかし、ケルベロスが『創世濁流』を阻止した事で、その目論見を阻止する事ができたのだった。
「しかし、ジュエルジグラットのゲートを戦場として戦う以上、この戦いに勝利する事ができれば、ドリームイーターに対して致命的な一撃を与える事ができるはずです。勿論、この状況はドリームイーター側も理解しているのでしょう。故にドリームイーターの最高戦力である『ジグラットゼクス』達は、ケルベロスとの戦いの切り札として用意していた人間達を、急遽、ゲートに集めるべく動き出しました」
 ドリームイーターが回収しようとしているのは、二藤・樹(不動の仕事人・e03613)の調査によって探索が進められていた『失踪していた失伝したジョブに関わりのある人物』達であった。本来ならば介入の余地がないタイミングで行われる事件であったが、日本中でケルベロスが探索を行っていた事で、この襲撃を予知し、連れ去られる前に駆け付ける事が可能となったのだ。
「ドリームイーターが彼らを利用してジュエルジグラットのゲートの防衛を固める前に、ドリームイーターを撃破して救出してきてほしいのです」
 セリカはいった。それから敵について説明をはじめた。
「敵はクラウン・クラウン。ジグラットゼクス『継母(悪い王妃)』配下の道化師です。武器は大鎌。威力は絶大です」
 戦場は森の中の広場。付近に一般人はいない。また広いため、戦闘に支障はなかった。
「失伝ジョブの探索がこのような事態になるとは想像していませんでしたが、ドリームイーターの切り札をここで奪う事ができれば戦いは有利になるかもしれません。よろしくお願いします」
 セリカはいった。


参加者
空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)
九条・櫻子(地球人の刀剣士・e05690)
エストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)
服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)
雨宮・利香(黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140)
巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)
紅・姫(真紅の剛剣・e36394)

■リプレイ


「彼奴らそんなことまでしておるのか!」
 吐き捨てるような声が響いた。
 紅く染まる森の中。声の主は女であった。
 十七歳ほどか。衣服の上からでもわかる引き締まった肉体の持ち主であった。どこか獰猛な雰囲気がある。
 服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)。ケルベロスであった。
「搦め手も尽忠のこととはいえ誇りは無いのかえ! 戦士の誇りはよ!」
 無明丸は怒声をもらした。すると別の少女がうなずいた。
 同じ年頃。が、無明丸とは印象はまるで違った。華奢で、どこか遠くを見ているような目つきをしている。これは名を空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)といった。
「失伝ジョブの関係者が一般人なのかケルベロスなのかよく分からないけれど……。わたしたちと戦わせるために利用、なんて、許せないから」
 無月はいった。表情には出さないものの、人々を守りたいという気持ちに関して彼女は誰よりも強い。
「失伝」
 疾走しつつ、プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)という名の娘はふと呟いた。
 そのプランであるが。大きな紫瞳の可愛らしい美少女であった。かつてデウスエクスに愛玩用として飼われていたサキュバスであったのだが、とてもそのようには見えない。ただ走る振動でゆっさゆっさと大きな乳房が揺れていた。
「どんな人達なんだろ。気になるけど、まずはピエロから守るのが先だね。絶対守って見せるよ」
「人物も気になるのですが」
 プランの傍らを走る娘が目をむけた。溌剌とした美しい娘だ。なびく金髪が光の粒子を散らしているように輝いている。
「他に気になることがあるの?」
「力です」
 娘――エストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843)はこたえた。
「失伝に語られる力、どのようなものなのでしょう? 救い出せたら聞かせてほしいですね。いえ、必ず救い聞きましょう!」
 エストレイアの目がきらりと光った。まっすぐな眼差しをもつ目が。
 と――。
 ケルベロスたちは足をとめた。眼前、小屋が見えている。そして、異様な者の姿もまた。


