北海道、某所の廃屋。深い森の一角に設けられた小さな家の、虫食い穴の開いた屋根からモザイクが狼煙めいて立ち上る。わずか数分、サイケデリックな色合いのそれが消滅し、空の光が差し込む室内。傾きかけ、ボロボロになったドアが蹴り開けられた。
「イィヤッホーゥ! 元気にしてたかいマイハニー!」
陽気に叫び入ってきたのはワインレッド&ヴァイオレットの服を着たピエロ。大鎌をクルクル回しながら歩く彼の目の前に、巨大な球形のルビーが鎮座する。宝石の傍に寄ったピエロは表面に触れ、撫でまわしながら中をのぞいた。
「ンンー? 聞こえないよハニー。元気?」
ピエロの瞳が、赤く透き通った紅玉の内部を捉えた。そこには胎児めいて丸くなり、目を閉じる少女の姿。琥珀に閉じられた昆虫じみた少女をしばし見分したのち、ピエロはあごに手を添えた。
「フゥーム、おねむのようだね。まあいいか!」
指を鳴らし、回れ右。蹴破られたドアの外、空間に開いた回廊じみた穴を見て、ピエロの腕がおおげさな仕草で開かれた。
「それではご招待しましょう! ちょっと寝てたらあら不思議。起きたらそこは夢の世界。腫れて君もボクらの仲間だ! 可愛い君よ、みんなで甘い夢を見ようじゃないか! アッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
●
「うおおおおおーっ! ついに出たよ……ドリームイーターのゲート!」
目の色を変えた跳鹿・穫は流れる汗をふき取ると、一度咳払いをした。
ケルベロス各位、緊急事態。先日の戦いにより討伐された、ジグラットゼクスが一人『王子様』。彼の撃退とともに、東京上空五千メートル地点にドリームイーターのゲート出現、並びにゲートより地上に伸びる『巨大な腕』の存在を確認した。そしてこの腕は恐らく、王子様が言い残した『ジュエルジグラットの抱擁』そのものと考えられる。
ゲートをわざわざ出現させた以上、ジュエルジグラットの抱擁は虎の子であり、創世濁流によりワイルドスペース化した日本に対するフィニッシュホールドだったと思われる。しかし、肝心の創世濁流作戦は失敗。やむを得ずそのまま抱擁を繰り出したということだろう。
ジュエルジグラットの抱擁は脅威で、撃破にはそれこそ全世界決戦体制の発動が必要になる。だが、この現状はドリームイーターにとっても高いリスクを被る作戦。向こう側の決戦戦力『ジグラットゼクス』達はケルベロスとの戦いのため用意していた人間達をかき集めようと画策している。
用意していた人間達とはズバリ、『失伝ジョブ関連の失踪者』。ジグラットゼクスの一員である『赤ずきん』が生み出した、『ドリームイーターに従うケルベロス』である。
このケルベロスはワイルドスペース内において特殊な能力を持ち、他のケルベロスをドリームイーター配下に組み込むことができるらしい。
最大の障害であるケルベロスを配下とし、創世濁流後の世界を完全支配するという目論見だったようだが、状況判断によって彼らをゲートの防衛戦力に回そうとしているようだ。
皆には二つ、『失踪者の救出』と『失踪者回収担当のドリームイーターの撃破』を依頼したい。
今回の現場は北海道山中に建てられた廃屋。だいぶ前に打ち捨てられたために失踪者の隠し場所に変えられていた場所であり、深い森に囲まれていたために人が迷い込むこともなかったようだ。ここに、失伝ジョブ関係者の少女を閉じ込めた宝石が鎮座され、『クラウン・クラウン』なるドリームイーターが回収に訪れる手はずになっている。
クラウン・クラウンはジグラットゼクスの一人、悪い王妃こと『継母』配下の道化師型ドリームイーター。主武装の仕込み大鎌と投げナイフやクラッカー、風船などの小道具、軽い身のこなしを使って戦う撹乱タイプで、ジグラットゼクス直属の名に恥じない実力を誇る。
悪の道化師らしい、狂った性格をした彼であるが、その実『継母』への忠誠心は非常に高いようで、自分の敗北が見えてきた際は失踪者を魔空回廊からゲートに送り込もうとする。
転送にかかる時間は約二分。その間、敵は作業にかかり切りになって無防備をさらしてしまうが、それは敵とて承知している。立ち回りを誤らぬよう、注意してほしい。
「新しい力とかゲートとか、色々重要なことはあるけどさ……でも、うん。捕まって手駒にされるなんて誰も望んでないと思う。お願い。捕まった失踪者を助けてあげて!」
参加者 | |
---|---|
レーチカ・ヴォールコフ(リューボフジレーム・e00565) |
アニエス・ジケル(銀青仙花・e01341) |
若命・モユル(みならいケルベロス・e02816) |
嵐城・タツマ(ヘルヴァフィスト・e03283) |
カーネリア・リンクス(黒鉄の華・e04082) |
五里・抜刀(星の騎士・e04529) |
輝島・華(夢見花・e11960) |
一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537) |
突如、大爆発した屋内からピエロが連続バク宙で飛び出した。少女入りの宝玉を持つ彼を追い、若命・モユル(みならいケルベロス・e02816)とレーチカ・ヴォールコフ(リューボフジレーム・e00565)が疾駆する!
