ヒールに踏まれる事は、御褒美だ!

作者:ゆうきつかさ

●某教会
「いいか、お前ら! ヒールに踏まれる事は、御褒美だ! 故に至高ッ! これぞ、揺るぎない事実ッ! それなのに、最近の奴らは分かっちゃいない! ヒールで踏まれる事を如何わしい事だと勘違いしていやがる! だが、実際は違う! 断じて、違う! ヒールに踏まれる事は、至高のプレイ! 故に、俺はここで断言するッ! ヒールで踏まれる事こそ至高である、と!」
 羽毛の生えた異形の姿のビルシャナが、10名程度の信者を前に、自分の教義を力説した。
 ビルシャナ大菩薩の影響なのか、まわりにいた信者達は、ビルシャナの異形をまったく気にしていない。
 それどころか、信者達はわんこスタイルで、ヒールに踏まれる準備をするのであった。

●都内某所
「大神・凛(ちねり剣客・e01645)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです。悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が今回の目的です。このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やそうとしている所に乗り込む事になります。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ビルシャナは破壊の光を放ったり、孔雀の形の炎を放ったりして攻撃してくる以外にも、鐘の音を鳴り響かせ、敵のトラウマを具現化させたりするようです。信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。ただし、信者達はヒールで踏まれる事しか頭にないため、説得するのは難しいかも知れません」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「また、信者達はビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのは、インパクトになるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれない。また、ビルシャナとなってしまった人間は救うことは出来ませんが、これ以上被害が大きくならないように、撃破してください。それでは、よろしくお願いします」
 そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。


参加者
大神・凛(ちねり剣客・e01645)
ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)
アレス・アストレア(ヴァルキュリアの自称勇者・e24690)
峰雪・六花(ホワイトアウト・e33170)
御門・美波(堕とし子・e34803)
雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)
セレス・ウィンドワード(緑風の射手・e41856)

■リプレイ

●教会前
「……まったく、ビルシャナの辞典には『変態』という単語がないのかね……」
 雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)は深い溜息をつきながら、仲間達と共にビルシャナが拠点にしている教会の前に立っていた。
 ビルシャナはヒールに踏まれる事こそ至高であると訴え、信者達と一緒にわんこスタイルで女王様的な存在が現れるのを待っているようだ。
 そのせいか、教会の外観もSMクラブ風で、如何わしい雰囲気がプンプンと漂っていた。
「なるほど、ヒールですか」
 霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)が、事前に配られた資料に目を通す。
 ケルベロスにも変人が多い為、資料を読んでも『流石ビルシャナ、俺達にもやろうと思えば出来そうな事を平然とやってのけます! そこに痺れも憧れもしませんが!』としか思わなかったようである。
 それに、ビルシャナ達がヒールを欲しているのであれば、その望みを叶えるのみ。
 それだけで彼らは間違いなく、ヘヴン状態に陥る事だろう。
「やれやれ、今回の敵は変な属性の持ち主だな。私としては即座に退治してやりたい対象だが……」
 大神・凛(ちねり剣客・e01645)も、同じように深い溜息をもらす。
 どちらにしても、『触るなキケン!』。
 相手にするだけ時間の無駄と言う言葉が何度も脳裏を過ったものの、ビルシャナが関わっている以上、放っておけないと言うのが本音であった。
「しかも、こんな神聖な場所でイヤらしい事を……。ちょっとお仕置きしなきゃね?」
 御門・美波(堕とし子・e34803)が、自分自身に気合を入れる。
 ある意味、ビルシャナ達にとっては御褒美だが、それ以外の方法が浮かばないのだから仕方がない。
「確か、男性の方が女性に靴で踏まれながら鞭打たれて、喜ぶシチュエーションを何処かで見たことが……。一体、アレにはどういう意味が隠されていたのでしょうか……? ……ハッ! まさか!?」
 そんな中、アレス・アストレア(ヴァルキュリアの自称勇者・e24690)が、驚いた様子で声を上げる。
 何やら重大な事に気づいてしまったのか、すべてを悟った様子で仏のような表情を浮かべていた。
「でも準備はできとるで! どや、うちこんなん持ってきたったわ!」
 セレス・ウィンドワード(緑風の射手・e41856)がドヤ顔で、茶色の厚底ブーツを見せびらかし、仲間達の反応を窺った。
 何となく、みんなドン引きしているような気もするが、ビルシャナ達の前では可愛いモノである。
「ヒールの底、とがっててすっごく……痛いと、思いますが……。それなのに……痛い方が嬉しいって……」
 峰雪・六花(ホワイトアウト・e33170)が、複雑な気持ちになった。
 おそらく、ビルシャナ達にとっては、御褒美。
 御馳走を貰ったわんこの如く勢いで、セレスに飛び掛かっていく事だろう。
「まあ、古来より信仰の違いによって数多の悲劇が生み出され多くの血が流されてきました。それでも、ビルシャナの教義は、正直言って気持ちが悪いと思いますが……」
 そう言ってロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)が、仲間達を連れて教会の中に入っていった。

