失伝攻防戦~棺の中の君を

作者:こーや

 そこは住人がいなくなって数年が立つであろう、古びたマンションの一室であった。
 寝室の片隅で音もなくモザイクが晴れていく。
 モザイクで切り取られていた極小規模のワイルドスペースが消滅したのだ。
 結果、露出した内部は人一人が横になれる程度の広さのクローゼット。
 そして、そこに鎮座する硝子状の棺の中には長い黒髪の女。
 女は異常な状況下にあるにも関わずうんともすんとも言わない。
 否、言えないのだ。
 凍結され、仮死状態となった女はただそこに在るだけ。

「おっつかいおっつかい~♪」
 人が寄り付くはずのなかったその部屋に陽気な歌声が響く。
「左手のバスケットにパンとワインを詰めて、右手に銃を忘れずに♪」
 トンットンッと靴音を立て、歌声の主は棺に近づく。
「おつかいのお邪魔虫、出たらばズドンッと一発ぶち殺せ♪」
 やがてその人物──赤ずきんを被ったドリームイーターは棺を覗き込み、言う。
「こんにちは、お姉さん。さあさ、わんこのお腹に詰めこむ石になってもらうからね!」

「皆さん、緊急事態です」
 ケルベロスの注目を集めるべく、河内・山河(唐傘のヘリオライダー・en0106)は赤い唐傘の石突でヘリポートの地面を叩いた。
 山河はケルベロスの視線が自身に注がれることを確認するとこくりと頷いた。
「ジグラットゼクス『王子様』の撃破と同時にジュエルジグラットの『ゲート』が姿を現しました。場所は東京上空5000mの地点で、しかもそこから『巨大な腕』が地上に伸び始めたんです」
 この『巨大な腕』が、『王子様』が最後に言い残した『この世界を覆いつくすジュエルジグラットの抱擁』である可能性が高いだろう。
 本来であれば、この『ジュエルジグラットの抱擁』は、創世濁流によってワイルドスペース化した日本全土を完全に支配するとどめの一撃だったと推測される。
 しかし、ケルベロスは『創世濁流』とその目論見を阻止することに成功したのだ。
「東京上空に現れた巨大な腕は確かに大きな脅威です。打ち破るにも、全世界決戦体制を行う必要があるでしょう。せやけど、ジュエルジグラットのゲートを戦場として、この戦いに勝利できれば……ドリームイーターに致命的な一撃を与える事になるはずです」
 とはいえ、この状況はドリームイーター側も理解しているのだろう。
 ドリームイーターの最高戦力である『ジグラットゼクス』達は、ケルベロスとの戦いの切り札として用意していたモノを急遽、ゲートに集めるべく動き出したのだ。
 二藤・樹(不動の仕事人・e03613)の調査によって、探索が進められていた『失伝したジョブに関わりのある、失踪していた人物』達が、それだ。
 本来であれば、介入の余地がないタイミングで行われる事件だった。
 けれど、日本中でケルベロスが探索を行っていたことにより、ドリームイーターの襲撃を予知することが出来たのだ。
 しかも、彼らが連れ去られる前に駆けつけることが可能なのだ。
「もうお分かりや思います。皆さんにはドリームイーターを撃破して、失踪してた人らを救出してほしいんです」
 山河が予知したのは老朽化により住民がいなくなったマンションの一室。
 今回の救出対象である女性が幼い頃に住んでいた場所なのだという。
「ちょっと狭く感じるかもしれませんけど、戦闘には支障ないでしょう。老朽化してるいうても、ここで戦ったら倒壊するいうほどでもありませんから、そこの心配はせんで大丈夫です」
 電気は通っていないが、カーテンなども無い。その為、窓から差し込む光がある。
 マンション自体はしっかりと閉鎖されているので、近づく人間もいないと言う。
「現れるドリームイーターはジグラットゼクス『赤ずきん』の配下。『グリーディー・グリム』の配下で……この配下の見た目も、赤ずきんみたいな感じです」
 ややこしいと、ケルベロスの1人がぼやいた。
 同意を示すように山河は苦笑する。
「せやねぇ……紛らわしいから、ここは『リトル・レッド』とでもしておきましょうか」
 そのリトル・レッドの攻撃手段は3つ。猟銃による狙撃、何本もの鍵の射出。モザイクを食べての自己回復。
 そして大事なことは、と山河は前置きを入れる。
「敵にとって一番の目的は、今回の救出対象を『魔空回廊からゲートに送り届ける』ことです。『自分が敗北する可能性が高い』と考えたら、彼女を魔空回廊からゲートに送り届けようとするでしょう」
 かかる時間は2分程度。その間、敵は無防備になり、戦闘は有利になるだろう。
 逆を言えば、その2分で倒さなければ敵は目的を遂げてしまうということだ。
「今回の救出対象は、ドリームイーターにとっての切り札です。そしてドリームイーターは、ケルベロスが囚われていた人らを攻撃する可能性は考えてないでしょう」
 そこで山河は言葉を切った。
 集まったケルベロス1人1人と視線を交わしていく。
「ドリームイーターに切り札を確保させるくらいなら、いっそ。……そういう覚悟も、必要かもしれません」


