袴の隙間には夢が詰まっている

作者:澤見夜行

●女子弓道部の悲劇
「お疲れ様ー」
「疲れたぁ」
 静寂に包まれていた更衣室が一斉に騒がしくなる。
 全国指折りの成績を修めるその学園の女子弓道部は、学園内でもかなり優遇された設備が用意されている。
 シャワー室と併設された大きな更衣室もその一つだ。
 瑞々しい肌を隠すこと無く露出させ、油断した隙を見せる女生徒達。
 互いの柔肌に触れあいながら巫山戯合ったり、今日の放課後の予定に花を咲かせたりしていた。
 少女と女性の狭間にいる女生徒達の白い肌が揺れる。弓道着に染みこんだ、汗の匂いも心なしか甘い。
 しかし、そんな秘密の花園に魔の手が迫る――。
「ブフッ、ブフフフゥ!」
 突如、更衣室の地面から淫らに蠢く触手が現れる。その触手の持ち主は肥え太る脂肪を揺らす豚顔の怪物――オークの群れだ。
「な、何!? きゃっ――あっ、あっ! ダメェ――!」
 襲いかかる触手に触れた女生徒が快楽に打ち震えた嬌声を上げる。
「ブフゥ! スキマ! スキマ!」
 興奮した様子のオークが弓道着を脱ぎかけていた女生徒へと襲いかかる。
 その体中から伸びる触手が、袴の隙間へと侵入し、肌を舐めるように這いずり回ると、先端で突き刺し刺激物質を送り出す。
「やだっ、もー、いゃっ、あぁぁ――!」
 こうして、次々とオーク達の毒牙に掛かった弓道部少女達の悲鳴と嬌声が、女子弓道部更衣室に響き渡るのだった。


「オーク達が現れる予知が出たんだって?」
 豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)がそう訊ねると、クーリャ・リリルノア(銀曜のヘリオライダー・en0262)が頷いた。
「はいなのです。姶玖亜さんが危惧していた女子弓道部の更衣室に現れるようなのです」
 予知によれば、女子弓道部の更衣室に略奪を目的としたオーク達が現れるようだ。
 シャワー室も併設された大型の更衣室。部活終わりで利用する女生徒の人数も多いようだ。
「オーク達は更衣室とシャワー室のちょうど間に現れるようなのです。更衣室側の女生徒は逃がすことができますが、シャワー室にいる女生徒はオーク達の注意を引きつける必要があるのです」
 さらに重要なのは、襲われる女生徒達を先に避難させてしまうと別の場所に出現してしまい、被害を防げなくなってしまう。
 女生徒達の避難はオークが現れてから行わなくてはならない。
「女生徒の避難が完了してない場合は、戦闘中にオーク達が、その、悪戯を行う場合があるのです。なのでできるだけ避難させてあげて欲しいのです」
 頬を赤らめながらクーリャは資料を読み進める。
「出現するオークの数は十体。更衣室を利用している女生徒は十五名、内五名はシャワー室にいるようなのです」
 大きな更衣室とはいえそれだけの人数が密集することになる。できるだけ出入り口に近い女生徒は避難させ密度を薄くする必要があるだろう。
「オーク達は身体から生える触手を使って攻撃してくるのです。けがらわしい触手で何度も叩く攻撃や、触手を突き刺し溶解液を出して刺激物質を送る攻撃、そして触手で締め上げる攻撃をしてくるのです」
 一体ごとの強さはそう強いものではないが、数が多いので注意が必要だろう。
 さらにオーク達は女性を傷つけるような真似はしないようだ。
「傷つけたりはしないのですが、取り残された女生徒が居た場合、その、エッチなことをされてしまうのです」
 ますます顔を赤らめたクーリャは「その隙を狙うことはできますが、戦力的には余裕があるのでできるだけ女生徒は助けて欲しいのです」とお願いした。
「そ、それでですね、資料によるとなんでもこのオーク達、袴を着たときにできる隙間の部分にすごい興奮するそうなのです。それはもう追いかけ回して執拗に隙間に触手をいれようとするようなのですよ」
 想像したのがブルブルと身体を震わせて青ざめるクーリャ。
「オークの趣味はわからないけれど、うまく利用できれば囮として女生徒を逃がす隙が作れるかも知れないね」
 クーリャの言葉を聞いた姶玖亜がそう提案した。
 コホン、と咳払いをしたクーリャが資料を置き番犬達に向き直る。
「女の子を狙ってエッチなことばかりするオーク達の悪さは絶対に許せないのです! 女生徒達を救うため、どうか、皆さんのお力を貸してくださいっ!」
 ぷんすかと我が事のように怒るクーリャは、そう締めくくると番犬達を送り出すのだった。


