●YOUのテクノはビートを刻むか?
重低音が閉店されたはずの小さなクラブハウスに鳴り響く。
アンプから放たれるズン!ズン!と肌を震わす音圧、DJスタイルなビルシャナは音楽を刻み続けた。
「HEY・YOUR! お前らSoulは震えているか? ハートにハードなビートを刻む、クラブサウンド・マジサイコー!」
リズムに乗って説法語るぜ! クラブサウンド・マジサイコー!
「Soul震わすクラブのアンプ! お前のトランス・ヘブンにトラベル! クラブサウンド・マジサイコーYeah!」
電子の音楽に合わせてディスクを回せ!クラブサウンド・マジサイコー!
「ダンスでハウスを席巻いたす! これぞ至高で理想のGOKURAKU☆JOUDO!」
ビルシャナの流すサウンドに合わせ、市民は狂ったように踊りだす。
「Oh・Yeah! チャントを刻め! 教義を謳え! クラブサウンド・マジサイコー!」
『クラブサウンド・マジサイコー!!』
ビートを刻め!踊り狂え!信者と化した市民は恍惚とした表情で身体を揺れ動かす!
「クラブサウンド・マジサイコー!」
真顔で拳を掲げるイマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)の一言に衝撃が走る。しかし、異常事態はそれではない。
「――というビルシャナが現れました。クロエディーヴァという『音楽による救済』を教義としたビルシャナの信者が、さらにビルシャナ化して広めようとした教義が『クラブサウンド・マジサイコー!』なのです」
まるで感染・拡大するウイルスのようにビルシャナは数を増やしていく。他のデウスエクスと違って、個体数を減らすまでの過程で骨が折れる。
「ビルシャナ化した人間の言葉は強力な説得力がある事は、皆さんもご存知ですね。放っておけば配下になってしまうので配下化を防ぐことは大事です」
先ほどから左右に体を揺らすイマジネイターだが、予知のあいだに聞いたクラブサウンドが頭に残っているだけで影響は受けていないので安心されたし。
「ビルシャナの主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、市民の配下化を以前に防げます、もし配下になってしまうと、ビルシャナが撃破されるまで、教祖を守ろうと皆さんの戦闘行動を妨害してきます」
ビルシャナを倒せば元に戻せるが、配下が多いほど、戦闘で不利になるだろう。
「市民の皆さんを洗脳から解放し、ビルシャナを撃破するのが今回の任務です。よろしくお願いします」
イマジネイターの予知によると、池袋の閉店していたクラブハウスをビルシャナが占拠して市民を集めているらしい。
「ビルシャナは10~20代の市民10名に向かって、クラブサウンドに合わせて説法を説いています。韻を踏んで印象付けしているためか、身体が勝手に動きだしている状態ですね……ですが、説得の余地はまだ残っています」
真剣な表情を浮かべるイマジネイターにケルベロス達も身を乗り出して二の句を待つ……そしてイマジネイターは答える。
「全員『音声合成ソフトで歌うアイドル』のプロデューサーさんです!」
自宅警備員が立ち上がりかけたが、辛うじて腰を椅子におろす。
クラブサウンドと電子音声。似て異なるがゆえにクラブサウンドに傾倒すれば、自らの手掛けたアイドル達の楽曲への裏切りでもある。
「ビルシャナの説法もインパクトがあります。それ以上のインパクトを発揮するために手段は選べませんが、『アイドル達にかけた歌への情熱』を思い出させてあげることが大事でしょう」
歌のテーマ、作詞、作曲、発音の調整、3Dモデリングに勤しんだ者も居るだろう。
試行錯誤して、動画サイトで日の目を見るまで積み上げた苦労を忘れさせてはいけない!!