参加者
水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)
アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)
リコリス・セレスティア(凍月花・e03248)
鉄・千(空明・e03694)
暁・歌夜(ヘスペリアの守護者・e08548)
霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)
櫻田・悠雅(報復するは我にあり・e36625)
影守・吾連(影護・e38006)

■リプレイ

●小屋の中の赤ずきん
「おっつかいおっつかい~♪」
 陰気な室内に似つかわしくない陽気な歌声。
 ドリームイーター『リトル・レッド』はリズムを取りながら一歩、また一歩と棺に近づく。
 歌うリトル・レッドが棺を覗き込もうとしたその時。
 バタバタと、誰もいないはずの廊下から物音が聞こえた。
 不審に思ったリトル・レッドが顔を上げた途端、バンッと玄関の扉が開いた。
「連れて行こうなんて、そうはさせないよっ!」
 真っ先に部屋へ飛び込んだ水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)はフローリング材の床を蹴り、リトル・レッドを斬り裂いた。
 素早く飛び跳ね、頭部にかかった返り血を振り落とす。
「わんこ……ケルベロス! 邪魔しにきたのね!」
「当然! お姉さんは返してもらうのだ!」
 鉄・千(空明・e03694)は小柄な体を捻って振りかぶり、リトル・レッドの真横から超重の一撃を叩き込んだ。
 顔を顰めたリトル・レッドが振り返った時にはすでに千は距離を取っている。
「わんこ、邪魔! ハリネズミになっちゃえ!」
 リトル・レッドがぶんっと猟銃を振り下ろせば、突如として現れた無数の鍵が陽光を受けて煌きながら最前に立つケルベロスへと降りかかる。
 ふっと息を吐き出し、霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)は櫻田・悠雅(報復するは我にあり・e36625)の前に躍り出ながらも番えていた数本の矢を一斉に放った。
 金属と金属がぶつかる甲高い音と共にいくつかの鍵が弾かれ、ちさに襲い掛からんとした鍵の群れはいくらか勢いを落とす。
「皆様に、星の加護がありますように……」
 瞳に湛えた悲哀を濃くしながらもリコリス・セレスティア(凍月花・e03248)は長剣の切っ先で守護星座を描いた。
「皆様は、攻撃に専念を……回復は、お任せください」
 リコリスの言葉に応じるべく、悠雅はリトル・レッドの鍵で穴だらけになった壁を蹴って加速した。
 その合間にも星の加護が悠雅の身を包んでいく。
 硬化した爪がリトル・レッドの肩を捉える。
「っ! 邪魔するなら、ぐちゃぐちゃにしてやるんだから!」
「覚悟している」
 成立しているようで成立していない会話。
 悠雅の覚悟は己が体に降りかかる苦痛だけでなく、救いに来た命を摘み取らなくてはいけない可能性にも抱いだもの。
 ワイルドスペースに隠されていた者がいた。
 ケルベロスが気付いていなかった彼女達は、連れて帰ることが出来れば力になるだろう。
 だが、いざとなれば。
 その覚悟があるからこそ──。
「やり切るのみ」
 緞帳のように広がった悠雅の長い赤髪を彩る銀の葵。覚悟に呼応するようにちかと煌いた。