参加者
鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)
神籬・聖厳(日下開山・e10402)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)
豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)
巫・結弦(射貫きの弓手・e31686)
黒江・神流(独立傭兵・e32569)
トーマ・ウィンチェスター(安楽の担い手・e41673)

■リプレイ

●オーク退治にでかけよう
 予知された学園へと出向く番犬達。
 学園には神籬・聖厳(日下開山・e10402)、プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)、そして巫・結弦(射貫きの弓手・e31686)が事前に連絡をいれ自由に入館することができた。
 鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)とリモーネ・アプリコット(銀閃・e14900)、黒江・神流(独立傭兵・e32569)の隣人力のおかげもあって学内では特に不審に思われることなく行動することができている。
 目的の弓道場まで行くと、熱心に練習に励む学生達の姿が見えた。
 凛とした雰囲気の中、射られる矢。事前の情報にあったとおり強豪校のようだと感じられる。
「しかし設備が良い所だけあって、皆さん確かな腕前ですね。うらやましい環境です」
 結弦が学生達の実力を見て素直に褒める。
「そうなんだ。弓道には明るくないけど、弓道着は見てるこっちも、気持ちが引き締まる思いだね」
 相槌を打つ豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)は場の雰囲気を感じ取ったのか、弓道場を見ながら言った。
 姶玖亜的にはリボルバーを鍛錬する部活がないのが残念そうだ。
 弓道着の微妙な開口部の隙間を見ていた猛は思う。
(「確かに手を突っ込みたくなる気持ちはわかるけどね~~」)
 声には出さないが、まじまじと見てしまっていた。
(「しかし、脇あきの部分に執着するオークとは、どことなくビルシャナを連想させますね」)
 リモーネもまた、弓道着から今回の敵を想像し、一考する。
「さて、時間も差し迫っておる。わしらも移動するとするかのう」
 早速弓道着に着替えてる聖厳はそう言って仲間達に促すと、番犬達は一つ頷き更衣室の方へと移動した。
「わあ、思ったより広いね」
 猛の言うとおり、更衣室は想像以上に広いようだ。
 奥には豪華な設えのシャワー室も確認できる。
「なにかここに居てはいけないような気がします」
「ふふ、よく似合っていますよ」
 小等部の女学生に女装しているトーマ・ウィンチェスター(安楽の担い手・e41673)は気恥ずかしそうに肩を縮ませている。
 微笑ましくリモーネが笑った。
 囮役を買って出た聖厳、プラン、結弦は弓道着を着て準備万端だ。シャワー室の前に陣取るように位置する。
「さて、そろそろ時間だな」
 隠密気流を使って更衣室の入り口傍で待機する神流の言葉に合わせて、チャイムが鳴り響く。
 しばしの後、徐々に騒がしくなる更衣室。部活を終えた学生達が一斉に入り込んできたのだ。
 一気に騒がしく、そして甘い汗の匂いが立ちこめる。
 事前に体験入学や練習生ということを伝えていたこともあって、ここでも不審に思われることはなかった。
 瑞々しい柔肌を触り合い、自由に巫山戯合う学生達。
 そして、五名の学生がシャワー室に入ると同時、それは現れる。
 不意に地面に亀裂が入り、そこから幾本もの触手が、嫌らしく動きながら徐々にその姿を現していく。
「ブフッ、ブフフフゥ!」
 奇怪な鳴き声を上げながら、その巨大な鼻で匂いを嗅ぎ取る豚顔の男。否、男ではない。オークだ。
 総勢十体ものオークが更衣室に現れた――!

