失伝攻防戦~夢喰の目論見を阻止せよ!

作者:沙羅衝

 ここは六甲山。山々は紅葉が進み、北風が準備を始めていた。まもなく冬になる。例年より冬の訪れが早いのか、既に人々の吐く息は白く、足早にその近辺から遠ざかる。そんな人々の眼に触れることは無い場所。
 片側一車線の曲がりくねった大きな峠道。表六甲と裏六甲からなるその峠道は、神戸市を越えて有馬へと続く街道でもある。もっとも、現在は山の中腹から便利なトンネルが掘られてあり、わざわざ山を越えて反対側を訪れる人は少ない。特に裏六甲ドライブウェイと呼ばれた有馬へと続く道、太陽の光が当たりにくく、暗い道を、好き好んで行き交いするのは六甲山で働く地元民か、六甲山が気に入って住居を構える者。そして、峠を攻める走り屋の兄ちゃん位だろう。
 そんな裏六甲ドライブウェイを山頂から少し下った場所に、ぽつりとした民家があった。既に外装は風雨にさらされぼろぼろであり、所々が壊れている。当然、人の気配はない。だが、決して大きくは無いが、デザインその物は悪くない。建てられた当初を年月から想像すると、さぞかし立派な洋風の建築であったことが窺える。
 その建物の内部の二階、恐らくここに住んでいた者が寝室としていた場所。その一室全体がモザイクとなっていた。何時からその場所がモザイクとなっていたかは分からない。そしてふと、そのモザイクが消えた。
「……いたか」
 その場所に、ケンタウロスのように下半身を四足で歩く、一人の女騎士と思われる人物が現れる。ケンタウロスのようではあるが、鱗に覆われているので、馬という訳ではなさそうだ。だが一つ変わった所があった。それは、デュラハンのように、自らの首を腕で抱えているのだ。
「さて、作戦を実行するとしよう」
 その女騎士の首は、そう言って動き出したのだった。