●舞台の上の役者
 赤いワンピースを影守・吾連(影護・e38006)に裂かれるも、リトル・レッドはモザイクを美味しそうに食べて傷を癒す。
 その様子を見た吾連は舌打ちした。
「弱らせようにも、切りがない」
「そんな……あんなに攻撃したのに……一瞬で回復……!?」
 焦っていると見せるための吾連とアリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)の演技。
 戦場において弱気と焦りは紙一重。自分達が劣勢であるという見せかけには絶好の感情だ。
「ふふっ、ごめんね?」
 急いていると思い込ませるべくあえて見切らせていた千の行動もあり、リトル・レッドはまんまとケルベロスが作り上げた舞台に上がった。
 吾連の瞳に宿る静かな炎にリトル・レッドは気付かない。
 当然、その炎がどこから来るのかなど知る由もない。
 自分の目の前で人を攫うことは許さないという強い意志は吾連の過去を火種に燃えている。
 それでいて、『最終手段』への覚悟も定まっている。
 例え火種となった人物に対してでも、吾連は同じことをするだろう。
「吾連」
 きっと、大丈夫だと、千は呼びかけの裏に想いを込める。
 人の命を奪うのは怖い。その必要性が、可能性がすぐそばにあるというだけでもじくりじくりと胸が痛む。
 しかし、それでも千は優しい友人だけが傷つくことは望まない。その為に全力を尽くす。
 皆と力を合わせればきっと大丈夫だと、弱気の仮面の下で強く信じているのだ。
 暁・歌夜(ヘスペリアの守護者・e08548)のエアシューズがフローリングに轍を刻む。
 軽やかに跳びあがった歌夜は、壁、次に天井を蹴って勢いをつけ、流星の煌めきと重力を乗せた跳び蹴りをリトル・レッドに見舞わんとする。
 けれど、振りかぶられたバスケットに阻まれた。
 床に叩き落されかけた歌夜は咄嗟に宙で身を捻り、後方に跳んでその勢いを殺す。
「お使いの邪魔するわんこ、とてもとてもきらーい♪」
 幼く無邪気な笑み。
 同じくらいの年頃に見えるリトル・レッドのその笑顔に、思わずアリスは目を伏せた。
 デウスエクスの外見年齢が実際の年齢と一致している訳ではないと分かっていながら。
 アリスは静かに光り輝くオウガ粒子を後ろに控える仲間へと注いだ。
 オウガ粒子を纏い、体勢を整えた歌夜の藍色の瞳がリトル・レッドに向けられる。
 アイオライトを埋め込んだ小さな赤い花弁のイヤーカフスがちらとその姿をのぞかせた。
「お使いだと思っている貴方も、そんな貴方に任せた赤ずきんも、どちらも何も考えていないのでしょうね」
 敵意を煽り、リトル・レッドの判断力を鈍らせようという挑発だ。
 しかし。
「……わんこ?」
 リトル・レッドは怪訝な面持ちを見せた。
 当然だ。
 歌夜のそれは劣勢である『はず』のケルベロスとは思えない態度なのだから。
 マズい。
 ちさは壁を蹴り、加速した。後方でガラガラと壁が崩れた音がしたが構わない。
 敵は配下とはいえ強敵。こちらも目的がある以上、作戦成功こそが全てなのだ。
「こちらですの!」
 敢えて最も命中率の低い跳び蹴りを繰り出す。
 ちさの目論見通りにリトル・レッドは身を翻して躱す。
 そこに蒼月の黒鎖がジャララララと音を立てて迫る。
「もう、見えてるんだからっ! わんこのお邪魔虫!!」
 屈み込んだリトル・レッドの頭上を黒鎖が通過する。
 これも、わざと。
 見切らせ、『ケルベロスが劣勢』であると強く思い込ませる為の攻撃。
「下っ端って話じゃなかったの?! 何なんだよーっ」
 蒼月の悲鳴めいた文句が、リトル・レッドから疑念を奪う。
 またにっこりと、無邪気な笑みが浮かんだ。
 リコリスはそっと安堵の息を零す。
 敵は次第に疑いを濃くするだろうが、今は早すぎる。
 2分で倒し切れるほどリトル・レッドが消耗しているようには見えないのだ。
 クローゼットの中にあるせいで強い影に覆われた硝子の棺。
 棺の中に眠る、仮死状態の女性。
 暗い森の中に閉じ込められているようにも見える。童話のように。
 だが、彼女を連れて行かせるわけにはいかない。
 白い彼岸花と共にリコリスは顔を上げる。
 左手にある紅い満月のようなルビーを強く握りしめた。
「彼女を家族や友人の元に戻す為に、力を尽くしましょう」

