描き塗り、殺す

作者:森下映

 とある美術学校のアトリエに、正月も関係なく泊まり込み、絵を描き続けている男がいた。男は横目で別の生徒の作品をちらりと見ると、
「……っ、ひでえな、ガキの落書きかよ」
 他人の作品に唾を吐く勢いで批評をするのは彼の癖だ。その間も絵筆は動き続けている。確かに才能はあるが、人を見下す性格ゆえに、友人はいなかった。
 その時。
「あなたには才能がある」
「!」
「人間にしておくには勿体無い程の……」
「っ、お前一体どこから、いや、」
 紫の瞳に紫の踊り衣。美しさを禍々しさが取り巻いたような女性の突然の出現に男は眉を顰める。だがプライドの高い男のこと、才能があると言われて悪い気はしない。
「だから、これからは、エインヘリアルとして……私たちの為に尽くしなさい」
「うわっ!」
 途端男の身体が紫色の炎に包まれた。そしてゆらめく炎が薄く散ったかと思うとそこには、身長3メートル程に巨大化した男――エインヘリアルとなった男が片膝をついていた。
「さあ、グラビティ・チェインを奪いに行くのです」
「かしこまりました」
 男は一礼し、アトリエをその巨体で破壊しながら外へ飛び出していった。

「死者の泉の力を操るシャイターン達がエインヘリアルを作りだして回ってる。で、今回は紫のカリムがエインヘリアルに変えちまったヤツの撃破依頼ってわけか」
 エルフの耳覗く銀の髪に銀の瞳は惑わされそうに美しく、ヘリオンの中ででも口調の軽さは変わらない。だが番犬としての研鑽は積み続け、今も頭の中は用心深くもある程に敵の事を考えているだろう。鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)。セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は頷き、
「出現したエインヘリアルはグラビティ・チェインが枯渇した状態のようです。そのため多くの人間を殺してグラビティ・チェインを奪おうと賑わう神社で暴れ出してしまいます」
「その暴れ出す現場に直行するんだな」
「はい。エインヘリアルを作り出したシャイターンとは遭遇できませんが、急ぎ向かっていただければエインヘリアルの凶行を止めることは可能です」
 神社は七草粥が振舞われる日とあって、多くの人が参拝に訪れている。

「男性は人間であった時からプライドが高く、エインヘリアルになったのも自分が選ばれ導かれての結果だと思っているようです。人間を糧にすることも当然と考えています」
 エインヘリアルの武器は絵筆とパレットナイフ。ストリートダッシャー、ペイントディザスター、血襖斬り、ジグザグスラッシュ、惨劇の鏡像相当のグラビティを使用する。ポジションはクラッシャー。
「エインヘリアルは神門のすぐ外に出現します」
 雅貴はその場所をタブレットで確認すると、
「参道の広さがあるのは助かるな。避難誘導もしやすいだろう」
「はい。エインヘリアルが社殿の中へ追いかけていく可能性は低いため、十分にエインヘリアルを引きつけておけば一般人の避難はそう難しくないでしょう」

「――遠くからわざわざこの日に来てる人も多いんだろう……できれば当日中に参拝できるようにしてやりてーが」
 セリカは頷き、
「エインヘリアルの襲撃は早朝ですから、迅速に撃破できれば参拝も再開できるでしょう。皆様もよろしければ、七草粥を楽しんでいらしてはいかかでしょうか」


参加者
リシティア・ローランド(異界図書館・e00054)
鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)
周防・碧生(ハーミット・e02227)
アッシュ・ホールデン(無音・e03495)
松永・桃李(紅孔雀・e04056)
城間星・橙乃(雅客のうぬぼれ・e16302)
月見里・ゼノア(バスカヴィルの猟犬・e36605)
ドロッセル・パルフェ(黄泉比良坂の探偵少女・e44117)

