富士山麓、人里離れた森の深奥で変化は起こった。
森と山肌の境界、四畳半ほどの領域を埋め尽くすモザイクの海……ワイルドスペース。
その何かを隠すような極小のワイルドスペースは映像の逆回し処理のように消えていく。
「はーん、洞穴か」
暴かれる領域に、唐突に魔空回廊は開いた。
「さながら眠れる森の……野獣? いい趣味してんじゃねぇの」
降り立つデウスエクスは、さながら粗野な赤ずきん。バスケットに織り込まれたモザイクがドリームイーターの一員であることを示している。
彼女が眺めた洞穴には、山犬のようなウェアライダーが一人。冬眠する動物のように枯草に埋もれて保管されていた。
「まったくもってアタシら向きだ。『グリーディーの赤ずきん』リーパー、目標を回収する」
黙っていれば、手にした散弾ライフルさえなければ、美人。
そんな野性的な顔立ちが獲物を前に舌なめずった。
「ジグラットゼクス『王子様』を撃破したのと同時、東京上空5000m地点にジュエルジグラットの『ゲート』が出現、『巨大な腕』が地上へと伸び始めている」
集まるケルベロスにリリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)が緊急事態を告げる。
この『巨大な腕』こそ『王子様』が言い残した『この世界を覆い尽くすジュエルジグラットの抱擁』……かのデウスエクスの創世濁流が成功していた場合、ワイルドスペース化した日本を完全支配する止めとなったのだろう。
だがケルベロスたちにより創世濁流が阻止され、流れは変わった。
「あくまで推測の域を出ないが、現状はまだ膠着状態だ。我々が脅威を感じているように、ドリームイーター……ジグラットゼクスも私たちを警戒して動いている」
『ジュエルジグラットの抱擁』は、打ち破るのに全世界決戦体制を行う必要がある程の危険規模だが、ジュエルジグラットのゲートを戦場とした戦いでもある。
この戦いにケルベロスたちが勝利すれば、ドリームイーターの勢力は致命的な一撃を受ける事になるだろう。
「ジグラットゼクスたちもリスクはわかっているのだろう。敵の次の動きが意外なところからわかった。『失伝』と『赤ずきん』だ」
リリエが言うには、二藤・樹(不動の仕事人・e03613)の調査で探索が進められていた『失踪していた失伝したジョブに関わりのある人物』、それこそがジグラットゼクスの切り札だったらしい。
「日本中で行われた探索で、この失踪した人々の行方と襲撃が予知できた。至急現場に向かい、ドリームイーターに回収される前に救助してやってほしい」
リリエは富士山麓にある森の一角を指し示し、捕らわれた人と襲撃者を告げる。
「この森の奥、ワイルドスペースに隠されていた小さな洞穴に仮死状態の被害者は捕らわれている。穴はせいぜい人一人ぶんくらいだから、戦場は外の開けた森になるだろう」
回収に現れるデウスエクス、ドリームイーターは赤ずきん……『グリーディーの赤ずきん』と呼ばれる狩人譲りの攻撃力と回収能力を持った少女デウスエクスだという。
「現場に現れる個体は、余地では『グリーディーの赤ずきん』リーパーを名乗っていた。大型の散弾銃を装備しており、特に攻撃力の高い個体のようだな」
リーパーは狩人然とした姿に反し、クラッシャーの位置での戦いを好み、銃から放たれる散弾は広範囲の相手をエンチャントごと粉砕する。
また範囲は狭いが更に強力なスラッグ……一粒弾も使用し、そちらの破壊力は更に強力だ。手にしたバスケットからモザイクを喰らうヒールグラビティも使い、攻防共に隙が無い。
「ただ弱点となるか、だが……ドリームイーターたちは仮死状態の人物の回収を優先する傾向があるようだ。うまくつけば有利に立ち回れるかもしれない」
こちらが厳しいが、敵も厳しい。それは目の前の敵も、状況も同じだ。創世濁流の失敗で大きな打撃を与えられた今、次の一手を阻止できれば来るべき決戦への大きな助けになるだろう。
