●色と拳を極めよ
古びた道場で、1人の武術家が修行をしていた。
もっとも、見た目はとても武術家には見えなかった。
肩や胸元が大きく開いた、体の線を強調するかのようにピッタリと上半身を覆うドレスは、腰の当たりからふわりと広がるスカートになっている。
格闘よりも、社交ダンスが似合いそうな衣装。
一挙手一投足と共に長い髪が流れ、質のいい香水の香りが艶やかに広がる。
ただ、身につけているのは、筋骨隆々たる男性であった。
力強い目元をアイシャドーで彩り、大きな鏡に流し目を投げかけながら、彼は両腕を体に押しつけ胸の谷間……もとい、胸筋を強調するポーズをとる。
次の瞬間、裂帛の気合いとともに裏拳を繰り出した。
胸に腕を押し付ける動きは、同時に力を溜める動きでもあったのだ。
「……まだまだね。今の動きでは、まだアタクシの女性的な美しさが表現しきれていないわぁん……」
「なら、お前の一番美しい技を見せてみろよ」
突然背後から声をかけられ、彼は振り返った。
そこにいたのは、スレンダーな体をした1人の少女。手には鍵を持っている。
まるで誘い込まれたかのように、オカマは彼女に襲いかかる。
スカートの中が見えそうで見えない絶妙の角度で放たれる連続蹴り。
しなだれかかるような動きから流れるように寝技に持ち込む。
誘惑と攻撃が表裏一体となって仕掛けられる技を、彼女は抵抗することなく受け続けた。
「僕のモザイクははれないけど、それでもなかなか面白い武術だったよ」
攻撃が一瞬途切れた隙に、彼女は音もなく手にした鍵をオカマに突き刺した。
無言で、彼はその場に倒れる。
その横に、彼と同じ姿をした1人のオカマが現れた。いや、一見すると同じように見えるが、現れたほうは男性の力強さのなかに女性的なしなやかさをはっきりと感じられる。
超人的な動きで魅惑的なウインクを鏡に投げかけ、現れたオカマは道場を出て行った。
●極めた力を止めろ
ケルベロスたちに対して、尾神・秋津彦(迅狼・e18742)は礼儀正しく頭を下げた。
「調査の結果、ドリームイーターの幻武極がまた事件を起こすことがわかったのであります!」
幻武極が、自分に欠けた『武術』のモザイクをはらそうとして様々な武術家を襲っていることは、すでに知っている者もいるだろう。
今回襲撃する武術家でもモザイクははれないようだが、代わりに武術家のドリームイーターが出現する。
「ドリームイーターはその武術家が目指す理想の武術を会得しています。放っておけば、その技で人々を襲い始めるのであります!」
だが、事件が予知できたおかげで、寄り道しなければドリームイーターが道場から出ようとしたところでケルベロスたちが到着できるのだ。
どうか止めてやって欲しいと秋津彦は言った。
秋津彦の横に控えていたヘリオライダーが、予知した敵について説明を始めた。
敵は幻武極によって生み出された武術家ドリームイーター1体のみ。本人はケルベロスが到着する頃には姿を消している。
「襲われる武術家は、色仕掛拳(いろじかけん)と自称する拳法の修行をしていました。女性の色気で敵を油断させつつ攻撃する独自の武術と言うことです」
ヘリオライダーは眉ひとつ動かさずに語った。
なお、武術家は女装した男性……いわゆるオカマである。
胸や腰、太ももなどを見せつけるポーズから繰り出す強力な打撃や、誘うように接近して命中しやすい寝技を使用する。
また、下着が見えそうで見えない角度で繰り出す連続蹴りも行えるが、その蹴りは衝撃波を起こすので遠距離に届く。
「なお、すべての攻撃には敵を誘惑して催眠状態にする効果がありますので注意してください」
道場にいるのは彼1人なので、周囲の被害を気にする必要はないだろうとヘリオライダーは言った。
ドリームイーターを生み出す元になった武術家は、意識を失って道場内に倒れている。外傷はなく、ドリームイーターを倒せば自然と目が覚めるということだ。
ヘリオライダーは説明を終えた。
「ドリームイーターは自分の武道の真髄を見せたいと考えています。しかし、心血を注いで編み出した武術で人を傷つけるなど、決して見過ごせないのであります!」
どうか力を貸して欲しいと、秋津彦は頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
岬守・響(シトゥンペカムイ・e00012) |
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612) |
リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612) |
一之瀬・瑛華(ガンスリンガーレディ・e12053) |
除・神月(猛拳・e16846) |
尾神・秋津彦(迅狼・e18742) |
月島・彩希(未熟な拳士・e30745) |
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948) |
●道場へ行こう!