●教会内
「いいか、お前ら! ヒールに踏まれる事こそ至高ッ! 俺達にとっての御褒美だッ! 故に、いつ、いかなる時に踏まれてもいいように、このスタイルを崩すんじゃないッ!」
 教会にはビルシャナ達がおり、わんこスタイルで、入り口側に汚いケツを向けていた。
 この時点で一般人の大半が、回れ右をして、帰っている事だろう。
「なんや、踏まれたいんか? なら、踏んだるわ☆ まあ、これ……厚底ブーツやけどな」
 セレスがヤル気満々な様子で胸を揺らし、ビルシャナ達の背中を踏む。
 それはまるで音ゲーのようにテンポよく、連続コンボを繰り出し、高得点を狙うゲーマーのようにも見えた。
「うぐ……これは……あ、いや、駄目だ! 刺激が足りないッ! もっと痛みがないと……痛くないとダメなんだッ!」
 ビルシャナが不満げな様子で、クチバシをぶるぶると震わせた。
 まわりにいた信者達も『これじゃ、足りねぇ。パイルバンカー並にガツンと来なきゃダメなんだ!』と叫び、汚い尻を左右に振った。
 おそらく、これがヒールであれば、ビルシャナ達を昇天させ、『YOU WIN!』と脳裏に表示されていた事だろう。
「そんなに踏まれたいなら、踏んであげる。ただし、ヒールじゃないけど……。聞こえなーい! なんだかんだ言って、感じているじゃない♪ ほらほら! もうイっちゃうの? ふふっ♪ がんばれ♪ がんばれ♪」
 それでも、美波が含みのある笑みを浮かべ、ビルシャナ達の背中を踏んでいく。
「い、嫌なのに……嫌なはずなのに……うくっ! くう……う……う……! だが、まだだッ! まだまだァ!」
 ビルシャナも美波達に踏まれて感じつつ、床に両手をついたままドM覚醒ッ!
 すべての痛みを食らうケモノと化し、ヘヴンスマイルを浮かべていた。
「俺はヒール(悪役)なので望み通り踏んであげますよ。此処来る前に踏んづけてしまったガム付きの靴を使い、ビルシャナの上でタップダンス!」
 霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)も、ビルシャナの上に飛び乗ってタップダンスを踊り出す。
 しかも、履いているのは、普通の靴。
「うがっ! いや、これはヒール違いだッ! そうじゃないんだ、違うんだッ!」
 まるでお預けを食らったわんこのような表情を浮かべ、ビルシャナが瞳を潤ませた。
 まわりにいた信者達も同じように、きゅ~ん状態。
「悔い改めなさい」
 それでも、ロベリアは虫を見るような蔑んだ目で見下ろし、サバトン(鉄靴)で信者達を踏んでいく。
 ついでにビルシャナも踏んでみたが、何やら不満げ、ぶー顔である。
「貴様達は、本当にヒールで踏まれたいのか? それとも、ほかの者にされているような事がされたいのか?」
 凛もまったく気にせず、ブーツでグリグリ。
 信者達は『感じたくないけど、感じてしまうッ!』的な表情を浮かべ、必死に口から洩れそうな声を殺していた。
「えーっと、確か……『勇者様とお呼び!』ですね」
 アレスがビルシャナ達の気持ちを察し、その物足りなさを満たすため、SMプレイに使うようなバラ鞭を持ち出し、ビルシャナ達にビシバシと振り下ろす。
「うぐ……これは……!? あ、いや、何と言うか、物足りていると言うか、足りていないと言うか……あ、あぁん! そうじゃないんだッ! 違うんだ!」
 ビルシャナが生娘のような表情を浮かべ、自らの気持ちを偽るようにして首を振る。
 だが、まわりにいた信者達は、ほとんど屈しかけており、恥ずかしそうに頬を染めて、汚い尻を突き出していた。
「ま、まあ……痛みで、実感するものも……あると、思いますが……。他にも必要なものを感じられる道も……ある、はずです。例えば……撫でてもらったり、認めてもらったり、褒めてもらったり……。そういう方が、嬉しかったり……しない、でしょうか? ですから……もう一度、考えてみて……ください。本当に、それは手段でなくて目的ですか?」
 そんな中、六花が何度も確認するようにして、ビルシャナ達に問いかけた。
「ああ、もちろん!」
 ビルシャナが実に晴れやかな表情を浮かべ、信者達と一緒に躊躇う事なく答えを返す。
「どうせ踏まれるなら、直に肌で感じたいのだろう? ならば、それを手助けしてやろう」
 そう言って真也が両手にバリカンを持って、含みのある笑みを浮かべるのであった。