「その子を離せぇぇぇッ!」
「クローウンなんてお呼びじゃないのよ! お引き取り願うわッ!」
モユルの両足に炎が、レーチカのガラス靴に星の光が現れ、低空ジャンプキックを放つ。対するクラウンは宝玉を持って真正面から疾走、直撃の寸前でムーンサルト跳躍回避し入れ違いざま鎌で斬る! 再着地し空を見上げた彼の目に飛び込む飛針を構えたカーネリア・リンクス(黒鉄の華・e04082)!
「篁流、カーネリア・リンクスと相棒のオウガメタル、コラン・ダム。推して参るぜ! 『霧雨』ッ!」
放たれた燃える針を鎌を回して跳ね返すクラウンへ嵐城・タツマ(ヘルヴァフィスト・e03283)と燻製肉をくわえた一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537)が肉迫! 輝島・華(夢見花・e11960)は杖を一振り、杖に咲く銀の花から光風を飛ばし二人に浴びせた。茜は手中の満月じみた光を放る!
「さぁーて、かっ飛ばしますよッ!」
跳躍し、空中の光に飛び込んだ茜の急降下キック! クラウンは素早くブリッジで避け、タツマの剛拳を鎌でいなす。右ジャブ、左アッパーを紙一重で回避したピエロは一瞬でタツマの背後へ。大鎌が振り切られ、タツマの首が血を噴いた。
「……ッ!」
傷を押さえる彼の背後、クラウンが投げたナイフをアニエス・ジケル(銀青仙花・e01341)がパンチ破壊! 五里・抜刀(星の騎士・e04529)の炎じみたオーラがタツマに注がれ傷口をふさぐ。
「諦めちゃダメです! 諦めちゃダメですよタツマさんっ!」
「……次はもっと早く頼むぞ」
軽く血の気の引いた頭を振るタツマ。そんな彼を余所に、クラウンは自分を囲むケルベロス達を見回し鼻を鳴らした。
「今はオフなんだけど。過激なおっかけファンはこれだから……」
「そんなわけないでしょエセクローウン」
吐き捨てるレーチカをスルーし、クラウンが肩を竦める。
「今ちょっと取り込み中なんだよね。後じゃダメかな?」
直後、カーネリアとモユルが地を蹴った! たたずむクラウンの両サイドから繰り出される正拳突きと回転飛び蹴り!
「『雪狼』ッ!」
「うおおおおらッ!」
「ダメか。そっか」
ぼやくクラウンの袖口が破裂! リボンと紙吹雪に視界をふさがれた二人を飛び越えたピエロは鎌で斬撃を浴びせて着地。彼の懐に踏み込むアニエス!
「えいっ……!」
パンチが空ぶり、ピエロの膝蹴りをテレビウムのポチが割り込み防御。アニエスの頭上、飛び蹴りをしかける華を手から噴出した風船の竜巻が飲み込んだ。ポチの傘をジャンプで避けたクラウンは風船の竜巻を駆け上がる。振り上げた両手を組む抜刀!
「好きには……させませんよッ!」
ハンマーパンチが地面を叩いた瞬間、風船の道の下から虹色の爆炎が間欠泉めいて噴き出しクラウンの行く手を阻んだ。爆炎の頂点、噴火の勢いに乗って飛翔した茜はクラウンをブリザードまとう戦槌を振り下ろした!