●袴の隙間を狙う者達
「みんな逃げて――!」
 その声に合わせて更衣室はさらに騒がしくなる。
「さあ、こっちだ!」
 更衣室の入り口付近で待機していた神流と姶玖亜、そしてリモーネが近い学生から順次逃がし始める。
「囮役の弓道着を着た高嶺の花のみなさんに敵が気を取られてる隙に、お嬢様方を逃がさないとね」
 大量に用意した毛布のおかげで、恥ずかしがる学生達もうまく逃がすことができた。
「これを着てさぁ出口へ急いで」
 自身が着ていたトレンチコートを被せて優しく避難を促すのは神流だ。
「出てこないでね」
 シャワー室の中に猛が声を掛け立てこもらせる。
「ブフフフッ! 逃がさないブフゥ!」
 逃げ遅れた学生やオークの傍にいた学生が、そのぬらめく触手に捕まる。
「やだー、ぬるぬるで、いやぁ――!」
「やらせません!」
 すかさず変装を解いて割って入るのはトーマだ。手にした日本刀で触手を切り裂く。
「ブフゥ、邪魔するなブゥ!」
「そうはいきませんよ」
 サーヴァントのルクソールに避難の先導を任せ、トーマはオークと対峙する。
 一方、シャワー室前は大変なことになっていた。
「私が足止めするから皆は逃げて」
 囮役として一般人のフリをするプランが弓を構え学生を逃がそうとする。
「ブフゥ! スキマ! スキマブフゥ!」
 パーフェクトボディでキラキラと光って美しくなった上に弓道着を着ていることもあり多くのオークがプランへ殺到する。
「いやっ、やめて……あっ!」
 か弱く抵抗するフリを見せるが、オークの触手がお構いなしに身体に巻き付きその自由を奪う。
 袴の隙間から侵入した触手が、太ももをなぞり、秘所をゆるりとさすった。
「あぁ、だめぇ、――ひぐっ!」
 瞬間プランの身体が跳ねる。触手の先から快楽物質を送り込まれた為だ。
 とろけそうになる頭。必死に堪える。
 その横では聖厳と結弦も同様にオークに囲まれていた。
「ほれほれ、おぬしらの好きな隙間じゃぞ?」
 聖厳はオーク達に見せ付けるように袴の隙間をひらひらとゆらす。
「ブフゥゥゥ! スキマ!」
 当然、オーク達は隙間に釣られて殺到し、そのいかがわしい触手で聖厳の身体をなぶり始める。
「くくくっ……がっつきすぎじゃ、あっ! そんないきなりすぎじゃっ……!」
 愉快そうに笑うのも束の間、すぐに快楽物質を送り込まれ、その快楽に身をくねらせる。
「この身に変えてでもこの先は通しませんよ。オークとかそれ以前の問題として男子禁制ですからね、ここは」
「ブフゥゥ! 無駄なあがきはやめるブフゥ!」
 触手に絡みつかれながら健気に結弦は言う。
(「く、ぅ……! 触手が服の中で動いて……!」)
 隙間から入り込んだ触手に嫌悪感を覚えながら耐えていると、触手はさらに奥を目指して動きを進める。
「やめっ、直に触れないでくだ……あっ!?」
 秘所に触れられ思わず声が漏れてしまう。そのまま擦られ、快楽を高められる。
「この……いい加減に――ひぁ!?」
 反撃にでようとしたところでまたもや隙間から入り込んだ触手がお尻をなで回す。
 意識が別の場所に向いていた結弦は思わず変な声が漏れ出てしまう。
「も、もうだめ、あっあっ」
「ふふふ、ほんに隙間が好きすぎじゃろ……あっ」
(「心を律して……感じてなんて……ひぅっ!?」)
 囮として、十体のオークを相手に、無抵抗に嬲られる三人。
 ヌメヌメとした触手が肢体を這いずり回り、性感帯を攻め続ける。秘所からは蜜が溢れ出ていた。
 袴の隙間は両脇とも触手が出入りし、快楽物質でべとべとになっていた。
 しかし、三人のこの働きのおかげで、オーク達はその場に留まり、逃げ出す学生に向かうことはなく、また、シャワー室も死守することができた。
 時間にして数分の出来事であったが、その間に更衣室内の避難は完了できたのだ。
「お待たせしました! 皆さんもう良いですよ!」
 最後の学生の避難を終え、リモーネが三人に声を掛ける。
「ふふ、やっとかの。さすがのわしも結構堪えたぞ」
 触手に嬲られながらも聖厳が身体に力を入れる。
「さてそれじゃ、反撃開始といこうかのう……!」
「シャワー室はどうします?」
「くっ、このまま、死守しましょう」
 リモーネの確認に、触手に弄ばれてる結弦が答える。リモーネは頷くと、オークの一体に斬りかかる。
「ブフゥフゥ!? こっちにもスキマが!?」
「やだ、やっぱり袴のスキマなら反応するんですか!?」
 すぐさま間合いをとり触手から離れるリモーネ。
 その横ではプランが立ち上がりオークの一体に近づいていた。
「フフッ……そんなに気持ちいいのが好きなら凄い事シテあげる、何度もイッてこわれちゃえ」
 オークの醜い身体を愛撫し、快楽を与えるプラン。その性的な奉仕には今までプランが体験してきた苦痛と快楽が追体験できるおまけつきだ。
 一瞬のうちに送り込まれる快楽のフリーフォールはオークといえども抗えない。
「ブフゥゥゥ! ブフゥゥゥブヒィ!」
 快楽の虜となったオークが昇天し果て続ける。醜く荒い息を繰り返すオークを見下ろすと、「踏んであげる、悦んでいいよ」と言って流星纏う足でオークの股間を踏みつけグリグリと捩る。