「DJビルシャナは自らの背負う音響を武器にします。重低音を放つアンプ、踊りたくなるクラブサウンド、レコードをスクラッチして自分を鼓舞するなどかなりDJしてます」
DJがなんなのかよく解っていないのだろうが、そこは重要なことではない。
「相手の土俵に立ってもビルシャナ以上のインパクトを与えられなければ、かえってビルシャナの教義に飲まれてしまうかもしれません。皆さんが一丸となって説得すること勝負のカギになると思います」
数は力なり。『一人で説得に挑むより、8人が一丸となって説得したほうが効果的だろう』とアドバイスを送ってイマジネイターは締めくくる。
参加者 | |
---|---|
アリッサ・イデア(夢夜の月茨幻葬・e00220) |
暁星・輝凛(獅子座の斬翔騎士・e00443) |
光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124) |
雛祭・やゆよ(ピンキッシュブレイブハート・e03379) |
天宮・陽斗(天陽の葬爪・e09873) |
峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147) |
ディオニクス・ウィガルフ(ダモクレスの黒剣・e17530) |
伊・捌号(行九・e18390) |
●洗脳バインド
ギュピ・ギュピ・ギュギュギュ! ギュギュギュ・ピギュ――!
閉ざされた支配領域に君臨するDJビルシャナは、抗議代わりに円盤をスクラッチする。
「お呼びじゃないぜ・そこのメンツ!エイメン、お帰りあっち方面!」
「……意味が分からないのよさ」
「『邪魔だから出てけ』ってことじゃねーっすか」
突然のディスりに面食らう雛祭・やゆよ(ピンキッシュブレイブハート・e03379)に伊・捌号(行九・e18390)が冷静に解説する。
言葉遊びの過ぎる教祖だが、歴代ビルシャナでも高ランクの煽りスキルかもしれない。
「……何だろうな、コレジャナイ感半端ねえんだが」
天宮・陽斗(天陽の葬爪・e09873)もサバトと化すクラブ内にコメントが出ない。
「か、体が勝手に動いちゃうよぉ!?」
「マジサイコー! ……ってなにがだよ!」
クラブサウンドによる洗脳に市民もかろうじて正気を保っているが、踊り続らされている間は精神汚染が進んでいくようだ。
このまま続けていればビルシャナの信徒へ堕ちてしまう。
「ビルシャナの指図なんか受けない――みんな、もっとアガる曲かけるよ!」
暁星・輝凛(獅子座の斬翔騎士・e00443)は持参した音楽プレイヤーを最大音量にする。
――それは初めて自分で作った電脳アイドルの歌。
不慣れな操作と僅かな知識で作り上げた曲調は滅茶苦茶、歌声も音程も全く調和がとれていない。
「メロディは単調、テンポも滅茶苦茶……ひどいよね!」
そんなことは誰よりも作者本人が実感する現実。
だが、苦悩を重ねながら完成させようとする『強い意志』がなければ成立しない!
「それでもいつか憧れた、あの曲に近づきたいって――もっと素敵に『彼女』に歌わせてあげたいって作った曲なんだ! キミ達なら分かるよね!?」
輝凛は叫ぶ。 その心に電子の歌姫達がいるのか!?
アリッサ・イデア(夢夜の月茨幻葬・e00220)もビハインドのリトヴァを踊らせながらビルシャナに負けじと声を張った。
「誰かの音楽に傾倒するのも、悪くないかもしれない。けれど自身の音楽を心から追い出してはいけないわ」
自分達の音楽にかけた情熱、試行錯誤しながら作り上げた自分の『世界』。
アリッサも絵本という形で自らの世界を創作し、その途中に苦楽を感じていた。
「その過程は苦しくもあったけれど、それ以上に楽しかったでしょう? ――初めて作品を完成させた達成感、感想を頂いた時の嬉しさ。沢山の物を、貴方達は得たのではないかしら?」
そして何より、大切なアイドル達が輝く為にはプロデュースする者の『想い』がなければならない!