「墜落しやがれオラァァッ! ですッ!」
「Oh!」
吹雪の殴打をバク宙で逃れるピエロ。氷の一発を食らって凍てつく風船ロードを走って追ってくる茜はピエロが後方回転しながら投げたナイフ数本に向かってジャンプ、全て口でくわえて止める。
「ひょっひゃろー! でぃふ!」
「やるねぇー」
空中で拍手するピエロを大量のルビーが包囲する。指を鳴らすレーチカ!
「ブロースィニース・ドラコンッ!」
ルビーが赤光を放って起爆! 爆発の範囲外に浮く少女を確認し、レーチカは目を見開いた。宝玉から切り離されたリボンを残しピエロの姿が消えている。その時、彼女の背後でクラウンは大鎌を振りかぶる!
「どけ!」
タツマがガントレットをジェット噴射させて突撃、一息に距離を詰めていく。クラウンはレーチカを蹴って軽く跳び、剛速右ストレートの上に乗る。背中を限界まで折り顔の横で両手の指をうごめかせた。
「バァ」
瞳を凶暴に燃やしたタツマは拳でラッシュ! 彼の手の甲を地団太じみた高速ステップで全て踏み付けてやり過ごす道化を見つめ抜刀は膝を叩いた。
「レオ太、GOッ!」
ステップするクラウンは身を反らして飛びかかる黒い柴犬を避け、タツマの鼻面にドロップキック。勢いで後方回転しながらサバイバルナイフを手に突貫してくる茜に両手を突き出す。
「カモン! Be HAPPY!」
「どらあああああああッ!」
道化服の袖から飛び出す大量の風船! ナイフを振るってそれら裂き割る茜を置いてピエロは空高くジャンプする。そしてケルベロス達めがけナイフとクラッカーを高速で連射した。
「それそれそれそれ! ハイッ!」
クラウンの指が鳴り、クラッカーが全弾破裂! 大量の長いリボンがナイフを弾くレーチカ、抜刀、カーネリアとポチ、華を庇ったアニエスを縛りナイフを命中させていく。縛られたままカーネリアがうめいた。
「ぐッ……こいつ、想像以上にッ……!」
「皆さんっ!」
華は花咲く枝めいた杖を振り、薄紫の電気を放つ。直後、仲間の傷を埋める彼女を重点的にナイフが飛来!
「アッハハハハハハハハハハハハ!」
「このッ……!」
顔を歪めたレーチカは自由な手首を動かしルビーを投げて口でキャッチ、ピエロ狙いで吹き出した。宝石は一回転したピエロをかすめ、空で赤光を発して爆発! 爆炎から飛び出した炎竜が振り返るピエロに噛みつきドラゴンダイブ! 炎渦に変わった飛竜を鎌で斬り払ったクラウンにダッシュジャンプしたモユルはドリルめいて回転する肘先を振りかぶり、殴りかかった!
「食らえええッ!」
「ぬおっ!」
横にし掲げた大鎌の柄が燃える回転拳をガード! ふらつく足を制御して踏み込み、モユルを押し返したクラウンの胴と足に数本のナイフが突き立った。レオ太に切られたリボンを落とし、カーネリアは刺さったナイフを抜いては投げる!
「お返しだッ!」
「もらってくれていいんだけどねえ!」
回転した鎌が投げ返されたナイフを全て撃ち落とす。カーネリアはニヤリと笑った。
「そう言うなって。タツマ!」
クラウンの横っ面にタツマの拳がめり込んだ。漆黒に輝く剛拳に力が込めて、さらに踏み込む!
「早くそれを解け!」
「お、おごッ……!」
パンチが振り切られクラウンが吹き飛ぶ。一方で抜刀は息を吸いこみ丹田に力を集中。
「ふんぬっ……うおおおおおおおおおおっ!」
リボンを力尽くで引き千切った抜刀から炎めいたオーラの波動が拡散し、仲間のリボンをかっさらう。解放されたアニエスは杖に紫電を走らす華とピエロ目指して駆け出した。
「行きましょう、アニエスさん……!」
「はいっ! サポート、おねがい、しますっ!」
両腕を白いウロコで覆ったアニエスの背に華の杖先が触れた。紫電を得たアニエスは加速し跳ね起きたピエロに横薙ぎの爪撃を見舞う! 素早くしゃがんで避けたクラウンの手からクラッカーが撃ち出され幼い顔にリボンで絡む。
「むぐっ!?」
「そぅれッ!」
鎌の斬り上げでアニエスを浮かし、後ろ回し蹴りで突き飛ばしたクラウンに茜とレーチカが迫る。彼を支える足にダブル飛び蹴り! 鈍い音がしクラウンが揺らいだ。
「いいの入りましたっ!」
「おっ、あ、おわっ!」
片足で揺らぐクラウンの目がわずかに開き、鎌が閃いた。
「うわっとぉッ!」
放たれた斬撃が二人を強制ノックバック! 膝を突くクラウンに燃える双拳を構えたモユルが突っ込む!