とある町の一角にある道場は、意外と立派な造りをしていた。
門を目指して移動しているのは8人のケルベロスだ。
「ここが色仕掛拳の道場だね」
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)は元気な声を出した。
「オカマさんの色仕掛拳――世の中に色々な流派があるのですな」
思わず遠い目をしながら、狼の耳を持つ尾神・秋津彦(迅狼・e18742)は呟いた。
「色香を使い惑わす、というのは非常に有効な手段だとは思いますが……。ちゃんと、品のある色気なのでしょうかね」
10代とは思えぬ艶めいた物腰で武器を構えながら、一之瀬・瑛華(ガンスリンガーレディ・e12053)が呟いた。
「なかなか、着眼点は面白いと思うよ。効果のほどはともかく」
黒狐のウェアライダーである岬守・響(シトゥンペカムイ・e00012)は、クールな視線を門へと向けていた。
「しかしこれに限らず、武術とは悪用される目的で世に放ってはならぬものであります。確実に打ち砕かねば……!」
「そうね。ともあれ、不当に奪われたものは取り返しましょう。狩りの時間」
言葉を交わしながらも、慎重にケルベロスたちは道場の入口へと近づく。
殺意を身にまとって、除・神月(猛拳・e16846)が扉を開く。
「武術の真髄をっていうけど、この拳法って女の子がやらないと真価を発揮できないんじゃ……ううん、武術の道は難しい……っ」
リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)が、首をかしげながらも油断なく武器を抜く。
それなりの広さがある道場の中には、今にもこちらに近づこうとしているドリームイーターの姿があった。
ケルベロスたちは一気に中へと飛び込んで、それぞれに構えを取る。
「イエーイ、ロックなケルベロス参上デス! どんなにロックな武術が相手でもロックさで二番目! 一番ロックなのはボクデース!」
バイオレンスギターの弦を弾きながら、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)が見栄を切る。
そのポーズはロックだった。
ロックだとしか評しようのないポーズは、ある意味で芸術的だと言えたかもしれない。
「ふふ……お客さんね。見せてあげるわ……アタクシの……最高の技を!」
うわごとのように呟きながらドリームイーターもまた構える。
灰色の髪をツインテールにした少女が、大きく息を吸った。
「色仕掛けを用いた武術……変わった武術だけど実力は本物みたいだね。皆、気を付けていこうね!」
月島・彩希(未熟な拳士・e30745)が仲間たちに呼びかける声が道場内に響く。
その声を背に、秋津彦が一歩進み出る。
(「色仕掛拳……オカマさんが使うと聞くと「圧」がすごいであります。とはいえ普通に女性に使われたらと考えると――いえ、戦の前に邪念は禁物!」)
頭を振り、彼はおかしな考えを心から追い出した。
「小生は尾神一刀流。牙の誇りにかけていざ!」
霊威を宿した大太刀を手に、少年剣士は戦いを挑む。
「色仕掛拳の威力……目に焼き付け……なさぁい」
応じたわけではないのかもしれないが、敵もまた流派を名乗る。
それが、戦いの始まる合図となった。
●脅威の色仕掛け
はちきれんばかりに鍛え上げられた筋肉が躍動し、綺麗にくびれた胸筋から腹筋に流れるラインの、女性的な魅力をアピールする。
だが、それはあくまで攻撃の前動作に過ぎない。
わかっていても避けられない速度と、目をそらせない魅力でもって、掌底が響へと襲いかかる。
秋津彦は、素早くその前に割り込んだ。
