カップ麺はこってりしたカレー味が至高である明王

作者:荒雲ニンザ

 海風きつい、冬場の食品倉庫内で、一匹の黄色い巨鳥が羽根をバタつかせて埃をまき散らしていた。
「何故カップメェェェンにカレー味以外のものがあるのか!? カップメェェンはこってりとしたカレー味が至高であり、他の味なぞ言語道断!」
 そのビルシャナの隣で、ぐるぐる眼鏡をかけた黄色いタイトスカートの女性が頷いており、何やらボード片手に倉庫内の製品チェックをして、壮大に赤丸をつけていた。
 目の前に積み上げられた箱には『カップメェェンこってりカレー味』と書かれている。
 他、男女併せて黄色いシャツとハチマキの9名ほどが、細かい拍手でビルシャナを讃えており、その場からターメリックな香りが漂っていた。
「これから寒さがきつくなる。手早く暖かいカップメェンが必須だ。しかし他の味のメェンではパンチが足りない! 寒さを乗り越えるには、やはり内蔵からのカレー力!」
 カレーカではない。カレーヂカラ。
「滅ぼしてしまえ、他のメェェンなぞ!」
 黄ハチマキからウオーと声があがり、更に拍手は細かくなる。
「カレーヂカラ! カレーヂカラ!」
「まずはここ一体の倉庫に保管されている、他の味カップラーメンどもを一掃してやる!」
 と、倉庫のシャッターが開けられた。
 高く積み上げられた箱には『しょうゆラーメェェン』『塩ラーメェェン』『こってりとんこつラーメェェン』……他にも様々なカップ麺の姿が。
 それを見たぐるぐる眼鏡の女性が、いらだちながらチェックシートにバツをつけていく。
「砕け散れ! その他の味!」
 ビルシャナの声と共に、バリバリボリボリ、一斉に破壊が始まった。

 言之葉・万寿(オラトリオのヘリオライダー・en0207)とチャールストン・ダニエルソン(グレイゴースト・e03596)が微妙な顔で待ち受けていた。
「ダニエルソン様が、とあるビルシャナ事件の尻尾を掴んで参りましたぞ」
「いつも通り、といったビルシャナですが、ちゃっちゃと片付けましょう」
 今回の事件は、『カップ麺はこってりとしたカレー味が至高』という主義主張により、ビルシャナ化してしまった人間が、『他の味のカップ麺とそれに関わる人々』を襲撃する事件が起こるので、それを解決してほしいというものだ。
「このビルシャナは手始めに、自分が勤めている会社の商品をダメにしようと、自社の倉庫を襲撃するようですな。そこに向かって、ビルシャナを倒して下さい」
 このビルシャナには、彼の主張に賛同している一般人の配下が10名いる。
 10名の配下であるが、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、戦わずして配下を無力化する事ができるかもしれない。
 ビルシャナの配下となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加する。
 彼らはビルシャナさえ倒せば元に戻るので救出は可能だが、配下が多くなればそれだけ戦闘で不利になるので注意が必要だ。

 戦闘場所は『カップメェェン』で有名な伸代食品の倉庫。
 倉庫だけの地区なので、それ程人はいないが、他の会社の倉庫も並んでおり、そこに勤めている人がそれぞれ出入りしている。
 配下10名は会社の同僚で、カレー色をしているので見ればすぐ分かる。
「中でもぐるぐる眼鏡の女性が右腕のようで、カップ麺のカレー製品に対する厳しい目は相当のようです。他のメンバーは『カレーが好き』『腹持ちがいいのが重要』『辛い物好き』といったライトなものですが、ぐるぐる眼鏡の彼女は仕事に対するプロ意識が強く、一筋縄ではいかない様子。カップ麺カレー味を違った側面から崩すことも考えておいた方がよいかと思いますぞ」
 とはいえ、ビルシャナさえ倒せば配下は助けることができるので、うっかりとどめを刺さないよう、説得がうまくいかなかった時の対処法も考えておくのがいいだろう。
「配下の一般人は、ビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのはインパクトとなるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれませんな」
 万寿が資料を閉じると、チャールストンが立ち上がる。
「じゃあ、行きますか」
 がんばろう。