「今こそドリームイーターとの決戦の好機だ。頼むぞ、ケルベロス」
参加者 | |
---|---|
霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725) |
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896) |
ドールィ・ガモウ(焦脚の業・e03847) |
アーニャ・シュネールイーツ(時の理を壊す者・e16895) |
伊・捌号(行九・e18390) |
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176) |
椿木・旭矢(雷の手指・e22146) |
櫂・叔牙(鋼翼朧牙・e25222) |
●対峙する猟犬
富士山麓、人里離れた森に異変は起こった。森と山肌の境界で四畳半ほどを隠すモザイクが消えていく。待ちかねたかのように現れる魔空回廊。降り立つ武装赤ずきん。
「はーん、洞穴か」
「その通り。貴様らのお目当てはこの中だ……もっとも目の前の我々を倒す必要があるわけだが」
予知をなぞるように近づく赤ずきん……デウスエクス『グリーディーの赤ずきん』は、遮る声に抜き打ちで銃を突きつける。
彼の物騒な赤ずきんと、洞穴の間へ布陣したケルベロスが八人、個性的なドラゴンたちが三頭。
「お早いおつきじゃねーの。アタシ、御寝坊な御姫様の送迎なんだけどなぁ?」
「当然、ここを通すわけにはいかないな……ラグナル!」
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)の声が火ぶたを切った。
お互いに多くの言葉は必要ない。引かれる引鉄、落ちる撃鉄。ヒールドローンが盾と化して飛び、砕け、そしてブレスがさかのぼる。
「眠れる森の……? 笑わせる。あんたらは助け出しにきた王子様じゃないだろう。残念ながら、あんたの目的が果たされることはない」
「ソレを決めるのはアタシだぜ。『グリーディーの赤ずきん』リーパーは収穫する!」
身を回しブレスを振り払う赤ずきん、リーパー。飛び込んで散弾をかわした椿木・旭矢(雷の手指・e22146)。二人の身体が激突する。
つきこまれる拳、排莢する中折れ式の散弾銃がそれをはたき、逸らす。飛び出す薬きょうが落ちるのを待たず、押し蹴りが旭矢を飛び退かせる。
「はしっこい野郎が!」
だがただでは起きない、食いしばる旭矢に装填が一手の遅れた。悪態をつくリーパーが十を向けるより早く、その数倍の火線が集中する。
「良い猟銃だな。だがハンティングシーズンは終わりだ。SYSTEM COMBAT,SELECT 20mm」
「見た目通りとはいかなさそうですが……それでも、ここは押し切らせて貰います」
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)の『20mmガトリング砲』の低周波音に、アーニャ・シュネールイーツ(時の理を壊す者・e16895)のアームドフォートが二重奏を奏でる。
対するリーパーは一つの銃身、たった一発の銃弾。しかし。
「しゃらくせぇ!」
「っ、クソがぁっ!」
そのたった一発がケルベロスたちを圧倒する。
両足の装甲義骸から噴き出る地獄。膝をついたドールィ・ガモウ(焦脚の業・e03847)が演技抜きに罵声を咆える。
旋回するヒールドローン、『たいやき』の香ばしさ……もとい、インストール属性。彼を筆頭としたボクスドラゴンたちの護りも全て、散弾の一発が消し飛ばした。
「……キツいな」
霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725)は偽らざる感想へ、攻撃を諦めマインドシールドを展開する。
ドールィの赤鱗が深々と抉れている。マークの追加装甲に亀裂。自分の『凍護-氷陣-』も同じく……伊・捌号(行九・e18390)だけでは間に合わない!