「そこだぁッ!」
「チッ……!」
立ち上がったクラウンは鎌を回し炎の連打をさばいていなし、右ストレートを避けてモユルの背後へ。鎌を背に回してカーネリアの斬撃を防ぐとモユルの裏拳を飛び越え横薙ぎ二閃! ギリギリかわしたモユルの前蹴りを鎌の柄で受け、彼の顔にクラッカー発射。のけ反るモユルの上からカーネリアは急降下キックを繰り出す!
「『氷柱針』ッ!」
鋭い蹴りをバックジャンプ回避したクラウンが彼女を跳び箱めいて飛び越える。二人をまとめて乗り越え前後反転したクラウンの投擲ナイフをポチが傘で打ち落とした。
「あーもう! ホンッッットにマナー悪いお客様だなァ! 足も顔もピエロの命だってのに!」
「それだけで済むわけねえだろ! ですッ!」
真横から脳天めがけ振り下ろされた茜のハンマーをクラウンは紙一重で避けて飛び乗った。そのままジャンプし茜にナイフを放つも彼女は全て口でキャッチし吐き捨てる。同じく茜のハンマーを足場に跳んだタツマが、拳を振り上げた。
「君らと遊ぶの、後でじゃダメかい」
「寝言は寝て言え」
タツマはフックに鎌の柄を当て逸らした道化を相手に空中インファイトを挑む! 剛の拳打を鎌の回転で流しつつピエロはナイフを突き出して反撃。分厚い胸板に刻まれる傷が、抜刀が発した熱波に包まれ癒える。
「諦めちゃダメです! まだまだ行けます! 頑張ってください!」
撃ち込まれる剛拳の連撃を閃く大鎌がガード! 薄目を開き刃じみた視線で拳の隙間を伺う彼に花弁混じりの風が吹きつけた。直上に咲き誇る花を見上げたクラウンの腹にタツマのボディブローが炸裂! 鳩尾を抉った拳がそのまま道化を空の花に打ち上げるのw見た華は杖を掲げた。
「吹き荒れる、私の綺麗な花吹雪!」
花が薄紫の竜巻を吹き下ろし道化を飲み込む。地面に突き立った嵐にアニエスはラジコンを向けてボタンを連打! 竜巻の根元に連続爆撃を引き起こして精一杯声を絞り出す。
「みなさん、いま、ですっ……!」
「よぅし! やってやるッ!」
蹴りかかるモユルとレーチカ! 炎と星の光が竜巻の根元にヒットする直前、竜巻を銀閃が真っ二つに斬り裂いた。流星めいて落下する二人の視線が竜巻内部のピエロと衝突。彼の道化服の全身が泡立つように膨れ上がった!
「しょうがないなぁ、もう!」
ピエロの服から風船が怒涛めいて吹き出しキックを繰り出した二人に取り込む。そのまま押し寄せる風船の津波に茜とカーネリアが走る!
「ったく、この期に及んで風船で撹乱か!? 厄介なヤツだぜ!」
「風船ぐらい、まとめてぶち割ってやりますよッ!」
武器を構える二人の前で、最前列の風船が一斉に破裂した。風船の中から現れる無数のクラッカー。飽和射撃めいて同時に発射されたそれらがリボンの洪水を解き放つ! リボンの海に二人が消える!
「カーネリアさん、茜さんッ!」
オーラを放つ抜刀を始め飲まれていくケルベロス達を、風船につかまり浮遊するクラウンが見下ろす。彼らがリボンに縛られ動けなくなったのを見ると、鎌を回して虚空に投げた。回転する大鎌は置き去りにされた少女入りの宝玉に飛び、その真上に居座ってさらに回転。刃の軌跡が銀河色の輝きを帯び、鎌全体を徐々に染め上げていく。ぐるぐる巻きにされ倒れたモユルが激しくもがく。
「くっそぉ! 離せぇッ!」
「出来ない相談だなァ。だって君ら怖いもの! マジックの準備中にボコボコにされちゃあたまらない!」
言い返し、クラウンは背中や負傷した片足をさする。
「これ以上やられたら王妃様に怒られるかなぁ、マズいなぁ……ていうか、ショーは静かに見てくれよ。エチケットはわきまえないと。特に、そう……」
クラウンがおもむろに懐からナイフを引き抜いた。刃を指で挟んだ手がかすむ!