 それは道化師の姿をしていた。踊るような足取りで小屋に歩み寄っていく。
「どうやらタイムサービスに間に合ったようですね」
 ニッと笑うと、牛乳瓶の底のような眼鏡をかけた娘が安堵の吐息をもらした。名は巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)。その外見からは想像もできぬ軽やかな動きの持ち主であった。
「売り切り御免の回収祭、強敵大盤振る舞いとは見逃せません。ここで活躍すれば冬のボーナス査定もよくなるでしょうから! お店で割れた皿代を、ここで一気に弁済しないと」
 菫が拳を握り締めた。すると思わずといった様子で他のケルベロスたちは顔を見合わせた。世界の命運をかけて多くのケルベロスたちは彼らは戦っている。が、あろうことか菫はボーナスのために戦っているのだった。
 と、その菫の声が聞こえたか、道化師が足をとめた。優雅な動作で振り返る。
「これは」
 道化師はニンマリと笑った。
「ケルベロスの皆様ですね。お会いしたいと思っておりました」
 大袈裟な仕草で一礼すると、道化師はいった。
「私たちは会いたくありませんでした」
 冷然たる口調で九条・櫻子(地球人の刀剣士・e05690)という名の少女がこたえた。眼鏡をかけた生真面目そうな少女だ。隙のない身ごなしは何らかの武道の道を極めているからに違いなかった。
「失伝関係者を連れ去るのを見過ごすことはできない。絶対に阻止するわ」
 子供のような小柄の娘がいった。その小さな身体のどこから発せられるのかと思うような重い決然たる声音で。
 次いでその娘――紅・姫(真紅の剛剣・e36394)は装甲から光の粒子を放った。吹きつけられたケルベロスたちの潜在能力が賦活化される。
「ティアクライスのエストレイア、参上です! 失伝を知るその少女、拐わせる訳には行きません!」
 エストレイアはドローンを放った。これで攻守の能力が強化されたことになる。
 刹那だ。道化師が手を振った。いつの間に手にしていたか、大鎌が飛ぶ。
 咄嗟にケルベロスたちは跳んだ。が、遅い。旋回する銀光がケルベロスたちの身体を切り裂いた。
「いやん」
 菫が破れた衣服を手でおさえた。乳房が半分ほど露出してしまっている。眼鏡もとこかにとんでいた。
「やってくれるわね」
 飛ぶ銀光を追うように娘が疾った。銀の髪をなびかせ、金瞳を妖しく煌めかせ。大きな乳房が振動でぶるんと弾んでいるが、どのような業を駆使しているのか疾走には何の影響もないようであった。
 瞬く間に距離を詰めると、娘――雨宮・利香(黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140)は妖刀『供羅夢』を閃かせた。
「あっ」
 愕然たる声は利香の口から発せられた。彼女の渾身の一撃が空をうったのである。まるで踊っているかのように道化師がするすると後退する。
「見事な一撃でございます。あやうく首と胴が泣き別れとなるところでございました」
 道化師は首に手を当てた。そしてクククと可笑しそうに笑った。
「笑っていられるのも今のうちです」
 櫻子が襲った。彼女の手の日本刀が月輪のごとき光の弧を描いて道化師を切り裂く。が、浅い。
 直後、プランが舞い降りた。流星の煌きをやどした蹴りを放つ。
 が、またもや道化師はするりと躱してのけた。のみならず大鎌を一閃。切り裂かれたプランの腹から鮮血がしぶいた。
「ケホッ……何て威力……こんな相手に本当に勝てるの?」
 血で朱に染まった素肌の腹を手でおさえ、怯えたようにプランはいった。
 その怯えの半分は演技である。できるだけケルベロスの相手をさせるための。
 が、半分は本気であった。一撃で半死の状態に追いやられている。続けて攻撃をうけた場合、どうなるかわからない。


