●破壊されたデッキに……
ぬいぐるみ、切手、メダル、模型……。
コレクションというものは人によって、様々なものが対象となる。収集要素の強いTCG……トレーディングカードゲームのカードなどは、少年が目を光らせて集めてしまうものの一つである。
それは、ファンタジー色の強い某カードゲーム。1対1で行うターン制のバトルが卓上で展開され、デッキ……バトルの為に組んだ手持ちのカードがなくなった相手のキャラを、全て倒せば勝ちというものだ。
「うーん、もうちっと、デッキいじりたいけどなあ……」
中学1年生の少年、今村・魁は自宅にある自分の部屋で、自身の組んだデッキを眺めつつ考える。
TCGは絶妙なバランスで作られている。限られたデッキの枚数では戦略に制限があるが、如何にして戦略幅を広げてデッキを強化するか。それがゲームの楽しみなのだ。
そんな魁の後ろに現れた、2人の人影。
1人は赤い帽子の人馬。そして、1人は骨とマントのみを纏う露出度の高い女性。いずれも胸元にモザイクが見える。
前者は第八の魔女・ディオメデス、後者は第九の魔女・ヒッポリュテと呼ばれる、「パッチワークの魔女」達だ。
2人は手にする鍵で、その場のカードを切り裂いていった。 少年にとって大切なカードが、形を失っていく。
「あー、あーー……!!」
愕然とする少年。そして、彼はすぐにカードを台無しにした女性達を睨みつけ、声を荒げる。
「ざっけんなよ、なんてことしや、が……」
叫ぶ魁の胸に2本の鍵が突き刺さった。外傷はないものの、彼はがっくりとその場に倒れこむ。
この行為は魔女……ドリームイーターが人間の夢を得るための行為。彼女達はニヤリと微笑む。
「私達のモザイクは晴れなかったねえ。けれど、あなたの怒りと……」
「オマエの悲しみ、悪くナカッタ!」
倒れる魁のそばには、新たな2つの人影が生み出される。それらは、カードゲームに出てくる戦士と魔法使いのキャラにそっくりだった。
「貴様ら、許さないぞ……!」
「こんなことになって、残念です」
生まれた新たなドリームイーター2人は怒りと悲しみの言葉を口にしながら、家の外へと飛び出していったのだった。
パッチワークの魔女達による事件がまた一つ、予見された。
「大事にしていたTCGデッキを破壊された少年がいるそうデスネ」
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)のそんな一言を受け、ヘリオンで予知をしていたリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)。
それが終わる頃にはヘリポートにケルベロスが集まっており、ヘリオンを降りたリーゼリットはそのまま説明を始めることとなる。
「怒りの心を奪う第八の魔女・ディオメデスと、悲しみの心を奪う第九の魔女・ヒッポリュテの2体だね」
この2体の魔女はとても大切な物を持つ一般人を襲い、その大切な物を破壊し、それによって生じた『怒り』と『悲しみ』の心を奪ってドリームイーターを生み出すようだ。
「生み出されたドリームイーターは2体1組で行動し、周囲の人間を襲ってグラビティ・チェインを得ようとするようだよ」
今回は女魔法使いが『物品を壊された悲しみ』を語り、それを理解できない者を男戦士が『怒り』でもって殺害してしまうらしい。
「周囲の人間を襲って被害を出す前に、この2体のドリームイーターを撃破して欲しいんだ」
討伐すべきは、男戦士、女魔法使い風のドリームイーター2体のみで、配下などはいない。
それぞれ言葉を喋るようだが、自身の悲しいや怒りを表現することしかできないようだ。
「戦士は両刃の剣を、魔法使いは杖を握って魔法を使ってくるようだよ」
戦闘では、怒りのドリームイーターがクラッシャー、悲しみのドリームイーターがキャスターとして連携して襲い掛かってくる。ほぼ攻撃一辺倒で攻めてくる相手だ。
「場所は、群馬県某所の住宅地だね」
休日の昼間に現れる2体の夢喰いは被害者宅近辺を徘徊しており、出会った者へ悲しみと怒りをぶつけて手にかけようとする為、早めに対処したいところだ。
予知情報を話し終えたリーゼリットは、少し言葉を止めて考えてから言葉を続ける。
「トレーディングカードか。集めると楽しいものなのだろうね」
楽しさを全てぶち壊された少年。その悲しみと怒りは計り知れない。
彼は自宅の自室にて倒れたままだ。ドリームイーターを倒した後で目覚めるはずなので、出来る範囲でフォローをしてあげて欲しい。
「それでは行こう。ドリームイーターを止めないとね」
彼女は最後に、真剣な表情でそう告げたのだった。
参加者 | |
---|---|
篁・メノウ(紫天の華・e00903) |