「そこの君とかさぁ!」
素早く跳ね起きたカーネリアがヘッドバットでナイフを弾いた。炎灯る長い銀髪を振り回し、胴のリボンを焼き払う。
「ちっ、気付いたか。なら、さっさと地獄へ案内してやるぜ! 篁流格闘術ッ!」
長髪の先が地面に潜り、クラウンの足元から飛び出す。巨大な拳をかたどった髪のアッパーカット! 風船を手放すクラウン!
「『隼六花』!」
「大人しくしてってば!」
前方回転しながら飛び降り拳髪を蹴って跳ね返ったクラウンめがけ、しなった髪が投石器じみて毛先を振るう。射出されたのは赤いオーラに包まれた茜! 両手首の腕輪が煌めき、指先に真紅の長爪が伸びる!
「一番槍、行っきまーす! 道化師は道化師らしく笑いながらぶっ飛べオラァッ!」
「ッ!?」
驚愕するクラウンに突っ込んだ茜はマシンガン掃射めいて爪の刺突を繰り出した! 防御し受け流すピエロの腕が傷つき、血液じみてモザイクを吹く。どうにか身を起こして目を閉じたアニエスを白光の粒子が包み込む。
「祈りを……アニエスのたいせつな人たちをまもるための、光をっ……!」
粒子が波紋めいて周囲に広がる。それは仲間を縛るリボンを触れたそばから光に溶かし、分解。一方で爪撃を撃ち切った茜は両手をクロス!
「紅王ネイガルブルート。赤の手により血に染まれッ!」
「ステイ!」
飛ばされたナイフを斬り捨て、茜は獣めいて獰猛に笑む! 赤い爪が十字に振り抜かれ、クラウンを切り裂いた。歯を食いしばったクラウンは茜の腹を足場にして横に飛び、銀河色に回り続ける大鎌と少女に手を伸ばす! リボンだった光を振り払ったレーチカがルビーを握った。
「逃がさないッ!」
投射された宝石が螺旋光の尾を引いてクラウンを追尾! 迎撃の投擲ナイフを跳ねたルビーに全身を抉られたクラウンは少女を閉ざす宝玉に触れ、ワープゲート化しかけた鎌に押し上げる!
「ま、まだだ……もう少しでッ!」
「おおおおおおおおおおッ!」
その時、吠えた抜刀が岩を刺した剣を持ちあげる。彼の全身から立ち上る、炎の如き波動!
「ここがッ! 勝負所ですッ!」
切っ先の岩で地面を殴った瞬間、タツマの足元が大爆発した。弾丸じみた速度で飛ぶタツマのガントレットを結晶が覆う。
「今までの借り、全部まとめて返済するぜ。釣りは地獄に持っていけッ!」
拳は振り向きざま、とっさに出されたクラウンの手に命中。次の瞬間、結晶体がクラウン体内から生え全身を貫いた。だがその瞬間、少女を閉じた宝玉がゲート化した鎌に吸われ始めた。息も絶え絶えに道化師は勝ち誇る。
「ハァーッ、ハァーッ……ボクの……勝ちだッ……!」
「いいえ、そうはさせませんっ!」
華が杖で薙ぎ花吹雪を空に飛ばす。花吹雪にライドしたモユルは持ちうる全ての武器を一つにまとめ、腕から吹き出す炎でくるんだ。花嵐から跳躍!
「全武装、業火合体! 行かせるかぁぁぁあああッ!」
大鎌に焔の大剣が大上段から一閃される! 炎上する刃は回転し続ける鎌にぶつかり火花を散らす。そのまま上から押さえつけ、押さえつけ……そして、真っ二つに叩き折った! 慌てて剣を引いたモユルの下、引力を失い落ちる宝玉の檻をポチとレオ太が受け止める。クラウンに突きつけられたVサイン!
「くっそおおおおおおおッ!」
断末魔の叫びを上げクラウンが爆発四散! 飛び散る結晶体に紛れ、血飛沫代わりのモザイクが空気に消えた。
作者:鹿崎シーカー |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年12月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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