誘い込まれそうな計算された動きが少年の感覚を惑わせる。
防御の上からでも貫く衝撃と、いたずらっぽく投げかけられたウィンクが、彼の肉体と精神の両方にダメージを与えてきた。
「自慢の技、包み隠さず披露願うでありますよ!」
だが、今日の秋津彦は仲間を守る盾である。望むところとばかりに、彼は敵へと吠えかかる。
後方から飛び出した響が、重力を操って蹴りを放つ……だが、当たらない。
「当たれば儲けものだと思ったけど……やっぱり、スピードを生かした技を当てるのは難しそうね」
「わかってはおりましたが……色物のようでも、油断のならぬ相手というわけでありますな」
呟く響に並びながら、秋津彦は紙兵をばらまいて仲間を守った。
道場内に、ロックのサウンドが鳴り響く。
「ロックなケルベロスライブ、スタートデス! イェーイ!」
シィカは愛用のギターをかき鳴らしていた。
初撃を見ただけで、相手がかなりロックな敵であることがはっきりわかった。
だが、ビビっているわけにはいかない。
あのドリームイーターよりも、シィカのほうがロックなのだから。
「さぁ、ここからはボクのロックなステージデスヨー! みんな、ノリノリで聞いてくださいデース! イェーイ!!」
奏でるその音は、実のところ特別上手ではなかったし、かといってどうしようもなく下手というわけでもない。
ただ、魂だけはしっかりとこもっている。
竜姫の歌は彼女の血脈に宿っているという力を引き出し、シィカを蝕もうとする悪意を遠ざける力を彼女に与えていた。
ロックをリズムが響く中、仲間たちはさらに攻撃を続ける。
「まず敵の足を止めましょうか。……捉えました」
瑛華の装備したパイルバンカーの杭が有効射程を無視して遠距離から敵を貫く。足を止めたところにリディが鋭い蹴りを放ったが、紙一重のところで足の軌跡は空を切った。
「1秒でも早く敵を倒したいからね。ボクは攻撃に専念させてもらうよ」
オウガメタルを全身にまとい、アヤメは後衛から飛び出していった。2人と連携した彼女は、リズムに合わせて鋼の鬼と化した拳で敵を打ち砕く。
「戦闘中に目を逸らすわけにはいかないけど……あまり見たいものでもないかも……」
呟きながら彩希の縛霊手から広がった霊力の網が敵を捕縛していた。
神月が左の掌に右拳を打ちつけた。
「知らねーんなら教えてやるヨ、あたしってばサイキョーなんだゼ!」
気合いを入れた彼女は全速力でドリームイーターに突っ込み、全身全霊を込めてその拳を叩き込む。
限界を超えた打撃で敵がよろめいた。
オカマの攻撃は容赦なくケルベロスたちへと向けられる。
食らっているのは、主に秋津彦と彩希だった。敵の技は見切れるが、見切っていてすらかわしきれない技の冴えを見せていた。
とはいえ、秋津彦の顔色がだんだんと悪くなっているのは、けっしてダメージのはせいではあるまい。
「……やっぱり控え目でお願い致す!」
前言をひるがえしてお願いいたしたところで、無論ドリームイーターが聞いてくれるはずはなかった。
鍛え上げられた太ももを見せつけながら、痛烈な蹴りが少年を吹き飛ばす。
「ホント控えめにして欲しいよね……。相手の攻撃は、正直あんまり見たくないけれど……そういうわけにもいかないんだよね……っ」
リディは秋津彦の言葉に心から同意した。
もっとも、嫌でも見ていれば、相手の拳法の腕が本物だということもわかる。
確かにあれこそが、倒れている彼の理想なのだろう。
見たくないというのは本音だが、拳士としての技も使える彼女としては折角だから拳法で勝負したい想いもやはり、本音であった。
「私も、蹴り技には自信ありだよっ! 今度こそ、当てるからねっ!」
緑色をした長い裾が軽やかに舞い、リディの足が切り裂くように敵を薙ぐ。