「思い出して……彼女たちは、貴方達の帰りをずっと待っているわよ」
「Ha! チープなポップスでSoulは燃えねぇ!ディープなテクノでSoulを燃やせぃ!」
ビルシャナも黙ってはいない。自らのアンサーを込めた反論で市民に揺さぶりをかける。
――しかし、精神を汚染されながらも抵抗を見せる者が出始めていた。
「そ、そうだ……誰かのじゃない、俺の音楽を作るんだっ」
「大変なときもあるけど、それ以上に楽しいときもあるの……!」
自力で踊りをやめようとする2人を救出しようと、ディオニクス・ウィガルフ(ダモクレスの黒剣・e17530)が抱えてクラブの外へ連れだす。
残る8人も混濁した意識の中で抵抗を試みるが、体の自由は密室の支配者たるビルシャナの音楽に奪われたまま。
「次はこっちを聞いてくれ! 俺の双子ちゃん達に歌を歌わせることが出来たんだ!」
ノートPCを操作していた峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147)はしたり顔で市民にモニターを見せつける。
再生されたのは6和音の輪唱。ケロケロ。ケロケロ。
音はなく歌詞のみを入力し、ただ発声させている状態だった。
初歩中の初歩だけで曲とも言い難い代物。普通なら稚拙過ぎて黒歴史として抹消したくなるだろう。
だが、雅也は堂々たる自信の中で再生し続ける。
「今はまだ伴奏もないけど、いつかお前達をのびのびと歌わせてやるからな……俺も動画投稿サイトで活躍するPさん達みたいに頑張るぞ!」
「うんうん、いい感じに輪唱決まってるよー!」
光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)が声援を送る中、捌号も音楽プレイヤーを操作する。
「はー……むっちゃ大変だったすよ」
無から有を創りだすことは、創造する為の精神力と集中力、忍耐力を要する。
詞を書くことも、音を表現するのも知識が必要。決して簡単な安い作業ではない。
身をもって知った捌号の溜め息には、その労苦が滲む。
「たった数日で、歌っぽい形になんとかするだけでもやっとっす。あんた達が作ったのと比べれば大したことないんでしょうけど、達成感はすごかったっす」
自らの思い描く世界観、創りあげた世界から得られる『高揚感』
イメージが音楽として成立したときの歓喜は、自らの手でしか生み出せない!
「こんなとこで踊らされてるなんて、不本意でしかないっすよね。またてめーの力で誰かを歌わせみせたりしてみないっすか?」
甘くて苦い記憶に響くのだろう。甦る思い出を糧に3人の市民が、掲げた腕を震えさせながら動きを止めにかかる。
雅也達の説得が耳障りだと言いたげに、ビルシャナはレコードを小刻みに擦ってウーハーから重低音を轟かす。
しかし陽斗は気にせず言葉を次いだ。
「電子アイドル?の曲はイイものが多かった。中にはあんたらの曲もあったんじゃないか、こんな風に楽しんで作ってたんじゃないのか?」
満面の笑みの雅也も、真剣な表情の輝凛のように。
「創作活動の孤独さを想えば、これに同意するならクラブサウンドも悪くないだろうがな」
貶める言動は不快に感じる者も多くいるため、共感を得るには厳しい部分が多い。
否定的な言葉を避けた陽斗だがあまりに漠然としていた。
自分にとって好ましかった部分は? なにが印象的だったのか?
言葉だけの説得は、強力な説得力を有するビルシャナ相手には苦戦必須。
曖昧とした言葉では容易に塗り潰されてしまう――ビルシャナはその言葉尻を良いように利用した。
「Aーhaー!リスペクトはマジMast・もっともっと踊れ! 請願・晴眼・俺の教義に開眼せよ――!」
「耳を貸すんじゃねェ、また乗っ取られちまう前に外に走んなァ!」
引き戻される前にディオニクス達が3人を外へと促す。
踊り続ける5人はテンポアップしていくクラブサウンドに合わせ、呻き声をあげて踊り狂う。
(「音楽の力で他の音楽への情熱を忘れさせちゃうなんて間違ってるよ!」)
睦とやゆよは歌い手。電子音楽を手掛ける市民達とジャンルは違うが、ネット上から音楽を送り届けるという立場は同じはず!
「再生数がなかなか伸びなくって、悔しいとか悲しいとか、あたしも思うことがあるのよさ! それでも好きだからやめたくないし、止めたいとは思わないだわさ……!」
市民がどんな楽曲を投稿していたか、ハンドルネームが不明であったため知ることはできなかった。
それでも誰かが聞いてくれている。自分も音楽を愛しているから続けられるのだと、やゆよは強く呼びかける。
「あなたたちの歌は、ちゃんと聞いた人の心に響いているだわさ! きっと楽しみにしている人がいる、だから歌を作り続けて欲しいのよさ――あたしもいつか……ううん、今ここでみんなの魂に歌を響かせるだわさ!」
惑う心に燃え盛る炎を、混迷する魂に熱き血潮を!