「見てくれもやることも絵本の世界とは逆、ってレベルじゃないっすよねコレ!?」
範囲への癒しが足りない、誰を優先する? わずかに悩み、櫂・叔牙(鋼翼朧牙・e25222)へと『幻夢幻朧影』の幻影を付与。
「ちょいと手数がやべぇっす、凌げますか!?」
「ありがとう、行九さん。やります。出力リミット、ミリタリーまで解放……!」
初手は出鼻をくじかれたが、くじける暇はない。叔牙の体内で高出力動力炉が咆哮し、展開した放出フィンが熱気で幻影を揺らめかせる。
「EX-GUNNER SYSTEM,MODE ASSIST」
「おっと、こいつはやべーな!」
リーパーの銃口がマークを捕らえる瞬間、戦闘システムが脚部『LU100-BARBAROI』クローラーを逆回転。同時、倒れたマークが飛び退く場所にクレーターが穿たれる。
そして倒れた姿勢のまま発砲、面制圧の跳弾が再びリーパーの装填を遅らせた。
「感謝します。如意直!」
遂に直撃がリーパーを捕らえる。伸長する如意棒がリーパーを打ち据え、小柄な身を大きく吹き飛ばした。
●グリーディー・アタック
衝撃に抗わず、リーパーは身を宙に退かせた。
「っとぉ、危ねぇな」
「相変わらずコソコソと動き回りやがって、夢喰いめ。今回で一泡吹かせてやるぜ」
追いかけるドールィの火球へ、空を蹴るような重心移動で身体を逸らし、衝撃を流して着地。猟銃が派手な音を立て、薬室を開く。
「させません……!」
伸ばした如意棒で地を蹴り、上空から叔牙が詰める。落下の勢いを乗せたドラゴニックハンマーが強かに殴打。さしものデウスエクスも、銃身を両手で支えて受けた。
「けど、その構えじゃ銃は打てないっすね」
「そいつぁどうかな?」
捌号に答えるリーパーの唇が、モザイクを食んでいる。小さく抽象的だが、晟には色々と縁深い……薬莢、いや実包。
「まずい、退け!」
「待たねぇよ!」
声と共にモザイクが飛ぶ。超人的器用さで埋められた薬室へ、リーパーは撃鉄を下ろした銃床を叩き込む。
「な……!?」
「グァッ!」
発砲の衝撃が叔牙を打ちのめした。散弾なら彼を粉砕したであろう火力が、捌号へと集中する。
咄嗟、庇い立ったボクスドラゴン『エイト』の肉が弾けとんだ。
「まだ弾は残ってるぜぇ!?」
「させん!」
更に引鉄を引くリーパーへ、躊躇わず晟は身を投げた。
「晟さん!?」
アーニャの悲鳴と砲撃に交差し、二メートル近い晟の巨体が蹴鞠のように吹っ飛んだ。
受け止めたドールィまでが引きずられ、山肌へ叩きつけられてようやっと止まる。これがスラッグ、対大型獣用一榴弾の威力か。
「……面目ない、助かった」
「こちらこそだ。俺なら耐える自信は、ねぇなっ!」
飛び起きる二人、直後に穿たれる散弾の大穴。一度は飛び退かせたリーパーが、再び距離を詰めてきている。
「聖なる聖なる聖なるかな……これ、ちょっとピンチってヤツじゃないっすか?」
「AFFIRMATIVE」
電子音で答え、構えるマークの背に捌号は祈る。
『彼方に居られます我が神よ』……純粋な仰ぎ、信ずる祈りは憔悴を鎮め、傷ついたドラゴニアンたちに癒しを与えてくれる。倒れたエイトをはじめ全てを救うには手が足りないが、戦い続ける力にはなる。
「やっぱ厄介だよなぁ、癒し手ってのは。もう一発いくか」
飛び交う弾幕をものともせず、リーパーはモザイクを喰らい、装填する。次もスラッグか、散弾か?