「みんな、緊急事態や! ジュエルジグラットの『ゲート』が出た!」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が、何人かのケルベロスに声をかけると、その内容にすぐさまケルベロス達が集まってきた。
「ええか、場所は東京の上空5000メートル。そこから『巨大な腕』が地上へと伸び始めた。どうやら撃破された『王子様』が最後に言い残したこと、『この世界を覆い尽くすジュエルジグラットの抱擁』である可能性があるねん」
 ざわつくケルベロス達。絹は構わず説明を続ける。
「ほんまやったら、この『ジュエルジグラットの抱擁』は、創世濁流でワイルドスペース化した日本全土を完全に支配する止めの一撃……のはずやった、と思われてる。でも、知っての通り、皆で『創世濁流』を阻止したわけや。んで、コイツがなんも知らんと出てきたんちゃうかと、言われてる。でもな、この腕は現に出てきてしもた。こいつを打ち破るには、全世界決戦体制をやる必要がある。それくらいのモンや」
 全世界決戦体制、とうとうその時が来た。ジュエルジグラットのゲートを戦場として戦うという事は、この戦いに勝利する事ができれば、ドリームイーターに対して致命的な一撃を与える事ができる。集まったケルベロスの何人かは、その事に気がつく。
「そういうこっちゃ。でも相手もそれくらいはわかっとるやろ。ちゅうのもな、ドリームイーターの最高戦力『ジグラットゼクス』達は、ケルベロスとの戦いの切り札として用意していた人間達を、急遽、ゲートに集めるべく動き出した」
 その言葉に、首をかしげる一人のケルベロス。
「切り札の人間……。どういうことだ?」
 人間を盾にするつもりなのかと考えるケルベロスもいた。
「あんな、今回ドリームイーターが回収しようとしているのは、二藤・樹(不動の仕事人・e03613)ちゃんの調査で、探索が進められてた『失踪していた失伝したジョブに関わりのある人物』達、なんや。敵さんからしたら、介入の余地がないタイミングで行われる事件のはずやったやろ。でも、日本中でケルベロスが探索を行ってる事で、この襲撃を予知して、連れ去られる前に駆け付ける事が出来るようになったんや!
 そんで、もう分かるわな。その人間の連れ去りを邪魔するで。敵さんがゲートの防衛を固める前に、ここに現れるドリームイーターを撃破して助け出す。頼むで!」
 事態はケルベロスの考えを凌駕していたのか、ぽかんとする者もいた。絹は、まあ後でゆっくり咀嚼してくれたらええわと、説明を続ける。
「今回皆に言ってもらうんは、神戸市の六甲山、の裏っかわ。寒なってあんま人もおらん。その山の中腹から上に行った辺りに、壊れかけの小さめの洋館がある。その二階の寝室に一人の男性が凍らされた様に静かに寝かしつけられてる。その人を確保して欲しい。
 そこに現れるのが、ジグラットゼクス『青ひげ』配下の精鋭騎士、グロワール騎馬隊ラ・グロワールの一人や。攻撃方法は主に大剣での突き、払い、チャージ。早くて正確な一撃をぶち込んでくる。気をつけるんやで。
 あ、それから、敵さんは『自分が敗北する可能性が高い』と考えたら、『失踪していた失伝したジョブに関わりのある人物を魔空回廊からゲートに送り届けようとする』行動をとる。この行動は二分間かかるらしいけど、その時にそれ以外はなんも出来へん。ギリギリのタイミングであるってことではあるけど、その分、こっちが一方的に攻撃することができる。このドリームイーターの場合、忠実に作戦をこなす騎士である可能性が高いから、その身を犠牲にしてでも作戦を遂行するかもしれん。それだけ、相手の作戦の鍵やっちゅうことやな。そのへん考えて、上手いこと作戦練ってな」
 肝心なことは、敵の作戦をどう潰すのかという所だろうか。ケルベロス達は、どうするか思案を始めた。
「あ、せや。どうやらドリームイーターは、ケルベロスが囚われていた人間を攻撃する可能性は考えていないらしいわ。まあ、うちかて救って欲しいなとは考えてるけどな。でも、彼らの身柄が奪われそうになった場合は、敵さんは、どないするやろな。まあ、想像の範囲やけど、ハッタリも案外有効かもしれんで。ほな、気合入れて、頑張ってな!」


参加者
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
毒島・漆(魔導煉成医・e01815)
鏡月・空(一日千秋・e04902)
ソル・ログナー(鋼の執行者・e14612)
筐・恭志郎(白鞘・e19690)
空木・樒(病葉落とし・e19729)
相川・愛(すきゃたーぶれいん・e23799)