目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011) |
小森・カナン(みどりかみのえれあ・e04847) |
パトリシア・シランス(紅蓮地獄・e10443) |
カッツェ・スフィル(黒猫忍者いもうとー死竜ー・e19121) |
猫夜敷・千舞輝(地球人のウェアライダー・e25868) |
天羽生・詩乃(夜明け色のリンクス・e26722) |
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624) |
●カードゲーマー激おこ
群馬県の住宅地。
ドリームイーターの出現を受け、女性ばかりのケルベロスチームはその討伐の為にやってきていた。
「高レアカードを破るとか、ふてぇ野郎っすね!」
ネットもゲームも大好きな小森・カナン(みどりかみのえれあ・e04847)は、シャーマンズゴーストのぶろっこりーの背中にしがみつきつつ語る。
「ひどいことをする。新しいカードを買えばいいって話じゃないんだぞ」
八重歯を煌かせて力説する篁・メノウ(紫天の華・e00903)もまた、カードゲーマーだと言う。
だからこそ、被害者の少年の悲しみや怒りにも、メノウは共感していたのだ。
「何でもそうだけど、特に自分が集めてる物や好きなものを奪われるのは許せないよね」
人派ドラゴニアンのカッツェ・スフィル(黒猫忍者いもうとー死竜ー・e19121)はメノウを見ながら呟く。
「ワタシはカード勢では無いのデスガ」
貴婦人風な振る舞いをするモヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)。
彼女は以前、推しのコラボカードを鮫トレード……不釣合いなカード交換をすることなく、大体のレートを教えてもらった経験があるとのこと。
「そんな御恩がカードゲーマーの皆様にはあるのデス……」
モヱは感慨深げに、思い出を語る。だからこそ、少しでも恩返しをと彼女は考えているのかもしれない。
「人様の集めとるモンに手ぇ出すとか、不届き千万滅殺案件やなぁ」
セーブデータ消されるものだろうと、ゲーム好きの猫夜敷・千舞輝(地球人のウェアライダー・e25868)もこの一件を捉えており、仲間達に「処す? 処す?」と問いかける。
「オタク寄りっちゅーかこう、ちょっとはやる気出る話かなーって思ったんやけどなー、……胸クソ依頼かぁ。ちくせう」
それはそれとして、千舞輝はカードゲームをやるなら、テレビゲームやアプリなどでやるそうで。
「ほら、特にネトゲやったら、遠くの知り合いとも手軽にバトルできるやん? ええやん? ……え、聞いてへん?」
マイペースに自身の主張をする千舞輝は仲間達の同意を得られず、困惑していたようだ。
「ドリームイーターのやる事は、やはり悪趣味だな」
男性に似た容姿の目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011)も、お気に入りの持ち物を壊されたら、正気を保っていられないのだろうなと考えて。
(「……倒したとして、解決できるか?」)
果たして、精神的に傷つく少年を癒すことはできるのだろうかと、真は首を傾げてしまうのだった。
住宅地を歩く一行は、サーヴァント6体合わせて14人の大所帯だ。
煙草をくわえたパトリシア・シランス(紅蓮地獄・e10443)の主張もあって、メンバー達はポジション、作戦のすり合わせを行う。
纏まって進むメンバー達の前に物陰から姿を現したのは、ファンタジー風の男戦士と女魔法使いだった。この2人こそ、カードを裂かれた少年の怒りと悲しみより生み出されたドリームイーターである。
「聞いてください、この悲しみを……」
「せやな、大変やな……」
カードを失った悲しみを口にしてくる魔法使いに千舞輝は悲しみに同意しつつも、視界に見える通行人の避難へと向かう。
「カード発動! ケルベロス! 対象のデウスエクスを全て破壊する! ……って感じっす」
逆に、ぶろっこりーの背から離れたカナンが叫びかけると、戦士が前に出てきて怒りを露わにする。
「許さないぞ!!」
金属音を立て、戦士は両刃の剣を抜く。
それに、天羽生・詩乃(夜明け色のリンクス・e26722)が毅然と対して。
「大事にしていたカードだけではなく、そこにかけた気持ちや試行錯誤した沢山の時間……。あなた達は沢山の物を彼から奪った」
詩乃はドラゴニックハンマーを取り出し、目の前の相手ではなくそれを生み出した魔女達に対して叫びかける。
「その上、彼のカードまで奪おうとするなんて、そんなの、絶対に許さないよ!」
小柄な詩乃だが、軽々とハンマーを振り回して夢喰いへと襲い掛かるのだった。
●集中攻撃で各個撃破!