●役の中の猟犬
 リトル・レッドの猟銃が蒼月目がけて火を噴いた。
 ウイングキャット『エクレア』がバッと翼を広げて蒼月の盾となる。
 蒼月に傷は無いが、怯んだ彼は動き出したエクレアの影に隠れる。
「ごめんっ、もうちょっとこのままでいさせてー!」
「あはは、臆病わんこ! 泣いてごめんなさいしてももう遅いんだから!」
 上機嫌なリトル・レッドは気付かない。
 小柄なエクレアの体の向こうにある蒼月の顔に好奇心が煌いていることなど。
 地味にコツコツと誘拐を重ねてきたドリームイーター。
 それを全て無駄にしてやるつもりで蒼月はここにいる。
 台無しになったなら、リトル・レッドはどんな顔をするだろうか。
 その顔を拝む為にも、ギリギリまで力を尽くすのだ。
 情けない芝居もエンディングを引き立たせる小道具となるなら楽しめるというもの。
「行け」
 悠雅が漆黒の手袋に包まれた左手から地獄の炎弾を放つ。
 炎弾の影のようにアリスが真下を駆ける。
 炎が弾けたのと星座の重力を宿した斬撃が叩き込まれたのはほぼ同時。
「きゃあっ! ……もうっ、いい加減にしてっ!」
 悲鳴を上げたリトル・レッドの真上には千の姿。
 頬を膨らませたリトル・レッドはくるりとターンをしてその一撃から逃れる。
「そんな!」
 焦りの色が濃い千の声に、リトル・レッドはふふんと笑った。
 リトル・レッドは自分の優勢を疑わない。
 己が『避けさせてもらっている』ことに。
 追い立てているつもりでいて、じわりじわりと追い立てられていることに。
 唯一抱いた疑念もすぐに捨てさせられてしまったのだということに。
 数分の攻防を経て、気付いた時にもう遅い。
「嘘っ……このままじゃ!」
 少しずつ浮かび始めたリトル・レッドの焦りが確信へと変わる。
 千と吾連は素早く目配せを交わす。二人共に同じ見解なのだと知るにはそれで充分。
「なんで、なんでっ!? おつかいなのにっ、大事な大事なおつかいなのに!!」
 愕然とした顔でリトル・レッドは後ずさった。
「やっと気づいた?」
 蒼月は仮面を捨て、本来の笑みを見せる。
 泣き出すのではないかという風に顔を歪めると、リトル・レッドはケルベロスに背を向けた。
 何をするつもりなのか。考えずとも分かる。
 アリスが白羊の星の剣を構えなおし、言う。
「ここからは……私達も……本気ですっ……!」
「うるさいっ! うるさいのっ!! おつかいは、ちゃんとやってみせるんだからっ!!」
 リトル・レッドはバンッと両手を棺に叩きつけた。
 棺を中心に光の円が広がる。
 二分間の始まりの合図であった。

