●変貌
京都嵐山、夕刻。
紅葉の季節となり観光客も増えだしたその土地の一角に男が一人居た。
溢れんばかりの紅葉の木の下、山の上から下界を睥睨する男は眼鏡の位置を正した。何をするわけでもない、ただそこで一人、他者を見下すように眺めているのだ。
男――倉島宗一は大企業となった情報セキュリティ会社のエリートだ。
頭脳明晰、判断力も高い。しかし、人を見下す態度を隠しもしないその態度のせいで孤立していた。
「見つけた」
不意に、宗一に声がかかる。
茶色いおさげを降りながら現れたのは『炎彩使い』赤のリチウ――シャイターンだ。
「なんだ貴様は……デウスエクスというやつか?」
物怖じしない不遜な態度でリチウを睨めつける宗一。
「頭脳は上々申し分なし。性格は……最悪。気に入ったよ」
「俺を殺すか? あぁ好きにしろ。こんな下らない人間社会などに未練は無い」
「なら、貴方は騎士となって、その人間社会を自分の手で終わらせるといいわ」
リチウはそういうと、紅蓮の炎を生み出し、躊躇なく宗一を燃やした。
「は……、はははっ! 良いだろうやってやるぞ――ッ!」
全身を燃やされながら絶叫するように笑う宗一。
その顔に醜悪な笑みさえ浮かべながら膝から崩れていく。
しばらくすると、その燃える炎より三メートルはある巨躯が生み出されていく。
全身をフルプレートの鎧に身を包み、一本の長大な剣を手にする巨体――エインヘリアルの誕生だ。
「ん、やっぱり、エンヘリアルには騎士が似合うの。さぁ、選ばれた騎士として、その力を示すんだよ」
生まれたばかりのエインヘリアルはグラビティ・チェインが枯渇している。
人間達を殺しグラビティ・チェインを奪いなさい、というリチウの言葉に宗一――エインヘリアル『ソーイチ』はゆっくりと山を降り始めた。
「あとで迎えにくるからたっぷり殺すんだよ」
そう言い残すと、リチウは消えていく。
後には、静かに落葉する紅葉が残るだけだった。
●
「有力なシャイターンが動き出したそうですね」
集まった番犬達を前に京極・夕雨(時雨れ狼・e00440)がクーリャ・リリルノア(銀曜のヘリオライダー・en0262)に確認する。
「はいなのです。『炎彩使い』と呼ばれる彼女たちは、死者の泉の力を操り、その炎で燃やし尽くした男性を、その場でエインヘリアルにする事ができるようなのです」
クーリャによれば出現したエインヘリアルは、グラビティ・チェインが枯渇した状態のようで、人間を殺してグラビティ・チェインを奪おうと暴れ出すそうだ。
「エインヘリアルは観光名所のすぐそばで生まれたのです。急ぎ現場に向かって、暴れるエンイヘリアルの撃破をお願いしたいのです」
クーリャはエインヘリアルの情報を読み上げる。
「敵性目標はエインヘリアル一体。フルプレートの鎧を全身に装備し、ゾディアックソードに似た大きな大剣を持っているのです」
使用するグラビティも見た目は違うものの、ゾディアックソードで使用できるグラビティに近いようだ。
「戦闘地域は京都嵐山。紅葉が見頃の山裾になります。観光地も近く人も多いので避難誘導は必要だと思うのです」
初期誘導を済ませればあとは警察に任せられるだろう。迅速に行うことが重要だ。
「あと、このエインヘリアル、元になった被害者同様、頭が良く、他者を見下すような面があるのです。人間を襲うことも一切躊躇しないので気をつけて欲しいのです」
「元になった人間は相当性格が悪かったようですね……放っておけば犠牲者が次々と増えてしまうでしょう」
夕雨の言葉にクーリャは頷き資料を置くと、番犬達に向き直る。
「状況は余談を許しませんが、皆さんならばきっとエインヘリアルによる虐殺を止められるはずなのです! どうか、皆さんのお力を貸してくださいっ!」
「紅葉が美しい観光名所を襲わせるわけには参りませんね。皆さんがんばりましょう」
クーリャと夕雨の言葉に番犬達は頷くと、現場へと向かうのだった。