「ブッフッブフゥゥゥゥ!」
「そうじゃないよ、『ありがとうございます』でしょ」
 最後にトドメの一撃を股間に加えるとオークは一際大きな声をあげ息を引き取った。
 プランはそのまま次の獲物に狙いを定めた――。
 ――更衣室は番犬達とオーク達の戦場となっていた。
 囮でいる必要がなくなった三人を加え、オーク達と対峙する番犬達。
 すでにプランの攻撃で一体のオークを失い、九体となったオークの群れは、それでも変わらずに袴のスキマを狙い触手を貪欲に動かし続ける。
 しかしそのうちの一体が、猛の服のスキマを狙って触手を伸ばしてきた。
「フェチの追求よりも女体なら何でもいいクチか~~!」
 即時突っ込み、反撃する猛。
 だがその後ろから、もう一体の触手が、猛のお尻目がけて伸びる。
「ちょ! やめ! そっち本当にダメだって!」
 すぐに気づき全力で抵抗する猛は、自ら弱点をばらしていることに気づかない。
 オーク達の触手が、猛のお尻を狙って怪しく蠢く。
「あ、ほんとダメ、あっ! ふわぁあぁん」
「やらせません!」
 お尻を狙われふわとろになってる猛を助けるべくリモーネがオークに飛びかかる。
 しかし今度はリモーネの袴スキマを狙って触手が動く。
「今度はこっちですか! って、やだ中入ってこないで――!」
 猛とリモーネがオークに翻弄されてる中、更衣室の中心では聖厳がその力を振るおうとしていた。
「東方に裸神あり! 絶世にして独り立つ!! 一脱ぎすれば城を傾け! 二脱ぎすれば国をも滅ぼす!!」
 なんということか、着衣していた弓道着をすべて破り捨てると、聖厳はその裸体を臆面無く晒し立つ。
「わわ、なんて格好をっ!」
「照れる必要などないぞ、これがわしの真の力じゃ!」
 トーマが顔を覆って照れている中、聖厳は裸のままオークに突撃し、急所を狙って電光石火の蹴りを放つ。
 オーク達も、まさか自分達の前で裸を晒すものがいるとは思っておらずどよめき立つ。
「わははっ、さぁかかってくるのじゃ」
 愉快そうに笑う聖厳はさらにその力を奮っていく。
「よそ見している場合ではないぞ――!」
 神流は超高速の戦闘機動でオークの一体を蜂の巣にする。
 飛び散る体液が神流の身体を汚した。
「くっ……死に際まで迷惑なやつだな」
 終わったらシャワーを浴びようと、神流は心に誓うのだった。
「痺れるような早業を魅せてあげるよ!」
 目にも止まらぬ早業で、オークの群れに銃弾の雨を叩き込むのは姶玖亜だ。
 オークの一体が、足早に出入り口のほうへ向かおうとするのを見ると、さらに銃弾を放ち狙い撃つ。後頭部を打たれたオークはそのまま絶命した。
「ふふ、そっちは通行止めだよ」
「ブフゥゥゥ!」
 仲間をやられて怒ったオークが姶玖亜に襲いかかる。
「おっと、ボクよりもあっちの弓道着の子の方がいいよ?」
 すぐさま姶玖亜は反撃にでた。
 仲間達の活躍によってその嫌らしい触手から逃れた結弦も戦線に復帰する。
「絶対に許しませんからね――!」
 半透明の『御業』でオークを捕縛し、黒色の魔力弾で追い詰めていく結弦。
 特に自分を嬲ったオークを許すまいと執拗に攻撃を加えていく。
 聖厳の姿をなるべく視界にいれないようにしながら、オークと立ち回るトーマ。
 トーマはなぜオークがこのような行動にでるのかを理解していない為、そのまま疑問が口にでた。
「あなたたちは繁殖のためにこんなことをしているのですか?」
 これにオークが答える。
「当然だブヒィ、子を産ませその子供を殺しグラビティ・チェインを奪うのブヒヒ」
「なんてことを」
 オークの答えに、トーマは怒りを覚える。
 だが冷静に、居合い斬りの構えでもってオークを迎え撃つ。
「痛くはしないようにしますので」
「ブフィ!」
 飛びかかるオークを、一閃の元にたたき伏せた。
 ――戦いは終わりが見えてきていた。
 戦闘力が高くないオーク達だ。番犬達が本気をだせばあっという間に制圧が完了していた。
 残す敵は二体。追い詰められながらもいまだにスキマに固執するあたり、さすがとしか言いようがなかった。
「さぁ覚悟はできた? 立ち塞がる何もかもを撃ち砕く!」
 猛が飛びかかり『バーニングブレイカー』の一撃を見舞う。
 高熱、震動、電撃、そして爆撃の追撃によりオークが爆散する。
「……汚らわしい女の敵。速やかに排除します」
 残す一匹へリモーネが疾駆し肉薄すると、手にした刀を振るう。
「雷鳴や、一人軒端で、雨宿り……お粗末さまです」
 雷の如き速度で繰り出される、ほぼ同時の三段突きがオークに直撃した。
「ブフゥゥゥ、スキマ、スキマ……!」
 最後の最後まで隙間にこだわりを見せたオークは、こうして絶命するのだった。
「ふぅ……」
 最後の一体を倒し、番犬達は一息つく。
 見れば全員体中オークの体液でべとべとだ。
「シャワー浴びたい……ってそうだシャワー室の子たち!」
 忘れるわけにはいかなかった。シャワー室で助けを待つ学生がまだ残っていたのだ。
「お待たせ、もういいよ」
 そう言って、シャワー室の学生に声をかけると、漸く全てが終わったように感じた。
 袴の隙間を狙う悪しきオークは討たれた。番犬達の勝利だ――。