夢喰い2体が露わにする感情は、怒りと悲しみ。
「絶対、許さんぞ!」
「こんなの、悲しいですよね……」
目の前の戦士と魔法使いはそれぞれの感情を口にしながら、悲しみに共感を見せないケルベロス達へと攻撃を仕掛けてくる。
それより、少し速く動いた詩乃はまずドラゴニック・パワーで噴射し、加速させたハンマーを戦士目掛けて叩きつけて行く。
「1体1体、確実に潰していくっすよ。二兎を追う者は一兎をも得ず。っす!」
続いて、カナンも戦士を狙う。敵の動きと自身の攻撃手段を考え、風の流れを自在に操ることにする。
「緑の風の鎖がお前らを縛ってやるっすよ!!」
風を鎖状にしたカナンはそれで戦士の腕、足に巻きつけて動きを封じようとする。同時に、風は刃ともなって相手の体を切り裂く。
戦士は見えぬ風に抗いながらも、手にする刃を回転させて。
「この俺の怒りを知るがいい!」
発生させた竜巻はそのままカナンを狙っていくが、ぶろっこりーがしっかりと受け止めてくれ、反撃に原始の炎で相手を燃やそうとする。
「カナンは固そうな戦士カードは、場から除去するカードでホイッとやっちまうタイプっすが……」
ただ、それは戦士の身を焦がしただけに留まっていた。
「今回は、対象を除去する系の効果は効きそうにないっすねー」
やれやれと、カナンは嘆息しつつ立ち回る。
その後方からは、パトリシアのライドキャリバーも炎を纏い、唸りを上げて戦士へとタックルを繰り出していた。
「とっとと孤立させて叩くわよ」
無駄にシャカパチとジッポを鳴らすパトリシアが敵の奥、魔法使いに目を向けると、そいつは軽やかに戦場を動いて攻撃の機を窺っている。
攻撃と要だと自身を位置づけている彼女は、敵をしっかりと観察しつつも、銃を抜いて焔の魔力を込めて行く。
「燃え上がれ、悲しみを焼き尽くせ」
グラビティとして発動させた弾丸をパトリシアが発射すると、戦士の纏う鎧を穿ち、燃え上がらせた。
「コレで麻痺してくれればイイんだが」
同じく、真も後方から携行型兵器システム「Stigma Ⅲ」を展開させて。
「砲門開放確認。ファイエル!」
真の叫びと共に一斉発射された主砲は戦士の体に撃ちこまれ、そいつに痺れを見舞わせる。ナノナノの煎兵衛もハート光線を飛ばして援護し、その痺れを強めてくれていたようだ。
「残念で、なりません……」
そこで、悲しみの言葉を口にする魔法使いが杖を振るい、圧縮した空気を飛ばす。狙ったのは、後方のメノウだ。
「ここで、カッツェのカードを発動だよ」
飛び出したカッツェが仲間を庇って盾となる。
そして、カッツェはドイツ語で黒猫と刻印された鎌を振るい、氷結の螺旋を飛ばす。やはり、狙いは仲間と同じく戦士だ。
「お、竜の盾カッツェだ! その鱗は呪われているぞ! 本人も気にしているらしい」
そのタイミングで、メノウがカッツェのカードに反応し、それに書かれてそうなフレーバーをでっち上げてみせる。なお、チームの回復役として、メノウは仲間を地面に描いた守護星座で包み込んでいたようだ。
「フレーバー、デスカ」
仲間達のやりとりに耳を傾けつつ、モヱは雷の壁を自分達の手前に展開する。
そして、そのモヱのミミック、収納ケースがエクトプラズムで作り出した武器で殴りかかった。一見すれば、プラスティックの容姿のどこに、金属のような武器が入っていたのかと思わせてしまう光景である。
「やる気でぇへんなぁ」
ぼやく主の千舞輝を、前線で守りにつく翼猫の火詩羽が蹴りつける。