参加者
藤・小梢丸(カレーの人・e02656)
スヴァルト・アール(エリカの巫女・e05162)
ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)
カティス・フォレスター(おひさま元気印・e22658)
阿久根・麻実(売星奴の娘・e28581)
チャダール・シンヨーガ(インドからの刺客・e31668)
地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)
マナ・ティアーユ(エロトピア・e39327)

■リプレイ

●潮風に勝るカレー臭
 北からの海風にさらされ、アスファルトから鉄骨から、冷えに冷え切った食品倉庫。
 何事が始まるのだという表情の職員達に避難誘導をしているのは、チャダール・シンヨーガ(インドからの刺客・e31668)だ。
 インド人の彼は、とてつもないカレー的な関係者に見えたのだろう。元々人数の少ない倉庫の職員達は、言われるままあっさり避難してくれたので、その一画の人払いはたやすく終わった。
 そしてチャダールは横一列に並ぶ7人の仲間達に加わると、クセのあるポーズでその場に立つ。
 開いたシャッターの向こうに、黄色い巨鳥のビルシャナと10人の手下が見える。
「アーン!? 何です貴方たちは、ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ!?」
 7人の中央で最も目立つ、通りがかりの人々から『ウワッ』と言われそうなコスチュームに身を包んだ藤・小梢丸(カレーの人・e02656)が、手刀を高く天に上げた。
 背後でいきなりの爆破。無論、爆色は黄色。
 おおっ、と場が騒然となり、ビルシャナと配下が身構えた。
 黄金の仮面に『カレーの人』の文字が窺える。黄金のジャージに身を包んだ小梢丸その人は、爆煙をバックにスローモーションで優雅に歩み寄る。
「いや、だから! 誰だよお前らは!?」
 憤慨するビルシャナに、小さな地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)が苦笑いしながらコソッと教えた。
「あ、僕たちケルベロスです……」
「ナニィ!? ケルベロスが何の用だ!?」
 ザワッとざわつく配下の面々。
 その黄色ハチマキ達を説得すべく先陣を切ったのは、ビハインドのタマオキナを従えたカティス・フォレスター(おひさま元気印・e22658)だ。
 彼らの足下に散乱した『カレー味以外のカップ麺』に視線を落とし、静かに怒りの火を燃やして言った。
「何故他の味のラーメンを滅ぼしてしまう必要があるのです?」
「アア!? そんなもん、カレー味のカップ麺がこの世で最も美味いからに決まってんだろ!」
「例えばあっさり醤油味とカレー味を合わせた和風カレー、こってり豚骨味とカレー味を合わせた更にこってりカレー。カレーの基本は香辛料と隠し味とのブレンド。そうして新しい味を生み出す可能性もありますのに、その可能性を全て踏み潰し、普通のカレー味のみを残しているわけですが、その辺りどうお考えでしょうか」
 そこで一人の黄色ハチマキの女性が返した。
「まあ、アタシ、カレーが好きなんで。そのあたり特に、別に、考えてないというか」
 おい! と他の黄色ハチマキが咎めると、背後からもう一人同じ傾向が賛同した。
「オレもどっちかっつーとカレー好きなだけだなあ。腹減った時に手早くて、まあ、他のカップ麺よか『食った!』って気になるし?」
 信者二人が『ダヨネー』と頷きあっていた所、『今だから言うけど』的な人物も一人。
「まあ、それ言われたら、オレも辛いモノ好きだから、カップ麺食う時はカレーってだけだしな」
 信者の中でもライト中のライトの意思が速攻でフラつき、ビルシャナの怒号が倉庫内に響き渡る。
「貴様ら! そんなだから世界のカップの中身をカレー麺で支配できないのですよ!」
 ヒッと縮こまる信者達に、カティスは鋭く切り込んだ。
「カレーが好き? 腹持ちがいい? 辛い物好き? 信者の皆様、カレーライスという食べ物があってですね。ラーメンよりも腹持ちいいですよ」