■リプレイ

●ひっそりとした洋館で
 ドガッ!
「おっと、悪いが貴様等の思い通りにはさせん!」
 ソル・ログナー(鋼の執行者・e14612)が扉を蹴破り、チェーンソー剣『ブラッディサージ・アサルト』を構えて部屋に進入する。
「わわっ。ゆ、誘拐なんて、させませんっ!」
 続いて相川・愛(すきゃたーぶれいん・e23799)が、扉に躓きながらわたわたと、ソルの後に続く。
 ケルベロス達は、絹の情報通りの洋館に突入していた。階段を駆け上がり、目標の寝室へとたどり着いたのだ。
 ソルが進入すると同時に、ケルベロス達が一気に雪崩れ込む。そこには、情報通りの姿をしていた、白いデウスエクスの姿があった。そして、その傍らのベッドには、一人の男性が固まった状態で寝かしつけられていた。
「そこまでです。ラ・グロワール!」
 筐・恭志郎(白鞘・e19690)が、斬霊刀『白畷』を正眼に構えて、そのデウスエクスに問う。
「ほう……何処でその名を?」
 少し後ろを向いていた彼女は、ゆっくりと振り返りながら、一瞬何かを考えるそぶりをして、腰に携えている大剣を抜き放つ。そして、にやりと笑った。
(「さて、うまく行けば、良いのですが」)
 鏡月・空(一日千秋・e04902)は、ベッドの男性を一瞥し、自分達が考えた作戦をもう一度冷静に頭に入れなおす。ケルベロス達は、絹の情報から作戦を練りこんでいた。一歩間違えば、作戦は失敗してしまう。その緊張感は目の前の男性の未来かもしれないからだ。
(「あの人が、そうなんだよね……」)
 メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)は、伴侶である毒島・漆(魔導煉成医・e01815)に視線を投げる。漆はその視線に気が付き、頷く。
(「彼が、失伝の……。連れて行かせるわけにはいきませんね。……もしもの時も、考えてはいますが」)
 漆はそう思い、覚悟を決めて爆破スイッチを押す。
 ドゥン。
 後ろに下がるメリルディと、ソル。そして空木・樒(病葉落とし・e19729)の背後に、カラフルな爆発が発生する。
「……ほう。シャドウエルフが居るな」
 目の前の白いデウスエクスは、樒の姿を確認するや、その目を見開いた。
(「まさか、本当に……」)
 樒は絹に名前と特徴を聞いた時、一つの事柄が頭によぎっていた。それはいつだったかの記憶。
 これは仲間内での噂話と、気に留めているわけでもなかった。自分達のような長い耳を収集するデウスエクスがいる、という噂話だった。
 何処までが憶測で何処までが本当かは分からない。それをいちいち本気にもしては居なかった。
 だが、現に目の前の者の視線は、自分の耳に注がれていた。
「何人かが、おかしな姿をしているとは思ったが……。舐められたものだ」
(「……見破られたか!?」)
 狼のウェアライダーのヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)は、樒に念のためと言われ、恭志郎と共に長い耳の特殊メイクで臨んでいたのだが、どうやらそれはあっさりと見破られてしまった様だった。だが、自ら明らかにはしない。特殊メイクを本物と間違ってくれる可能性が、まだゼロという訳でもない。
 しかし、その念のためを見向きもせず、自分の耳を明らかな熱を持って自分を凝視する敵に、樒の頭の中であらゆる事象の点と点が結びつき、少しの戦慄を覚えた。
「樒さん……」
 その彼女の様子に、恭志郎が、大丈夫だと頷きかけた。

●策
「はっ!」
 ヴォルフが日本刀『月牙』を振りかぶり、部屋の周りの小物を飛ばす。
「遅い!」
 だが、その攻撃は、容易く避けられる。その行動を観察しながら、漆が鈍色の手甲を模した日本刀『【腕】』で鋭い一撃を入れる。
「遅いと言っている!」
『動かないでっ!』
 漆の一撃も避けられるが、その先にメリルディが、敵の足元に粉砂糖を絨毯のように撒く。すると、そこに突っ込んだラ・グロワールの勢いで粉砂糖が舞う。
「何だこれは? ふふ……。この程度で私が傷つけられると思っているのか!」
 ラ・グロワールはそう言いながら、前で武器を構えているヴォルフ、空、恭志郎、そして愛とミミックの『トイボックス』に剣を構えて突撃する。
「ぐあ!」
「きゃあ!!」
 その勢いで、空と愛が吹き飛ばされる。
「樒さん、お願いします!」
 攻撃を避けた恭志郎は、樒にそう言いながら、自らは『白綴』を刀を水平に霞構える。
『夜闇に沈む小さき星すら、ただの獲物と成り下がるのです』
 樒はそう言って、さらさらとした粉薬を振り撒く。その力は、彼等の眼に影響を与え、良く見える効果を生み出した。
『――では、参ります。』
 粉薬の力を得た恭志郎が、最小限の動きで放つ突きだが、彼女はそれを避ける。
「今のが当たらないなんて!?」
 それに怯まず、空がドラゴニックハンマーから竜砲弾を打ち放つと、何とか敵の肩をかすめることができた。だが、まだまだ傷は浅い。
「ううう……いたい。……ひっく」
 愛はとうとうベソをかきはじめてしまっていた。だが、涙を流しながらも、何とかオウガメタルからオウガ粒子を放出し、自分を含めた前衛を回復させたのだ。
(「大丈夫だ。着実にダメージは与えられている。見極めを誤るな、俺」)
 ソルはそう言いながら、最前列で剣を構える。
 ケルベロス達は、策を用意していた。ソルはその策の事を考える。絹に聞いた話では、目の前の敵は自分の劣勢を悟ると、自らのダメージを省みず、作戦を遂行しようとするとの事だった。しかし、彼らはその時だけを狙えば良いというモノではない事に気が付いていた。敵がどれくらいの余裕があるのかが鍵だ。ほぼ無傷の状態では、2分間では倒しきれないと考えたからだ。
 その為に、準備が必要なのだ。ハッタリでも良い。その条件を悟られるな。ケルベロス達は、それぞれの頭の中にある作戦を実行していった。