ギターを掻き鳴らすやゆよの情熱的なアニメソングがビルシャナのサウンドとぶつかり合い、空気がピリピリと振動し始める。
睦もギターネックを握りしめ、歌い始める構えに入った。
「私の初めて作った曲、『低空飛行のキス』……しょぼくったって私の大切なファーストシングルよ。貴方たちも初めて作った気持ちを思い出して!」
――翼の音に気付かないで ココロも5センチ背伸びしてるの……♪
フリーの音楽ソフトで伴奏を作った1番。未熟な作詞と曲調は素人そのもの。
けれど悪い誘惑に負けないように。誰かの心を支える糧になるように。
毎週続ける路上ライブで歌うように2番はギターを爪弾いていく。
ここまで辿り着くまで要した期間は1年。その月日に今の睦を歌い手たらしめるモノが詰まっている!
(「一緒に寄り添ってくれた『歌姫』さんのこと、思い出してあげて……!」)
初めは誰もがイロハを知らぬ未熟者。しかし『技術』とは刀と同じ、鍛錬を積んで身につくもの。
『情熱』というセンスの刃を鍛えあげ、研磨し続けた者にのみ到れる世界がある!
独学でなにかを生み出すことがどれほど困難なことか、今のケルベロス達なら理解できる。
想いよ届け!
――願う歌声に抵抗する意思を振り絞ったのだろう。倒れこんだのは、3人。
●電子絶唱浄土
「クラブサウンド・マジサイコー!」
「オーイェー!」
残る2人の市民は讃美の声をあげながら激しく踊り続けていた。
――あと一歩、ビルシャナを上回る決定打が足りない。
主張に統一性はあった、もし協調性もなく当たっていたらビルシャナに圧倒されて終わっただろう。
しかし普遍的な主張だからこそ安定性があり、ハッとするほど強烈なインパクトはない。
方向性を違えず、より強く揺さぶる要素――言うなれば『視聴者の視点』だろうか。
どれだけ素晴らしい楽曲だろうと聴衆なしに広まることはない。
素人なりの拙い楽曲も共感するだろうが、電子音楽を愛する視聴者も作り手には大切だ。
いずれにしろオーディエンスを奪われたDJには全く面白みがない事態になった。
「――ケルベロス、カタルシスに至るに及ばず。叫喚の地獄で潰えるまで歌い続けよ!!」
本性を現したビルシャナがブースから飛び出し、洗脳された市民が守るように立ちはだかった。
雅也が飛び出すと進路を塞ごうと市民が追いかける。
「ちっと我慢しろよ!」
腹部めがけて納刀したままの刀の柄を突き込む。
手加減したが熟練のケルベロスでは市民と身体能力がかけ離れている、特に雅也は主力を担おうと攻め込むポジションをとっていた。
ゴキリ、と肋骨が折れる鈍い音と共に喀血して市民が倒れこむ。
1人が気を取られた隙に輝凛がビルシャナへ滑り込むように蹴りこみ、軽妙な動きで頭上まで跳ね上がっていく。
「舞い集え――其れは闇夜を斬り裂く光!」
レーザーライトで彩られた薄暗い屋内を、光の軌跡が幾重にも描き、ビルシャナの羽毛が宙を舞う。
「リトヴァ、輝凛の援護を――私は市民の救助を優先するわ」
狼狽していた配下に向けてアリッサは精微な細工の槍斧を振るう。
長柄で脇腹を薙ぎ払う一撃。軽々と吹き飛んだ肢体は壁に強打すると、崩れ落ちるようにその場に倒れこんだ。
自らを鼓舞するビルシャナに朽ちたL字ソファと陽斗の飛び蹴りが降りかかる。
「耳がキンキンしやがる、てめぇの騒音で鼓膜がバカになりそうだ」
音響の要となるアンプめがけて足刀を打ち込み、ディオニクスの鉤爪が追い打ちにかかる。
「睦さんを支援しつつ前に出やがれっす、自分はちっとあちらさんに……」
ボクスドラゴンのエイトに指示を出しつつ、吐血する市民に捌号が手を伸ばす。ヒュー、ヒューと空気が抜ける音が微かに聞こえる。
「聖なる聖なる聖なるかな。届きたまえや、我が祈り」
祈るように両手を合わせ、澄んだ歌声を重体の市民に捧げた。
内なる神が願いを聞き届けたかのように、瀕死の市民の苦悶が和らいでいく。
「一切衆生、救うが天命。猛犬どもには死命が似合いよ!」
ウーハーから轟く重低音が津波のように押し寄せる。
やゆよが雷電の障壁を展開する間に、睦が雅也を庇いながら突出し、拳を振り上げ気合を圧し折る。
「教えて、貴方の思いを!」
もう一振り、虹色の拳をビルシャナに叩き込む。
思い描くは――世の一切衆生を極楽浄土へ、苦痛なき王道楽土へ。苦患なき安楽の世界、ただひたすら安楽に浸るだけの楽天地!