●ラァァイス
 カレーライスだと?
 この場で最も触れてはいけない『米』がいきなり来てしまった。
 信者が怯える中、ビルシャナに口を開かせる前にジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)が滑り込む。
「白米の用意は済みましたかぁぁァッ!!?」
 脇に抱えたおひつには、銀シャリがキラキラと輝いて見え、信者たちは思わずその白さに目を奪われた。
「カレー味のカップ麺はスープまで飲まねばなりません! そうしないとカレーライスの足元にも及びませんからね! だからこそ白米!」
 ここで数名が完全に落ちた。やはり米にはかなわない。
「オレ、飯も好き!」
「アタシも!」
「麺、食い~の、カレ~リゾット食い~のとか、一度で二度美味しい、最高の極み!」
「これなら腹もふくれるわー!」
「カップ麺は麺を食べた後に米を入れてカロリー増し増しにできるから最高なんですよ!! 休日ならニンニクも入れますね!」
「え、ニンニク入れちゃうの!? マジ美味しそうー! アタシもやってみよ」
 ボロボロ脱落するライト信者。あっという間に半数になり、かろうじて踏みとどまる4名を前に、断固たる意思のくるぐるぐる眼鏡がにらみ付けてきた。
「貴方たち、麺のスープは麺にあうように開発されているのを知らないの? カップ麺のスープに米を入れても、『それなり』にはなっても、人を感動させる味にはならなくてよ……!」
「まあ、それなりでも」
 サラッと崩したのはマナ・ティアーユ(エロトピア・e39327)だ。ビハインドの真夜が横で微笑んでいる。
「そこの貴女! それなりでいいって……どういうこと!? ちゃんと説明なさい!」
「カップ麺ですし。美味しいモノ食べたかったら他のモノ食べますし。そもそも辛いものはあまり好きじゃないんですよね。寒いと温かいものが欲しくはなりますけど、別にカレー味じゃなくてもいいですよね」
「何を言ってるのか分からないわ! こってりとしたカレー味が麺にからむことに意義があるのに、この企業努力を横から出てきた米で解決しようだなんて邪道でしょ!」
 ビルシャナが大いに羽を羽ばたかせ、右腕の反撃に手を叩いている。
 ここでジュリアスが受け返した。
「カレー醤油にカレー塩、そして豚骨カレー味のカップ麺を開発していない貴方がたに他のカップ麺を潰す権利は無いですね! ちなみに、個人的にはカレー醤油ラーメンがお勧めです。昨今はカレー用の醤油もありますしね」
 新製品に興味をそそられた数名に目星をつけ、小梢丸が押しに入る。
「そもそもカレーといったらライスだろう! もう、いっそ米を食え! こってりしたカレーが美味いのには激しく同意だが、麺なんか啜ってる場合じゃねえ!」
 言うや右手に何やら即席のカップ類を取り出し、ビャッとフタを投げ捨てる。
 ご飯だぁ~! しかもカレーが乗っかっているぅ~! こここれはカレーライス……即席カレーライスのカップだぁぁ!
 その場から完全に麺の存在が消えた。
 しかし、黄色ハチマキ達の大半はそれを大喜びで迎え入れたのである。
 ここの所、ビルシャナの意向で疑う様子もなくカレー麺ばかり食べていた黄色ハチマキ達は、違うカレーを見て目が覚めた。
 カレー好きにしか分からないことがある。カレー好きは、とにかくカレーという存在が大好きなのだ。
 麺であれ米であれ、カレー味であればそれでいい。
「カレー好きにはたまらないし、腹持ちもいいし、スパイシーチキンなやつはめっちゃ辛いし、信者の方々も大満足! 僕もカレーライス的なものが食べられてニッコニコ!」
 一気に信者がライスにつられたのを見たビルシャナが慌てて止めようとしたが、小梢丸のドロップキックを避けて舌打ちをした。
 その瞬間、正気に戻った信者達の目に真実が宿る。同僚の甲田だと思っていた男がビルシャナに写り、彼らは悲鳴を上げながら逃げて行ったのだ。