千舞輝は仕方なく寝ぼけるような動きで戦士目掛けて飛び込み、流星の蹴りを喰らわせていった。
「おのれ……!」
集中攻撃を受ける戦士は、怒りの形相で同じ言葉を並べるだけ。
そして、その怒りをケルベロスにぶつけるべく、刃を水平に放って波状攻撃を繰り出してくるのである。
「俺の怒りをくらえ!」
「……せめて、この悲しみを分かち合えたなら」
戦士はただ怒りを燃え上がらせて剣を振るい、魔法使いは悲しみにくれながらも魔法を放ってくる。
「カードには、ユニットの簡単なキャッチフレーズが書かれているモノもあるようデスガ、それを読み上げているだけ……といった印象デスネ」
モヱはある程度、サブカルチャーに造詣が深いらしい。相手にそんな印象を抱き、彼女は自身や仲間に対して回復に当たる。
「データサポートを行いマス」
敵は様々な状態異常を仕掛けてくる。矢面に立つモヱは仲間の状態を気にかけ、仲間に時空魔術をかけることで、万全な状態への巻き戻しを行っていた。
ただ、繰り返しにはなるが、今回のチームはサーヴァントを頭数に入れれば、14人もの数がいる。
それを存分に活かし、攻め行くメンバー達。
すでに戦士は肩で息をし、その存在がモザイクでかすれつつある。
「次の攻撃の前に、一気にいくわよ」
シャカパチとジッポを鳴らしつつ攻め入るパトリシアは仲間に呼びかけ、黒色の魔力弾を発する。
「ゲームの絵柄なんだったら、とっととゲームに帰りなさい」
「もう許さないぞ!」
魔力弾を受けた戦士が両刃の剣を振り上げる。
「それはどうかな?」
だが、カッツェはそれをさせじと、尻尾の竜鱗に呪詛を纏わせて。
「死に誘う素敵な化粧をしてやるよ」
敵の傷口に彼女がそっと尻尾で触れると傷は急速に悪化し、戦士の体は粗いモザイクに包まれる。
「お、おの、れ……」
戦士はそのまま、かき消えるように消えてなくなっていった。
「さすが、カッツェとパト姉様」
メノウは友人達の活躍を微笑ましげに見ながら、仲間達へと薬液の雨を降らせて行く。このままだと、仲間達に加護を与える篁流回復術『颪』は必要なさそうだ。
そして、メノウのもう1人の友人、千舞輝は魔法使いに狙いを変更し、全身にオウガメタル「イチノヒ」を纏わせて殴りかかっていく。
相手が残り1体であれば、数で攻め伏せるだけ。
敵目掛けて妖精弓を引くカナンが相手の心を射抜いてみせ、直後に真がゾディアックソードを大きく振り上げて。
「叩っ斬ってやる!」
素早く振り下ろされた真の刃によって魔法使いはローブを切り裂かれたが、さほどダメージを負っていない。
「どうか、この悲しみを分かって……」
彼女は杖を振るい、岩の弾丸を発射してくる。
それを防ぐは、ぶろっこりーに火詩羽だ。
メンバー達が従えるサーヴァント達も、個々にケルベロスをサポートする。
可愛らしくハート光線を発射する煎兵衛。収納ケースが大きく蓋を開けて魔法使いにかぶりつく。
そして、2体のライドキャリバーが相手の足を止めようと激しくスピンする。
その片方の主、腕部装甲ごと武器をパージした詩乃が雷光の如く魔法使いの懐へと潜り込んで。
「私の全力でいくよ――N.A.code:BornBuster」
魔法使いが間合いを詰められたと気づいたときには、もう遅い。詩乃は超高速振動させた五指で相手を貫いた。
「彼の夢……返してもらうよ!」
文字通り、「奥の手」での一撃。
魔法使いは最早言葉を発することなく、全身をモザイクと化して霧散していったのだった。
●新しいデッキでバトル!