「貴様らの悪辣外道も此処で終い、もはや往くも戻るも叶わぬと心得い!」
 無明丸が弾丸を放った。
 キンッ。
 澄んだ金属音が響いた。道化師が大鎌ではじいたのである。が、続いて疾った手裏剣を躱すことはできなかった。螺旋をえがいたそれはドリルのように道化師に突き刺さった。
「どうですか、私の手裏剣の味は?」
 菫の目が嘲弄するかのように笑んだ。すると道化師がニィと笑み返した。
「美味しゅうございました。ではお返しです」
 道化師が大鎌を放った。すると同時に二人のケルベロスが動いた。無月と姫だ。
 真紅に染まりつつ大鎌が疾った。後に無月と姫が膝をつく。血煙に包まれているのは、二人が仲間の盾となった証であった。
「いかがでしたか、私の鎌の味は?」
 道化師が嗤った。すると、その眼前に利香が迫った。
「不味いよ、お前のは」
 利香が刃を袈裟に薙ぎ下ろした。道化師が大鎌で受け止める。雷火のごとく散った火花が超人と魔人の顔を一瞬青白く染めた。
 一瞬後、利香と道化師は跳んで離れた。光輪が二人の間をつなぐ。道化師が大鎌を放ったのだ。
 鮮血をしぶかせて利香が倒れた。刃は内蔵までには届いていない。
「なんて威力」
 菫が脚をはねあげた。蹴り飛ばしたのは星のオーラだ。それは流星と化して道化師に突き刺さった。
「やりますね」
 大鎌をひっ掴むと、オーラの衝撃を利用し、さらに道化師は跳び退った。その視線の先、倒れた利香の姿がある。光の盾が彼女を守っていた。
「なかなかの強敵ですね。皆様、苦戦していますがなんとか戦線を維持して下さい」
 エストレイアが叫んだ。これもまた演技である。が、これもまた半分は本気であった。
「わかっています」
「任せて」
 櫻子とプランが同時に殺到した。
 閃く櫻子の一刀。道化師が大鎌で受け止めた。が、それは魔人にとっても渾身の業だ。櫻子はそれほどの剣の天才であった。
 次の瞬間、プランの振動刀『永夜』――チェーンソー剣が道化師の胴を薙いだ。駆動音に湿った音がまじる。が、浅い。
「いたぁい」
 ニンマリ笑うと、道化師は大鎌を横殴りに払った。咄嗟に櫻子とプランが跳び退る。
 避けきれなかった。が、道化師同様二人の傷も浅い。
「確かに強い。けれど、倒す」
 無月は自らに言い聞かせるようにいった。
 失伝関係者を守る。それは利益のためではなかった。守るべき者がいる。ただその為に無月は戦うのであった。
 七色の光の乱舞の中、無月は数十メートルの高さから舞い降りた。蹴りを放つ。
 道化師は大鎌で無月の脚を受け止めた。逃しきれぬ破壊力に道化師の足元の地が陥没する。
「まだよ」
 姫が剣を振り下ろした。彼女の背丈よりも長く太い鉄塊のごとき剣を。それを姫は片腕のみで平然と操っていた。地獄化した哀しい右腕で。
 爆発したように地が爆ぜた。姫の剣が叩きつけられたのだ。が、そこに道化師の姿はない。するりと躱していた。
「ぬぁあーーッ!」
 絶叫とともに無明丸は身裡に気をためた。膨大な熱量に足元の地に亀裂がはしり、風が渦を巻く。
 次の瞬間、無明丸は地を蹴った。脚の威力に大地が爆裂。地を削りながら無明丸は道化師に迫った。
「ふんっ」
 すべての力を拳に凝縮。空間すら砕きながら無明丸はパンチを放った。
「ククク」
 道化師はわずかに身動ぎした。その頬のわずか横を無明丸の拳が疾りぬけていく。かすめただけで火脹れができそうな一撃であった。
 パンチの衝撃波で道化師の顔がゆがんだ。その背後の木立がゆれ、紅葉を花吹雪のように散らす。
 刹那、銀光が噴いた。道化師が大鎌で薙いだのだ。鮮血をしぶかせて無明丸が吹きとんだ。
「やってくれる」
 利香の一閃。今度は道化師の胴からわずかな黒血が噴いた。
 ククク。
 道化師が嗤った。
「さすがは番犬。吠えるのはお上手です」
 いうと道化師は視線を動かした。その先、無明丸か光の盾に庇われている。エストレイアが治療しているのだった。
「くっ」
 荒い息をつきながら利香は顔をしかめた。が、その口の端はわずかに歪められている。
 敵はケルベロスたちを完全になめている。これこそが彼女たちの狙いであった。
 ちらと利香は仲間に目をむけた。仲間たちがうなずく。一気に決着をつけるという意味だ。