参加者 | |
---|---|
鉋原・ヒノト(駆炎陣・e00023) |
京極・夕雨(時雨れ狼・e00440) |
イブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943) |
スバル・ヒイラギ(忍冬・e03219) |
ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854) |
レイラ・クリスティ(蒼氷の魔導士・e21318) |
アイカ・フロール(気の向くままに・e34327) |
八久弦・紫々彦(雪中花・e40443) |
●悪辣の剣
ヘリオンから降下した番犬達に戦慄が走る。
尋常ならざる速度で山を下る巨躯の影――エインヘリアル『ソーイチ』が観光街へと迫っていた。
「まずいぞ、急いで避難を――!」
「みんな、手筈通りに」
鉋原・ヒノト(駆炎陣・e00023)とイブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)が各員に声を掛けると、すぐに行動を開始する。
迫り来るフルプレートの騎士。大剣を後方へと振り上げると駆け抜けざまにその一撃を振るう。
「間に合え――!」
轟音が観光街を襲う。山に面した軒並みの何軒かが粉々に吹き飛ばされる。
「被害は!?」
「ギリギリセーフだ」
逃げ遅れた少女を抱えたヒノトが汗を拭う。今の一撃を持って怪我人がいなかったのは不幸中の幸いか。
「誘導班はそのまま誘導をお願いします。私達は――」
「こいつを抑えるぜ!」
京極・夕雨(時雨れ狼・e00440)とスバル・ヒイラギ(忍冬・e03219)が仲間達に声を掛けながら気合いを入れる。
この暴虐を尽くす騎士をいまから相手にする。気合いは十分だ。
――避難誘導は迅速かつ的確に行われていく。
ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)は古き時代の英雄のように白装束に月桂冠を被り大盾を持ち人々に呼びかける。
「必ず護り抜いて見せる、この盾に誓おう。さぁ落ち着いて、この場からできるだけ離れるんだ」
その姿は混乱した状況の中では救世主にも見えるだろう。人々が心動かされ従い避難を行う。
「敵は俺達の仲間が食い止めてるから心配は無用だぜ! さあ、こっちだ!」
ヒノトは予め地元警察に誘導先を確認していた。逃げ遅れた人を誘導しながら、警察と連携し避難誘導を効率的に行っていく。
「紅葉狩りは後のお楽しみだな。絶対止めてやろうぜ、アカ!」
ファミリアのネズミ『アカ』と共に着実に避難を完了させていた。
「向こうはもう大丈夫だぜ。ただあっちがさらに戦場になりそうだ」
「わかった、こっちで誘導する」
広く状況を見ながら的確に仲間へ指示を出していくのはイブだ。誘導漏れの有無をしっかりと確認しながら伝達していく。
「戦闘場所を避けてできるだけ遠くへ離れて」
さらにイブの割り込みヴォイスが戦場となった観光街に響き渡る。現役歌手の美しい旋律にも似たその声が人々に勇気を分け与えていった。
「焦らず落ち着いて避難をお願いします!」
サーヴァントのぽんずと共に避難誘導を行うアイカ・フロール(気の向くままに・e34327)。
アイカは小さい子やお年寄りに優先的に手を貸し導いていく。
「ぽんず、周辺の確認ね!」
仲間だけでなくぽんずとも連携し、逃げ遅れがないように注視していた。
アイカの活躍もあって、逃げ遅れ騒ぎに巻き込まれるような人はでなかった。
避難する間も、家屋が吹き飛ばされ瓦礫が避難路に降り注ぐ。
緊迫した状況の中にあって、誘導を担当した面々は起こりうる最悪を想定しながら、刻々と変わる状況に対応していく。仲間との相互確認をしっかりと行った最良の結果だ。
最後の一人が逃げ切るまで、避難誘導は続けられた。