一度はかわされたその鋭い脚技は今度こそ敵の体をとらえ、胸と腹の筋肉の間にある急所を痛烈に打っていた。
わずかな時間だけ敵の動きが止まり、その間に仲間たちが攻撃を加えた。
●散りゆく拳
デウスエクスは、ダメージを受けても動きが鈍ることはない。
だが、回復の手段がない敵には、グラビティによる効果で徐々に動きが鈍っていた。
それでも、乱舞する脚から放たれた衝撃は、けして侮れない威力を伴って歌い続けるシィカを吹き飛ばす。
「ロックな衝撃デース! でも、負けないデスヨー!」
跳ね起きた彼女が演奏を再開する。
「衝撃波を繰り出すほどの蹴り技、実力はかなりあるみたいだね」
彩希が言った。
「……それに、なかなか、際どいですね。ある意味、あっぱれです」
瑛華は一度たりともスカートの中にある布地が見えなかったことを確かめて、淡々と呟いた。
ドリームイーターの動きは『性』を想起させるものではあったが、しかしけして品のない動きではない。
子供から大人まで、誰にでも見せられるレベルのもので……だからこそ、誰にでも通じるようだ。
だが、瑛華が見ているのはけして攻撃の動きだけではなかった。
初手からずっと敵の足を止める技を使っていた彼女は、格闘家の回避能力が十分に低下していることを確かめた。
(「それでは、わたしも少し接近戦を楽しませていただきましょうか」)
ゆったりとした足取りで1歩、2歩と進んで機を計り……次の瞬間に、瑛華はドリームイーターとの距離を詰めていた。
つかず離れず格闘戦を繰り広げているリディの横に滑り込む。
「お邪魔いたしますね。わたしも、そこそこ得意なんですよ」
口の端をあげて微笑む。
同時に、細身の足が閃いて、敵の側頭部を鋭い蹴りが切り裂く。
「綺麗な技だね。私も、負けてられないなっ。行くよ、ハピネス!」
リディがオウガメタルをまとい、続いて鋼の鬼の拳を叩き込む。
その時にはすでに、瑛華は再び距離を取っていた。
しなだれかかるような動きで神月に近づいてきた敵の手に、彩希のボクスドラゴンであるアカツキが代わりに受ける。
締め上げられたサーヴァントは、これまでにも何度か攻撃をかばっていたこともあり、そのまま板張りの床で動きを止めた。
「アカツキ!」
彩希の声が響く中、ドリームイーターは1挙動で跳ね起きる。
アヤメは跳ねた敵に向かって距離を詰めていく。
防御や回復は仲間に任せて、ただひたすら敵を狙い、打撃を加えていく。
見切られてもかわしきれないほどの技は、元となった彼がそれだけ研鑽を積んできていた証であるように思われた。
「んー……真面目に何かを極めようとする姿勢は尊敬に値するよね。まあ、見てくれは気にしない方向で……」
元気いっぱいな見た目に反して、アヤメの本質は冷静だ。
敵を認めつつも、その動きに感情が入ることはない。
敵の眼前でオラトリオの翼を広げて、少女は幻惑しながら飛翔する。
響の刃が空の魔力を帯びて敵を切り裂き、他の仲間たちからの攻撃が続く。
その間に、アヤメは死角へと移動していた。
「白雪に残る足跡、月を隠す叢雲。私の手は、花を散らす氷雨。残る桜もまた散る桜なれば……いざ!」
翼の推力を加えて急降下、螺旋の力を敵に叩き込む。
鮮血が燐光と共に飛び散り、花のごとく舞った。
ドリームイーターの姿はすでにぼろぼろになっていた。
それでも、限界に挑むかとごとくにただ攻撃を仕掛け続ける。
彩希は恋人に握手をせがむように差し出された手を思わず取ってしまっていた。
そのまま、流れるように転がされ、関節を痛めつけられる。
とはいえかかりかたは浅い。苦痛をこらえて太い腕を外すと、彼女は転がりながら起き上がる。