夢喰いを倒して事後処理を終えたメンバー達は、少年の自宅へと向かう。
少年……今村・魁の自室にやってきたケルベロスは、散らばるカードの惨状に唖然としてしまって。
「カナンですら持ってないカードなんすよ! ちくしょー! 売れば、万単位のカードかも知れねーのに……」
カードの内容に気づき、カナンが声を荒げる。
ネットでその価値は知っていたらしく、彼女は直接その原因を作っているパッチワークの魔女の顔面を殴りたいと拳をぶんぶんと振るう。
「……そういや、カードにヒールしたらどうなるんやろ……。新種カードが完成……?」
「白き光よ、このモノを包みて癒したまえ!」
千舞輝の言葉に、真が試しにバラバラのカードを集めて光を纏わせようとする。
しかし、足りない部分や継ぎ目が幻想交じりに修復されてしまう。
カードとして使うのはもちろん、コレクターズアイテムとしても使うには苦しいと真は一目で判断する。
ともあれ、メンバー達は部屋を片付けつつ、少年の目覚めを待つ。
「無事か、少年? どうやら一命はとりとめたか」
「……すまないな。これが精一杯だった」
目覚めた魁はすぐに、大切なカードがもう原型をなしてないことを思い出すと、真は申し訳なさそうに幻想交じりになったカードを差し出した。
「良かったらカードの事、話してもらいたいな。実は、少し興味があったんだ」
しょげてしまった少年へと、詩乃が優しく語り掛ける。定命化からまだ差ほど時間の経たない彼女にとって、未知のことは興味の対象なのだ。
「あたし、このカードゲーム知らない。一緒に遊ぼう?」
「でも、カードは……」
メノウもそう少年を誘うと、魁は幻想交じりのカードを見つめて、悲しげに呟く。
「折角組んだデッキが無くなったのは残念だけど、これを機に新しいデッキを再構築できるし、前向きに考えよ?」
カッツェの言葉にも、少年は黙ったまま。
すると、パトリシアがジッポをシャカパチシャカパチして、彼へと呼びかける。
「さあ、少年。新しいデッキを構築するわよ」
「だから、カードは……」
「わたしたちはケルベロスよ。デッキくらい買ってあげるわ」
しょんぼりする魁へ、パトリシアは胸を張る。
そして小声で、「……3パックくらいなら」と囁いたのに、魁は小さく頷いていた。
その後、カード販売店に向かった一行は、購入したカードを店内の遊戯スペースで広げて。
「ドラゴンとか忍者とか入れると良いよ!」
そんなカッツェの思いつきの言葉に苦笑しながらも、魁は買ってもらったカードでデッキを組む。
「デッキはできた? じゃあ、プレイするわよ」
自身ありげに、パトリシアが組んだデッキで魁とバトルを始めた……が。
「ああ!」
あっさりとボロ負けし、彼女は愕然としてしまう。
そこで、モヱがカードのデータを解析してパトリシアに助力し、もう1戦バトルを申し込む。モヱは魁がデッキを失った悲しみを乗り越えられるようにと、全力でこの場をもりあげようとしていたようだ。
その甲斐もあって、魁は笑顔を浮かべてカードバトルを楽しんでいた。
「これから始めてみようかな……」
それを見ていて盛り上がる詩乃もまた、カードを買って少年の勝負してみようかと考えていたのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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