――一方、ソーイチと対峙する抑え班は苦戦を強いられていた。
「お前の相手は俺達だ!」
「ケルベロスか。愚者である人間共を庇い救うことで救世主にでもなったつもりか」
大剣を振るい家屋を吹き飛ばしていくソーイチ。
残骸を避けながら接近した夕雨が鉄塊剣を叩きつぶすように振るい、スバルが美しい虹纏う急降下蹴りを見舞う。
「救世主になどなった覚えはありません。ですが、人々を守るために私はこの力を振るいますよ」
「目の前で傷つく人を放っておけるか!」
薙ぎ払われる大剣をその身で受け止め夕雨とスバルは再度果敢に攻撃をしかける。
「性格はあれですが、攻撃は本物です。皆さんお気をつけて! 避難誘導が終わるまでの辛抱です」
「助かるよレイラ!」
レイラ・クリスティ(蒼氷の魔導士・e21318)がすぐさまオウガ粒子を放ち回復する。二人の超感覚が覚醒されていく。スバルがすぐさま感謝を送った。
「ふん、優れた者を疎むことしかできぬ愚かしい人間共に生きる価値などない」
それは誰に向けた言葉だろうか。
悪辣の剣が、美しく弧を描き幾重にも振るわれる。
自分勝手な物言いに呆れと哀れみの感情をもつ八久弦・紫々彦(雪中花・e40443)。
「君が人と関わることを拒まなければ、こんなことにはならなかっただろうに」
ソーイチの攻撃が更なる被害を生み出さないように注意を払いながら、電光石火の蹴りを見舞い、反動で飛び上がると竜砲弾を浴びせ足を止めていく。
過去の自分と重ねやや同情的に語る紫々彦。だがソーイチは鼻で笑った。
「関わることを拒む? 逆だ。周りの人間が『あの男』と関わることを拒んだのだ」
上段からの振り下ろしが地面を破砕する。掠った紫々彦が苦痛に顔を歪めた。
「自分を貫く男。その男を誰も彼もが受け入れようとはしなかった。ただそれだけだ!」
暴虐の一撃が、盾役の二人を薙ぎ払う。吹き飛ばされ地面に転がった。
「俺はあの男を肯定する。優れた者こそ頂点。それを否定する者がいるのであればそのような愚者は全て排除するまでだ」
胸の前に立てた剣に宣誓するようにソーイチがいう。
痛む身体を引き釣りながら立ち上がると、夕雨が言葉を漏らす。
「別人のようですが、当人と同じように本当に性格悪くて、そして悲しい人ですね――」
(「せめてこの美しい地で穏やかな幕引きを迎えさせてあげられたら良いのですが」)
スバルもまた傷つく身体に力を入れ立ち上がると歯を食いしばる。
「どんな理由があってもこれ以上の暴挙、許せるものか!」
レイラと紫々彦もまた、武器を構え想いを共にする。
「ならば止めて見せろ――ケルベロス!」
更なる殺気を爆発させ、悪辣の剣をソーイチは構えた――。
●集う牙
本格的に始まったソーイチとの戦い。
ソーイチもまた、番犬達を敵と見なし、まずは排除することに決めたようだ。盾役二人の状態異常付与が機能してきたといえる。
ソーイチが何もかもを薙ぎ払うかのように何度も繰り返し大剣を振るう。しかしその動きは実に理詰めで、頭脳的な技巧が見え隠れする。
応戦する番犬達もまた、個の力で抗うのではなく、全の力――連携でもって対応していく。
「強大な力。まさに暴虐の限りをつくす勢いですね……」
盾役への回復を継続しながらレイラがその勢いに言葉を漏らす。
「被害者とは別人のようだが考えは同じのようだな」
「性格の悪さがにじみ出ますね」
紫々彦の言葉に、夕雨が言葉を重ねる。
「どちらにしても、同じ考えの奴だ。俺には、孤立してまで守るプライドがあるとは到底思えないな」
竜砲弾による足止めを続けながら紫々彦が考えを口にする。
「ふん、違うな。あの男も俺も、周りの愚者たちが到底及ばぬ程に優れている。優れた者がプライドを捨ててまで誰かに傅く理由などありはしない」
縦に振り下ろされる命刈り取る一撃の重みに夕雨の膝が折れ地に伏せる。
続く横薙ぎの一撃をスバルが受け止め吹き飛ばされる。声にならない悲鳴があがるが、容赦のない追撃の一撃が体勢の整わないスバルを狙う。だが――。