「大丈夫でありますか、彩希殿」
「うん……まだまだ、やれるよ!」
努めて明るい声を出し、彼女は秋津彦に答えた。
「けど……わたしもこの武術を覚えたら少しでも魅力的に見えるのかな?」
一瞬だけ漏れてしまった小さな声のほうは、幸い仲間には届かなかったようだ。
「でも、無理はしないで欲しいデース! これ以上は誰もやらせません。それがロックなケルベロスのお仕事デース!」
シィカも声をかけてきながら、彩希に心霊手術を施してくれた。
敵ももう限界は近いはずだ。
負けるわけにはいかない。
「たたみかけるであります! この一太刀、霊峰より吹きし膺懲の風なり!」
梵字の刻まれた太刀を一度鞘に収めて、秋津彦が一気に抜刀する。
刃にこめた魔力が、敵の肉体を虚空で蝕む。
蝕まれているその場所を狙い、彩希は手刀を作った。
「もっと速く……ッ! もっと鋭く……ッ! この一撃を!」
冷気を帯びた手刀は狼の牙のように敵へと食らいつく。
二人の攻撃に、リディが続いた。
「幸せを奪う敵は、逃がさない―――!」
敵の動きを見通したかのごとき動きで、リングをはめた拳で強い意志のこもった突きを繰り出す。
さらに瑛華が雪すらも凍てつかせる凍気をまとったパイルバンカーを突き刺し、アヤメの鋼の拳が氷を砕きながら貫く。
神月も敵を殴り飛ばしていた。
「まだ……よ……。アタクシは……負ける……わけには……」
壊れた機械のように、途切れ途切れにドリームイーターが声を出す。
キスをせがむように目を閉じて、オカマがリディに迫る。
だが素早く繰り出した脚が鋭く急所を打ち、攻撃を相殺する。
響は、1歩後ずさった敵とリディの間に割り込んだ。
「荒れ狂え、天翔る蛇! 遍くウェンカムイを灰燼と化せ!」
少女の身に雷神の力が宿る。
振り上げる大鎌は、悪しきカムイの宝刀を打ち直して鍛えた業物だ。
触れる者に禍をもたらすという刃は、神速を得てドリームイーターへと迫る。光輝が尾を引いて、黒狐が駆け抜けた痕跡を描いた。
腹筋の真ん中から断ち切られたオカマの体が、塵へと変わっていく。
断末魔の悲鳴が、道場の中に響き渡った。
●研鑽の時
ドリームイーターの姿はほどなく消え去り、静寂がその場に戻った。
「無事、片づいたね」
「そうだね、奪われたものは戻ったはず」
元気なアヤメの言葉に、響はまだ倒れている被害者に目を向けた。
「恐ろしい相手でありました……」
「秋津彦くん、疲れさまだねっ♪」
心なしかやつれてほっそりとした様子の秋津彦を、リディがねぎらった。
「道場がだいぶ壊れちゃったね……。武術家さんは大丈夫かな?」
彩希の視線の先でオカマがゆっくりと身を起こした。
軽く息を吸ってから、彼女は一気に近づき、彼を介抱する。
「大丈夫デース! ボクのロックが道場も武術家さんも、まとめて治しマース!」
シィカのギターが鳴り響き、道場が再びにぎやかになった。
「あなたたちは……ケルベロスなのねェん。助けてくれて嬉しいわぁ……」
弱々しい声でオカマは礼を言う。
「今回は災難でしたわね。でも、事件は終わりましたわ。頑張って、上品な武術に磨き上げてくださいね」
瑛華が優雅に声をかける。
「わかってくれるのね……ありがとう。アタクシ、きっとオカマの道を極めて、武術を完成させて、皆さんにお見せするわ!」
感涙にむせぶ彼を、きっとケルベロスたちは本心から応援していただろう。
ただ、見せて欲しいと思った者が何人いたかは、誰にもわからなかった。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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