●驕り
「はあ……はあ……。さっきまでの勢いはどうした?」
「クソッ! コイツ強いぞ! 皆、油断するな!」
 ソルの言葉に、ケルベロス達は頷き、武器を構えた。
 ケルベロス達は、攻撃を何とか繰り返し、確実に当てる事が出来るまでになっていた。だが、敵の攻撃を受け続ける恭志郎と愛。そしてトイボックス。
 しかし、実はギリギリという訳では決してなかった。演技である。その証拠に、ラ・グロワールの足は完全に止まっていたからだ。
 女騎士の剣の切っ先は鈍り、ケルベロス達は受け止め続けた。そして派手に吹き飛ばされる、様に飛んでいた。自ら吹き飛んでいるのだ。
「みなさん、もう、俺は駄目かもしれない……。でも、諦めない、ぞ」
 恭志郎はもう一度刀を水平に構え、突きを放つ。その突きは、敵の喉下を、確実にかすめる。
「そんな! 漆、どうしよう!?」
「恭志郎さん、一旦下がってください!」
 メリルディと空はそう言いながらも、敵の足元に蹴りを打ち込む。
「これは……困りましたね」
 漆はメリルディにあわせて、敵の足首を切る。そして、ヴォルフが同じく反対の足首を切る。だが、敵の顔色は変わらなかった。自分のほうが強いと思い込んでいた。それは明らかなる驕りだとケルベロス達は感じることが出来た。
(「手ごたえが、それ程ない。これくらいの戦力じゃあ、噂にもならない……そうか。彼女は……」)
 樒は敵の様子、強さに疑問が浮かんだ。それならばと、彼女は少しカマをかけてみる事を思いついた。
「……この耳が欲しいのでしょう? 可愛いらしい騎士さん。そう、お土産にするんでしょう? 大切な上司、ラ・グロワール様の為に……」
 その言葉に、はっとした表情の女騎士。暫く考えを巡らせる素振りの後、口を開いた。
「フッ……。見破られたみたいだな。勘違いさせておいてやろうと思ったのだが……。やはりこういった事は得意ではないな……。
 そうだ。私はラ・グロワール様ではない。グロワール騎馬隊の一人、ネージュ。ラ・グロワール様の忠実な僕だ。だが、それが分かった所でどうする? お前たちは、私の力で既にボロボロのようだが……? それに、お前のような子供が来る場所ではないぞ!」
 そう言って、彼女は泣きじゃくる愛に鋭い突きを放った。
「き、きてしまいっ、ましたっ。ひーん!」
 ガキィン!!
 しかし、その刃は、涙を浮かべる愛に受け流される。
「……なん、だと!?」
 その手ごたえに、困惑の表情を見せながら、己の剣を見るネージュ。それもそのはずだ。目の前の娘を貫くべく、殺す気で打った突きだったのだ。それを、いとも簡単に受け流されたのだ。
「……これは、謀られた、のか?」
 そして、己の傷や、ケルベロス達を見て、ギリッと口を結んだ。
「み、みなさんっ。ばれてしまった、みたいですっ」
 愛がそう言うと、ギロリと愛を睨むネージュ。
「で、でも。怖いのは本当ですっ。わわっ」
 そう言って愛は剣を取り落としそうになりながらも、何とか構えた。