「人を見下す事しか出来ないなんて可哀想な奴だな! 明晰な頭脳より、もっと大事なものがあるんだぜ!」
そこに、背後から竜砲弾を浴びせるヒノトが現れる。追撃は辛くも逸れた。
その後ろには誘導を行っていたイブ、ロウガ、アイカの姿もあった。
「みんな、誘導は!」
「バッチリです!」
アイカの返事に胸をなで下ろす番犬達。
「お待ちしてましたよ、……ここからが本番です。火の精霊よ、皆さんに力を!」
レイラがすかさず破壊力を上げるグラビティを付与する。
「人を見下すことの何が悪い。優れた者に従えば万事上手くいくのだ。頭を垂れ従うべきだろう」
唯我独尊を体現するこの男はそうして醜く笑った。
それは自己中心的な考えの底なし沼だ。変えることの敵わない悪辣な性格がにじみ出る。
それが孤独を生み出すことを、この男は理解している。
「何を言っても自分を変えることを拒むんだな。臆病な奴だ」
「ほざけ。臆病であるものか。俺は一人でも全てを成し遂げられる」
「それが、自分一人でしか何もできないその心が、臆病だというのだ」
スバルが、紫々彦がソーイチへと沸き上がる想いを突きつける。
「そうやってどこまでも孤独に人を傷つけようというのなら、その悪辣の孤高に至る剣、私達の手で打ち砕かさせて頂きます――!」
「かかってこい、一人で十分だということを教えてやる」
集う牙を研ぎ澄まし、死闘が始まる――。
●その一瞬に何を見る
死闘は続いていた。
互いに命を奪い合いながら互いの主張をぶつけ合う。
ロウガが肉薄し『妖気』纏う超高速の峰打ちを打ち据える。続けて光の剣を具現化させ斬りつけながら、流星纏う蹴りを見舞う。
ロウガは孤独のままに堕ちた被害者宗一を哀れむ。だが、宗一より生まれ、無辜の民を傷つけんとする目の前の男の悪逆非道を、許すわけにはいかない。
「壊しの剱、逃れ得ぬ過去を抉り裂く!!」
止めに傷口を正確に切り開く一撃を放つ。蹌踉めくソーイチ、だが踏みとどまると上段から大きく大剣を振り下ろす。
「やらせないよ!」
スバルは大剣の腹にケルベロスチェイン――昏星――を蒔き付け軌道を逸らすとさらに鎖を飛ばしソーイチの気を逸らす。
「アンナ!」
「きみ、プライド高そうだね。女に唇を奪われるのは屈辱かい?」
スバルの生み出した隙を突き、急接近したイブがソーイチに口付けを行う。白薔薇の毒が緩やかにソーイチの身体を冒していく。
「ハニートラップのたぐいか、だがこんなものでは倒れん――!」
口を拭うことなく、いや唇を自ら咬みきるように歯を食いしばり、毒を耐えるソーイチが横薙ぎの一撃を振るう。紙一重で回避したイブが地面を転がりながら「ヒノトくん」と名を呼ぶ。
「……穢身斬り裂くは双の閃雷!」
紫電が走る。生成された二本の閃光槍がソーイチの身体を十字に刻む。だがソーイチは倒れない。咆哮があがり大剣が切り札を放ち隙を生じたヒノトを襲う。
斬りつけられ吹き飛ばされながら苦悶の呻きを漏らすヒノト。
すぐさまレイラがウィッチオペレーションでその傷を治療すると、ヒノトは礼を言って戦線へと戻っていく。
「えだまめ!」
「自信はないけど……ぽんず!」
夕雨とアイカが併走しながらサーヴァントに指示をだす。二人と二匹。四方向からの同時攻撃がソーイチを襲い、切り裂かれた痛みに怨嗟の声をあげるソーイチ。
攻撃は止まらない。紫々彦もまた動きの止まったソーイチに加速したハンマーを振り下ろし衝撃で地割れが起こる。
個としてその剣を振るうソーイチに対して、全としてその牙を突き立てる番犬達。
声を掛け合い連携を重視し、敵の動向に気を配りながら戦っていく。
だが暴虐の騎士はいまだ倒れず。その悪辣な剣を振るい続ける。
あと一押し、僅かな隙さえあれば――。
強大な力の前に綱渡りのような緊張感の中、ついにその時が訪れた。