「さて」
 道化師はニンマリと嗤った。
「お遊びがすぎました。そろそろ幕をひくといたしましょう」
 瞬間、道化師が大鎌を放った。それは避けも躱しもならぬケルベロスたちを薙ぎ――。
 いや、薙いですぎることはなかった。大鎌の刃はぐさりと無月の腹を貫いている。彼女は自ら盾となったのである。
 無表情のまま、無月は大鎌の刃に手をかけた。ゆっくりと引く。血のからみついた刃が現れた。
「ぐふっ」
 無月の口から鮮血が溢れた。それでも無月の手はとまらない。一気に刃を引き抜いた。
「何――」
 道化師が息をひいた。その顔から嘲弄するかのような笑みが消えている。
 その隙をプランは見逃さなかった。背後に回り込むと、道化師に肉体をからみつかせた。
「気持ち良くイかせてあげる。こわれちゃうけどイイよね」
 プランは道化師の耳に吐息を吹きかけた。花の香りのする吐息を。そして衣服の内へ手を滑り込ませた。細く長い蛇のような指を肌に這わせる。
「ああっ」
 道化師の顔が強ばった。その身を物凄い快感が襲っている。
 プランの愛撫はサキュバスのそれであった。魔性の愛撫だ。のみならずプランは自ら経験した無数の快楽を道化師に送り込んでいた。人間ならば数秒で狂い死にしているはずである。
「くあっ」
 道化師がプランを振り飛ばした。それはさすがといえた。が、続く攻撃はできなかった。再び大鎌を手にするのがやっとの業だ。
 その道化師の眼前、赤光が散った。櫻子の眼光だ。
 反射的に道化師は大鎌をかまえた。が、遅い。櫻子がたはじらせた刃は霊力に青く光りながら道化師を薙いだ。
 道化師の派手な衣装が黒血で汚れた。が、それでも動じた様子もなく――いや、正確にはわずかな狼狽の色を白粉を塗りたくった顔にうかべ、道化師は胴薙ぎの衝撃を利用して跳び退った。同時に大鎌を放つ。死の旋風がケルベロスたちを切り裂いた。
「わはははははははっ! 気にいったぞ、道化。が、うぬを許すわけにはいかぬ。さあ! いざと覚悟し往生せい!」
 無明丸は弾丸を放った。被弾した道化師が凍りつく。
「もう少しなのに」
 唇を噛むと、再びエストレイアはドローンを放ち、仲間を癒した。道化師を完全に潰すために彼女自らも攻撃を叩き込みたいところが、そうもいかない。次に道化師が大鎌を放った場合、何人が立っていられるかわからなかった。
「醜悪な道化め、ここで朽ち果てろ。お前の顔は目障りだ」
 エストレイアが叫んだ。
 その時である。道化師の形相が変わった。ケルベロスたちの策に気づいたのである。悪鬼の形相で道化師は振り向いた。
「気づかれた?」
 姫は悟った。失伝関係者のもとにいかせるわけにはいかない。姫はドラゴニックハンマーをかまえた。砲口とトリガーをそなえたそれは砲撃形態だ。
 竜の咆哮にも似た轟音を発しつつ砲弾が飛んだ。振り向きざま道化師が大鎌で一閃。
 空で炎の花が開いた。渦巻く爆煙。
 炎をまといつかせて道化師が飛んだ。近距離での爆発だ。無傷で済むはずがなかった。
「逃げたわよ!」
 姫が叫んだ。直後、道化師が地に降り立った。そして、さらに跳躍し――いや、道化師がよろけた。その足元に突如出現した濡れ雑巾で足が滑ったのである。
「手抜きお掃除忍法、雑巾手裏剣。逃がしませんよ!」
 菫がニッと笑った。
「ぬうっ」
 道化師の目に怒りの炎がめらと燃え上がった。すぐに態勢を立て直し――道化師の顔が驚愕でゆがんだ。その前に迫る影がある。利香だ。
「何戦闘中に敵に背中向けてんのよ!」
「死ねっ」
 道化師が大鎌を一閃させた。飛び火花は噛み合う刃が発したものだ。が、利香の刃はとまらない。
 雷迅月翔斬。
 自らの筋肉に魔力電流を流し込み身体能力を飛躍的に増幅。その肉体をもって繰り出される超スピードの斬撃である。
 怒涛のように刃が疾った。さしもの道化師も防ぎきれない。妖刀『供羅夢』の刃を利香が鞘におさめた時、細切れとなった道化師が消滅した。


 ケルベロスたちは小屋の中に駆け込んだ。
 中央に水晶でできたような箱があった。中には一人の少女が横たわっている。
「凍結されているのよね。解凍できるのかな?」
 少女を見下ろしたままプランが呟いた。他のケルベロスたちが顔を見合わせる。解凍の方法がわからないし、また勝手に解凍してよいものかどうかもわからない。
「皆様、お疲れ様でした!」
 エストレイアが満面に笑みをうかべた。ふうと息を吐く。
「無事に救えましたし、万事解決ですね!」
「わははっ! この戦い、わしらケルベロスの勝ちじゃ! 鬨を上げい!」
 高らかに無明丸が叫んだ。天にまで響くそれは勝利の雄叫びだ。
 その時、姫はふと思った。少女が小さく微笑んだのではないかと。
「よかった」
 姫もまた微笑んだ。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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