■リプレイ


「この手の厄除けは番犬の専売特許だ、任せときな」
 銀糸なびかせ降り立つシャドウエルフ、
「すぐに払い除けてやるさ」
 不安気だった人々の表情が変わる。鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)。
「私達は護る為に参じた者、凶刃は通さないから焦らずね」
 宝石な桃抱く目元に紅差す麗人が並び立った。緋色の翼と尾、珊瑚の如き角はドラゴニアンの証。松永・桃李(紅孔雀・e04056)。
「これ以上胸くそ悪い展開にさせて堪るかよ」
 雅貴が刀を抜く。鉄を油絵具で汚した様な鎧を纏い、片手には指の間に筆、片手にはパレットナイフを携えた男が番犬達に気づいた。
「新年から血染めの神域なんて御免よね」
 桃李は語らぬ過去から地獄の焔をだけを表に灯し、
「静謐な場が汚されぬよう、急ぎましょう」
「ああ」
 ――せめて悲劇の上塗りは止めてやろう。雅貴の心知らず、男は兜の下に見える薄く色のない唇を獰猛に歪める。
 そして、
「彼の厄は番犬が退けます。どうか焦らず、信じて避難願います」
 拡声器を通した声も響く。文字通り俯きがちに生きてきた少年は、日々確実に成長している。周防・碧生(ハーミット・e02227)。親友の箱竜リアンを戦いの前線に送り出し、自分は誘導に努める。
(「こうなる前に阻めなかった事は悔しいですが……せめて新年がこれ以上の悲歎に見舞われぬよう、止めましょう」)
 青が流れるたびに変化して見えるような美しい髪。月見里・ゼノア(バスカヴィルの猟犬・e36605)も避難誘導に奔走する。
「大丈夫、安全な場所までご一緒します」
 逃げ遅れていた年配客へ微笑みかけながらゼノアは男を目の端に捉えた。
(「プライドが高い……気高いとも言えますが」)
「……こうも過ぎては傲慢に過ぎませんね」
 ゼノアと碧生に避難を任せ番犬達は神門と人々から男を遠ざける様包囲する。探偵服に身を包んだ少女もその1人。
(「しっかり囮役を果たさなくてはいけませんね」)
 走りこめばブーツが虹を描いた。ドロッセル・パルフェ(黄泉比良坂の探偵少女・e44117)。アスファルトに七色の火花を散らし、ふわり夢と跳び上がる。
「何てことですか! 何て哀れなんですか!」
「なんだぁ?」
 金の瞳にポニーテールを編んだ白い髪。細く小柄ながらも強気なオーラは男の注意をしっかりと引いた。
「これまでしてきた努力は無駄! 画家にはなれず、何も得ず! 仕舞にゃパシリの甘言に乗り、アスガルドにされ殺される! っ、」
 男が脅しをかけた腕をドロッセルが蹴り込む。男の腕が音を立ててねじ曲がった隙、ドロッセルは宙で後転間合いを抜けるや否や、完成された戯曲の台詞の様に煽り続ける。
「役にも立たず、殺される! 実に空虚じゃないですか? 人生空虚じゃないですか!」
「ハッ! 何がわかる!」
 男は大股に彼女を追いかけ始めた。ドロッセルの目が丸くなる。
「ヴぁあああああ!? ちょっと待って!? マジに洒落になってないですよ!?」
「俺は『選ばれた』! 何をしても許される!」
 男が高くナイフを振りかぶり、振り下ろした。だがドロッセルは無傷で対角へ抜け、
「ドロッセルの嬢ちゃんの言う通りだなぁ」
 裂けた服の隙間、金と紫紅で呪の紡がれた灰の包帯が血を滲ませて覗き、
「いいように使われちまってまぁ……」
 立ち話のような気軽さ、可能なのはそれだけの過去を経てきたからだ。アッシュ・ホールデン(無音・e03495)。
「本当に才能があるんなら何だってこんな捨て駒みたいな扱い受けてんだよ? それも気付けねぇ頭の悪さは買われてるかもしれないけどな」
 巨大な剣を軽く肩上にのせ、角も尾も翼も見せない無精髭のドラゴニアンは金の瞳を細めて見せた。
 為すべき事は知っている、感情に左右されず徹する覚悟も持っている。それが非情と見えたとしても。月光宿す鉄色に藍を落とした革手袋の指に力を入れるとアッシュは一気に距離を詰めた。
「グ!」
(「せめて、手汚す前にケリつけてやらねぇとな」)
 口には出さない胸の内。飛び上がり奮った剣は男の腹を起点と下半身の骨を激しく砕く。
「馬鹿にしやがって……!」
 男の怒りが筆先を色に染めた。そして筆が何かを描き出そうと動いたその時。
「因果応報、類は友を呼ぶ。まさに今のあんたの姿そのものね」
「あァ!?」
 男の身体を白光が貫き、筆持つ指先から身体が石と化していく。それは赤い霧の中から放たれ、浮かぶ白い書はひとりでにめくられ、詠唱は文字と浮かび、薔薇十字の軍服を纏った術師の『司書』は金の髪を波打たたせ。藍の瞳は標的を見る。リシティア・ローランド(異界図書館・e00054)。
(「芸術家は偏屈な奴が多いけど、コイツみたいなやつは才能はあっても大成はしないわね」)
「……最もその先すら最早ないのだけど」
 男が自分に術をかけた者に気づいた瞬間、怒りが掻き立てられた。鈴音鳴らしブレスを吐きかけたリアンは男の周囲を旋回、すでに男の視界にはリシティアの姿もなく、
「あら描かないの? 見せてほしいわ、見初められるほどの才能をね」
 神門前に咲く一輪。水仙の加護を受け蒼い毒をも司る。城間星・橙乃(雅客のうぬぼれ・e16302)。無粋な礼儀知らずと男を見下す一方、その才能と描く物には興味がある。とはいえ、
「どれだけ才能があっても、エインヘリアルになったあなたには興味ないんだけれどね」
 悠と笑みを浮かべた橙乃の身体から装着されていた黒鎖が伸び、瞬く間に複雑な守護陣を描き出すと、仲間達へ碧色の加護が降りた。刹那冴え渡る三日月型の斬撃。雅貴が中段から正しく放ったそれが男の少し手前で地面を弾くと上方へ駆け上がり、首元を断つ。激しく噴き出した血を男は忌々しげに拭おうとしたが、
「ッ!」
 男は一瞬肘下の感覚がなくなった様に感じた。神経を焼き切らんと滾る緋色の雷は桃李が両手持ち、刀を真下に向けて男の腕に突き刺した場所から生まれていた。
  男の眼にもう一般人は映っていない。そして、
「お待たせしました」
 言葉より早く二重の月が飛び、碧生の黒鎖が男の足に巻きついた。
「平和な日常を血塗りにする真似は、認められません」
 男は歯を軋ませその場から筆を振るおうとする。だが、
「さてさて……いきますよっ……と」
 その銃弾は多方向から放たれ、筆を次々に砕いた。狙撃手はゼノア1人、たった1人。しかし走り、跳び、死角に入り、まるで精鋭揃いの一個隊の攻撃の如く。残像か実物か。理解する前に敵は翻弄されるしかないのだ。