「リーパーの猟銃は手動です、技術で補っていますが、攻撃の周期はある程度読めるはず……」
「あぁ。怯みはしない。誰かに使われるってのは、きっと、嫌だからな……っ」
アーニャが施すウィッチオペレーションに語尾をあげながら、カイトは窮地に高まる闘志を感じた。背後に捕らわれた人への、覚えのない思いが、救えと彼を突き動かす。
「氷結エンジン、出力解放……やるぞ、たいやき」
戒めるは凍気、喰らうは貪狼の顎、閉じるは氷獄への棺。照準された猟銃めがけ、カイトの攻撃用氷魔術が甘く、熱く襲いかかった。
●ケルベロス・ハイチャージ
「はっ、そんな大ぶりな魔術が……」
「通るさ。猟犬は赤ずきんを喰らうものだ」
身をかわすリーパーを、旭矢の鋭い眼光が下から捉える。地から天へと駆け登る変則的なスターゲイザー、軸足を蹴り裂かれたデウスエクスの身体が射線上へと躓いた。
「クソがっ!」
かわしきれないと悟るや、発砲。今度はリーパーが悪態をつく番だ。スラッグ弾の衝撃が氷術を撃ち抜き、さかのぼるが、互いに威力は大きく減じた。
「おっとどっこい、幻夢幻朧影……!」
炸裂するグラビティ。それだけなら相討ちだが、捌号のヒールがすかさずカイトを癒す。限りはあれど、ケルベロスたちは手数で勝る。
一手目、あるいはカイトに使ってしまった再射で仕留めていれば状況はまた違った。被害は大きいが、分はケルベロスたちに大きく傾いている。
「調子乗んじゃねーぞ……その腹かっさいばってやっからな……!」
レーションのように籠からモザイクの食物をかじるリーパー。その体力もヒールもケルベロスたちとはけた違いだが、一人の彼女に攻撃と回復は同時にできない。
「波が引いた……今です!」
「一気呵成に……畳み掛けましょう」
数度目の癒しを選んだリーパーにアーニャは決断する。バスターライフルのセレクタを操作、叔牙の放ったフォーチュンスターの星弾に霜を降らせながら退路を塞ぎ、襲い掛かる。
「飯食う暇もねぇってかよっ」
「食われるのはあんあたらだ、赤ずきん。めでたしめでたしで終わるために、ここで敗れてもらう」
攻撃は最大の防御とばかりの、無慈悲な旭矢の肯定。日輪の如く燃える戦槌を振り下ろせば、天空より数多の稲妻が応えて叫ぶ。
大地へ延びる『雷の剛腕』は破壊の轟音を鳴り響かせ、リーパーと周囲一帯を強かに打ちのめしていく。
「かはっ……あたしとしたことが……油断しちまったぜ。後の先たぁな」
リーパーの頭巾、衣装が赤黒く焦げ、節々に綻びが表れていた。
「これまで護る為に生きてきた人生だ……俺にも意地がある」
傷ついた晟がよろめく巨体を起こす……あまりに巨大に見えるのは消して錯覚ではない。
自身とラグナルのグラビティチェインを外装として一体化した姿、人呼んで『砲戟龍』。
「大丈夫か?」
「そういつも倒れてはいられんよ……!」
くぐもった声で答えるその顔に、旭矢には少し微笑んで見えた。
「そうかい、なら……その矜持を奪わせてもらうぜ」
偶然のタイミングで、リーパーも笑う。こちらは破滅的な、不敵な笑み。巨砲と化し振るわれる『蒼竜之錨鎚『溟』』を間一髪かわし、彼女は砲撃の爆風に身を晒す。
「正面からか!」
「ご明察、だが手遅れだ!」
超火力の砲撃がリーパーの身を焼く。焼かれながらもリーパーは跳ね飛ばす力に身を乗せ、一気に山肌へと飛びついていく。
「いただくぜ、どきな!」
猟銃が狙う先はよろめいた息の荒いドールィ。必殺のスラッグ弾がボトムスごと足を砕き、地獄の炎を噴出させた。
●獣たちは咆えた
「恐れ知らずにも程がある……!」
「成果なしじゃあグリムの姉貴に締められちまうからな……あたしらにもっ、意地があんだよ!」
カイトのスパイラルアームを、リーパーは飛び込みで避けた。前転、一気に眠れるウェアライダーへと飛びつく。
「手の内は存分に見せてもらった。あたしは殺せても、止めることはできねぇっ」
「そいつはどうかな?」
勝利を確信したリーパーの笑み。それを崩したのは倒れたはずのドールィの声。
「DATA LINK.BALLISTIC ANALYSE……」
振り向くリーパー。薄暗い洞穴の外にマークの瞳が輝いた。