振り下ろした大剣を直角に曲げ、突如横薙ぎに振るうその攻撃に夕雨の体勢が崩れる。刹那、それは死を予感させる隙を生み出す。
醜く笑うソーイチが返す剣で斬りつけようとしたとき――その大剣が一瞬動きを止めた。
ソーイチの大剣の先には一軒の家屋。その刹那の逡巡が綻びを生む。
その綻びを、番犬達は逃さない――。全員が一斉に飛びかかり、喉笛に牙を突き立てる。
「孤独な王に、安らぎがありますように――」
歌うような声がソーイチの耳に届く。それは、イブが二本のナイフを両の手にもち、舞うようにソーイチの身体を切り刻むのと同時だった。
そうして、ソーイチは剣を突き立て、膝を落とす。
「は……くだらん結末だ」
力なく言ったその言葉を最後に、孤独悪辣の騎士ソーイチはその動きを止めた。
――番犬達の、辛くも勝利が決まった瞬間だった。
●落葉が天へと還る時
戦い終わり、周辺の建物の修復を終えた番犬達は、紅葉咲き乱れる山へと足を踏み入れていた。
「最後のアレ、やはり宗一さんに関係ある建物だったんでしょうか」
「近所の人に確認してきたぜ。やっぱり実家だったみたいだ」
アイカの問いかけに、買い出しから帰ってきたヒノトが答えた。
「最後の最後で人としての思い出が剣を止めたのでしょうか」
「どうでしょうね……」
ソーイチは宗一とは完全に別個体であった。人としての心などもってはおらず、被害者の記憶を持っていたとしてもそれは本で読んだ知識程度のことだろう。
だが、そうであったとしても、あの一瞬には宗一の想いがあったように思えてならない。
レイラと夕雨は宗一を思い、言葉を詰まらせる。
ヒノトが手下げた袋から団子を一つ取り出すと、一つ地面に供える。
「きっとここらへんから街を眺めてたんだろうな」
(「これはあの世で食べてくれよ、ソーイチ」)
ヒノトが静かに黙祷すると、仲間達もそれぞれが黙祷を捧げた。去来する想いはどこか切ない。
「ソーイチ……分かっていても、変えられなかったか?」
ロウガが憐れみを静かに呟くと、その言葉は空へと消えていく。
「よし、湿っぽいのはここまで」
ヒノトの言葉に、全員が頷く。そう悲しんではいられない。その想いは大事に胸にしまいこんだ。
「仕事のあとは甘い物! やったー! あ、飲み物買ってきてるからね!」
「へへっ、美味そう! いただきまーす!」
そうして皆で紅葉を見ながら団子を食べることにした。ぽんずもえだまめも美味しそうに頬張る。
「皆と来られて良かった。戦闘は大変だけど、たまにはこういうのもいいね」
「ふふ、そんなこといってイブさん、もうぽんずとえだまめちゃんが気になってるんじゃないんですか?」
「う、実はもう我慢できなくて」
アイカの言葉にイブが我慢できず、ぽんずとえだまめをモフモフしはじめる。
「あ、ずるいずるい、俺も俺も」
スバルもそれにまざりモフモフ。
「よーしよしよし、お前うちの子になるかー?」
交替し合いながら心ゆくまで堪能する。
「えだまめ、ずるいですそこ変わってください。あとぽんずさん私もモフりたいです」
そんな和やかな光景にレイラが笑い、紫々彦が微笑ましく見守り、ロウガも微笑みを湛えながら茶を楽しんでいた。
空を仰げば夕陽に照り返した紅葉が落葉している。
「紅葉がとても綺麗ですね……お団子も美味しいしっ。こういう平和な日、いつまでも続くようにしたいですね」
「続かせるさ」
レイラの言葉にぽんずとえだまめに潰されてるイブが応える。
「ええ、続かせましょう」
遙か視線の先、紅葉が落葉し天に舞う。
落葉はどこまでも、どこまでも、高く、高く、飛んでいく。
それはまるで、一人の男の魂を天へと還すように飛んでいった――。
作者:澤見夜行 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 2
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