「死ね!」
 男は道を描き出すと、その上を滑走、らしかし、
「させません、よ!」
 飛び込んだドロッセルは片背で突撃を耐える。強烈な衝撃に血を滴らせた彼女の様子に笑った。が、
「では、お返しです」
「何だと?!」
 見えない位置から高速で回転するドロッセルの肘下が突き刺さる。その傍ら、すぐに橙乃が降り立ち、
「少し我慢してね」
「ウわぁぁああ!」
 ロッドから迸った碧雷がドロッセルの傷を直撃、光の魔術が出血を止めた。
「き、効きましたぁ……」
「さあ、まだまだこれからよ」
 ドロッセルと橙乃が逆方向へ飛び抜ける。だが男も追いすがり、
「逃げられると思うなァ!!?!」
「あなたもね」
「!」
 男の背から噴出した血がそのまま凍りついた。突き刺さっているのはリシティアの扱う匕首、間近から突き刺されたような、だが魔術師らしい帽子の下、リシティアの姿は当然の様にそこになく、彼女の装に覆われた身体が魔術回路で埋め尽くされている事を男は知らない。
 匕首はひとりでにリシティアの元へ戻った。
 しかし男の『痛み』は終わらない。通りすがりの風の様に回り込み、敵の身体を足場と利用し、たった今匕首が刺さったその場所を、ゼノアがナイフで激しく抉り取った。さらにリアンがブレスを吐きかければ傷は広がり、月の瞳も見据える。
「『我が敵を、捕らえよ』」
 指し示す手袋の指先、月光を召喚した様な魔力。碧生の元から走り出した影は狼となり、
「ギャアアアアア!!!」
 獰猛に飛びかかるとその脇腹に激しく噛み付いた。そして影狼ごと呑み込み、男だけを焼くは雅貴の掌から生まれ出でた炎龍。
「くっ、」
 プライドをへし折られるばかりの戦い、だが男は筆を止めることはない。
「俺の大作に飲み込まれるがいい!」
 描き出されたそれは実際に地面を揺るがし天空を割り、あるはずのない海を怒らせた。
「止めるぞ」
「当然です!」
 さながら堤防となるべく庇いに飛び出したアッシュ、ドロッセル、そしてリアン。
「ぶはっ!」
 荒れ狂う波を耐えるドロッセル、揺れと地割れから生じる揺らぎを抑え込むアッシュ、リアンは竜巻から気丈に脱出。そして橙乃は自分の真上に落ちんとした雷を研ぎ澄ました精神力で爆破、四散させた。
「『癒しを…って柄じゃねぇんだがなぁ。』」
 呟きながら黒いライターにアッシュが火を灯す。翳された炎の先、咲き乱れる白き花――リアンの傷が癒えていく。色の対比も美しいその光景に碧生もほっと胸をなでおろした。
「花など塗り込めてやろう」
 エインヘリアルの手にした筆の先が黒く染まる。だが、
「あら、花の強さも知らないの?」
 カミツレ舞う前、佇む麗人に巻きつく『緋龍』。桃李は長い睫毛を伏せ、
(「どんな人となりだったにしても、元々の貴方が描きたかったのは地獄絵図なんかじゃ無いでしょうに……白羽の矢すら光栄なんて、嗚呼もう、」)
「本当に救いようが無いのね……ならば」
 桃李が目を開けた。
「せめて出来る事を――『火遊びじゃ、済まないわよ』」
 天災で荒らされた大地を癒すように地獄の炎纏う龍は駆け抜ける。獲物を目掛け、烈火の如く。龍は男に絡みつき身を焦がす――。