●ビルシャナ
「あ、いや、別に……そっちの趣味はないから!」
 その途端、ビルシャナが身の危険を感じ、激しく首を横に振る。
 まわりにいた信者達もビルシャナの後ろに隠れ、無意識のうちに『どうぞ、どうぞ』と言わんばかりに押し始めた。
「問答無用! 羽毛、刈るべし!」
 だが、真也は容赦なし!
 それが使命であると言わんばかりに、ビルシャナの羽毛をバリバリと刈っていく。
「うわ、やめろ! やめてくれええええええええええ!」
 ビルシャナが涙目になって悲鳴を上げたが、真也はまったく気にしていない。
 それどころか、ビルシャナを丸裸にする勢いで、羽毛をガッツリ刈っていく。
「自業自得……ですね」
 ロベリアがやれやれと言わんばかりに首を振る。
 その間も信者達が心配そうにビルシャナを見つめていたが、中には『う、羨ましい。か、代わりたい』と思っている者もいるようだ。
「と、とにかく、ビルシャナ様を守らないと!」
 眼鏡を掛けた男性信者が、『だったら、俺が立候補してやるぜ!』と言わんばかりの雰囲気で、ケルベロス達に迫っていく。
「あ、あの……ごめんな……さい……。なるべく痛くないように……。あ、痛い方が……いいん……でしたっけ……?」
 六花が申し訳なさそうにしながら、信者達に手加減攻撃。
 もう少し痛くした方がいいのか、それとも優しくした方がいいのか分からないが、力加減が難しくなっているようだ。
「お前達は下がっていろ! ここは俺が……俺に任せろおおおおおおおおおおおおおお!」
 ビルシャナが『御褒美独占宣言ッ!』と言わんばかりに吠える。
 まわりにいた信者達も、その気迫に圧倒されて、怯えた様子で何度もコクコクと頷いた。
「せめて足技で落としたるわ」
 セレスが色々と察した様子で、信者達の背中を踏んでいく。
 そのたび、信者達が『あんっ!』『おうっ!』『はぅぅぅぅん♪』と声を上げ、重なり合うようにして倒れていった。
「ええい、大人しく踏まれてくださいよ! 強制的に大人しくなるべし!」
 すぐさま、裁一が靴についたガムをくっつける勢いで、ビルシャナの背中をガンガン踏んだ。
「いや、まだだ! もっと毟ってやる!」
 凛がビルシャナに飛び掛かり、ハウリングフィストで羽毛をどんどん毟っていく。
「うぎゃああああああああああああああああ!」
 そのため、ビルシャナは羽毛を刈られて、ツルッツル!
「それじゃ、踏んであげるねっ♪ 思いっきり……いいよね?」
 次の瞬間、美波がビルシャナに旋刃脚を放ち、その背中をズドンと踏み抜いた。
「ん? んんっ? ここは一体……」
 その途端、信者達が我に返って、訳も分からず口をパクパクさせた。
(「こういう変態なビルシャナはあまり出てきて欲しくないものだな……」)
 そんな事を考えながら、真也が何気なく天井を眺める。
 おそらく、それはムリな話。
 変態は一体いたら、何体もいると言われるほどアレなので、その願いが叶う事もないだろう。
「そ、それにしても、何かに目覚めそうな気がします! コ、コレは、レベルアップの前兆でしょうか……!?」
 そう言ってアレスが愛おしそうに、バラ鞭を見つめるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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