……流れ込む『怠惰の地獄郷』に睦は背筋がゾワリと粟立つ。
容赦ない音圧の暴力の中、アリッサの自由を奪われそうになる。
「そういう、柄ではありませんので……!」
「――夢を貫き ぼくらはまっすぐ叫び続けよう!」
必死に抵抗するアリッサをロックな曲調で奏でるやゆよの歌声が跳ね除ける。
再び構え直したアリッサが燃え滾るハルベルトで突き上げ、獄炎を叩きつけていく。
元より、広域への状態異常付与を得意とするDJビルシャナに長期戦へ持ち込むだけのスタミナはなかった。
陽斗達が畳みかけているうちに音響機材もスクラップになり始め、ストリート系の装いも羽毛と血で散々なる見目に変わり果てていた。
「じんる、きゅう、さ、ごくらく、お、じょ……」
「歌も踊りも良いものだよね、けど音楽の多様性を認めない教義を僕は否定するよ!」
冷気のオーラを操る輝凛がフォトンビットに切り替えると、大型スピーカーのコーン紙を突き破り両断。
機材が瓦解し、バランスを崩したビルシャナに雅也が迫り――。
「こいつで仕舞いだぜ、ビルシャナ!」
そそり立つように地中から突き出すグラビティの杭。
持ち直す暇もなくビルシャナは脳天まで一気に穿たれ、串刺しにされるあっけない結末を迎えるのだった。
閉鎖されていたクラブハウスとはいえ、放置するのも気が引ける睦は修復作業にあたる。
(「音楽を布教に使わせないためには……うー、だめ。頭痛い……」)
先ほどの強烈なイメージがこびりついたのか、まともに思考できる調子ではない。
今日は帰ったら早く寝ようと作業に専念する。
「ねー、作った曲さ、どっかの動画サイトとかにないの?」
「俺も今度はオリジナルの曲作りたいんだよな、コツとか教えてくれよ」
外に避難させていた者や気絶していた市民達を介抱する輝凛と雅也は、手掛けた音楽について聞いている。
昨今では認知度や浸透性も高まったためか、あのサイトやらこのサイトやら。投稿先はそれぞれだが、コツについて口を揃えて『とにかく音楽を聴く』ということ。
好きな音楽からアイデアを得て、さらに発展させるために応用していく――およそ大規模な建築作業と同等か、それ以上の積み重ねが必要なようだ。
さて、同じ投稿者としてやゆよが気になる質問をなげかけた。
「あたしも『やゆ☆やよ』って名前で動画とか生放送してるのだわさ、知ってるかしら?」
「やゆ……ごめん、聞いたことないなぁ」
ケルベロスという存在は絶大な支持を受けているが、それが見えなくなると一般人と変わりない。
ネットの海は現実よりも広大なのだと嫌でも実感させられる。
(「……でも、あたしは歌が好きなのよさ」)
自分の歌が届いていないなら、より多くの人に伝わるよう歌い続けることが大切だ。
それもまた『情熱』の在り方なのだから。
作者:木乃 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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