●企業努力とプロ意識
 ここで残ったのはビルシャナの右腕。コアなぐるぐる眼鏡の女のみとなった。
 ビルシャナがフンと鼻を鳴らす。
「どうせコイツらは食えれば何でも良い奴ら。学校を卒業してそのまま入社したような輩どもに、この崇高な信念を維持できるとは思ってないですし。だが彼女は違う。カレー味のカップ麺を作るために生まれてきたような女性に、お前達の口先だけの言葉が通じますかね?」
 ピリピリとした空気を割って入ったのは、儚い雰囲気を身にまとう夏雪であった。
「カップ麺はお手軽に食べられるのが良いですよね……。仕事着のままでも食べる事ができるので、忙しい方にも優しい食べ物です……。お湯さえ準備できれば、こんな感じで倉庫でも気軽に食べられます……」
 しかし、お湯があれば麺をふやかせたが、ここは倉庫の中でそれがかなわない。米は炊いた物を持参すればよいが、お湯はそうはいかない。どのように準備するべきかを考えるべきであったが、ここは機転を利かせて想像で乗り切ることにした。
 想像の中でホカホカと暖かいカップ麺カレー味のフタを開け、想像の中で麺をそそる。
「あっ……!」
 そこで急に手を止めたので、瞳を潤ませる夏雪にマナが声をかけた。
「どうしました?」
「啜った時に……カレースープが跳ねて白いケルベロスコートに染みが……」
 嗚呼……あるある。
「うぅ……。カレー味自体は美味しいですが、こういう時は汁が飛んでも目立ちにくい塩味の方が嬉しいです……」
 例え想像でも、お気に入りの服を自分で汚してしまった悲しさで涙目になる夏雪。それにクッとぐるぐる眼鏡が歯を食いしばる。
「現時点の企業努力では、麺とカレーがハネる悩みは解消されていない……」
 何やら重い空気で背を丸める彼女に、ビルシャナからの励ましが。
 一方、夏雪の持つカップ麺の中身を、上から覗いたチャダールが悲鳴を上げた。
「オゥ……コレが麺カリー? ノォーーーーッ!?」
「な、何だ貴様いきなり……!?」
「この麺カリー駄目! これがカリー味なんて笑わせてくれるヨ! 麺カリーを称賛するなら、もっと醍醐味であるカリーの真髄を学ぶべきネ!」
 そして筋肉が絞られるほどくねったポーズをつけてから、人差し指を思い切りぐるぐる眼鏡に向けてきた。
「例えばインド人、カリーに使う肉に、魚とかも好んで入れるのヨ! 中でもワタシがオススメするインドでもポピュラーな家庭料理、ハリーーームッ! 粥に近い食感とトロトロに煮込んだ牛はナンだけじゃなく、当然麺にも合うヨ!」
「な、何をバカな……、そんな本場の味を取り入れては、こってりカレー味がメチャクチャになってしまう……! ここはあくまでも大衆向けに……」
 パンパンと手が叩かれ、スヴァルト・アール(エリカの巫女・e05162)が前へ出た。
「カレーばっかじゃ飽きるし、そもそもカレー味は後発商品でしょうに。しょうゆや塩やみそがあってこそのカレーですから!」
「そこの女、何を言う!」
「貴女、カレーを追求していらっしゃるようですね。カシミールチリなどの国内では手に入らないスパイスを用いたカレーの味を知らない御様子。カレーを語るには本場の奥深さを知らなければね。隠れた名店系で本場に味を提供している所などいくつかデータがありますが、ご興味があればお連れしましょうか?」
 マナが首を横に振る。
「至高というわりに、辛いものが食べれない人のことを考えてないみたいですし、ムリですよ、きっと」
「ウッ……! か、辛さはとろみで温和されているは……ず」
「食べる人によっては、スープにご飯を入れちゃうじゃないですか。カロリーという意味では女性の敵なのに、その辺りも企業努力が足らないようですし……」
 マナが容赦なくボコボコにし、スヴァルトがたたみかけた。
「てか自社製品を潰すって正気の沙汰じゃないですよね。カレーを追求しようにもスパイスは金かかりますし、給料入らなかったらそんなことも言ってられないでしょう。他部署であっても自社製品を知ってその上でカレー味の追及をすべきですよ。それ『だけ』で、他を排するのは愛とは言えません」
「キャアアアア!!」
 プロ根性にヒビが入り、そして眼鏡にもヒビが入り込んだ。