●戦い終わって……
 更衣室の破損した箇所をヒールで修復すると、番犬達はシャワーを借りることにした。
 べとべととしたオークの体液と、戦いの汗を洗い流しサッパリとする。
 ちなみにトーマは一緒に入ろうと言われたのを断り、男子弓道部のシャワー室を借りて事なきを得た。
 更衣室ではリモーネが、オークに少し触れられてしまった女生徒のケアを行っていた。
「もう心配いりませんからね」
 アロマを炊き、優しい言葉をかけ、心身ともにケアを行う。これもまた番犬の役目だ。
 部活動も終わりの時間だったということもあり、部活として参加することはできなかったが、すこしの時間だけ弓道場を借りることができた。
「ふむ、なかなか難しいねこれは」
「ふふ、慣れだと思いますよ」
 思うように弓を引けない姶玖亜に経験者の結弦が微笑む。
「こんな感じかな?」
 プランもまた弓を引きながらイメージを固めている。なかなか楽しんでいるようだ。
 猛と神流、聖厳は弓道場の端で束の間の休息を謳歌する。
 夕暮れが弓道場を照らす。
 袴の隙間に執着する者達がいた。きっとそこには我々の理解の外にある夢が詰まっていたのかもしれない。
 こうして女子弓道部更衣室の平和は守られたのであった。

作者:澤見夜行 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 2
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