●任務
「……どうやら、私の負けのようだな」
 そう言ってネージュは、剣をカランと床に投げ捨て、即座に行動に移す。自らの任務を遂行する為だ。彼女はベッドに寝かしつけられている男性の傍に一瞬で移動する。
「今だ!!!最大火力、ぶっ放せ!!」
「みなさん。お願いします!」
 ソルの声に樒はすぐさま反応し、密かに全員に与えていた粉薬の仕上げを行う。その粉薬は一番必要であろう前衛にとふわりと放たれた。全力攻撃の合図だ。ケルベロス達は一気に攻撃を開始した。
『慈悲は要らないようで。』
 まず空がベッドの傍に移動したネージュを蹴り飛ばし、先回りしてはまた蹴り飛ばす。そして、蒼い龍のオーラ纏った回転かかと落としを食らわせる。
「リル。行きます」
「分かった。コル、シュカ。お願いね」
 漆の声に頷いたメリルディが、惨殺ナイフ『corbeau gris』と『Corneille noire』を抜き、舞うように切りつける。
『元々はただの真似事ですが、知識を応用すればこんなこともできるんですよ』
 その後に、硬質なガラスに変えた手刀で切り刻む。
『何処まで逃げてくれますか?』
 計算しつくされた動きで、寸分の狂いも無く、ヴォルフが飛翔し『月牙』で追い詰めていく。その先には、待っている愛がオウガメタルで殴りつけ、トイボックスが噛み付いた。すると、今まで蓄積されていたグラビティの効果が、これでもかと噴出したのだ。
「疾く、去ね!」
 ソルがグラビティの噴出で高く飛び上がる。
『スターゲイザー、アルティメットモード』
 ソルの右足が、空中で蒼い光を宿していく。
『マキシマムストライク!』
 流星の如し粒子を煌かせながらネージュに飛び込んだソルは、その輝く右足で彼女の身体を打ち砕いた。
「ごきげんよう……任務達成です」
 樒の言葉が、己の任務不履行を悟らせる。
「ば……ばか、な……」
 その言葉が彼女の最後の言葉となった。己に起きた事を未だ理解しきっていない、そんな表情を浮かべながら、消滅していったのだった。

「……ふう」
 敵を倒した喜びに沸くケルベロス達に隠れながら、樒はひっそりと息を吐いた。普段通りと動いていたつもりが、実は肩に力が入っていたのだ。
「お疲れ様です」
「恭志郎……さん」
 彼女は恋人の声に、ようやく安堵の表情を見せた。
 ケルベロス達は、自分達の傷を癒したあと、護りきった人物を見た。
 どうやら傷一つ付いていないようであった。
「良かった……」
「俺達の勝ちです!!」
 メリルディの声に、空が勝ち鬨を上げる。
「とりあえず、起こせるかどうかも分からないなぁ。どうする?」
「このまま報告するのが良いだろう。下手に動かすのも、何が起きるかもわからないからな」
 ソルの疑問にヴォルフが答える。
「あっあの……。とりあえずっ、わたしお掃除しますねっ」
 すると、部屋の散らかりように、本業を思い出した愛が、片付けを始めようと動く。もっとも、すぐに椅子の足に引っかかり転んでいた。
「……他の場所はどうなったのか。それは分かりませんが、一安心しましたね」
 漆はそう言って、その護った男性を見た。生きているのか、どういう状態なのかも分からないが、最悪の事態も考えていた彼は胸をなでおろした。

 こうして、ケルベロス達の任務は達成された。
 気が付くと、窓の外に雪がちらついていた。
 ドリームイーター達は、巨大な敵は、此処から遥か東の上空で待っているのか。そんな現実を思い出させる雪だった。
 これから始まる戦い。その行方を感じながら、ケルベロス達はその方角へと帰っていったのだった。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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