●黄色い情熱
 倉庫の床に倒れ込んだグルグル眼鏡に、慌ててビルシャナが駆け寄った。
「大丈夫だ! こんなことでくじけるな! お前がどれだけこってりカレー味の麺の開発に情熱を注いできたか、私は知っている! 美味いカップ麺を作るんだろ! それがこってりカレー味だったはずだ……!」
 ビルシャナとぐるぐる眼鏡の横で、バリボリと妙な音が響いているのに気がついた。
 視線を向けると、そこには砕け散った他のカップ麺をそのままボリボリ食べている阿久根・麻実(売星奴の娘・e28581)の姿が。
「食べ物を粗末にしてはいけません。カレーとはインドから生まれたスパイス料理の総称です、人は何故スパイスを使い始めたか? それは腐敗防止であり、臭い消しであり……たとえ良くない食材でも美味しく食べるためです」
 しょうゆ味、塩味、とんこつ味、一つ一つ拾って口にほおばってゆく。
「そう、カレーは不味いものでも美味しくできるすごい調理なのです。それなのに他の味はいらない? だから滅ぼす? カレーを舐めすぎです」
 そこで小梢丸の持参した即席カレーライスのルーをしゃくると、しょうゆ味の乾麺になすりつけ、ビルシャナとぐるぐる眼鏡の前に差し出した。
「これでもうカレー味です、カレーは全ての食材支配する、即ち他の食材は、カレーの財産なのです、それを滅ぼすとはカレーに対する反逆行為です」
 ガァァン!
「否、カレーならば食材じゃなくとも」
 そう言い、容器にまでカレーをなすりつけて口に放り込んだ麻実の潔さに、ぐるぐる眼鏡は音が聞こえてきそうなほどショックを受けた。
 カレーという強烈な味に甘えていた自分を悟り、彼女は正気に戻ることができたのだ。
「キィィサァァマァァラァァァ!!」
 ライト9名の信者はさておき、右腕をもぎとられたビルシャナがついに怒りで立ち上がり、両羽根でカレー臭をまき散らしながら襲いかかってきた。
「キサマらなんぞ、3分でしとめてやる!」
 夏雪が背後を庇うように前へ飛び出し、その風圧を受け止める。
 続いてスヴァルトとジュリアスが斬りかかり、一撃をたたき込むと小梢丸と入れ替わった。
「インド洋に沈め!」
 大器晩成撃の氷が周囲を白く染めた所へ、麻実のハウリングフィストがそれらともども敵を吹き飛ばす。
「グアア……そ、そんな、コイツら……強……ぃ!」
「覚悟してください……少しばかり痛いですよ?」
 カティスに続き、タマオキナがポルターガイスト、チャダールがキレのある角度から我ガ口臭ハ祖国ノ味をまき散らすと、周囲はカレー色に染められた。
「ジパングカリーの諸悪の根源であるコノビルシャナは成敗! ヒョオォォーーーーインディラッパワーーーーッ!?」
 黄色い空気を割って放たれたマナのホーミングアローがビルシャナの胸を射抜くと、彼女を庇って浮遊する真夜が、戦いの終わりを察して構えを解く。
 黄色いビルシャナはカレー粉のような粉末になり、そのまま爆発すると黄色い煙幕となってケルベロスたちの背後を飾った。
 海辺の食品倉庫に、8名のシルエットがこってり浮かび上がる……。
 こうしてこの事件は幕を閉じた。

作者:荒雲ニンザ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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