「くそッ! クソおっ!」
「おっと、」
 振り回されるナイフの先。最低限の間合いでアッシュが相手をする。
 どれ位時間が経っただろうか。最早男に絵を描く余裕はなく番犬達の血を浴びる事しか頭にない。盾役はそれなりに傷を負うが一貫して橙乃は冷静だ。
「『白銀に零れ落ちるは神秘の雫』」
 甘やかな香り。その冠は黄金の盃、花弁は白銀の台。辺りを漂う推薦の花の服花冠を満たした雫が香りとともに仲間を癒し、男は桃李のナイフに映し出された何かに慄き、見せた隙に焔纏ったアッシュの回し蹴りを喰らう。さらに、
「『……火行・終式 喰霊赫灼』」
 上段に黒い薙刀、天竺牡丹を構えたドロッセル。漆黒の焔へと姿を変えたダモクレス達の怨念が刃に纏いつき、ドロッセルの手元から這い登ろうともする中、一閃。呪いの業火は男に襲いかかり、より一層勢いを増す。そして、
「さようなら、その性根と才能。彼方へと埋没してしまいなさい」
 リシティアの目元に帽子の影が落ち、片手に重力が圧縮されていく。
「誰も必要としていないから。『貴方にとっては刹那の出来事でも、此方にとっては永遠よ』」
「!」
 射出された魔弾は男に着弾するや否やそこを時間の牢獄に変えた。欠陥術式と彼女は云う。だがその本質は、
「グワアアッ!」
 相対時間のずれが生み出した歪みが物理崩壊を起こし、捉えた敵をも破壊する事。
「その才は殺戮の為のものでは無かった筈なのに――何もかも、塗り替えられてしまったのですね」
 リアンに視界を翻弄される間に、碧生がブラックスライムを鋭く伸ばした。
「眠りに就いて頂きましょう……せめて、安らかに」
 黒槍が鎧に覆われていない脇を正確に貫く。
「ぐ、ふ、」
 ついにエインヘリアルが膝をついた。その兜を漆黒を纏った光が照らす。
「貴方に素敵な最後の夢を……『孤独に寄り添う影よ 解放の時は来た』」
 それは彼女の影。そして切り離され模倣すべき形を失った物。戦場で決して足を止めることがなかったゼノアが今、不思議な程静かにカンテラを手に佇む。世界を照らしても、闇は果て無く。無形となった辺りを暗く染め上げ、男を闇に鎖す。
「凶行も厭わぬ才や矜持の示し方なんざ御免だ」
 雅貴の頬にエインヘリアルが最後の力を振り絞って描き殴った線が引かれた。雅貴は拭おうともせず、
「その腕は本来、こんな振るい方するもんじゃ無かっただろうに……血と罪に染まり切る前に、眠りな。『――オヤスミ』」
 囁くような詠唱。鋭い刃は音もなく、エインヘリアルの首筋へ迫り、掠るや否やじわりその視界は暗む。
「う、ア、ああ、」
 エインヘリアルが喉を押さえ苦しむ。それはただの刃に非ず。静かに幕を引かんとする、雅貴が父母か受け継いだ才を頼りに磨き上げた力。
 崩れ倒れ消えていく、哀れな男。
「貴方の最後が安らかであるように」
 せめてもの餞とゼノアが言い、
「心静かにお休みなさい、ね」
 手を合わせた桃李の隣、碧生もリアンを呼びよせ目を瞑った。