●棺の中の君
 己が定めた行動は希薄で、仲間に頼る部分が大きすぎた歌夜。
 だからこそ、間近に迫った勝機を逃すわけにはいかない。
「これは私の力ではないけれど」
 ダイヤを埋め込んだ指輪ごと、血が滴る白い手をリトル・レッドの背中へ向ける。
「それでも、この力は必要だから使います。……ごめんなさい、許してください」
 流れ出る血の魔力を解放し、放った魔術が赤い少女に襲い掛かる。
 トンットンッと蒼月は爪先で床を叩く。
「おいで」
 すると蒼月の影から目と爪を輝かせた猫達が姿を見せた。
 ニッと蒼月は笑う。
「狙い定めて~っ。皆行っちゃえ!」
 猫達は次々と敵に襲い掛かり、その身を刻んでいく。
 恐るべき猫達の戯れに参加せんとばかりにちさが迫る。
 ぱっと猫達が飛び退くと同時に叩き込むは降魔の一撃。
 ダンッと、吾連が強く地面を蹴った。
 それと同時に千も駆ける。
「千、行くよ」
「うん! 絶対助けよう!」
 優しい男と優しい娘の『覚悟』は共に。
 けれど、希望をつかみ取ることが出来るのであれば『覚悟』は胸の奥に。それよりも強い意志で走るのみ。
 ドラゴンと自身の魔力の乗せた吾連の拳と、ライオンの幻影に覆われた千の拳が叩き込まれる。
 声なき悲鳴を上げ、リトル・レッドは棺にしがみついた。
 それでいてケルベロスを強く睨み付けてくる。
 勿論、それで怯む悠雅ではない。
「言ったはずだ。やり切るのみと」
 鎖となった地獄の炎がじゃらりと音を立てた。
「煉獄の鎖、かの者を切り刻め」
 鎖はリトル・レッドを締め上げ、傷つけ、抉る。
「なんで、邪魔っ、するのおおおおおおおおおおおお!!」
 怨嗟の声。アリスの剣を持つ手にぐっと力が入る。
『おつかい』に意欲的だったリトル・レッド。
 恐らく、ケルベロスがただ攻め立てただけだったなら、早々に棺をゲートへ転送してケルベロスと対峙していただろう。
 ケルベロス達の仕掛けた芝居に乗ったが為に、その道は潰えた。
 今はただ、転送だけは成功させようとしているだけ。
 何故、ここまでしてと浮かぶ疑問をアリスは口にしない。
 代わりに、剣身に空色の地獄を纏わせ、振るう。
「是は、不思議の国の不思議な戦い――受けて下さい、ヴォーパルの剣閃……!」
 甲高い絶叫が上がる。
「やだっ、やだやだやだやだやだああああああああああああああ!!」
 悲哀を湛えたリコリスの瞳が瞼で覆われる。
 指に挟んだカードに魔力を注げば物質の時間を凍結する弾丸が精製される。
 リコリスは静かに言った。
「――物語は、此処で終わりとしましょう」

 ピクリともしなくなったリトル・レッドをアリスは丁寧に棺からどかせ、静かに黙祷をささげる。
 吾連と千はお互いの無事を確認し、労い合う。
 一方で、歌夜は棺の中を覗き込んだ。
 ヒールで癒せるような外傷はなく、ただ眠っている、否、仮死にあるだけだ。
「これは……」
 歌夜の考えをリコリスが引き継ぐ。
「ヒールでどうにできるものではないでしょうか」
「そうみたいですわね。早く安全で治療もできるところに運んだ方が良さそうですの」
 ちさの言葉に蒼月は首を傾げながらも棺の蓋を開こうとした。
 悠雅もそれを手伝う。
「ケルベロスの方で保護って形になるのかな?」
「連れ帰れば適切な対応がされるだろう」
「それもそっか。で、この人を運ぶのはー」
「私が運ぶ」
「うん、任せた!」
 悠雅が抱え上げる前に、ちさは女性の頬に触れた。
 戦闘中も彼女に攻撃が当たらないようにと気を配っていたちさは、微笑みながら言った。
「ひとまずはハッピーエンド、ですわね」

作者:こーや 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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