「LEAP FIRE,AND READY ALL WEAPON」
「罠をかけさせてもらいました。まだ倒れは、しません」
洞穴という狭所は攻撃を集中する絶好の位置だ。封印された人の回収が第一目標のリーパーには、それを盾とすることもできない。
計算されつくした跳弾と銃火器の雨が一瞬にしてフードをボロ切れに変え、防御を失った肩口を叔牙の『抜き手』が指した。
「がっ……て、てめぇぇぇっ!」
叔牙の肉体がフィンよりエネルギーを放出する。攻勢エネルギーをまとい、超硬質化した手刀。人間の手で最も脆い指先は今、最強の刃と化してデウスエクスを貫いている。
「その人は……返してもらいます」
伸長したフレームが戻る勢いに、リーパーの身体が引きずり出される。それでもなお、もげかけた腕でウェアライダーを掴み続けるのは執念としかいいようがない。
「しぶといっすね! 飛び出しますよ!」
腕を狙う捌号のマジックミサイルの一斉射撃も、身をひねった体で受ける。血を吐き、呻きながらもその動きは止まらない。
モザイクの籠へと送り込まんとする儀式を続けながら、道を塞ぐケルベロスさえも盾に身をかわす。
「ナメて掛かって悪かったな。俺の本気だ、喰らってけ」
「お断りだぜ……っ」
露になったむせるような両足の地獄でドールィが蹴り上げる。
必殺の『ドラゴンサマーソルトB』に対し、リーパーの切り札は己の武器。
叩きつけるような接射が、ドールィとリーパー、撃った猟銃本体をも吹き飛ばす。
「くそ、やってくれやがる!」
「TARGET OUT……!?」
せまるレプリカントたちの猛砲撃さえ吹き飛ばす弾薬の誘爆。全てを使い切ったが、送り届けるまではもう一手もかからない。
「どうせ、もう使う事はねぇ……一手、足りなかったなぁ!」
狼狽したマークの電子音声にリーパーは快哉を咆えた。
『テロス・クロノス』
瞬間、その勝利の笑みは彼女自身も気づかぬままに凍り付く。
「一手……届かせましょう。『時空干渉能力』を応用した切り札……私の最大の攻撃で!」
テロス・クロノス……大量のグラビティを用いて時に干渉するアーニャ最大の能力。これまで『当てる』ために使ってきた数秒だが、ここにおいて彼女はそれを攻撃に費やす技を編み出していた。
それはまさに、届かなかった一手を伸ばす技。
「テロス・クロノス! デュアル……バーストっ!!!」
そして時は動き出す。
「な、なんだとぉぉぉー!?」
目の前の光景に愕然とリーパーが叫ぶ。
アーニャ以外の視点では、迫る砲撃が突然に敵前で倍に膨れ上がったのだ。これほどの理不尽はそうない。
「相手が悪かったな、赤ずきん。猟犬に食われた後に助けは来ないぞ」
砲撃ごと叩きつけられた山肌が地滑りし、デウスエクスを埋葬していく。晟と二人、ドールィと封印された男を引っ張りだした旭矢の呟きに、赤ずきんからの返事はなかった。
「マーク・ナインよりレスキュー。マーク・ナインよりレスキュー。救助対象を確保、容態不明、交戦により周辺被害あり……」
マークのアイズフォンが通信する傍ら、ドールィは蜥蜴煙草を取り出した。
まだ封印された男は目覚めない。彼の両足の地獄も立ち上がれるまでには遠く、今は仲間たちに任せるしかなかった。
「吸うかい?」
「もらおうか」
手渡された煙草をくわえ、晟も一息。首を回した先は、介抱を変わったアーニャたち二人。今回も、何とか守りきれたようだ。
「……そういえば、カイトさんも似たような経験か何かが?」
「いや……どうだろうなぁ?」
彼の呟きを思い出したアーニャの問いに、カイトはどうだろうとやんわり返す。黒く覆うバイザーを上げた顔には、日常の目元が戻っていた。
作者:のずみりん |
重傷:ドールィ・ガモウ(焦脚の業・e03847) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年12月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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