「七草粥って食べた事ないんですよね。楽しみです。楽しみなんですが……」
「どうかしたの?」
 橙乃が配られた粥をゼノアに渡した。粥からは熱々の湯気。ゼノアはひとすくい、
「熱いのは苦手です……」
 フーフー冷ます。
「怪我はともかく病気は流石に勘弁願いたいしな、苦じゃない験くらい担いどくさ」
 アッシュも首に巻いたマフラーを少し下げて粥を口に運ぶ。ドロッセルは、
「そういえば七草粥にはお正月の食事で崩れた栄養バランスを整える意味があるらしいですよ」
 悪食ばかりの芋煮亭の連中にも食べさせてあげたいですね、と考えながら。そして橙乃は七草粥を写真に撮り、
「あとで神社も撮りたいわ。それから、」
 願掛けの為ではなく神さまへの挨拶としてお詣りも。
 一方、生憎祈る神は持たないと、愉しみを邪魔するのも無粋であると、任を終えたリシティアは1人神社を後にする。
「オレ達もしばし羽伸ばしといきますか」
 雅貴が言った。桃李に碧生にリアン。似ている所は一見ないが不思議と纏まる仲間同士。
「ただちっと華が無……いやゴメン何でもナイ」
「やあねえ華なら此処にいるでしょう? ねぇリアンちゃん?」
 女の子竜のリアンににっこり微笑みかける桃李。
「……嘗ては年中独りだったけれど、今はこんなにも賑やかで温かな中に在る……それはとても有難く、幸いな事です」
 感慨深げに碧生が言う。
「オレもぼっちの逸れ者だったケド、お陰さんでこの通りだよ」
 碧生ももっと気楽にしてなと笑い飛ばしつつ、雅貴も感謝の気持ちは同じ。
「合縁奇縁とはこの事、かしらねぇ。ふふ、私も色々あったけど、今は楽しいし感謝してるわよ」
 桃李は優雅に粥を口に運び、
「改めてヨロシクね。皆が穏やかな心でこの一年も過ごせますようにと、心から願っているわ」
「僕も平穏な日々を願います」
 在り来たりでも何より尊いもの。碧生も、
「守れるよう、今年も励みましょう 」
 雅貴は粥の温かさに顔をほころばせる。
 この縁やら平穏やらが途絶えねーように。
 んで来年もまた美味しい粥を楽しめるように。
「今年もぼちぼち、頑張んねーとな」

作者:森下映 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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